やはり比企谷八幡の掃除の仕方は間違っている。(改訂版)プラス由比ヶ浜結衣の場合 作:眠り羊
部室のドアを開けると、雪ノ下雪乃はいつものように窓側の椅子に座り、静かに本を読んでいた。
「こんにちは。」
「おう。」
こちらに気付き、一言挨拶を済ませると、雪ノ下はまた視線を本に戻す。
俺はドアを閉め、いつもの席の前に立ち、本を取り出す。
・・・取り出した・・・のだが、やはり眠い、さっき平塚先生から貰った目薬を差してみるか・・・。
先程貰った目薬をポケットから取り出すと、蓋を開け上を向き目薬を差す体勢になる。
いつもと違う俺の行動を不審に思ったのか、雪ノ下がこちらの様子を伺う。
雪ノ下に見つめられるとへんな汗が出てくるんだが・・・普段美人にじっと見つめられるとか無いからだろう・・・やめて欲しい、不整脈になるだろ。
「あら比企谷君、目薬なんて珍しい。」
俺の不審な行動の意図が解りすっきりしたのか、視線を本に戻す。
「ああ。昨日寝付きが悪くてな、あまり眠れなかったから眠くて視界がぼやけるんだよ。」
目薬を差しながら答える。しかし、目薬の容器ってもっとどうにかならねぇの?全然上手く差せねぇよ・・・。
まぁ俺がビビって目薬が目に入る前に目を閉じてしまうから、という理由も少しはあるのだろうが・・・というかそれしかないか。
雪ノ下が本を置き、こちらを見つめ指を顎に持っていき首を傾げる。
「・・・そうだったの、いつも通りの濁った目だから気付かなかったわ。」
「そうね比企谷君、何なら部室で永眠しても良いのよ?」
俺に優しげに問いかけた・・・言い方は優しいんだがその言葉はどうなんだよ・・・。
「いや、なんでお前はいつも俺を自然に殺そうとするんだよ・・・」
そしてなんでそんなに楽しそうな顔なの?ラフコフのメンバーなの?
「そう?目薬を差すよりは、建設的な提案だと思ったのだけれど。」
不思議なことをしているような者を見る目で雪ノ下が言う。
やっと上手く差せた、流石平塚先生にすら合わないと言わせるまであって、きついなこの目薬。
「は?それのどこがだよ・・・目薬差した方がキターーーーって感じにすっきりするぜ?」
幾度か瞬きをして目薬を目に馴染ませる。
「いえ、あなたがどう思おうと構わないのだけれど・・・その濁りきった目は、目薬程度では綺麗にならないと思うのよね。」
「だから永眠の方がまだ建設的な意見じゃないかしら?」
あれ?何かなぁこの目から零れ落ちてる雫は、きっと目薬だよね?
「くっ、へいへいどうせ俺の目は綺麗にならないよ。」
・・・いやでもな雪ノ下、俺の目は確かに綺麗にならないが、濁っていても良く見えるんだぜ?
そのドヤ顔のかわいい微笑みとか・・・思わずちょっとドキっとしちまったじゃねーか。
すると、不意打ちのようにドアがいきなり開かれ、勢い良く由比ヶ浜が入って来た。
「やっはろーゆきのん!」
「や・・・こんにちは、由比ヶ浜さん。」
一瞬勢いに押されそうになったのか、挨拶が不穏になる。
「あ~おしい、もうちょっとでゆきのんに言って貰えそうだったのに~。」
「何の事かしら。」
平静を装い、キッと冷たい視線を由比ヶ浜に向ける。
由比ヶ浜は雪ノ下のそんな視線も気にならないのか、構わず続ける。
「ゆきのんってヒッキーと話してる時結構油断してるんだよねー、だから狙ってみたんだけど。たははは。」
何くだらないことを狙ってるんだか・・・俺がそんなことしたら、間違いなく瞬殺されてるぞ。
「な、そんなことはありえないわ由比ヶ浜さん、どこをどう見たらそんなおかしな事になるのかしら。」
少し狼狽気味に雪ノ下が言う。
雪ノ下が狼狽するとか珍しい、雪ノ下に限ってそんなことは絶対無いと思っていたが、その狼狽ぶりから察するに少しは気を許されていたらしい。
と悪い気はせずに、やりとりをみていたのだが、雪ノ下が指でこめかみを押さえながら言い放った。
「あのね由比ヶ浜さん、比企谷君の前で油断するなんて、オオカミの前に丸腰でいるようなものなのよ?」
やはりそんなことはなかった・・・いや、俺どんだけ凶暴なんだよ、何なら赤毛の熊倒しちゃうの?
