D.GrayMan~聖剣使いのエクソシスト~   作:ファイター

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お久すぃぶりです。
色々とあって、更新が遅れてしまいました。


クロス・マリアン

 

 

 

煙草、とは非常に人体に有害な物質が多く含まれいている嗜好品である。だが、人々は煙草を吸う。それは、一種の快感といっても違いない。ヘビースモーカーの人は、一日に二箱も吸ったりする。四十本だ。あの西暦であれば一箱410円程度。高い。非常に高い。しかし、それでも吸いたいものは吸いたいのだ。まぁ、何が言いたいのかと言えば。

 

 

 

「煙草っていいよね」

 

 

 

ぷかぷかと輪っかを作りながら煙を吐く。とあるモノが体内にある俺としては、有害物質なんてモノはモーマンタイなのである。クロスみたいに時間があれば煙草を吸っている様な感じでは無くて、言うなれば吸いたいときに吸う。意識せずにそうやって吸っていれば数は増えないし、少ない方だ。

 

 

 

「まぁ、暇だよなぁ」

 

 

 

今回の任務。任務と言っても適合者を探すものなのだが、そう簡単に適合者が見つかるわけもなく適当に全世界を周りながら遭遇したAKUMAを殲滅する。ただ、持っているイノセンスに反応が無ければ俺は何も出来ないのであって、非常に暇なのである。

 

 

 

暇なら読書でもトランプでもしてろって?

いやいや、トランプは一人ではできないし、必要最低限の物しか持って歩けないから本なんて持ってない。元帥だからって、野宿は普通にある。一定の国であれば無償で宿に入れてくれたりするのだが、それは本当に一握りに過ぎない。

 

 

 

エクソシストには、サポーターとして一人か二人のファインダーが付き添う事になっている。が、元帥になれば話は別だ。その任務は、さっきも話したが適合者を探すことが主な任務だ。世界を周る為に、サポーターは足手まといなのだ。AKUMA側は、元帥を殺す為にLevel2以上のAKUMAを差し向ける。それも、一体だけではない。空を覆い隠す無数の数のAKUMA。一人でなら勝てる。だが、足手纏いが居ればどうだ。守らなければならない。教団側も、それがわかっているからファインダーを付けないのだ。元帥と普通のエクソシストの実力は、天と地ほどの差がある。シンクロ率、判断力、戦闘経験。

 

 

 

それが理由。

 

 

 

「さて、行こうか」

 

 

 

だから、元帥には高性能の通信機が支給されている。

 

 

 

『おい、誰かいるか?』

 

 

 

耳、ピアス型の通信機に声が入ってきた。聞き覚えのある声。

 

 

 

『アーサーだ』

『アーサー?あぁ、どこにいる?』

『宿の裏手』

『はぁ?まぁいい。今すぐこっちにこい』

『クロス、何かあったのか?』

『大ありだッ、クソ』

 

 

 

その時、空気が、大地が揺れた。そして、雲を突き破って伸びていく一条の光。

 

 

 

『手を貸そうか?』

『あぁ、頼むぜ』

『わかった。直ぐに向かう』

『速く頼む、ってデブがどうしてそんな速く動けるんだよッ!』

 

 

 

どうやら、クロスはデブと戦っているらしい。嫌だなぁ、と思いながら地面を踏みしめて駆けだした。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

そこは、緑豊かな森だったのだろう。木々が生い茂り、野生動物が生活し、緑の匂いが一杯に広がり、葉の間から太陽が差し込む。そんな幻想的な空間だったのだろう。だが、そんな面影は存在しない。最初から全て無かった。地面は抉れ、木々はへし折れ、ガスが立ち込める。まるで地獄の様な惨劇。それを、向かい合った二人が作り出していた。

 

 

 

一人は、ジャッジメントを油断なく構える、黒の教団元帥クロス・マリアン。

そして、もう一人は

 

 

 

巨大な大剣を余裕綽々で構える千年伯爵だ。その顔には笑みが刻まれている。

 

 

 

「チッ、しくったぜ」

「油断大敵ですよ~、クロス・マリアン」

 

 

 

口の中の血を吐きながら、自分の身体を確認する。初手。完全に不意打ちだったデブの必殺の一撃をギリギリで避けて受けた肩の傷。今も溢れ出る血に、容赦なく体力と集中力を奪われている。左手の感覚はもうない。むしろ、左腕がある方が邪魔なくらいだ。むしろ、それよりもマズイのが弾だ。

