D.GrayMan~聖剣使いのエクソシスト~   作:ファイター

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忙しすぎるでござる。忙しすぎるでござる!
休みたい


第八話

 

 

 

久々にホームに帰ってきた。暗い水路をゆっくりと船で移動して教団の中に入ると、まずは自室に向かった。何でホームでも鎧を着んといかんのだ。という考えの元、自室で鎧を脱いで動きやすいゆったりとした服に着替えた。ポーチには、クロスから預かったイノセンスが入っていている。本来ならば、エクソシストがホームに帰ってきたら誰かが必ず出迎えてくれるんだけど、連絡もゴーレムも無かったから出迎えもなし。あれ、少し寂しいな。一人は、寂しいもんな。うん。教団内を歩いていたって、話しかけてくる人はいない。あれ、もしかしてボッチとか?

 

 

 

自室から歩く事数分で目的の場所に着いた。食堂だ。昼時だから食堂には人がたくさんいる。勿論、楽しい食事の時間だしコーヒーを飲んで一息つくのもいいだろう。食堂の中は様々な職員達が話に華を咲かせていた。

 

 

 

だが、その会話に俺が参加することは無い。違うか。参加しないのだ。理由は簡単。話に入ったとしても必ず皆が敬語になるし、気を遣われる。そんなの、昼休みにやらせたくもないしされても嬉しくない。それに、俺と同期の人間は極端に少ない。同僚は20人はいるのだが、それでも階級が違うだけで遠目に見られたりする。

 

 

 

たまたま職員が少ない窓口に辿り着くと、イイ匂いが腹の虫を鳴らした。

 

 

 

「あら、アーサー元帥じゃないの!」

「やぁ、久しぶり」

「本当に久しぶりねぇ。何時の間に帰ってきたの?」

「ついさっき帰ってきたばっかり」

「あらん。アタシが知らないなんて、もしかして誰も出迎えてくれなかったのん?」

「まぁ、ゴーレムも無かったからな」

 

 

 

普通ならゴーレムの一体や二体はぱたぱたと飛んでいる筈なのに、今日は飛んでいなかった。別に非常事態という状況でもないのは職員たちを見ればわかる。和気藹々としていて、目の下に隈を作ってコーヒーを啜りながら書類に追われている。うん。科学班はいつも通りだ。

 

 

 

「はいメニュー」

 

 

 

差し出されたメニューを開き、目を通して行く。えーっと、どれだけ持てるかな?

いやいや、取り敢えず少し食べてから行こう。メニューの一ページ目を、上から下にかけてなぞった。あ、チョコレートパフェある。これも追加。ん?寿司もあるじゃないか!蕎麦もあるだと!?これも追加だ!!

 

 

 

「ここから、ここまで」

「あら~、ですよねー」

「んじゃ、あそこで待ってるから」

「わかったわん」

 

 

 

数十分後。アーサーの食べた残骸だけが一つのテーブルを占領していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラカラと、大量の食糧が詰め込まれたカートを押してとあるフロアに来ていた。ここまでは、エレベーターで降りてきた。そう、降りてきた。もう少し降りれば水路があるフロアになる。ここはへブラスカの間と呼ばれる、特別なフロアになっている。一般職員の立ち入りは禁止。エクソシストであろうと、コムイの許可が無ければ入る事が出来ない。じゃあ、俺はなぜ入ってもいいのか?それは、へブラスカが原因だ。

 

 

 

「おぉ……来たか…アーサー」

「また来たよへブラスカ」

 

 

 

質素な椅子に座り、押してきたカートの中からサンドイッチと珈琲を取り出した。そして、これまた質素なテーブルの上にはチェスが置かれてある。そう、これが立ち入り禁止のフロアに俺が入っていい理由。

 

 

 

「さぁ……やろう」

「また、俺が勝つよ」

 

 

 

へブラスカの話し相手とチェスの相手になる。それが条件として前室長が認め、へブラスカ自身も認めたのだ。だから時折、いや頻繁にここに訪れている。だって、喋る相手はいるけど忙しそうにしていて話しかけられない。

 

 

 

駒がボードをコツコツと鳴らす。それと咀嚼音。カートに積んであった食料はもう殆どが無くなっていた。食後のコーヒーに加えて、喉が渇くといけないからと持ってきた水はたっぷりとある。そんなアーサーを見ていたへブラスカは溜め息を吐いた。

 

 

 

 

「よく食べれるな…アーサー」

「んぐんぐ……まだ入る、かな」

「…チェック」

「……ぬ」

「チェック」

「く……」

「…チェック」

「……負けたよ」

 

 

 

へブラスカのクイーンとポーンが俺のキングを追い詰め逃げられない状況になった。詰んだ。もう逃げ切れない。途中までは追い詰めていたのだが、だんだんと盛り返されついに負けたのだ。久々にチェスで戦ったのだ。俺は、日々を世界を飛び回っているのだが、へブラスカはここに留まり暇な時間はひたすらにチェスやコムイとお喋りを繰り広げているのだ。仕方ないと言えば仕方ないのだが、これでも男の子だ。悔しい。悔しいけど、チェスは一日一回だけと決めた。だから再戦は明日だ。

 

 

 

「…久々に勝った」

「もう俺より強いんじゃないか?」

「コムイに……勝てるヤツが言う…台詞ではないな」

「あれは偶々だよ」

「むん…」

 

 

 

可愛らしい効果音が付きそうなくらい、小さな衝撃が頭を襲った。青白い手が頭をはたいたのだ。何と言うか、図体に合わない攻撃は非常に可愛く見えてしまうだけに吹いてしまった。それが面白くないのか、へブラスカは幾つもの触手を操り四方八方からの攻撃を繰り出した。

 

 

 

「ちょ、コーヒー零れる」

「…ふん…………ん?」

「んー?」

 

 

 

まるで猫パンチを受けているみたいな感触に萌えながら上から聞こえてきた声に目を向けた。エレベーターの上からコムイがこちらを覗き込んでいたのだ。なんの用だろうか?

 

 

 

「少し…待っててくれ」

「おう」

 

 

 

へブラスカが立ち上がった。それだけで見上げる程の高さがあったのに、へブラスカはそこにいた。やることが無くなってしまった。ポケットから煙草を取り出し火を点ける。もう一度、上を見るとコムイが手を振ってきた。それを適当に返しながら、時計を見るとそろそろ消灯時間に近かった。

 

 

 

「すまんな…今日は……ここまでだ」

「わかった。また明日な、へブラスカ」

「あぁ」

 

 

 

食い散らかしたものを片付けながら上を見ると、そこには!

触手に弄ばれているアレンがいた!!

 

 

 

 

「はぁ?……あぁ?」

 

 

 

あぁ、そうか。もうそんな時期か。アレンの入団。それは、原作が始まることを意味している。ここから先は色々なことが起きる。なかなかハードなものだが、それでも今は目の前のアレンを見ておこう。こういったシーンにはなかなか見ることが出来ない。眼福物だといっておこう。

 

 

 

へブラスカ!?それは流石に不味いんじゃないのか?アレンのボタンが外れて胸が露わになって、真っ白な膨らみと桜色の突起物が見えてしまっているぞ!?

いいのか?いいのかー。アレンが女でもいいのかー。そーなのかー。

 

 

 

 

その後、自室に戻ってからアーサーが自己嫌悪したのは当たり前の話。




アーサーに話しかけないのは、職員の皆が近寄りずらい雰囲気を出しているからだと思います。
ほら、ぼっちな人間に話しかけるのはぼっちな人間でしょ?
え、そんなことはない?
そーなのかー。

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