問題児たちが異世界から来るそうですよ?箱庭超コラボ〜Chaos〜   作:エステバリス

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今、箱庭に吹く風(ロリコン)の勇気と奇跡の歌い手(ヘタレ)の理性が試される刻……!




十一限目 奏が女を連れてるぞ!殺せ!!

 

その日、竜堂 明は夢を見た。とても心地のいい夢だ。

 

どんな夢なのかは、夢特有の曖昧さで心地良さの原因すら忘れてしまいそうになってしまう。

 

顔もわからない、全体図は?と問われてもなんとなくでしか返せないくらいに曖昧だ。

 

……だが、その人物がどのような人物なのかは不思議とすぐわかる。その人物を見るだけで心が舞い上がってしまう。

 

そう───何故ならそれは、その人物は顔がわからずとも小さな身体とあどけなさの残る喋り方から幼女であることは間違いないのだから───!!

 

◆◇◆

 

「……ハッ。俺はいったいなんの夢を見ていたんだ……すげぇ、幸せな夢だった気が……クソッ、なんでこういうのに限って思い出せねぇんだ!」

 

日曜の朝、本気で悔しがる明。側から見ればとても残念と思われるが、明自身理解していないがっかりしている理由がわかれば残念の意味が180℃変わるのは目に見えている。

 

「……夢、夢……もっかい寝るか」

 

もっかい寝る、と言って明は布団に包まる。だが彼は忘れていたのだ。今日は日曜は日曜でも、学園祭の日であることを。

 

そしてこの布団に包まる行為こそが、明の未来を変えたのだった。

 

◆◇◆

 

「truthのライブチケットチケットはいらんかねー、SS席は6,000円、なんとP◯2のソフト希望小売価格と同じという超優しいお値段。安いよ安いよ〜」

 

超やる気無さそうな声でチケット販売に勤しむのは一輝。生徒会はライブが始まるまではチケット販売を仕事にしている。

 

「S席一つください」

 

「3627円でーす」

 

「税込み!?」

 

「冗談でーす」

 

そんなこんなやってても一輝の売り上げは100,000円を越している。truth恐るべし。

 

「……ああ、めんどくせぇ。これの仕事なんて3人に投げときゃ美少女3人組ってことでもっと売り上げ伸びるだろうに……あーヤダヤダ。なんで会長の俺まで付き合わされるのかねぇ」

 

いやその理屈はおかしい。むしろ会長だからこそやるべきだろうに。

 

「俺を働かせたければそれ相応のなにかを用意するといい!」

 

くっ、ああ言えばこう言う……!

 

「……まあ、今回のライブは学園祭最大の収入源だとはわかってる。押し付けるヤツがいない限り働くしかないという事か」

 

めんどくせー、と今日何度目かの愚痴。かくして一輝は超嫌々ながらも自分の仕事に戻っていったのだった。

 

◆◇◆

 

そして時は少し遡る。校門の前ではいつもの制服とは違い、コンサート用に自分で見繕った衣服を身に纏った奏は少々そわそわしていた。勿論校門なんて場所にいる以上変な騒ぎを避けるために奏は変装用メガネを着用している。それでも衣服が一般客とも生徒とも特殊なものを着ているため多少注目はされているのだが。

 

「……あ、来た」

 

ぽつり、と奏が呟く。彼の視線の先にはあまり似ているとは言えない二人の少女がいた。

 

「待たせてすみません、奏」

 

「ううん、そんなに待ってないですし。来てくれて嬉しいよ、彩鳥さん」

 

二人の少女の片方、金髪を持つ彩鳥が奏に親しげな敬語を使って接してくる。

 

一応それなりに交流してはいるのだが、いかんせん二人共素で敬語を使うので少しよそよそしさを感じる。

 

「それで、そちらの方が……」

 

「久遠 飛鳥よ。貴方が奇跡の歌い手ね……妹から話は聞いてるし、妹がお世話になったわね」

 

「いえ、倒れている人を助けるのは人として当たり前ですから」

 

気にしないでください、と続ける。

 

そんな奏の様子を伺っていた飛鳥はふぅん、と呟いて彩鳥に向き直る。

 

「なかなかいい男性じゃない」

 

「……なぜ態々私の方に向き直ってそう言うのかしら」

 

彩鳥は奏に対して使うような敬語を飛鳥の前では使わなかった。いや、いくら財閥令嬢とはいえ今時の姉妹に話し方にまで差が出てくるのはおかしいとは思うが。

 

「あ……ところで、久遠……さん?」

 

