D.GrayMan~聖剣使いのエクソシスト~   作:ファイター

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この作品は、にじファンで投稿していたものと同じですが内容が違っています。



アーサー・ペンドラゴン

 

 

転生した。そう表現するほかなく、現状で一番合っている表現がソレだった。だが、転生した世界はD.GrayManの世界だった。そう、D.GrayManだ。主人公がAKUMAを撃滅していく。そんな漫画だった筈。筈、と言うのは、最後に漫画を読んだのが。そう、あれは確か……21年前だったか。あ、ちなみに俺の肉体年齢は24歳。

 

 

 

「アーサー、どうかしたのか?」

「いや、なんでもない」

「そうか?さっきから空なんて見つめて、まるで不良のようだぞ」

「…………」

 

 

 

その不良というのは、アレか。クロスのことか。いやぁ、確かにクロス元帥は不良みたいな人だけど、それなりにいい人だった。お酒くれたり煙草くれたり。あれ、これ不良じゃね?

 

 

 

「クロスは、まぁいい人だよ」

「いや、アレは確実に駄目な人間の分類に入るな」

 

 

 

クロス、一体クラウドにナニを見られたんだ。この人に、ここまでダメ人間って言われる人間は初めて見た。そう思考していると、風が吹いた。俺が、俺たちが居る場所は海のど真ん中。大きい船に乗って今は任務地に移動している最中だ。こう、船で移動している感じって怖いんだよ。過去にバナナボートに乗ったことがあるんだけど、その日は波が高くて目の前で走る小型船は視界から消えるし、波の頂点から落ちる時なんて「ひぅい!?」って声が出るし。

……え?

 

 

 

「……クド?」

「今の声は私じゃないぞ!?」

「キキッ」

「起きたのか、ラウ」

 

 

 

子ザルである。だが、ただの子ザルではなく時には大ザルになったりする多芸な猿だ。

 

 

 

「それにしても、ずいぶんと可愛らしい声で鳴くのだな」

「なぁっ!?」

「ラウ」

「え?」

「え?」

「キキッ」

 

 

 

ポケットに入っていた紙袋を取り出し、そこからクッキーを出す。うむ、美味い。お、ラウ。お前も食うか?そうか、食うか。クラウドの肩から俺の肩に乗ってきたラウに、クッキーを手渡し俺ももう一枚。美味い。肩の上でクッキーをカリカリと齧るラウは、正直に可愛い。

 

 

 

「んんっ。私にもくれないか?」

「はい」

 

 

 

前に出した紙袋からクッキーを取り出し、クラウドも齧る。このクッキーは出来立ても美味しいし、冷えても美味しいで俺のお気に入りだ。まだ、只のエクソシストだった頃に、任務で行った街にあったお菓子屋さんで買ったのだ。それから都合が合えば買っている。今も昔も変わらない味だ。

 

 

 

「このクッキーは、やはり美味しいな」

「此処にコーヒーでもあれば尚更、な」

「アーサーの任務地は、ヨーロッパだったか?」

「少し、寒いらしい。そういうクドはアメリカだろう」

「はは、私は故郷に戻るのと同じだからな。なにも心配はないさ」

「アメリカはいいなぁ」

 

 

 

アメリカ。ヘルメット無でバイクに乗れる国。無免許で色々と出来る国。自由の国。懐かしいなぁ。旅行に行った時は色々したもんだ。射撃場で初めてリボルバー銃を撃ったり。ジェットスキーをフルスロットルで遊びまくったり。そういや、あの時はアクセル全開で曲がり損ねて落下して、速度の緩まったジェットスキーに頭ぶつけたなぁ。…………痛かった。てか、故郷がアメリカっていいな。俺なんか日本人だったから、将来なんてのは殆ど決められていたようなものだし。

 

 

 

「故郷……か」

「ぁ、アーサーの故郷はどんな所だ?髪の色や目の色でだいたい予想はつくが……どんな所なんだ?」

 

 

 

俺の故郷は日本だ。だけど、この世界の日本じゃなくて、遠いようで近い平行世界で、帰ろうとしても帰れない世界で。そう言えば、この世界の日本って無かったんじゃないかな。あんまり覚えてないや。

 

 

 

「俺に故郷なんてないよ」

「……え?」

「強いて言えば、あの場所か教団が故郷かな」

 

 

 

この世界で、俺が生まれた場所はない。生まれた場所はないが、長くいた場所は湖の畔か教団だ。と言っても、教団は最近帰ってないし湖にも行ってないから、俺って旅人?孤高の旅人ってカッコよくない?いや、カッコイイ。紅い弓兵みたいに、「フッ」って笑いながらあっちに行ったりこっちに行ったり。いやぁ、そういうのいいな。

 

 

 

「ヨーロッパ、楽しみだ」

「お前はコーヒーが飲みたいだけだろう?」

「はは、バレてる」

 

 

 

バレてーら。まぁ、コーヒーが好きなのは変わらないし美味いコーヒーあれば最高。ジェリーの淹れてくれるコーヒーも美味しいんだけど、やっぱり可愛い子が淹れてくれるコーヒーってのも中々に美味しい。

 

 

 

「ん、風が気持ちいいな」

「そうだな」

 

 

 

偶に潮風に当たってみると、新鮮でなかなか気持ちい物がある。アレだ、偶に教祖様が頂点の店に行ってポテトとか食べたら美味しい。そんな感覚。普段は塩ポテチしか食べない人がコンソメ食べた時の様な。俺はコンソメ好き。

 

 

 

「クドは、さ」

「ん?」

 

 

 

不思議そうに俺を見上げてくるクラウド。普段は垂らした前髪で隠している傷が、風によって見える。だけど、それも合わせてクラウドは素晴らしい女性だと思う。

 

 

 

「エクソシストじゃなかったら、どんな事をしていたの?」

「私は……そうだな。ラウと共に世界を周っていただろうな。エクソシストでも同じことだがな」

「世界を巡るってのはいいな」

「あぁ、世界は見て回る価値があるからな」

 

 

 

世界遺産とか、あの神聖な空気は行った者だけが味わえる雰囲気だ。こう、昔の人が作り上げた一種の芸術であり神聖なものだ。もしも神代の創り上げた遺産があれば間違いなく見に行く。どれだけ金がかかろうが見に行く。と言うよりも、見に行きたい。手元にソレがあるだけに。

 

 

 

「ペンドラゴン元帥、そろそろお時間です」

「わかった」

 

 

 

だだっ広い海の中心で何を言うんだと思うが、これが俺にとっては普通。いや、普通にしたくないんだけど、途中まで送ってくれって言った手前、ここが譲歩できる限界らしい。肉眼では見えるわけないが、地図上では近いらしい。らしいと言うのは、俺自身が地図を確認してなくて、方位磁石だけで進もうとしているからだ。海上で地図なんていらないし。船みたいに潮に流されたりしないし。

 

 

 

「それじゃ、クド。また会おう」

「あぁ、また会おうアーサー」

「キキッ」

 

 

 

微笑むクラウドに手を振り、海に飛び込んだ。




具体的に違う所を言えば、にじファンは過去話で、これが現在の彼ですね。

アーサー「それにしても、ずいぶんと可愛らしい声で鳴くのだな」
神父「ずいぶんとまぁ、可愛らしい声をあげて苦しむのだねお嬢ちゃん。そんな程度ではおまえ達
は死ねんよ」

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