よく見ると、いきなり見当違いの事を言われた為か興奮で体温が上がり顔が赤くなっている・・・ように見える・・・。
あの氷の女王こと雪ノ下のことだ俺の見間違いだろう、濁った目にもう一回目薬を差しておくかな・・・。
「え~そうかなぁ~?そんなこと無いと思うんだけどなぁ・・・。」
ん?今の会話でふと、あることに思い至る。
雪ノ下が気付いているのか気になり、雪ノ下の方に顔を向けると、ゴミを見るような目で、何こっちを見ているの?と睨まれた。
いや別にお前の狼狽ぶりを見て楽しんでるわけじゃないんで・・・なのでゴーゴンばりに睨むとかやめてくんないかな?超怖いから、何なら石になるまである。
少し経って俺の意図に気付いたのか冷静な表情になる。・・・睨んでなくてもこういう時の雪ノ下は怖いな・・・。
「由比ヶ浜さん、少し伺いたいことがあるのだけれど。」
「え?何ゆきのん?急に改まっちゃって。」
由比ヶ浜は雪ノ下の態度の変化を察したのか、静かに雪ノ下の言葉に耳を傾ける。
「さっきの会話で私と比企谷君が話してる時を狙った、って言ってたわよね?」
「うん。ゆきのんヒッキーと話すとき結構油断してるから♪」
嬉しそうに由比ヶ浜が話す。・・・由比ヶ浜は雪ノ下が何を言いたいのか気付いていないようだった。
あー俺は知らんぞ・・・。
「それはちがっ・・・まぁそれは今はいいのだけれど、いえ、あんまり良くは無いわね・・・そのことについては後でじっくり話し合いましょう由比ヶ浜さん。それは置いておいて」
そこまで認めるのが嫌なのか・・・俺どんだけ危険視されてるんだよ。
少しの狼狽の後、雪ノ下が冷たい視線と声で由比ヶ浜を問い詰める。
「では、由比ヶ浜さんはどうやって私たちが話してるのを狙ったのかしらね?」
普通に考えて盗み聞きしかないだろ、しかし由比ヶ浜も雪ノ下に対してリスキーなことをするな、まぁ何も考えて無いだけなんだろうが・・・俺がしたら社会的に抹殺された後、普通に殺されるぞ。
って俺さっきから死んでばかりじゃね?雪ノ下に関わると死亡フラグが乱立するな。何なの?俺のフラグはドロドロした渦まいちゃってんの?
どうやら由比ヶ浜も雪ノ下が何を言いたいか理解したようで、引きつった顔で言い訳をしようとしていた。
相変わらず分かり易いな由比ヶ浜、その顔になった時点でどうにもならん・・・諦めなくてもそこで試合終了だろ。
「エーとほら?、丁度声が聞k・・・」
雪ノ下が由比ヶ浜をじっと見つめる。
「うわーん、ゆきのんごめんなさい!」
雪ノ下は額に手を持っていくと呆れた風に溜息をつく。
「ふぅ、盗み聞きとはあまり趣味がよろしく無いわね由比ヶ浜さん。」
間髪いれずに由比ヶ浜が許しを請う。
「もう二度としないから~許してゆきのん。」
由比ヶ浜が雪ノ下をひしっと抱きしめる。
「何か言い訳もしようとしていたみたいだけれど・・・。」
雪ノ下が視線を反らしながら言う。
「ほんっともうしないから!私だってヒッキーの腐った目の話に入りたかったのに我慢してたんだからー。」
いや、別に大して入りたい話題でもないだろそんな話、どんだけ話題に飢えてるんだよ・・・。
「腐った目の話なんてしてないわ、淀んだ目の話でしょ?ねぇ淀川君。」
得意顔で俺に振る。
「俺は琵琶湖から流れる一級河川じゃねぇよ。」
てゆーか、が、しか合ってねーし、語音が似てるだけじゃねーか。
「しかも腐った目でも淀んだ目でもなく濁った目の話だよ・・・。」
何これ、新しいいじめの手法なの?お前らの喧嘩で俺傷つけるのやめてくれない?蛍ばりにすぐ死んじゃうよ?