「飛鳥で結構よ。彩鳥も名前で呼んでいるのにそれは差があるように感じるわ」

 

「そう、ですか。では飛鳥さん。質問ですけど……えと、もう一人、春日部さんはどちらに?」

 

「……あの子なら時間までには来ると思うわ。彼女、時間にルーズな上素の性格はとぼけているし、動物に好かれるから少し放っておくと猫や犬に全身包まれて元が誰なのか疑うわよ」

 

それでも時間は守るから問題ないと思うけど……と付け足す。奏はえー、となりながら気を取り直す。

 

「……そ、それじゃあ飛鳥さんは生徒会室で待っていてください。色々と騒がれると迷惑でしょうし……できれば、学園祭を楽しむのはライブが終わってからがこちらとしても嬉しいですし」

 

「そうね。流石にお邪魔させていただいている身としては騒ぎを起こすのはメディア的にも嬉しくないしね」

 

飛鳥は何故かニヤニヤとしながら承諾する。そんなことにゃ気づかなかった奏はこちらです、と飛鳥を誘導する。

 

「……なんでしょう、言いようのないムカムカがあります。あのお膳立ては万全、みたいな顔には特に」

 

彩鳥は口を三角にしながらぽつんと呟く。兎角、彩鳥は二人について行ったのだった。

 

◆◇◆

 

「姐御!姐御姐御姐御!!」

 

「なによロリコン、そんなに切羽詰まって。っていうかアンタ今日学園祭の早朝準備サボったでしょ。鈴蘭や昴達に話は聞いたわ」

 

奏の時とほぼ同時刻、ロリコン()はドタバタと近くにいた姐御こと華蓮に向かってくる。

 

正直彼女としては見た目がロリだと言われるためか、明と一対一で話すのは苦手だ。いつ変な事を言われるかわからないし、そうなった時に鈴蘭のようなボケスキルも竜胆のようなツッコミスキルも全て姐御スキルに還元されている華蓮には対応が難しい。

 

が、そこは流石の姐御。一応話は聞いてやる、というていだ。

 

「そんなことはどうでもいいんだよ姐御!俺は今日革命が起きた!」

 

「……革命?年中無休で幼女に欲情してるヤツの革命って嫌な予感しかしないんだけど」

 

「ちがわい!俺の描く幼女の理想像は曲線のないすらっとしたボディに絶えない笑顔、それになにより父性を刺激する言動を愛でることにあってきょぬーの姐御やリンちゃんに目を移しこそすれ、そこに究極という完成形は存在していないんだ!だから姐御とリンちゃんはストライクゾーンギリギリかするボール球だ!」

 

「……竜胆に連絡するわ。貴女のおねーちゃんがロリコンの理想の幼女像に見事に合致していて今にもヤバイことしそうって」

 

「やめて!」

 

華蓮がロリの素晴らしさと理想のロリを熱弁する明にドン引きしてスマートフォンを取り出す。決して彼女は間違った行為などしていない。

 

「それはともかくだ!今日俺の理想の幼女が夢の中に多分出てきたんだよ!すげくね!?」

 

「……なにそれ。もしかしてそれを言うためだけに態々私を呼び止めたの?」

 

「まぁそうなるかな!姐御だったら話聞いてくれるしな!」

 

「……竜胆、今ここに貴女のおねーちゃんが理想の幼女像と豪語するロリコンがいるのだけど」

 

「待ってえええ!やめてえええええ!!ドドドドって聞こえるよ!?全速力で廊下を駆け抜けて来る音が聞こえる!生徒会役員が廊下を全力疾走してるんだけど!?いやああああ後ろに阿修羅が見える!やめてたすけて俺はまだ死にたくな───

 

◆◇◆

 

アバー……という音が小さく木霊する。それを聞いた飛鳥がふと奏に質問をする。

 

「今……とても哀しい悲鳴が聞こえたのだけど、あれはなんなの?」

 

「あ、あぁ……多分、大方姉もしくは幼馴染を引き合いに出した人が生徒会役員のどっちかにしょっぴかれたんじゃないでしょうか……割とよくあることなので」

 

「こんなのが割とよくあるって相当アレな学校ね……」

 

「僕みたいなの含め、生徒の自主性を重んじるを大真面目に行き過ぎたような学校ですから……」

 

あはは……と自嘲気味に笑う。あくまで自分のようなの、というのは自分のようにプロとしてなにかをしていてもあくまで自主性を尊重するが故に許されている、ということなのだろう。

 

「奏、その物言いは自分を否定しているかのようで少し不愉快です」

 

