問題児たちが異世界から来るそうですよ?箱庭超コラボ〜Chaos〜   作:エステバリス

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さーて、今回は原作からあの人が出てきますよ〜!




八限目 アイドルってなんでこんな酷いくらい格差あるんだろうな

 

 

天歌 奏は自惚れでも自称でもないが、奇跡の歌い手と呼ばれている。音楽番組で歌を歌う以外なにもできないということを幾度となく彼は言及しているが、実際その通りで彼の専門である音楽一つ取っても楽器の演奏はボエ〜、という擬音が出てくるレベルのものだった。歌ってないのにそんな音出せるとか最早ガキ大将よりも凄いレベルである。

 

だが、そんな凡才以下のその他諸々に反してことツッコミと歌には眼を見張るものがある。歌はその異名から言わずもかな、そのツッコミスキルは歌手でありながらバラエティー番組でレギュラー張れるレベルである。

 

この前は芸能人格付けチェックなアレに出場して見事に現状全敗。実に悲惨だ。

 

そんな彼にも悩みはある。歌とツッコミ以外はだいたい平凡以下の彼が抱えるような悩みと言えばやはり秀でたことの悩み……歌手としての悩みだ。

 

「……はぁ、」

 

思わずロケ帰りで疲れている身体に疲れを溜めてしまうように溜息を漏らす。天才故の悩み、とはよく言うが彼の場合もまさにそれであった。

 

「……"売れる曲"を作れ、かぁ」

 

歌い手である彼の仕事は曲に歌という命を吹き込むことだ。声優と近しいものだと、そうしたタレント業で知り合った友人の1人にそういう話を聞いている。勿論奏自身それは少なからずとも意識はしている。

 

だからこそ、そうして"売れる曲"と言われるとどうしても抵抗感がある。歌い手としてはそういう売れる売れないではなく、自分が歌いたい歌詞を心のままに書きたい。

 

が、そこでその言葉が引っかかってくる。そんなことを言われれば否が応でも『これを売り出したとして、常識的な反応』というものに囚われて歌の自由という長所が殺されてしまう。

 

こればっかりはその道に詳しくない友達や仲間であると同時に一応ライバルでもある歌手としての知人には相談し辛い。そういった理由で作詞は必ず自分で仕上げる奏にはかなり重たい問題だ。

 

「ぐぬぬ……僕はこんなんに負けたりなんかしないぞっ。絶対売れて僕の歌いたかった歌を完☆成させてやる……」

 

奏は端から見ればキモいくらいにぶつぶつ呟いている。しかも夜の銀座と来れば人が沢山いるのは確定的に明らか。変装して変な騒ぎを起こさないよう配慮している分周りからドン引きされている有様だ。

 

まぁともかく、今は寮に帰ろう。そう思った奏は少し早足で駅へと向かって行った。

 

◆◇◆

 

「最近、この辺の治安が悪い」

 

「……え?」

 

竜胆と夏凛がおらず、一輝と呉羽だけになった教室。今回に限っては一対一で弄っても周りの反応がないからなのか、呉羽を弄ることなくマトモに仕事を消化し、ひと段落ついて呉羽が本を読み始め、一輝が艦これし出した時、一輝は唐突に思い出したようにそう呟いた。

 

「かいちょーさん、ボクそんな話聞いてないけど……そんな話題あったらまずボクかリンくんに連絡行くよね」

 

「あ、いや。別に生徒会で話題になるほどの話じゃないからな。チンピラのナンパ騒ぎ程度だから」

 

「じゃあなんでそんなこと……」

 

「……そう言えば修学旅行の時に神社ネットワーク使った借りを返して貰ってないな」

 

「……聞かなきゃよかった」

 

どうやって知ったのか教えてもらおうとしたら唐突に神社ネットワークの話をし出した。ならば答えはひとつだろう。というかよく考えたら生徒会に伝わってないのに一輝にだけ伝わってる情報があるとすればそれ即ち神社ネットワークしかない。

 

「うっし、バケツカンスト。あとはえんえんとオリョクルかなぁ……すまんなでち公、働いてもらうぞ」

 

「で、そんな真面目な話題出してる最中出した張本人がなにやってるの」

 

「艦これだよ見てわかんないの?」

 

「わかるけどそういう意味じゃ……」

 

なんでそんな真剣な話題出しながら春イベの準備してんの、ということである。緊張感が台無しだ。

 

兎角、かいちょーさんはとても忙しいのである。

 

「まぁ問題ないだろ。丁度ウチの生徒会には絶賛買い出し中の超不運な副会長がいるんだから、今頃ナンパでもされてキレて事件解決だ」

 

先生、ここに超能力者がいます。

 

「それはまた別の俺だ」

 

「かいちょーさんどうしたの?」

 

「いや……できない人間には教えることすらできない、敢えて言うなら……天の声との会話?」

 

「えっ」

 

え?

 

「ふっ、ジャオウシンガンを持たぬ者にはわからぬこと……みたいな類じゃあないぞ。なんかわかる、何故かこの世界を作ったヤツの声が聞こえるんだ」

 

「……かいちょーさん、お医者さん呼ぶ?」

 

「え?」

 

ザマァwwww

 

「……くっ、声が聞こえるだけで手出しできないのが憎たらしい……!」

 

ハハハ、いつも弄ってくる仕返しだ!