「あら?そうだったかしら?」
雪ノ下がすっとぼけなが微笑む。
「はぁ、だいたい我慢してたとか、由比ヶ浜も俺の目は綺麗にならないって乗ることしかできないだろーが。」
俺が呆れ顔で由比ヶ浜に振った。
「いやいやいや、失礼しちゃうなーそんな事思ってないし、ちゃんとフォロー思いついてたし!」
由比ヶ浜がフォローだと?嫌な予感しかしない・・・。
「ほぅ、一応聞くが、どんなフォローをしようとしたんだ?」
どんなフォローなのか聞いた俺に、えー、とか言って由比ヶ浜が少し照れる。
何?どーしてそこで照れるんだよ、俺のフォローってそんなに恥ずかしいことなの?
照れながらもじもじと指を突き合わせながら由比ヶ浜が言った。
「ほら?墨汁入れるなんだっけ?」
「硯かしら?」
雪ノ下も少し興味があるのか由比ヶ浜をフォローする。
「そうそうそれ!流石ゆきのん!」
いや、それくらい普通誰だって分かるんだが・・・お前どーやってこの高校入ったの?
「あれだって洗えば綺麗になるじゃん!」
とか・・・ダメだった?と上目遣いで俺を覗く。何その自然なあざとさ、なんとか色さんに見習わせてあげたい。・・・いや素で照れるからやっぱり見習わせたくない。
「ま、まぁ由比ヶ浜にしてはまともなフォローなんじゃねーの?」
「でしょー?・・・ってヒッキーそれ全然褒めて無いよね!?」
由比ヶ浜が笑顔の後、納得いかない顔で言った。
いやいやいや由比ヶ浜さん、あなたのフォローに対しては最大限の賛辞ですよ?
「でもあれは墨を磨り卸すためのものだから、最終的に濁ったものが入っているのが正しいんじゃないのかしら?まぁ比企谷君にはぴったりなわけだけれど。」
雪ノ下が冷たい表情で微笑んだ。
だから微笑みながら人を傷つけるのはやめてくれるかな・・・。
「えー?うーん、うーん、んーそう言われてみれば・・・そうかも!」
結局雪ノ下に言いくるめられて終了か、期待はしていなかったので期待通りのオチだった。
二人ともさっきの喧嘩話はもう気にしてないらしい、わざわざ話を反らしてあげるなんて、最近益々由比ヶ浜に甘甘なんじゃないんですかねぇ、雪ノ下さん・・・。
まぁ本気で謝っていたようだし、由比ヶ浜のことだ、二度とやらないと言ったら二度とやらないだろう。
しょうがない、俺も話を反らすのに協力してやるか・・・。
「俺の目にぴったりなのが墨とか俺の目はどんだけ濁ってるだよ。それはもう由比ヶ浜が作る料理と同じレベルのダークマターのようなものじゃねーか。」
「大工?マンタ???」
何その魚の大工とか、新しいゲームでも出たの?泳げ魚の海!みたいなやつ。
「ダークマターよ由比ヶ浜さん、暗黒物質と呼ばれるもので、光学的には観測できないとされる仮説上の物質なのだけれど。」
流石のゆきペディアさんが由比ヶ浜に説明する。
「ありがとゆきのん、・・・ってヒッキーそれって私の料理ばかにしてるってことでしょ!」
由比ヶ浜がぷくーっと頬を膨らませる。
だからさっきから自然にあざとすぎて、一なんとかさんのお株を奪い過ぎだろ・・・。
多分由比ヶ浜は正しくは理解出来ていないだろうが、感覚的には理解したようだった、流石空気を読むスタンド使い。
「ひどーい!ゆきのーん!ヒッキーがいじめるー!」
由比ヶ浜が雪ノ下をぎゅっと抱き締め、泣き真似をする。
いや、それお前がただ雪ノ下といちゃいちゃしたいだけが為に言っただろ・・・。
ほんとスクールカースト上位の奴らはコミュニケーションのとりかたが多彩だな。
「ちょっと由比ヶ浜さん暑いのだけれど・・・。」
困惑気味に雪ノ下が抗議の声をあげるがとりあわない。
逆に雪ノ下に抱きついている由比ヶ浜の抗議の声が、俺に聞こえてきた。
「むー、ちゃんと上達してるもん!この前ゆきのんとも一緒に料理したんだからー!」
ねーゆきのん?と抱きついたまま雪ノ下の方を向き同意を求めていた。
いや、近い近い顔が近すぎるから!
