D.GrayMan~聖剣使いのエクソシスト~ 作:ファイター
貴女の主砲は邪魔ではありませんので、むしろその主砲を外して夜戦してもいいのよ?
ビバ無課金←超重要
とある港町の宿
目の前でガツガツと6品目のメニュー、餡かけチャーハンを食べているアーサーとその隣でリスの様に口を動かしながら可愛らしく4品目のメニュー、ピザを食べているサーシャの二人を見て神田とマリの二人は呆れていた。凄まじい轟音をマリが捉え、二つ目の太陽が出来たと錯覚するまでの光量を見た神田がゴーレムを飛ばすと、そこには海上に立ったアーサー元帥が吐くサーシャの背中をさすっている異常な状況があった。そこから色々した後、宿でシャワーを浴びて服を新調して現在に至る。
「ユウ、マリ……助かった」
「……ありがとう」
漸く一息ついたのか、アーサー元帥とサーシャは俺とマリに礼を言った。
「いえ、元帥が御無事なのでしたらよいのです」
「おいマリ、それ以外にも言う事があるだろうが」
そう、二人とも無事なのは良いことだ。だが、そんな事は解りきっている。アーサー・ペンドラゴンが一緒に居て、サーシャ・シェスチナが傷つくことは万が一にもない。これは彼を信用しているのでも無く、信頼しているのでもなく、ソレが事実だからである。彼の剣技は異常だ。剛腕からなる一振りは高レベルのAKUMAを切り裂く。破壊力もありながら速さもあるが、そこにはしっかりとした剣技がある。決して型に嵌ることのない奇抜さも持っていて、偶にやる稽古では一度も勝てたことが無い。
一刀しか持ってないのに二刀持っていて手数で押せないとか、どういうことだ。一撃が重くて二刀でやっと防げるとか、どんだけバカ力なんだ。確実に右手で刀を持って振り切ったと思ったら、実は左手に刀を持ち代えてがら空きのわき腹にぶち込まれたりもしたな。刀と剣は違うけど、同じ剣士として純粋に尊敬できる相手だ。
手元にあるお茶を啜ると、隣に座るマリが本題に入った。
「アーサー元帥。教団より指令を預かっております。これを」
「ん」
アーサー元帥が茶色い封筒から取り出した二枚の紙には、それぞれ違う印が押してあった。一つは見覚えのあるコムイが使っているものだ。それを読んだアーサー元帥は目を細め、そして持っていた紙を破いた。そのまま何も言わずに二枚目の紙へ目を通す。こっちの印は…………どこの家紋のものだだ?はて、と首を傾げているとサーシャが珍しく口を開いた。
「……サー・インテグラル」
「サー?貴族なのか」
「知らないの?」
知らない。インテグラルなんて名前は聞いたこともない。というより、そっち側の権力には興味が無い。俺の目的は只一つだから。
「……そう。なら、フロアに聞いてみて」
「元帥に?」
それっきり、サーシャは黙ってしまった。と思えば身体をアーサー元帥に密着させて寝てしまった。あー、アーサー元帥の話じゃもう何日も海上だったか。子供だから、仕方ないか。そうしている内にもアーサー元帥は二枚目の、サー・インテグラルからの贈り物を読み終えていた。じっと目を閉じて、何かを考えているようだ。
ふと、視線を隣に移せばマリが冷や汗をかいていた。
神田とサーシャの会話を聞きながら、私――マリ――はアーサー元帥の心音を聞いていた。私は目が全く見えない代わりに音を聞き取る能力が常人の遥か上をいく。それは例え騒がしい宿の一角であっても人一人の心音を聞き取れる程度には耳がいい。それ故に、アーサー元帥がコムイ室長からの、教団からの指令を読み終えた時の怒りにも似た心音を聞いた。只一度、“ドクン”と。そしてソレを破り二枚目のサー・インテグラからの贈り物を読み終えた時の静かな心音が聞こえた時、やはりと思った。
アーサー・ペンドラゴン元帥は、騎士だ。誰が言おうと、その風貌と相まって騎士に見えるそうだ。実際に話してみれば、思慮深く目が不自由な私に親切にしてくれるし音を使った遊びも教えてくれた。それくらい、優しいのだ。恐らく、コムイ室長からの指令は教団への即刻帰還命令だろう。だが、破り捨てたと言う事は帰還命令を無視したと言う事。これからアーサー元帥はどうするのだろうか。
隣から視線を感じた。
「神田?」
「どうしたマリ」
神田に指摘され、初めて自分が冷や汗をかいている事を知った。知らず知らずに緊張していたみたいだ。私らしくもなく、身内に対して……。
「神田、マリ」
「どうした」
「こら神田。また元帥に向かってそんな言葉使いを」
たっぷりと間を開けてアーサー元帥が答えを出した。
「俺は帰らない。フロアはどこだ?」