【主人公】戦場駆動【喋らない】 外伝 作:アルファるふぁ/保利滝良
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屑鉄の少女 前編
例え年が変わろうとしても、大陸の傭兵達は血生臭く過ごす
曇り空の下、人型機動兵器をたった一機載せた輸送機が、今まさにその機体を投下しようとしている
雲の中から、稲光や雨粒が大地に降り注ぐ
輸送機の中、死神の名を持つ一機の兵器の中に、同じく死神の渾名を戴くパイロットがいる
そんな物騒なパイロットの耳に、すっかり聞き慣れたオペレーターの声が通る
「作戦の内容を説明します」
コクピットのディスプレイの一部が淡く光り、その部分に画像が表示される
「今回は大陸の『謎』の調査です 目的地の遺跡に到着したら、遺跡内を探索 怪しい物が見つかり次第依頼主に報告します」
画像はピラミッドに良く似た件の遺跡の写真だった 画像が映像に切り替わる 矢印が伸び、遺跡の中に侵入していく
矢印はタナトスのことだろう ぽっかりと空いた穴が画像の中の遺跡にあるが、矢印はその穴に入る
「落雷により出来た穴から侵入します 他に出入口らしき物が確認出来ません その穴が実質唯一の出入口です 気を付けて」
ミシェルが重々しく言った時、ちょうど輸送機の後部ハッチが開く
黒塗りの機体がゆっくりとハッチの外に向かう
「作戦領域到達!タナトス、出撃お願いします!」
機体の稼働音が大きくなる それは、いうなればレース前のアイドリング
輸送機のハッチが開ききる 瞬間、雷すら生ぬるく聞こえる爆音が死神の背から放たれた
背部大型ブースターが推進力を与え、死神を宙に飛ばす
遺跡の方へ、死神が駆け抜けた
開いた大穴から遺跡に入っていった死神
しかし、ホコリだらけのピラミッドに良く似たその遺跡は、トラップや財宝の一つもない
しかし広さは別格だ
パイロットが、人型機動兵器の中でも大型に分類されるタナトスに搭乗したまま遺跡内を探索出来る程のサイズである
明らかに人間だけが使う物ではない
像や虎のような動物にですら、広すぎる
しかし、人型機動兵器が歩けるのだ
人型機動兵器は大陸の謎の一端を解析して開発されたという なら、人型機動兵器に極めて近い、人型機動兵器の先祖が大陸にはあったことになる
この広い遺跡は、そのご先祖様に関係しているのだろう
かつて大陸に住んでいたのであろう人々は、ビーム兵器や人型機動兵器を自力で開発していったのだ ならば、彼らの技術力は現代の科学では到達し得ない高みにある
それらを求める大陸の組織達に扱いきれるはずは無いだろう 何故なら、組織はビーム兵器も人型機動兵器も扱いに困っているのだから そんな人類が大陸の謎に触れてタダで済むはずはない
ミシェルはタナトスに取り付けたカメラから送られる映像を見ながらそう考えた
「地雷、ね」
ミシェルの独り言を、姉御肌な輸送機の機長は聞き逃さない
「でっかい核地雷ならやだねぇ」
ミシェルの持論、『大陸の謎は危険遺産説』は、この輸送機クルーの常識である その、ともすれば臆病にとれる仮説は、クルー達の共感を呼んだ
彼らも大陸に潜む謎を不気味に思っていた
15年調べたら世界征服が冗談抜きにできる技術が幾つも出たのだ、マトモな感性なら怖がったって許される
「本当に核ならどーするの」
「冗談だよ♪」
目を皿にしながら、オペレーターが遺跡を見る
正確には、タナトスから送られるデータを解析している
いつもならミシェルを茶化して緊張をほぐす機長だったが、無言で輸送機のシステムチェックをしている 今回の依頼は本当にふざけられないのだ それほどまでに、危険
張り詰めた雰囲気が充満する
いきなりミシェルが驚愕した
「・・・あっ!」
「な、何か見つけたの!?」
ミシェルの視線の先のディスプレイ、タナトスが何かを発見した
それは長方形だった
絵画の枠を金属製にし、バカみたいに巨大化させれば、今タナトスが見ている物質にかなり似せられる
問題は、その枠の中に極彩色の渦が回っていることだ
その渦はただただゆっくりと、不気味に回転している
ピラミッドの中は、タナトスの稼働音しか聞こえない それは長い間人がいなかったことを無言で伝える
死んだような遺跡 死神と呼ばれる兵器 虹色の渦
何もかも意味不明だ そしてそれらが集まり、不気味な様相を呈している
調査のため、タナトスが接近しようと足を踏み出した、その瞬間
「た、タナトスの反応、ロスト・・・」
ミシェルが重苦しく告げる 大きなショックを受け、最早自分が何を言っているかわからないようだ
機長が目を見開き言った
「なんだって!?!?」
二人は知らない
あの枠は、平行世界への扉である、と
そして、死神は平行世界へ飛んでいったと
あわてふためく輸送機クルー達
ミシェルは、うわ言のように呟いた
「タナトスの反応、ロスト・・・」
異世界
「ユリン!2時方向に新たな機影だ!」
最新型の機体を駆る若い男性パイロットが、戦友に叫ぶ
「リョウト、こっち任せていい!?」
一方、旧型をスクラップでただ動けるようにした機体で戦う少女は、ブレードで敵を真っ二つにしながら叫んだ
第三次世界大戦、世界は1度滅びかけた しかし、世界中をまとめ上げる組織が誕生し、人類は滅びを免れた
その組織を、統合政府という
今彼らは、統合政府の部隊から攻撃を受けていた
だが、戦況は彼らが有利である
圧倒的な腕で、彼らは20を越える敵を翻弄している
「わかった!危なくなったらすぐ逃げろ!」
「了解!」
少女の機体、アンタレスディザスターがとてつもない勢いで謎の機影を追いかける
それを追うべく方向転換した政府の機体が、若い男性の機体、セラフィムにより蜂の巣になる
マシンガンの銃口から煙が立ち上る
別の機体に銃を向け、パイロットは言った
「お前らの相手は、俺だ!」
マシンガンから弾丸が連続発射された
「・・・何あれ・・・」
機体のヘッドカメラが写した謎の機影を見て、ユリンは呟いた
「死神・・・?」