「あ……ごめん、彩鳥さん。飛鳥さんも、気を悪くしたのなら謝るよ」

 

「いえ、私は特に気にしていないわ」

 

3人の会話が割と長めに続き、その会話も一段落ついた頃、丁度生徒会室に到着する。

 

「今役員はみんなライブチケットの販売の方に力を入れてますから、暫くはここで寛いでいてください。それと、照明のスイッチの横に内線が繋がってますから、なにかあったら連絡してくださいね」

 

「わかったわ……それじゃあ奏くん、妹をよろしくね」

 

「よろしくって……飛鳥さん、さっきも言った通り別に僕と彩鳥さんはそういう関係じゃありませんし」

 

「それは新曲に人の妹の名前付けるような人の言う台詞じゃないわね」

 

「う……ぐ、言い返せない……」

 

飛鳥に論破されて言葉が詰まってしまう。そんな中、本人の目の前でそういう話をされていたことに彩鳥が戸惑ったのか、少し頬を赤く染めながら奏の背中を突然押す。

 

「か、奏!飛鳥の……姉の妄言に付き合う必要なんてありません!さっさと行きますよ!」

 

「え、あ、ぁあ……うん。それじゃあ飛鳥さん、また後で」

 

「ええ、また後でね、奏くん」

 

なんで僕はこういう変なクジばっかり……と項垂れながら生徒会室から出る───

 

「……ん?」

 

「…………………………あっ」

 

「え?」

 

そこには先程まで影も形もなかった悟がいた。暫く固まる3人だったが、唐突に悟が笑顔で彩鳥に挨拶をするので、反射的に彩鳥も挨拶を返す。そして悟は生徒会室のある校舎と教室のある校舎を繋ぐ渡り廊下に顔を出して───

 

「生徒会室から出てきた奏が女を連れてるぞ!殺せ!!」

 

「めっさぁぁあああああつ!!」

 

「ぼくさぁぁああつ!」

 

「轢殺ッ!!」

 

「彩鳥さんごめんなさいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

 

上から悟、夜雷、皐、明、奏。見事に奏に対する殺意で埋め尽くされんとする台詞の中、当の奏は彩鳥をお姫様抱っこしてその場からの全力脱出を図る。

 

「え?きゃあ!?ちょ、奏いきなりなにを───!?」

 

「しゃべってると舌噛んじゃう!!あと今は全速力でこの魔人皇帝達から逃げるのが最優先だよおおおおおお!!」

 

「リア充に()うてはリア充を斬り」

 

「リア充を殺せばまたリア充を殺す」

 

「爆殺したいから爆殺し」

 

「撃滅したいから撃滅する」

 

「「俺達に大義名分などないのさッ!!」」

 

「わけがわからないよ!?」

 

俺達が地獄だ、と語るようなヤツらから全神経を集中させて逃げる。なんとかして、なんとかして自分はともかく彩鳥を逃がせる場所に行かなくては、という焦燥感が襲ってくる。

 

「死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか死んでたまるか!!」

 

ちょっとだけ心の中が泣いている。あまり運動が得意ではない上に彩鳥を抱いている奏を嘲るように4人は奏の速度に合わせたスピードで追いかける。こいつら絶対疲れて動けなくなったところをリンチする気だ。

 

というか、明は何故竜胆に謎の暴力を振るわれてなおこんなことをするのか、というのが甚だ疑問である。

 

「僕は死なないぞ!死んでたまるもんかあああああ!!」

 

◆◇◆

 

そして突如始まる校内鬼ごっこ。奏が全力で逃げれば4人も全力で追う。そのうちの1人が彼、竜堂明。

 

「どこにいやがる……!?ぶっ殺してやる!あのいかにもクソヘタレな見た目の奏に彼女なんか作らせてたまるかってんだ……!」

 

なんと醜い私怨であろうか、しかし明はそれに全神経をそそいでフーフーと低く唸っているのだからタチが悪い。

 

そしてその奏はと言うと……

 

「ぜ、は……!ぐ、はぁ……!!」

 

「むごご……くる、ひぃ……」

 

「あ、ご、ごめん!」

 

その明のすぐ近くのちょっと広めの掃除道具入れに隠れていた。バレたら殺されるという恐怖と単純な疲労から発せられる荒れた息と共に奏は若干血走って、かつ瞳孔が開き切っているこの状況で発見されればどんな誤解を与えられるかわかったもんじゃない。

 

「っていうか……こんな学園祭に僕が女性といたってだけでここまで騒ぐことないでしょ……!」

 

