【主人公】戦場駆動【喋らない】 外伝   作:アルファるふぁ/保利滝良

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【機体】

午前7時

ミシェルは昨日の施設に訪れていた

オイルと鉄と火薬の臭いが充満するドック

その中に、一機の人型機動兵器が鎮座している

「おはよう、ミシェル 早いね」

「おはよう 私、あんまり夜更かし好きじゃないから・・・ ところでラドリー、この機体は?」

整備クレーンの前の初老の男性に声をかけるミシェル

それに対しラドリーは苦笑いしながら答えた

「製品コード・deth666(試作型) 機体名タナトス 俺たちが使う人型機動兵器さ こいつが商売道具になる」

そう言いながら作業を進めるラドリーは、どこか妙だ

ラドリーだけではない このドックの整備員全員から疲労感が漂う

疲労感が霧のような実体を持っているかのごとく、彼らは疲れていた

「ら、ラドリー・・・大丈夫?」

心配そうなミシェルに、力ない笑顔で応えるラドリー 

「いやあ、すまないラドリー 僕の権利じゃそのジャジャ馬しか用意できなかったんだ・・・」

そこに、ケンが現れた ケンは、その片手に書類を持ちながらドックに入ってきた

「ケンさん、こんな早くにどうしたんですか?珍しい」

「今日は僕の親戚と君達を会わせる日だよ こんなめでたい日の前に夜更かししたらバチが当たっちゃうよ」

ケンは大仰に手を広げ、にやけながら続けた

「僕の故郷じゃ、早起きは三文の得、と言うしね」

「ケンさんの親戚?」

「ああ、このチームのパイロットだよ ミシェルちゃんの初恋の人、と言うほうがいいかね?」

その発言に、ミシェルは顔を急速に赤らめる

今の彼女の顔面なら、お湯を沸かせるかもしれない

少なくとも本人はそう自覚していた

照れ隠しに叫ぶ

「ケンさん!」

「あははは ところでミシェル、朝御飯まだだよね?近くに美味しいパン屋があるから行こうよ!僕のおごりで、ラドリー達に食べきれないくらい買ってあげてさ」

「食べきれないくらいは要りませんよ? ああそうだミシェル、聞きたいことがあるんだが・・・」

ニヤニヤしながら、ケンはミシェルを食事に誘う それに対し突っ込みながら、ラドリーはミシェルに資料を手渡す

二秒で目を通し、ミシェルは呟いた

「塗装と武装の選択?」

ラドリーは大きなため息をついて話す

疲労が貯まっているのがよくわかる プロがここまで疲れるとは、この機体はどれ程整備性が悪いのか

「今のままじゃダサいから、変えたいんだが・・・パイロットが決めてくれないのさ ミシェルが決めちゃってくれ 今決めたら一時間で終わる」

「私が?良いの?」

「このチームのリーダーは、多分あんたになる」

「でも・・・」

ラドリーは困った顔で呟いた

「お前さん以外には、無理だ 悪い意味で」

「ああ・・・」

ミシェルは資料のメモ欄にボールペンを走らせ、ラドリーに返す

10秒に満たないその行為に、ラドリーは驚きを隠せない

「お土産待っててねー!」

ケンがそう言いながら、ドックの前の車に向かう ミシェルはお辞儀をしてそれについていく

二人が去ったドックにて、ラドリーは資料に目を通す

武装・一番強いの 塗装・ボディは闇のような黒、ヘッドは静脈血のような暗い赤

本日二度目のビッグため息が、彼の口から飛び出した

 

 

 

 

 

午前8時

パン屋から出て、ケンとミシェルは話し込んでいた

それはパイロットの話だ

「じゃあ、今頃はあの機体のドックに?」

「そうだよ・・・ん?」

ケンが突然空を見上げた

 

そこには榴弾があった

 

ミシェルの目の前で、ケンが盾になる

爆発、爆光、爆音、爆煙

ケンの背中がそれら全てを食らう

苦痛に歪む、男の顔

「け、ケンさんっ!」

倒れこんだケンに、ミシェルは声をかける

しかし素人目でも、致命傷なのがわかった

多分、その背中は、言葉では表現できないほどの有り様だろう

「ミシェル・・・よく聞いて・・・」

ゆったりと、ケンが言葉を紡ぐ

「え・・・は、はい」

ミシェルは、それを静かに聞く

「多分・・・革命者に入り損ねた奴らの仕業だけど・・・今はいいか・・・」

ケンは、残りの力を振り絞り、右手を上げる そこには携帯が握られていた

「これは・・・?」

「ミシェル・・・これを使って、僕の親戚・・・パイロットに指示を出すんだ・・・」

「わ、私が・・・オペレーターに・・・?」

携帯を受け取り、ミシェルは呟やく

「・・・この街を・・・アイツと、いっしょ、に・・・守ってくれ・・・」

「・・・!ケンさん!しっかりしてください!ケンさん!ケンさん!」

「ジョーはね・・・ミシェルには、一番安全だけど、一番危ない場所で働いて欲しいと言ってたよ・・・」

顎髭を撫でて、ケンは一呼吸置き、

誰でもない、友に呟いた

「それはこういうことだったんだな・・・ジョー・・・」

ケンの腕が、糸が切れた人形のように、落ちた

その事実に気づき、ミシェルは、

 

涙を、堪えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が・・・オペレーターに・・・

街を・・・守るために・・・

私が・・・やらなきゃ・・・

彼を・・・動かさなきゃ・・・

それが出来るのは・・・嫌だけど・・・怖いけど・・・

「私しかいない!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狭いコクピットの中、唐突に通信機から可愛らしい声が聞こえた

「はじめまして、こちらオペレーター タナトス、聞こえますか?」

 

 

 

 





ケン・モリモト

ヨーロッパの人型機動兵器生産会社の株主にして、主人公の遠縁 享年41歳
ミシェル達が大陸にいられるのも、彼が生前に手を回していたから
ミシェルの父ジョー・レイクの友人兼借金保証人 ミシェルとも親交がある
故郷はヨーロッパではないらしい
飄々とした性格だが、とてつもなく面倒見が良い そのお陰か、よくモテる 別名夜王
ミシェルのために傭兵チームをひとつ用意させるなど、会社での地位は高いようだ

備考
傭兵チームにタナトスを用意したのはわざと
タナトス程の性能でなければ、大陸では生き残れないと判断したケンの計らいである
これが後に、組織にとって悪夢となる
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