D.GrayMan~聖剣使いのエクソシスト~ 作:ファイター
このー木なんの木気になる気になる♪
とかなんとか歌っていたら木に襲われたでござる。
ちょっ
「流石ハ元帥!この私の擬態に気付き尚且つ死角からの攻撃を完全に防ぐとハ何という戦闘能力!」
「Level3と2か」
「お前がまだこの地区にいルことは伯爵様から聞いていル。故にAKUMAの軍勢がここに集結しつつあ
ル」
「……」
うっそぉ~?
取り敢えず、この状況の簡単な説明をしようか。クロスと別れてから二週間が過ぎて、本部まで一カ月程度の距離まで来ていた。なるべくAKUMAに遭遇しない様に大きな町を避けて列車や徒歩で移動していたのだ。この日は、食料が底をついたので最低限の食料を補給しに街に立ち寄ったのだ。そこでまぁ、妙な視線を感じていたのだが何時もの事と思いスルーして街を出たのだ。それが間違い。そこで気づくべきだったんだ。
汽車があれば、正規のルートを使って本部に帰るのだが汽車もなければ当然、徒歩になる。
なるべく早く本部に着きたかったから、真っ直ぐ移動していた。川も飛び越え、森も突っ切る。
一人は寂しい。と言うか、一人の時じゃないと出来ない事を移動中にしようと思いつくことがある。
歌を大声で歌ったりする時なんかスッキリする。偶にリボルバー式の銃をホルスターから早く取り出して構えたりする時なんか、思わずニヤリと笑ってしまう。コンテンダーを撃って、弾を抜いて装填する時なんか、もう最高に幸せだね!
黒いスーツ着て、黒いコート着て、胸から取り出すコンテンダー。あぁ、もう最高。
……。現実逃避はそろそろ止めようか。まぁ、簡単に言えば街を出て森に入って昔懐かしの歌を歌っていたらAKUMAと遭遇したでござる。ござる。
「厄介な」
「その一言ですませますか」
「我々では元帥を足止めすルことは出来ても殺すことは出来ない」
Level3とLevel2。二体程度ならどうにでもなる。近づいて斬ればいい。アーサー・ペンドラゴン。
突貫します!
一歩でLevel3の懐に飛び込、一閃。驚く声を上げる暇もなくLevel3は真っ二つになり地面に倒れた。弱い。Level3なら特殊能力もさることながら近接戦闘も並みのエクソシストを殺すことは出来る筈なのに。何しに来たんだこいつ。
「あと一体」
「強いですねぇ。流石はアーサー・ペンドラゴン元帥」
何だ、このLevel2の余裕は。エクスカリバーを上段に構え、Level2の間合いに入り再び一閃。爆散した。……本当に何なんだ?このAKUMA二体は一体何をしに来たんだ。まぁ、あっさりと倒れたのはありがたいことだ。こいつらの話だとAKUMAの軍勢が俺の所に向かっているみたいだから逃げるとしよう。
エクスカリバーに着いた血糊を払い、この場を離脱しようとした時だった。酷く、AKUMAのガスが充満しているこの場に相応しくない少女の甲高い声が聞こえた。
「はろー、アーサー。元気ー?」
「あぁ、元気だ」
「あ、やっぱり?何時もより調子よさそうだもんね」
「…………」
声のした方に振り向くと、先に小さなカボチャを着けた傘を広げて、黒いドレスを着た令嬢が楽しそうに立っていた。黒い褐色の肌に似合っている黒いドレスは、上流階層の貴族が着ているような見るからに高価なものだ。だが、それが恐ろしく似合っていた。頭に着けた白いカチューシャがヒラヒラと揺れた。
「あれ、また黙っちゃうの?この前みたいにお話しようよ~」
「ロード」
「何?」
「ロードたま!エクソシストなんかと喋っちゃ駄目レロ!」
「えー、いいじゃん別に。アーサーは私の能力も知ってるみたいだし、私が死なないのも知ってるしー」
「それでも駄目レロ!」
「えー……」
小首を傾げてレロと喋る。普通の女の子なら可愛い仕草だ。だが、彼女は普通ではない。
驚異的な回復能力を持ち、とある資格を有したAKUMAとは別の存在。人間の上位種族とも言っていい、エクソシストの敵。ノアの一族。なのだが、突進してきた。胸に軽い衝撃。
「また宿題手伝ってよアーサー」
「ロートたま!駄目だって言ってるのにー!」
「とっ」
仔犬の様にじゃれてくるロードの頭を、思わず撫でてしまう。これがAKUMAであったり男ならば迷わず切り捨てる所だ。和む。滅茶苦茶、和む。もうこのまま和んでいたい。けど、コーヒーとか煙草とかが合ったほうがいいかな。後、適度に美味い酒。あれ、俺って結構ダメ人間じゃない?
