問題児たちが異世界から来るそうですよ?箱庭超コラボ〜Chaos〜   作:エステバリス

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孤独の狐集中期間に入ります→他二作の更新停滞を犠牲に通常の3倍に。なんだ、僕はザクに乗ってたのか。

という訳でほぼ1ヶ月ぶりの超コラボ。女性陣大暴れとか書いたけど書き直してたらそうでもなくなってました!許してくださいなんでもしますから!




十三限目 手を出すんじゃねぇ

 

「桃水原学園にようこそ、春日部さん」

 

「うん。こっちこそ招いてくれてありがとう」

 

桃水原の裏門、客人はおろか人一人寄り付かない場所で耀と竜胆は互いに握手をしていた。バレると色々厄介だし。またこの前みたいに悪戯でホラーをされるのは御免だ。

 

「それじゃ、待合室として使う場所に案内するから……久遠さんを招いた人によると、今は一人らしいから」

 

「わかった」

 

竜胆の言葉を素直に聞き入れたかと思うと、耀はちゃっちゃかと校舎に入っていく。

 

「あ、ちょっと春日部さん!道わかるの!?」

 

「……わかんない」

 

ズッコケそうになった。わかっていたけど。

 

「……もう。案内するって言ったでしょ」

 

「ごめんね」

 

まるで手間のかかって人の話を聞かない妹を見てるみたいだ。竜胆はそう思いながら人に見つかって大事にならないルートを慎重に選ぶ。

 

気分は伝説のスパイアクションのボスのようだ。

 

◆◇◆

 

一方、奏。

 

劇を一幕終えたという健太から少し変装道具を拝借した奏は彩鳥と共に小さな綿菓子を頬張っている。

 

「それにしても、奏は普段の声は随分と小さいんですね」

 

「え?あ、友達といると大きくなるけど……多分喉のケアとかも考えなきゃだから、かな。小さいときからの習慣だから」

 

聞こえにくかったのならごめんなさい、と一言謝罪。

 

しかしそこを否定するのがやはり彩鳥。謝る必要などありませんと注意に似た叱責をする。

 

「それと、食が進んでいませんよ。いらないのならいただいてしまいますが」

 

「え゛っ!?そ、それは……ダメだよ!」

 

彩鳥がしいたけみたいな眼をして聞いてくるがそれを否定した奏は10秒要らずで綿菓子を食べ尽くす。

 

少し頬を主に染めながら奏は立ち上がって近くのかき氷を一つ頼んだ。

 

「はい……美味しく食べなさいよ奏」

 

「え?」

 

突然変装してる自分の名前を看破したのが驚いたのか、奏は思わずかき氷を手渡した人物を見る。

 

「華蓮さん?」

 

「その変装私達からすればバレッバレよ。センスもないし。仮にも貴方みたいな有名人がデートをするならもう少し身なりに気を使った方がいいわ」

 

奏にかき氷を渡したのは我らが姐御、華蓮。なるほど確かに、彼女の言うとおり今の奏は演劇部から借りたものを適当に組み合わせただけなのでひどく不似合いだ。

 

だがしかし、

 

「……なんで、デート?」

 

「貴方がバカ達と同類だとは微塵も思ってなかったわ」

 

「それ酷くない!?」

 

少しほろっと涙を流して反論する奏。しかしこの短い問答だけで彼が残念な人であることは姐御には手に取るようにわかる。

 

「……まぁいいわ。それで喉を冷やしてさっさと楽屋に入りなさいな」

 

「……はい」

 

華蓮の激励?を受けた奏はプラスティックのスプーンを二つ受け取り、彩鳥の元へ戻ってくる。奏の悲しみを助長させるかのようにかき氷はやたらとでかく、そして冷たい。

 

「あ、奏。おかえりなさい」

 

「ただいま……はい」

 

「……?スプーンを二つ貰ってきたのですか?」

 

「うん。ほら、このかき氷大きいからさ。それにこの量をひとりで食べたらお腹壊しそうだから、よかったら彩鳥さんも食べてよ」

 

「そうですか、では遠慮なく頂きましょう」

 