ふぅ……と落ち着いた奏はとりあえず彩鳥に謝ろうと視線を移して───

 

「ぱぁ───!?ふぅ、ぉあ───ーー!??」

 

「………」

 

言葉にならない叫びとはこれを言うのだろうか。奏の奇声を挙げる奏と、あまりの距離間の近さと彼らしからぬ強引さでここまで連れられた彩鳥は共に超よくわからない状況。

 

「ごごごご、ごめんなさいごめんなさい!あの人達、その、変な人で!」

 

「い、いえ!その、先程の話で変な方だらけなのはなんとなく認識していたので!お気になさらず!?」

 

そしてその傍で2人……というか奏を殺すべく探す明、先程までの奏と同じく血走った瞳をしているのはお約束だ。

 

「どこだ……どこだどこだどこだ……!!」

 

そしていつもの彼なら見落とすことがなかったであろう周囲への配慮。それを怠った故に、

 

ドンッ

 

「ってぇな───!?」

 

「も、申し訳ない……少し人を探していて周りが見えなくなっていた」

 

目の前にいた少女に、明はそれ以上の言葉を紡ぐことができなかった。

 

金髪のその姿は圧倒的天使。黒基調の、学園祭という場に似合うゴスロリ服がただでさえあどけない、幼い外見に拍車をかけており……

 

「……天使がいた」

 

「……聞こえているのか?おーい」

 

つまり、絶世の美女(ロリ)なのだ。

 

「ふ、ファッ!?」

 

「ああ……すまない。驚かせてしまったのか?流石にこんな姿の者が1人で高校生の学園をうろつくなんて変に思われるのは仕方ないな」

 

いや違うっす!というのは明の心の叫び。おかしい、何故自分は先程高らかに告げた、愛でる対象であるはずのロリにここまで狼狽しているんだ!?どういうことなんだこれは!?まるで意味がわからんぞ!

 

「あ、や、すんません。よければ俺も探すの手伝いますけど、その……探してる人」

 

「本当か!?」

 

(やばいいいいい!!俺のなんか、リビドーみたいなのかかっとビングするうう!ビンビングだぁぁぁぁぁぁ!?)

 

下ネタを挟まないと死んでしまうくらいに酷い焦りようである。実際見目麗しい幼女から突然手を掴まれて嬉しそうな声音で上目遣いなんてされればロリコンにはたまったもんじゃない。

 

「ほ、本当!本当だから!」

 

「そうか!探して欲しい人は私の弟なんだ」

 

「お、弟、すか」

 

こんなロリロリしい姉を持つということは弟はよもや赤子ではなかろうか、と明が思案を張り巡らせる。が、その弟こそ明の予想だにしていなかった人物である。

 

「ああ、名前は月三波・クルーエ・修也。ここの生徒だ」

 

 

 

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………HA?」

 

 

 

誰が予想しただろう、つまるところ、この幼女は、合法ロリなのだった。

 

そしてこれが明にとっての、後の戦いの日々の始まりでもある。そう、今まで散々リア充死すべしと言っていた彼に同じことが起こり、それでも自分の信念を曲げることなく、PTAとか自分の親とか警察とか周囲からの視線とか、そういうのと戦う日々の始まりなのであった───

 

 





今回のお話で明らかになった変更点

・修也くんとあの人は姉弟。(ただし修也くんのお父さんは本編の時点で色々とやらかしてるので実の姉弟であるかは謎)
・とりあえず彩鳥さんと飛鳥さんはタメ口するような程度には仲がいい。
・明くんの残念ぶりはもはや天元突破している。
・姐御マジ姐御。
・ドーモ、アキラ=サン。ロリコンスレイヤーです。



というわけでかっこうむしこと甲殻類です。逆?気にしない気にしない。

ってわけで次回予告コーナー。



明「天使がいた……」

竜胆「………」

修也「ダメだこりゃ。竜胆の侮蔑の目に反応返さない辺り本気で重症だぞ……」

七夕「っていうかなんで今僕は奏さんのとばっちりで追いかけられてるんでしょうか!?」

竜胆「……修也、次回予告しよっか」

修也「そうだな。今の明にやらせたらダメだ。んじゃあ……ゴホン、次回、『レティたんマジ天使』……これって感嘆符ついてないだけで酷さに関しては今までのサブタイと一切変わりないよな」

明「レティたんマジ天使……」



次回の主役……竜堂 明(問題児たちが異世界から来るそうですよ?〜箱庭に吹く風〜)

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