 

 

 

「会うのは何年ぶりでしょうね~」

「ハッ、デブに会った日なんて日記に書いてねェ」

「まるで我輩とよく会っている様な口ぶりですねぇ~」

「どォだろうな」

 

 

 

マリアは、とある事情で使用不可。隠れる事なんて出来ない。いや、隠れたとしても辺り一帯を吹き飛ばされるだけだ。チッ、速く来やがれアーサー。

 

 

 

「行きますよォ~」

「クソッたれが!」

 

 

 

伯爵が飛び出しきた。

引き金を引く。

 

 

 

残弾、残り三発。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

木々が自分を避けている。なんてことはなく、そう錯覚してしまうほどに加速しているだけの話。細い木ならば斬って進む。踏んだ土には足跡がくっきりと残る。足音もズドズドとした、まるでバーサーカーが走っているかの様な足音だ。いや、バーサーカーなら木を斬るなんてことはせずにそのまま突進するんだろうけどね?俺にはそんな耐久力ないし。

 

 

 

『ぶえッくしょん!』

『余裕ですねぇ~?』

『ハッ、俺は死なねェ』

 

 

 

 

聞こえてくる声は、いつも通りの余裕のクロスの声。いや、普段は言わない言葉を使ってるだけだから余裕がないのはわかっている。けど、くしゃみするなんて本当に余裕だな。音が近くなってくる。もう少しで着くぞ、クロス。

 

 

 

目の前に迫ってきた木を切り裂く。それと同時に飛んできた白いナニかを蹴り飛ばした。クロスが見えた。向こうもこちらに近づいていたみたいだ。煙草に火を点け、空薬莢を排出している。

 

 

 

「よォ、コンボが決まったな」

「え?」

 

 

 

クロスが指差したその先には、上下が反対になって頭を摩っている伯爵だった。蹴り飛ばした白いナニかの正体は千年伯爵だった。

 

 

 

千年伯爵。

 

 

 

千年伯爵?

 

 

 

「千年伯爵?」

「あぁ、あのデブ。いきなり襲ってきやがったぜクソ」

 

 

 

いやいやいや。一人で戦ってたのかクロス。流石の戦闘能力だ。感服する。

 

 

 

「ちょっと治してくれ」

「あ、わかった」

 

 

 

大きな傷が肩に一つ。小さな傷が無数に。

 

 

 

「いやぁ、弾が切れてな。ハーッハッハッハッハ!」

「それで戦ってたのかお前……」

 

 

 

敵を一歩も近寄らせないのがクロスの戦闘スタイルなのに、銃弾もなく戦い続けるなんて。

俺なら逃げ出す状況だ。クロスすげェ。

 

 

 

 

「いやぁ、この状況はマズいですねぇ」

「チッ」

「うわぁ」

 

 

 

服に着いた埃を払いながら大剣を傘に戻した。どういうつもりだ?

 

 

 

 

「元帥、それも最強クラスの二人とは正直キツいので、ここは引かせてもらいます」

「さっさと帰れデブ」

「いやいや、貴方なら何とかなりそうだったんですがねぇ?」

「ハッ、もう肩も治ったからな!無敵だぜ?」

 

 

 

最強クラスって俺の事?ねぇねぇ、俺の事なの?

 

 

 

「クロス・マリアン、アーサー・ペンドラゴン。では、またの機会に」

「死ね、クソデブ」

 

 

 

ちょっ、そこで無視して消えないでくれる?ねぇ、AKUMAの出現率が他の元帥とは違うのは最強って勘違いされてるからなのか?止めてー!俺、死んじゃうからやめてー!

 

 

 

「俺は違うぞ」

「おい、俺は疲れてんだからいいだろ」

 

 

 

……えー?なんで呆れ顔止めるんですかクロス。俺、死んじゃうんだけど。

 

 

 

「よっし、飲みにいくぞ!」

「あぁ、もう。好きにして」

 

 

 

肩を組んで進んでいくクロスに、俺は無抵抗で街に戻って行った。




勘違い発動。別の視点で書けばもっとわかりやすいのでしょうね。ですが、書いたとしても短すぎました。さぁ、思い浮かべてください。クロスが「おい、俺は疲れてんだからいいだろ」と言った理由を。そして、ニヤニヤしてください。私はニヤニヤしました。

ではでは、またの機会に。

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