彩鳥は本当に遠慮なくかき氷を食べ始めた。そんな彼女の姿を見た奏は少しだけほっこりし、急かされたのですぐに食べ始めるのだった。

 

「うーん、美味しい」

 

「ですね。作った方は偉大です」

 

ブルーハワイのシロップが程よい味を出している。少しずつかき氷を二人で食べているその様はまるで恋人の如く。

 

「しかしどうしようか……あれじゃ楽屋に近づけさえしないよ」

 

「困ったものですね。どこかその辺りに便利なものが転がっていないか……」

 

「あら、お困りのようねお二人様?」

 

「「え?」」

 

◆◇◆

 

「しっかしまぁ、よくもこんな似てない姉弟がいたもんだな」

 

「うん、よく言われるよ。親が違うんじゃないかって言われるくらいにはな」

 

「姉さん、あの親父がなにやらかしてるかわかんないんだからそういうのやめようぜ」

 

やあ、明です。ようやくレティた……レティシアさんが弟に会えたと思ったらあら大変。その弟があろうことか修也でした。

 

ぐぬぬ……なんてうらや、羨ましいヤツなんだ!こんな美ロリが姉だなんて!

 

とまぁ、それはおいといて。本当にこの二人似てないな。髪の色もそうだし、目の色も違う。

 

親父さんがなんのと言っているが……まさか二人は異母姉弟!?

 

……と質問してみたけどどうも違うようだ。正真正銘同じ母親の腹から出てきた立派な姉弟。ただその親父さんはやたらフラグを乱立させるからちょっと怪しいらしい。

 

「……で、姉さんはなんでわざわざこんな山ん中まで来たんだ?弟の顔を見るため……なわけないだろ。どっかのアホ姉じゃないんだし」

 

いるね!弟の顔を見るためなら宇宙の果てから果てまでひとっ飛びしそうなおねーちゃんが!

 

「勿論そんなわけない」

 

レティシアさんマジひでぇ!それが仮にも弟の前で言うことかよ!

 

「いやなに、この学園にお前の大好きなアイドルが来るらしいじゃあないか。姉として弟の趣味嗜好に少しでも理解を深めようという私なりの気遣いだったのだが」

 

「……カエレー、シッシッ」

 

露骨に嫌そうな顔をする修也。多分自分の大好きなアイドルを追っかけてる姿を肉親の肉眼で見られたくないのだろう。わかるぞその気持ち。だがもっとその辺オープンにしてもいい!俺的には!

 

「帰るわけないだろう、ここに来るのにいくら掛けたと思っているんだ。ここまで来てなにもせずに帰れと言うのかお前は」

 

「そういうわけじゃないけどさ……ああ、明」

 

お、なんか呼ばれた。

 

「なんだ、修也」

 

「お前に任せると非っ常ォーに不安だが姉さんを頼む。取り敢えずライブを見るにしても俺のいるところまで近づかせないでくれ」

 

「……何席?」

 

「SS」

 

「おk把握」

 

あまりにも清々しく即答したものだからビビっちまった。この学校のtruthのファン怖え。

 

「……と、悪いけど少しトイレ行ってくるよ。二人は先に行っててくれ」

 

「おう、あんまり長居はするなよ?」

 

◆◇◆

 

「……ホントに協力してくれるんだよね?」

 

「勿論よ。男共の下らない嫉妬でがくえんさい壊されたらたまったもんじゃないわ」

 

奏と彩鳥のふたりの前に現れた人物は紅葉であった。曰く「面白そうだから手伝う」とのこと。

 

「ところで、協力と言ってもどうするんですか?」

 

「簡単よ。アイツら纏めて座敷童子の力で不幸にしてやるのよ」

 

「うわぁ……」

 

ある程度ここの人のぶっ飛び具合に慣れてるはずの奏も思わずドン引きである。なにがある程度慣れたなんて思ってたのは大きな間違いだったようだ。

 

「でも背に腹は変えられないよね……頼むよ」

 

「頼まれたわ……ほいっと」

 

適当な掛け声だったが、効果は抜群だ。

 

「うおっ、なんだこれ!?蜂の大群がピンポイントに俺だけ狙ってくる!?」

 

