D.GrayMan~聖剣使いのエクソシスト~ 作:ファイター
ホームにて超小型飛行級BETAを確認した!数は不明!
あっぶねぇ!もう少しで吸われるところだ!
HQ!渦巻き型の煙を出す兵器が必要だ!急げ急げ急げ!もたもたしてると全滅しちまう!
大運動会とも言えるであろう模擬戦を数十と繰り返したころには、リナリーとアレンは汗だくで服が体にへばり付き大変だった。リナリーはスレンダーな体型で、アレンは着やせするタイプというかサラシを巻いているというか。しかし、あのリナリーの蹴りは駄目だ。骨が軋む。しかもハーフパンツみたいな物を履いてるから、色々と駄目だ。中身が見えます。もう一回やろう?とか、もう誘っているとしか言えない。うっぷす。
手 は 出 せ な い ん だ け ど ね !!
「聞いていますか?ペンドラゴン元帥」
「……聞いてるよ?」
「なんで疑問形なんですか。はぁ、もう一度説明しますよ」
「ごめんね」
俺は今、コムイの執務室に居る。コムイの執務室は何時も散らかっている。机の上は最低限の執務が出来るだけのスペースはあるが、広い部屋の中は紙束で埋め尽くされている。分厚い本も積み重ねられていて今にも崩れそうだ。そんな部屋で、俺はコムイと向かい合って座っていた。ゆったりとソファーに座りながら、渡された手紙を見る。差出人は、教皇だ。内容は、中央庁に取り敢えず来いとの事。一体なんだと言うのだろうか。この前はクロスが呼ばれていたし、その前はフロアさんが呼ばれていた。あぁ、この前の時に聞いておくべきだったかな。
「ペンドラゴン元帥には、中央庁に行ってもらった後は通常通り任務に着いて貰います」
「持っていくイノセンスは?」
「5つでどうかな」
「5つでいいのか?」
「はは。御冗談を」
その御冗談をってのは、お前には出来ないよハァ!みたいな感じなことなのか?いやまぁ、俺も致命傷――背骨を砕かれたり心臓を潰されれば――を負えばある程度、動く事も出来ない。だけど、まぁ少し前まで10近いイノセンスを持っていたから少しだけ悔しい気持ちがある。いいや。安心感の方が大きいかな。
サイドテーブルに置かれたコーヒーを啜る。もう一度、手紙を見る。やっぱり、教皇直筆で、しかも彼女だけが持てる指輪を使って。しかも中には葉巻が一本、入っていた。いい葉っパ使ってやがんなァ。ブルジョアーッつうのか?匂いで解る。クロスも偶に吸う程度の代物だ。俺も、稀に吸うくらい。自ら買おうとは思わないが、あれば吸う程度の認識だ。まぁ、あるのだから吸ってしまおう。
コムイに許可を貰い、葉巻に火を点けた。甘く、上品な香りが執務室に漂う。やっぱり、いいなぁ。煙で輪を作りながら、そう思う。向こうに着いたら、何本が貰ってこようか。それもいいかもしれない。くれるだろうか。バカ高いワインか、一級品の剣か。うん、ワインでいいかな。確か部屋に何本かあった筈だ。
「ペンドラゴン元帥、出発は今から三時間後になりますので、そろそろ支度を初めてはどうでしょうか」
「……三時間後?」
「えぇ。先ほど言いましたんですけど、もしかして聞いていませんでした?」
「はっはっは」
「もう。お願いしますよ元帥」
まだ半分以上も残っている葉巻の火を消して、自室に戻ることにした。服装は何時もの団服で構わないのだけど、ワインを選ばなければならない。それに、彼女に会いに行くのに汚れた武装じゃ失礼にあたる。綺麗に磨き上げなければ。コムイに一礼して、執務室を後にした。
――アーサーの自室――
丁寧に置かれていた軽鎧を磨く。白銀に輝く鎧は、見るモノを魅了する不思議な魔力を持っていた。胸当て、手甲、脚甲。その全てがコムイが作ってくれたもので、その硬さと柔軟さは計り知れない。変態に技術を持たせた結果がこれだよ!と言いたくなるような性能だ。団服も、新しい物をクローゼットから取り出してベッドの上に置いてある。隅から隅まで鎧をピカピカに磨けば、次はホルスターに入ったコンテンダーの整備だ。バレルを外してバネを取り出して、中に溜まってある煤を綺麗に取り除く。コンテンダーの整備は比較的に簡単だ。
机の引き出しの中に入れてあったケースを取り出し、そこからライフル弾を一つ手に取った。普通の銃弾に比べて明らかにデカく異質なそれは、とても心を刺激します。本当にありがとうございました。コンテンダーも、単発式で中折れ式とか、心を擽りすぎてついつい詠唱してしまいそうになる。衝動を抑えながら、コンテンダーに装填。これでコンテンダーの整備は終わり。ホルスターにコンテンダーを入れてから、弾丸ベルトにも詰め込んでいく。持ち歩ける弾数は、装填済みの弾丸を含めて48発だ。これもまた、心を擽られる。ハッ、これはあれじゃないだろうか。心が躍る!というやつではないだろうか!?
