D.GrayMan~聖剣使いのエクソシスト~   作:ファイター

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忙しすぎるでござる!忙しすぎるでござるぅ!!


中央庁

 

 

 

 

――バチカン・とある執務室にて――

 

 

 

黒の教団から数日。船から馬車から汽車、時には徒歩で進みバチカンに入国したアーサー・ペンドラゴンは今、ソファーに座っていた。ようやく一息つけたといった感じだ。部屋には、窓から射しこんでくる太陽の光で眩しいくらいに文字通り輝いている。磨き上げられた机とか、金や銀で装飾された様々な家具が。いや、ここは公的な執務室な筈なんだけどこの部屋の主が好き勝手やって私室にしてしまっている状態だ。甘い匂いが漂っている。俺が吸っていた葉巻と同じ匂いだ。

 

 

 

その出所は俺の口元と、執務用の机と同等クラスの椅子に座ったインテグラルの口元だ。インテグラに、ここに来て10ダース程、貰ったのだ。何と言うか、よくしてもらってる。そうそう会う事の出来ない役職同士ではあるが、会えばその度に一緒に食事をしたり酒を飲んだりで会話を楽しんでいる。褐色の肌と金髪と青い瞳。豊かに育ったナイスバディの持ち主である。因みに、彼女のフルネームはサー・インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングである。長い。長い上に委縮してしまいそうになる名前だ。これ、雌豚とか言ったら彼が出てきたりするのだろうか。

 

 

 

「久しぶり、インテグラ」

「遠路遥々ご苦労だったな、アーサー」

「いや、そうでもなかったかな」

「謙遜か?似合わんな」

「ははは。あ、これどうぞ」

「む、ワインか。ありがとう」

 

 

 

彼女の手元が止まったのを見て、ソファーから立ち上がりワインを渡した。インテグラがワインに気を取られている内に書類を盗み見ると、なにやら予算関連の物の様だ。なになに……ヘリコプター?この時代に、そんな代物があるわけがない。とか言いきれない。主にコムイが原因で。コムイの頭の中は数世紀先を行っている。なんであんなにスムーズに動くロボット作れるんだよ。なんでバイク作れるんだよ。ロボットが作れたらヘリコプターも作れるだろうよ。簡単に。

 

 

 

「このワイン、なかなかの代物だな。だいたい100年程前の物か」

「ワインセラーの中で見つけたんだ」

「嬉しいよ、ありがとう」

「こちらこそ、こんなに貰ったからね」

 

 

 

ワインをケースから取り出し色んな角度から見てる。それでわかるのか。ていうか、100年前って凄いんじゃないのか?きっと美味いんだろうなぁ。あのワインセラー、元から部屋にあった物だから自由に使っていたけど実は物凄く価値があるものかもしれない。帰ったら調べてみよう。うん。これが終わったら一度、帰ろう。黙って帰れば問題ないだろうし。飲みたいし、食べたい。

 

 

 

「おい、考えてることが顔に出てるぞ」

「うん?」

「確か、そこの棚にサンドイッチがあった筈だ」

 

 

 

インテグラの指が近くにあった棚を指さす。そこにはサンドイッチとケーキがおいてあった。

 

 

 

「これを飲みながら話をしたい所なんだが、煩い奴らからの要請でな。これからイギリスに行かなければいけなくなった」

「イギリスに?」

「なんだ、意外か?これでも私は外交官だぞ」

「バカな!?」

「なんだそれは!?」

「いやぁ」

「意味が解らん!まったく、お前は変わらんな」

 

 

 

インテグラの突っ込みは、彼女を知る者が見れば驚愕の表情を思い浮かべるだろう。彼女の交友関係は、主に上流階級の人間が多い。普段はお淑やかであり、時には不遜である。故に、この様な砕けた態度を取るのは本当に限られた一握りの人間だけだった。そんな彼女がこんな姿を見せてくれるのは、正直に言ってなかなかに嬉しい。

 

 

 

「また会おう、アーサー」

「ん……わかった。それじゃあ、インテグラル」

 

 

 

インテグラに一礼してから執務室から出ていくとき、気になることを彼女は言った。この時、少しは考えたらよかったんだ。あの娘がここにいない理由を。彼女の能力を。

 

 

 

「あぁ、サーシャはもう先に行ってるぞ」

 

 

 

――バチカン市国・大図書館――

 

 

 

 

 

インテグラと別れ、俺はバチカンにある大図書館に来ていた。古い時代の本が眠っていたりするから、ついつい読んでしまう。昔の本で、しかも原本で歴史書だったりしたら忠実に書かれていたりするから面白い。あの時代の歴史書とはなんだったんだと言いたくなるような事が書いてあったりするのだ。この前に来た時なんて、英雄クー・フーリンの愛槍ゲイ・ボルグは一本だけではなく、他にも数本あったらしい。そんな本を見つけてしまい、ついつい「兄貴ェ」と声を出してしまったのも仕方のないだろう。