「もう、レロは煩いなぁ~。でも、それではお一人様ごあんな~い」
「ああああああ!!」
「ちょ……」
足元に数字が浮かび上がったと思ったら、景色が一変した。森に居た筈なのに、いきなり部屋に放り込まれた。不思議な感覚。けれでも、一回目ではない。とは言え驚いたのは本当。
なかなか広い一部屋。そこには机とソファー。そして大量のお菓子が置いてあった。窓から見える景色は空だけ。扉は一つもない。
ここまで状況に付いていけていなかった頭が、ようやく回転し始め決断を下した。
か・ん・き・ん・さ・れ・た
「さ、座って~」
「もうしらないレロ」
レロを傘入れに入れたロードが席に座った。右を見て、お菓子。左を見て、お菓子。後ろを見て壁。もう何もすることもなく、いや、何もできない状況に追い詰められてしまい俺も席に座った。丁度、ロードの対面に座り置いてあったコーヒーメーカーのスイッチを入れた。溜め息が出る。なんだこの状況。
「ねぇ、アーサー。お菓子上げるから……って食べてるよもう」
「……ん?」
袋に入ったチョコレートを口に入れて、マグカップにコーヒを入れる。もうここまで来たのだ。
来てしまったのだ。楽しまなければ損とういものだ。
「これ、手伝って。明後日までに提出しなきゃなんないの」
「算数か……。タバコ吸っていい?」
「国語も手伝ってね」
「わかった」
正面に座り真面目に私の宿題を見てくれているアーサーは、不思議な男だった。その戦闘能力は正に最強。Level3の軍勢が相手であっても光の極光で一撃の下で屠りさる。その判断力は我々の遥か先を読んでいる様に肝心なところで邪魔される。今日だってそうだ。あのLevel3の能力で私の気配は確実に消えて居た筈なのに、私に気が付いていた。
だけれど、こうして接していると本当に優しい。私が、喉を乾いた素振りを見せると彼はカバンからジュースを取り出してくれた。こういうちょっとした思いやりがモテる理由なんだと思う。基本的に彼の表情は硬い。そんな彼が時折見せる笑み。これが堪らないっていう女性は数多く見てきた。
「ん、どうかしたのか?」
「ううん。あ、ここ教えてよ」
「これは――」
危ない。じっと見ていたのを気づかれたかと思った。割とどうでもいい場所を教えてもらい、鉛筆を手に取りノートを書く。あぁ、もう面倒だなぁ。また、アーサーを盗み見る。彼はコーヒーを飲みながら国語の教科書を読んでいた。何か面白いモノなんてあっただろうか?アーサーがページを捲り、一瞬だけ挿絵を見ることが出来た。それは、とある国王の話だった。そこらへんに転がっていそうな、普遍的なお伽噺。何百年もの間、王を務めていた男は側近に裏切られた。そして、その側近は王を殺した。王が存在しなければ国は亡びる。側近が仕掛けてきた戦争により国力も落ちていたのもあるのだろうが、王がいなくなったというのが一番の理由だろう。
だから、だろうか。
そのお伽噺を読んでいるアーサーの表情は懐かしい物を見るように。そして、どこか悲しげだった。
あぁ、そっか、そうだよねアーサー。
「ねぇ、アーサー」
「ん?」
綺麗な碧色の瞳に思わず呑み込まれてしまいそうになる。だけど、今は何も映していない。
目の前に居る私も。何も映していない。
「やっぱり、あの頃に戻りたい?」
「あの頃?」
「うん。昔々の、伯爵も知らない時間に」
「あぁ、それはいいな。安心できそうだ」
「……なら「だけど」」
だんだんと瞳に光が戻ってきた。綺麗な光が戻ってきた。もう、時間かな。
「過去は変えてはいけない。そこまで尽くしてきた努力が無駄になってしまう」
「そう。アーサーは強いね」
「はは。コーヒー美味しかったよ」
「それ、ティキが何時も飲んでるやつ」
扉を創る。今度は足元じゃなくて壁に。行先は、黒の教団本部の近く。
「また、会おうね」
「あぁ、また会おう。それと、宿題頑張れよ」
「っ」
頭をくしゃくしゃと撫でられた。ビックリするなぁ~。
「じゃあな」
「ばいば~い」
アーサーが扉を開けて出て行った。私も、私の仕事をしなくちゃ。不貞寝していたレロを叩き起こしてゲートを開いた。行先は、箱舟。じゃあね、アーサー。また会おうね。
ロートたまprpr