「どこぞの征服王だよ」
部屋で一人、笑いながら装備の確認をして後は身に着ければ完了というところで手を止めた。まだ時間はあるから、そろそろワインを選ばなければならないからだ。椅子から立ち上がり、小さなワインセラーの扉を開けてどれにしようかと迷う。ただただ高いワインじゃ駄目だ。香り高く、味わい深く、高貴でなくては。
「……う~ん」
だからこそ、悩む。もういっそ、花束だけでいいんじゃないだろうか。意外性を突いてバイオネットなんてどうだろうか?……俺が斬られて死ぬか。彼女、人類側最強戦力の一角じゃないだろうか。それくらい強い。イノセンスも持っていないのに、本当に強いのだ。だけど、女性なのだから品物は慎重に選ばなければ男ではないだろう。とか考えつつ、もうどーでもいいやと思考の結果にお落ち着き、一番上にあった赤ワインを一本手に取り対ショック加工が施された筒に入れた。
「ふぅ。準備完了」
時計を見ると、出発までの時間は後1時間も残っていなかった。予想以上に、装備の整備とワイン選びに時間を取られていたようだ。教団の中で着ていた動きやすい服から着替える。中央庁に行くのだから、正装に着替えなければならないとか、そんな所は無い。俺たちエクソシストにとって、団服こそが正装であり聖装なのだ。とか言ってるけど、聖装ってのはへブラスカに聞いたこと。鎧を身に着け、その上から団服を着れば準備は出来る。だけど、それを終えてもまだ時間は40分以上もあった。だから、まだ残しておいた葉巻に火を点けた。甘い匂いが部屋に漂う。こればっかり吸っていたら普通の煙草は吸えなくなるんじゃないだろうか。
ふと、とある曲を思い出した。何時聞いても燃え上がる曲。所々忘れてしまったけれど。そもそも、あれだ。原作が熱い。プレイしていると、熱くて男泣きしてしまった。なんというのだろうか。日本人ならば、誰でも心の奥底にある日本を思う心を刺激されたというか。胸の奥から込み上げる感情に涙した。主人公が数多の苦難を乗り越え、ついに最終決戦の最後の場所に辿り着いたかと思えば、生き残りは僅か4人。突入した時の人数が、主人公を含め僅か8人。二人は敵に囲まれ自爆し、一人は無残に食い散らかされ、一人は道を切り開くために命を落とした。一人は、主人公が放った大出力砲撃で消滅した。そして、最後の一人は限界以上の力を使い人間として死んだ。そして主人公も、最後には世界から消えた。
「はは」
「どんだけ絶望してんの!?最終的に突入組が一人だけしか生き残ってないってどういうこと!?」とか説明して見せるけど、これエロゲなんだよね。R-18。まぁ、エロいというかグロでR-18になっちゃたんだよね。エロは本当におまけ。最近じゃ、エロシーンがおまけになってるだけ。というか、エロいのなくなったし。もう出来ないけどね!
こうしてゲームに思いを馳せていると、何時の間にか時間は集合時間の10分前となっていた。思いは馳せていない。ただの妄想だ。あの絶望的な世界にオリジナルキャラを入れて、世界を楽しむ。チートは余り好きじゃないから、生まれだけ上流階級ってことにして記憶もそのままがいいな。ただしXM-3は無し。どこまでも絶望で往こう。その世界を戦った衛士として描こうと思う。こういう妄想って本当に楽しいよね。
座っていた椅子から立ち上がり、コートを着て地下に向かった。そこが旅の始まりであるからだ。エレベーターを使い、途中で寄り道をしながらも地下の用水路に辿り着くと、そこには既にコムイとリナリーがいた。どうしてリナリー?
「時間通りですね、ペンドラゴン元帥」
「遅れたら彼女に何て言われるかわからないからな」
「ははは。そういう事なら、船でこれを読んでおいて下さい。予定表です」
「ありがとう」
コムイからメモ用紙を貰い受け、それをポケットにしまい込む。ふとリナリーを見ると、胸に抱きしめた風呂敷を前に出した。なんで風呂敷?と疑問に思うが、その後に漂ってきた甘い匂いに頬が緩む。
「これ、私が作ったの。船で食べてね」
「うん。ありがとう」
少し照れながらも、笑顔で手渡ししてくれた。ええ子やリナリー。こういうことが出来る女の子って本当にいいよね。こんな嫁さん欲しいね。こう、何て言うのかな。夫婦になったらきっと、色々な意味で素晴らしい嫁さんになるんだろうな。
「じゃあ、行ってくるよ」
「行ってらっしゃいませ、ペンドラゴン元帥」
「行ってらっしゃい、アーサー」
コムイが頭を下げ、リナリーひらひらと手を振りながら、送ってくれる。それに二人が見えなくなるまで応え続けた。
早速だけど、食べようかな。
とある主題歌の部分を改正いたしました。
興味のある方は原作をプレイする、又は動画サイトで聴いてください。いい曲です。