「あぁー急にどこからかペンキが飛んで!」

 

……凄惨な状況になった。

 

あるものは蜂から全力で逃げ惑い、あるものはペンキを全身に被る。

 

「さぁ~て、お前らがバカなことやったのは知ってる。SEKKYOの時間だ」

 

「み、みこっ、ヤメローシニタクナーイ!」

 

「AIBOOOOOO!!うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「……これはひどい」

 

思わず奏もこの一言が出るだけだった。隣の彩鳥も見てはいけないものを見てしまったかのように目をそらす。

 

「さ、終わったわ。さっさと行きなさい」

 

「……あ、ありがとう」

 

こうして奏は楽屋に向かったのだった。

 

◆◇◆

 

視点は巡りに巡って、ライブ会場として選ばれた第一アリーナ。

 

なんで学園にアリーナがあるとか言われると、この学園が広いからとしか言えない。広い学園作ったら生徒が増えて、だったら施設も増やそうという酷い悪循環の末に生まれたのだ。

 

因みにこのアリーナ、収容人数がなんと20000人という無駄に贅沢仕様。日本武道館もビックリである。

 

だがそんなの関係ねぇと言わんばかりにアリーナには人で一杯だ。立ち見しないといけないくらいには人がいる。

 

「……うわぁ、緊張する」

 

楽屋についてからすぐさまアリーナ直行を命じられた奏は舞台裏で超ビビってた。

 

「なにを今更……貴方は世界的にも名を馳せてる"奇跡の歌い手"天歌 奏でしょう。ビビってどうするんですか」

 

「僕はこういうのに慣れないから活動はCDメインなんだよ……何年か前歌中毒っていう病気があったでしょ?」

 

「名前くらいは。麻薬の一種と聞いてますが」

 

「その麻薬が僕の歌なんだよ……僕の歌を聞いた人の中には『"奇跡の歌い手"の生声が聞きたい』って酷い中毒症状を起こしたんだよ」

 

「……は?」

 

「以来僕の音楽活動はCDメインを余儀なくされて、今に至るってわけ」

 

いや、まさか中毒症状なんて誰も思わないよ……みたいなことをブツブツ呟く奏。嘘みたいな話だが彼の嫌なことを思い出したような顔は間違いなく真実を物語っている。

 

「でもリハーサルの段階でこんなに人が来るなんて……飛鳥さんは凄いね」

 

「そんなことないです。私生活はわりとズボラだし、料理できない芸人にカウントされるような人間の上姉の尊厳なんて毛ほどもありません。その上アイドルになる前なんてしょっちゅう家を抜け出して『ハロウィンパーティを楽しんでくるわ』なんて言い出す始末。なんですかアレは」

 

奏が素直に賞賛したらこの言い様だ。彩鳥は飛鳥に恨みでもあるのだろうか。

 

「……そうなんだ」

 

「そうなんです」

 

きっぱり断言されるってどうなんだろうか。奏はちょっとだけ飛鳥に同情したかと思うと、思い切り自分の頬を叩く。

 

「……っし。いくらか楽になったよ。ありがとう彩鳥さん」

 

「この程度であればいつでも」

 

礼を言う奏に大したことはしていない、と返す彩鳥。そんなこんなしていると今度は自分の番になったようで、奏はがんばりますかー、みたいな感じでステージに上がる―――

 

「オイコラてめぇら動くな―――!!」

 

「―――はい?」

 

突如、なにかが破裂したような音が聞こえたかと思うと特定の箇所から白い煙が立ち込めた。

 

銃声だ

 

誰がそう呟いたのかは定かではない。だが確かなのは、明確な糸を以てこの銃声が鳴らされたということだけ―――

 

それを理解した瞬間、アリーナにいた生徒は皆々震え、叫んだ。いかにこの学園の生徒の頭がぶっ飛んでても所詮はただの高校生で一般市民。パニック状態でも本能的な恐怖に打ち勝つなど困難な話だ。

 

「うるせぇぞ!静かにしねぇか!!」

 

もう一度銃声。その圧力で生徒達は押し黙り、なにもできないことへの緊迫感と恐怖が込み上げる。

 