百合百合しすぎて目には良いんだが、ドキドキしすぎて心臓に悪い。
雪の下を見ると目を反らして頷いていた。
「え、ええ・・・。」
今、目を反らしたのは顔が近いからでは無いだろう。
「ほら~へへん。」
と、雪ノ下の微細な反応に気付かず、得意げに由比ヶ浜が胸を張る。・・・色々と困るのであまり胸を張るのは控えてほしい。
これはあれだな、本人は出来てると思っているのに、他の人から見たらダメダメというパティーン。
カメラが下からグイッとパンしてタイトルロゴがドーンってやつだ。
まぁタイトルロゴじゃなくて、由比ヶ浜の料理がドーンと意見を浴びちゃうんだけれど。
「ほう、どれだけ上達したのか教えて貰おうか雪ノ下先生。」
あえて雪ノ下に振るとキラキラとした目で由比ヶ浜が雪ノ下を見ていた。
「つっ・・・はぁ分かったわ、由比ヶ浜さんの良くなった所よね・・・良くなった所・・・。」
手に持っていた本を閉じると、観念し俯きながら指を顎に当て言った。
「まず、ちゃんと本を見るようになったわ、それと私がいなくても料理の準備が出来るようになったし。」
あとはアレンジせずにちゃんと分量と時間をはかってくれれば・・・と青い顔でぶつくさ小さく呟いていた。
それ料理の質自体は全然変わってないってことだろ・・・。
それでも由比ヶ浜を見るとドヤ顔で俺を見つめていた。
いや、お前それでいいの?まぁお前がいいならそれでいいけど。
はぁ、と溜息を吐き出して、気を取り直し雪ノ下は言った。
「でも私、澄んだ黒は嫌いじゃないわ。」
由比ヶ浜がそれを聞くと愕然として、えーそれってやっぱり私の料理が黒いってことー?うー・・・と唸っていた
「いや、単純に色の好き嫌いの話じゃねーの?」
とフォローしてやると由比ヶ浜は「そうかな?そうだよね!」と納得して、胸を撫で下ろしていた。
ちょろ過ぎる・・・ちょっと由比ヶ浜さん?さっきからプラス思考過ぎだろ、どこの戸部だよ。
いや、単純に色のことなのは本当なんだが、返答に困って話題を無理矢理変えただけなのは見え見えだろ、てか無理矢理すぎるだろ。
強引に逃げたな、と雪ノ下にジト目で訴えると、雪ノ下は素知らぬ顔で本を開き視線を戻した・・・まぁ言わぬが花か。
ふぅ、と息をつきチラリとまた雪ノ下を見る。
「まぁ俺も黒は嫌いじゃない・・・な。」
と雪ノ下が小首を傾げ不審げにこちらを見つめ返してきたので、思わずそっぽを向いてしまった。
むぅ、と唸りつつ由比ヶ浜が雪ノ下を見ながら拗ね気味に言う。
「・・・髪、黒に染めようかなぁ。」
まて違う、そうじゃない、ほら黒って大体何にでもあうだろ?服とか何も考えないで買えて楽だし?
別に雪ノ下をチラ見した特別な意味なんて何も無いぞ。
雪ノ下は由比ヶ浜の意図を察したようで(俺の意図では無い)、すばやく目線を本に戻した。
日差しにあたっているせいだろうか、顔が赤く見える。
「いや由比ヶ浜に似合ってるんだから別に変える必要ねーんじゃねーの?」
素直に感想を言っただけなのだが、由比ヶ浜は照れながら「そ、そうかな?」と言って団子髪をくしくしいじっていた。
何この甘いシチュエーション、過去のトラウマを色々思い出しちゃうんですけど・・・。
昔、友達の友達が女子から「この髪型どうかな?」と問われて「・・・に、似合ってると思うよ。」と言ったら、実際に問われてるのは後ろに居た女子で、
しかも次の日その女子は髪型を変えて来たという・・・。さらに言えば似た髪型のクラスの女子全員が髪型を変えていた・・・。
そんな友達の友達の過去のトラウマを思い出しつつ、げっそり机にもたれかかっていると、ドアからノックの音が聞こえてきた。
年度末の忙しさが重なって凄く遅くなってしまいました・・・orz
でも改訂版なので、気になった人は元のを読んで頂ければ結末は分かります(いや、それ推しちゃダメだろ)・・・ので気にしない!(気にしろ
何か書いたは良いけど、まわりくどくなっただけな気しかしない・・・
待望のTV二期始まりましたね!
バッサリ原作をカットしてますが、それでもやはり面白い!