 

 

 

この大図書館は、数十にも及ぶ巨大な本棚が設置されており棚の中には勿論ぎっしりと本が収められている。小説、学術書、歴史書、兵法書等々と色々なジャンルの本が置かれていた。その区画とは別に、本を読む為のベンチや長机、普通の椅子などが置かれている。

 

 

 

前に来た通り、何冊か面白そうな本を手に取って席に座ったのはいいんだけど、見られてる気がするんだ。でもまぁ、何もしてこなさそうだし放っておいても大丈夫かな。そう考えて、窓の外を見ると太陽はまだ真上を通過したくらいだった。

 

 

 

 

――同所・???――

 

 

 

数メートル離れた先で、一人の男が本を読んでいた。その姿は、まるで本の中から出てきた登場人物の様で見る者を魅了するものだ。それくらいの魅力がありながら、それでいて近寄りがたい雰囲気を持つ人間。彼の名前は、アーサー・ペンドラゴン。黒の教団において戦闘集団であるエクソシストの頂点に立つ人間の一人だ。その中でも戦闘能力はトップクラスで判断能力も高く、政治の真似事も出来る注意すべき人間だった。現に、彼は幾らかの大物貴族や他国の大臣とのコネクションを有している。

 

 

 

「……?」

「(感づかれたか?)」

 

 

 

ペンドラゴンが一瞬だけ視線をこちらに向けて、直ぐに逸らした。流石は元帥。その危機察知能力と探知能力は侮れない。流石に監視は気付かれている、か。いや、だとしたら何故、私を排除しない?彼ならば簡単に出来るだろう。私の様な監査官など、本職の元帥が攻撃を始めれば瞬殺されてしまう。ならば、なぜ?…………。

 

 

 

取るに足らない存在だとでも言いたいのか、私を。私達を。異常な戦闘能力を持つ部隊を有し、優秀な捜査官と人事権を持つ中央庁を敵ではないと、そう言いたいのか?あぁ、確かにそうだろう。如何に人事権を持っていようが最大戦力の一角である元帥をどうこうしようなど、誰も納得するわけがない。捜査官?彼はエクソシストだ。多少の犯罪は許される。であれば、鴉か?これもないだろう。アーサー・ペンドラゴンと言えば近接戦闘だけに限定すれば勝てる物など存在しない。

 

 

 

――何を考えているのか、全く解らない。

 

 

 

そもそも、彼はどこの指揮系統に属しているのだろうか。通常なら黒の教団本部室長、コムイ・リーか?いや、どうだろうか。元帥の任務は適合者を探すことだ。イノセンスを多数所持する為に危険度が数段跳ね上がる。元帥だからこそ任される任務だ。だが、これまでの彼の行動を見ていれば疑問に思う。我々の目を欺くためにやっている可能性がある。過去に、一度だけ追跡を振り切られた事がある。と言うよりも、いきなり目の前から消失したのだ。北半球に居た筈なのに、南半球にいたという目撃情報が上層部に上がってきた。

 

 

 

再びアーサー・ペンドラゴンを見ると、何やら女性と楽しげに話していた。相手は、ここの職員である妙齢の女性だ。そう、資料に書いてある。にしても、だ。いい。少し釣り目で、メガネをかけている。金色の髪を簡単に纏めているだけだが、制服を見事に着こなした女性は凛とした佇まいが妙に艶めかしい雰囲気を醸し出していた。その女性と楽しげに話すなど、羨ま……。けしからん。暫くして、その女性が立ち去りまたページを捲り始めた。だが、その女性は再び戻ってきた。手に二つの白いカップとポット、そして何かお菓子を持って。

 

 

 

――これは、ある意味で人類の半分を敵に回しているのではないだろうか?

 

 

 

対面に座った女性は、こちらからでは表情は窺えないが上機嫌なのだろうと分かる。体が揺れているし、控えめな笑い声が聞こえてくるからだ。だが、そこで彼と目が合ってしまった。

 

 

 

「……ッ!?」

 

 

 

今のは、確実に見られた。一瞬だった。本当に、一瞬アーサー・ペンドラゴンがこちらを見て紅茶を啜ったのだ。やはり、私程度の技量では無理だ。任務は失敗した。アーサー・ペンドラゴンがどこの指揮系統にあるのか、またはどのような極秘任務を請け負っているのかを知りたかったのだが、私の、中央庁が嗅ぎまわっている事を知られた事で限りなくソレは不可能になってしまった。長官。任務、失敗です。私程度ではアーサー・ペンドラゴンを探ることが出来ませんでした。彼の目的もわかりませんでしたし、高位の者との接触もありませんでした。

 

 

 

――――――

捕捉:アーサー・ペンドラゴンを観察するにあたって、それに用いられる時間は僅か21時間しかない

――――――

 

 

 

 




久しぶりです。
色々とあって更新遅れました。

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