「学園長はいるか!?」

 

男の怒声に対して数秒後、すぐに放送というカタチで返答が帰って来た。

 

『私が学園長の白夜だ。お前達のことならもう既に連絡も知っておったし通報もしてある。して、私に何用だ?』

 

学園長を名乗るのはおよそ大人の女性とは思えないような高く幼さの残る声だった。

 

しかし、その喋り方や声に威厳を感じるのは何故だろうか。男は少しだけ気圧されながらも強気に振る舞う。

 

「逃走用の車を出せ!あとは警察にこの件に関わらせるな!」

 

『……断る、と言えば?』

 

「人質の中から2、3人選んで撃ち殺す」

 

ざわ……ざわ……とアリーナの人達に明確な動揺が生まれる。それを聞いた白夜はマイク越しでもわかる露骨な溜め息をついてすぐ横にいるのであろう誰かに話し掛ける。

 

『おい、車を手配してくれ』

 

『……わかりました』

 

渋々、といった反応だった。それを聞いたもう一人の男はアリーナの観客に急かすように叫ぶ。

 

「二人だ!二人来い!向こうが妙な真似をしたらすぐに撃ち殺せるようにな!」

 

「んなっ……!?」

 

まだステージに立っていなかった奏は舞台裏で驚愕した。これじゃあ少しも怪しい動きができない。

 

そんな奏を見た彩鳥は妙案を思い付いたかのように後ろの非常用出口に視線を移し、奏をそちらに突き飛ばす。

 

「……は?」

 

「奏、誰か助けを呼んできてください。私が彼らをステージにまで誘きだしますから、その隙に―――」

 

「だ、ダメ」

 

だ、とまでは続かなかった。彩鳥の真剣な眼差しは奏に反論することを許さず、奏の身体がまるで蛇に睨まれた蛙のように固まってしまう。

 

「お願いです。成し遂げてください」

 

「……あ、」

 

奏がなにかを言う前に彩鳥はステージに向かっていった。その後ろ姿は「皆を助けられるのは貴方しかいない」と催促しているかのようで、奏は嫌が応でも彩鳥の言われたことを果たすしか道を絶たれたのだった。

 

「人質になら私がなりましょう。皆を解放しろ……などと愚直なことは言いません」

 

ステージに上がった彩鳥は自身の存在感を示すように備え付けのマイクを使った。

 

「あ、彩鳥!?貴女一体なにを―――」

 

「飛鳥には関係ありません。さぁ、一人立候補しましたよ」

 

威勢よく出てきた彩鳥に二人組は顔を醜悪に歪める。

 

「そうか……ならもう一人だ!それ以上は逃げるときの荷物になる!」

 

完全に、とは言わないが油断が少し見てとれる。アリーナにいる人間や正面玄関から入ってきた人間の反抗には動じないかもしれないのにしれないが、奏が上手くやってくれているのなら。

 

(さあ、これでここにいる人達の勇気をある程度煽った。あと一人、私と同じ立場になると言える人がいれば……)

 

「ならばもう一人は私が立候補しよう」

 

ステージから離れた客席から声が挙がった。金髪のブロンドにゴシックな服装に身を包んでいる彼女は、月三波・ドラクレア・レティシア。

 

「な、姉さん!?」

 

「なに、私はここの生徒ではないし一応大人だ。大人は子供を守るものだろう」

 

レティシアの立候補に反発しようとした修也だが、それを見越していたのかレティシアは軽く宥める。そして視線を二人の男に送り、若干高圧的に話す。

 

「そら、私と彼女で二人だ。ここだと万が一誤射や弾の貫通で関係のない人も怪我しかねない。さっさとステージに上がるんだな」

 

「んのガキ……黙ってりゃペラペラとよくしゃべりやがる……!」

 

二人はレティシアに促されるまま彼女を連れてステージに上がる。

 

ステージに上がると、彩鳥がレティシアに対して頭を垂らして謝る。

 

「申し訳ありません。煽るような真似をして」

 

「いや、キミの勇気に触発されただけさ。キミは悪くない」

 

「そう言って頂けると助かります」

 

