【主人公】戦場駆動【喋らない】 外伝   作:アルファるふぁ/保利滝良

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【駆動】

「作戦を説明します」

オペレーターの声が現在の状況を説明し始める

「現在、謎の武装勢力がこの街を襲撃しています できるだけ街の被害をおさえながらこれを全て撃破してください 敵の戦力は全て戦車だと思われます 人型機動兵器なら勝てます、頑張ってください」

通信はそこで終わった

 

 

 

ラドリーが叫ぶ

「総員退避しろおーッ!『死神』の初陣だぁーッ!」

踏切が下りる時の音を何倍にも大きくしたようなサイレン音が、ドックの内外を埋め尽くす

発生源の近くの者は漏れなく聴覚不全になりそうな音量だ

ドックの壁の一部が横にゆっくりとスライドし、タナトスの通り道を開く

コクピットの中に機体の駆動音が響き渡る それは、言うなればレース前のアイドリング さしずめ今日は、ニューフェイスのデビューレースだろうか

黒塗りのタナトスが片足を上げる 永遠にも感じられるその一瞬の後、死神の名を戴く機体が歩きだした

ドックの中からそれを見守る整備員達 逃げ惑う街の人々

それら全てを見下ろしながら、目標へ向かう

古き良きモダンな街並みを闊歩する、見た者を恐怖させる死神

 

【挿絵表示】

 

今、それは命を刈りにゆく

なぜなら、それが彼の役割だから

 

 

 

 

武装勢力のメンバーは、旧式の戦車の中で砲をひたすら操作していた

彼らは、『革命者』との合流に間に合わなかったテロ組織だ 今は具体的な活動内容は伏せる

彼らは『スペード』を名乗る者達から、この戦車を受け取った

その対価が、ヨーロッパのこの地区の爆撃だ 彼らにとっては願ってもないチャンスだった

なぜなら、彼らはヨーロッパを目の敵にしていたから 

スペードの連中は、ことによっては更に戦力を貸し与えると言っていた まさにカモネギである 断る理由は無い 彼らは早速行動に移った

その行動は彼らを追い詰める結果になった

テロ組織の者達は、先程までは街を攻撃していた

しかし今は、突然現れた人型機動兵器と交戦状態になっている

その機体のバズーカは、一撃で戦車を砂鉄のように粉々にした これで8両目

雷のような爆音が戦車隊から飛び出す 榴弾が敵の胸に突っ込んでいく しかし、その機体に大きな損傷を付けるには全く至らない

相手はまるでこちらの攻撃を受け付けない 装甲の堅さは恐らく戦艦並みだろう

今戦車砲を叩き込んでわかった

「リーダー、こいつ強いですよ!?」

「うろたえるな!ま、まだだ・・・砲を止めるな!」

「リ、リーダー!前、前ッ!」

人型機動兵器の手からマズルフラッシュが連続して見えた テロ組織のリーダーはガトリングにより即死した 1秒に満たない攻撃を喰らい、戦車が穴だらけのスクラップになる

リーダーが死亡したことで、このテロ組織の士気は一気に下がったのだろう

キャタピラを鳴らして引き下がる戦車、しかしタナトスはゆっくりと進む

わざと敵の的になることで、街に砲弾を飛ばさないためである ミシェルの指示を、パイロットは忠実に守っていた

足を踏み出すたび、アスファルトの道路が悲鳴をあげる タナトスのカメラアイが鈍く光り、次々と砲を撃つ戦車をロックオンする

戦車砲を涼しい顔で受け止めながら、右手を伸ばす

そこから撃たれるのは、破壊の嵐

一度に二台の戦車が消し飛ぶ 轟音に包まれるテロリスト 

最後の戦車が次の標的にされようとした、その時だった

その戦車は動かない まるで動かすものがいないかのごとく

否、いないのだ 戦車の乗組員は、既にそこからいなくなっていた

そこにいたのは、怯えた表情で女性のこめかみに銃を突き付ける、男

人質にとられているのは、ミシェルだ

その瞳はタナトスを見ている その男も、タナトスを睨み付ける

男は恐怖と怒りを混ぜたような表情をしていた よほど人型機動兵器との戦いが精神に堪えたのだろう

しかしミシェルは、信頼の顔でタナトスを見つめていた

タナトスのハッチが開き、パイロットが出てくる ヘルメットに隠れた顔とパイロットスーツが、不気味な印象を抱かせる

この世のものではないものを見ているかのようなテロ組織の生き残りは、その額に銃を向ける

しかしタナトスのパイロットがピストルを構えるのが早かった

 

 

 

 

 

 

ヨーロッパ軍が周りを捜査するなか、ミシェルはパイロットにあるものを渡した

まだ柔らかい食感を持つそれは

「ごめんなさい、今はこれしか渡せませんが・・・」

初仕事の報酬だ

「よかったら、パン、食べてください」

手渡されたそれは、ケンが買ったフランスパン

タナトスが守り抜いた街の名物だ

「あなたが・・・この街を救ったんです だから、ありがとうございました!」

満面の笑みを浮かべ、ミシェルは右手を差し出した

その手を握るパイロット 彼らを見つけて走り寄る整備員たち

ここに、ケンが揃えた傭兵チームが、集まった

 

 

 

 

 

 

 

その一月後

太平洋沖から大陸を目指す一機の輸送機

「タナトス、聞こえますか?」

彼らは、これから大陸トップの傭兵すら倒す、最強の死神と共にいる

「これから大陸に着きます」

しかし彼らは、それを今知るよしもない

「頑張りましょう!私も、全力でオペレートします」

だが、彼が死神のようになったとしても、彼を支えたいと、ミシェルは思うだろう

「行きましょう、大陸へ!」

その気持ちに、偽りなど無い

 

 

 

 

この日、大陸に新たな傭兵が到着した




戦場駆動第零章はこれにて終了です

それにしても、書くたびにタナトスが怖くなってくのは何故だろう・・・
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