二人は無抵抗の証として両手足を結ばれて二人の近くに転がされる。少しだけ痛かったが、自分からこの立場を買って出た以上はそんな泣き言を言っていられない。

 

(奏……頼みましたよ……)

 

勝ちを確信したような顔を見せる二人を睨みながら、彩鳥は奏にこの顛末を託したのだった。

 

◆◇◆

 

「あースッキリした」

 

アリーナでも起こっていることを一切知らずにアリーナへ向かう明。まぁ、アリーナが防音性を備えているし白夜も無用な混乱を避けるためにピンポイントで放送を繋いでいたのだから、今の今までトイレにいた明は知らなくても無理はない。

 

「早くアリーナに行かねぇとな……レティた、レティシアさんを待たせるのは忍びない」

 

少し駆け足気味でアリーナを目指す。幸運だったのは、二人の進行ルートが完璧に被っていたことだろう。

 

「あ、明くん!」

 

「あれ、奏……センパイ。今の時間はリハじゃないんすか?」

 

「それどころじゃないんだよ!今アリーナが強盗に襲われてて……アリーナにいる人が人質に取られてるんだ!」

 

「な……にぃ……!?」

 

では、レティシアもその人質の中にいることは想像に難くない。驚愕に揺れた明は思わず奏の肩を掴む。

 

「だったらなんでアンタだけノコノコ逃げてるんすか!?あそこにゃ友達とその姉さんがいるんすよ!?」

 

「それは僕だって同じだよ!助けを呼んでどうにかしてほしいって頼まれたんだ!」

 

焦りのあまり平静でいられなかった明を諭す奏。落ち着きを取り戻した明は「すんません……」と謝る。

 

「兎に角、すぐに行こう。あんまり人集めに時間はとれないから、帰路に誰とも会わなかったら僕ら二人だけになるけど」

 

「かまわねーっす」

 

奏と明は急いでアリーナの裏口に戻る。途中はやはりというかなんというか、誰とも会うことはなかった。

 

「アレか……って、レティシアさん!?なんであの人が……」

 

「ダメだ明くん!冷静になって!」

 

「これが落ち着いてられるか!あの人は……あの人は……!?」

 

(……あれ、俺はあの人のことどう思ってるんだ?)

 

好きか嫌いかと聞かれたら好きだと速答する。一緒に歩いたのはたかだか10数分だったが、それだけでも彼女の人となりは充分見えた。

 

見た目だって自分の大好きな小さな身体だ。修也に対して見せた姉らしさというのもまた好意的だ。

 

だが、その好きは愛でる好きなのか、あるいはもっと違う、漠然とした好きなのか―――

 

「……いや、()()なんだろうな。そんなの自分でも簡単にわかる」

 

「……好きなのかい、あの子」

 

「……ああ、俺はあの人が、レティシアが好きだ。多分一目惚れ」

 

「……そっか。僕もね、あの人……彩鳥さんのことが好きだ」

 

「……センパイ、追っかけてすんませんでした」

 

「いいんだよ……って、ああ!?」

 

思わず奏は目を疑った。なかなか車を用意しない白夜に痺れを切らしたのか、銃口を彩鳥とレティシアに向ける。

 

プッツン。擬音が確実に聞こえる、擬音じゃない音になった。

 

「……センパイ、止めんなよ」

 

「止めないよ……止めないともああ止めないさ」

 

「「あいつらぶっ潰す!!」」

 

恋とはなんたる恐ろしさか。奏と明はまったく同じコメントを残して二人で非常用出口の扉を蹴り破った。

 

バゴォンッ!という清々しいくらいの音が鳴りながら扉が開いたので、思わず二人の目が音の発生源である扉に向かう。

 

明が疾風と形容されるような全力ダッシュで二人の持つ銃を鉄の歯車のボスもビックリの格闘術ではたき落とす。

 

続いてそれを拾って1つを奏になげわたす。二人とも拳銃を逆手に持ち、引き金に指を触れていないことから発砲するつもりは皆無だとわかる。

 

「「その人に―――」」

 

大きく振りかぶって銃身の部分で思いっきりぶん殴る。拳銃の持つ重みが二人の顔面に突き刺さり、その身体がふっとばされる。

 

「「手を出すんじゃねぇぇええッッ!!」」

 

完全に二人は伸びた。まぁ顔面に思いっきり振りかぶった拳銃が突き刺さったらそうなるのも無理はないだろう。

 

二人は拳もう必用ないといった風に銃を男達の胸に投げ、無言で縛られている彩鳥とレティシアを解放する。

 

「……あー、緊張した」

 

「嘘つけ、最初に飛び出したのセンパイだろ」

 

一安心した二人は緊張がパッと剥がれたように呟く。暫くしてから奏は逆に強盗二人を縛り、事が終わったことを証明する。

 

「みなさん、強盗は制圧しました!もう安心してください!」

 

そう言った瞬間、観客席から拍手喝采が巻き起こる。純粋に喜ぶ者、歌以外からっきしな"奇跡の歌い手"が歌以外でなにかを成したこと、二人が助けたことを信じられない者……様々だ。

 

「……彩鳥さんがあんなこと言わなきゃもっと時間がかかってたかもしれない……ありがとう」

 

自身が見せられる精一杯の笑顔で彩鳥に感謝する。CD製作の過程でPVなども作る都合上わりとこういうのは慣れている。

 

が、次のことにはさしもの奏も予想外のものだった。

 

「……か、奏ええ!!」

 

「は、はぁあ!?」

 

彩鳥に抱きつかれた。年相応な声で、唐突に。

 

「ホントは怖かったんです!だから早く来て欲しかった!だから、だから本当に……うえええええ!!」

 

「ちょ、彩鳥さん!?なんでこんな状況で、あ、ちょ、写真撮らないで!スキャンダルじゃないからね!?そこの男も仇を見るような目をしないで!」

 

「奏ぇ……奏奏奏かなでかなでかなでぇ……!」

 

「待って、僕の人生が色々と終わる……僕は、僕はねぇ―――」

 

哀れ、奏はヤク中みたいな断末魔を挙げて逝かれてしまわれた。

 

「……あー、レティシアさん」

 

舞台裏、奏という尊い犠牲を払って明とレティシアは非常用出口に向かっていた。

 

「助かったよ明。実にカッコ良かった」

 

「え、そ、そうかな……」

 

「そうだとも。少なくとも一番近くで見ていた私は保証するぞ」

 

「……ならいいんだけど」

 

表でてんやんやと騒いでいる奏をBGMに、明は喋った。

 

「―――、―――」

 

「―――」

 

二人の会話は表の喧騒に混じって聞こえなかったが、学園祭は確かに、成功したのだった。

 

◆◇◆

 

翌日、

 

桃水原が取り寄せている新聞紙には恥ずかしいくらいにデカデカと彩鳥に抱きつかれる奏の写真が載っていた。

 

"奇跡の歌い手、2つの奇跡。学園祭に乱入した強盗を鎮圧し、truthの久遠 飛鳥の双子の妹との交際発覚!"

 

……御愁傷様である。

 

因みに、奏と彩鳥を追い回していた方達は明も一緒に命にお説教されました。

 

◆◇◆

 

「……へぇ、ここが桃水原学園か。なかなか、面白そうじゃん」

 

 





リア充を端から見ることの面白さよ。

ああ、本編の暁さんとのコラボや感情のない少女も書かないと……

以下、次回予告コーナー

七夕「おめでとうございます」

呉羽「えっと……おめでとう、でいいんだよね」

明「ありがとう!」

奏「僕はこれからどうやって生きていけばいいんだ……新聞にデカデカと乗るわ東京に呼び出されて生会見するハメになるわで……」

命「いっそ諦めたらどうだ?」

奏「そう簡単に諦められたら苦労しないよ……」

七夕「では、そろそろ行数もいつも通りの数になってきたので次回予告!」

命「次回の主役はない。ただし、色々とあるそうだ。本作品の作者は活動報告の非力さと自らの知名度の無さに自己嫌悪したらしい」

明「……うわぁ」

呉羽「それじゃ次回、『もう全部アイツ一人でいいんじゃないかな』……え?」

七夕「まさかの僕達解雇宣言ですか……?」


次回の主役、なし

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