 

「くそっ、何年かけても神社ネットワークでコイツを叩きのめす方法見つけてやる……!」

 

まぁそれは置いといてだ。

 

「まぁ、なにがあってもウチの優秀な会員2名がなんとかしてくれるだろ?」

 

「……自分でできるのにいっつも他人任せなんだから……」

 

◆◇◆

 

歌というものは自分一人で作るものではない。奏は少なくともそう考えている。

 

小さな頃から触れ合ってきたものだが、その小さな頃から彼は歌に対して常に対等な立場でいた。

 

歌が好きでいれば歌も応えてくれる。昔はそう思っていた。

 

だが今はどうだ。中途半端に大人になってきているせいで達観することも我儘になることもできず、歌には想いが篭らない。自分が思い浮かべた詩を書いても彼自身が『これに籠めたものなんてないと」思ってしまうのだ。

 

言ってしまえば精神的なところから来るスランプ。こういうのは陥りやすい人がちょろければちょろいほど簡単に克服できるイメージが強いが、別にそうでもない。

 

ていうかあんなんギャグ描写であると奏は考えている。事実、菩薩メンタルとか言われてる御仁だって相棒が死んだら家に塞ぎ込む。鮫の人だってちょろいけどすぐにカウンセリングされるわけではない。

 

だから今は落ち着こう。落ち着くために早く帰って寝てしまおう───

 

「って思ってたんだけどなぁ……」

 

奏TL

 

こんな状態。記念すべき4人目のアスキーアートの完成だ。

 

いや、もはやこれはアスキーアートと呼んでいいのだろうか?なんて思いながらも奏は目の前に立ち塞がる人物にもう許してやってよ……みたいな目を送る。

 

なぜか……人がぶっ倒れてた。見たことがない女の人がぶっ倒れてたのだ。

 

「えー……こ、これはどうすれば……なんでわざわざ山の中腹より少し低い辺りでぶっ倒れてるの……なに、これは僕に安息を与えないという証なの?」

 

もう全部信じることができないっ……!と奏は嘆きながら取り敢えず女の子を背中に乗せて歩き出す。お姫様抱っこなんてして誰か(主に会長)に見られたら後世に渡って弄られ続けるのは想像に難くない。そもそも顔も知らない男にいきなりお姫様抱っこされて喜ぶ女なんてどこにいる。いたらぶん殴ってやる。なんてニンジャリアリティショック並みに頭の中を混乱させ続けながら奏は自分の部屋に向かっていったのだ。

 

◆◇◆

 

「んっ……ぅ、」

 

「……あ、起きたね」

 

それからしばらく、少女は奏のベッドで目を覚ました。先に断っておくと奏はやましいことをしてないし、やましい考えを以って少女を自分のベッドの中に入れたつもりもない。ただ思ったのは日系の顔立ちなのに外人さんみたいな髪だなー、なんてことくらいだ。

 

「……あの、ここは?」

 

「桃水原学園高等部学生寮郷土の寮。その僕の部屋だよ」

 

「……はぁ。あの……その郷土の寮?になぜ私が……?」

 

「うーん、こっちとしてはなんであんな山の中で倒れてたのかが知りたいんだけどな……なにか覚えてないかな?」

 

「……姉に、会いに行く途中だったんです。私としてはあんなの姉とかやめてほしいってレベルですけどね。絶対アレは私が姉です」

 

「……えっと、双子のお姉さんなのかな?」

 

それから奏は少女の話を少し聞いて、軽〜く状況整理。

 

少女の家は桃水原学園のある山含めて山を4つほど越えた先にあること。

姉が東京にお住まいということ。

そしてその姉は双子の姉で、名前は久遠 飛鳥ということ。

 

「……あれ?久遠 飛鳥?」

 

「ああ、言ってませんでしたね。私、今東京で話題沸騰のアイドルとかなんだで調子に乗ってるっぽい久遠 飛鳥(くどうあすか)の戸籍上双子の妹の久遠 彩鳥(くどうあやと)です。お好きに呼んでください」

 

「は、はぁ……それじゃあ彩鳥さん、と」

 

奏は言われてから彩鳥の顔をちら、と見る。グラデーション、と言うのだろうか。日本人らしからぬ銀髪は少し角度を変えて覗くと先辺りの色が金よりに変わって見える。どういう仕組みなのだろうか。

 

しかし、双子の妹と言われればなんとなく納得できる。さっきまでは髪色のせいで『なんかどこかで見た事あるな〜』程度だった顔立ちがはっきりと奏もテレビで見た事のある久遠 飛鳥そっくりだ。

 

「えと、天歌 奏です。訳あってアイドル歌手やらせてもらってます……一応アイドルじゃなくて歌手が正式な職種ですが」

 

なぜか礼儀正しくお辞儀。しかし彩鳥がすぐに『そんなにかしこまらなくてもいいですよ』と言うのでその体勢を改める。

 

「しかし……天歌さん、ですか」

 

「奏で大丈夫ですよ。こっちも名前の方で呼ばせてもらってるので」

 

「そうですか。では奏さんと。なるほど、寝ぼけた頭のせいでどこかで聞いたことのある程度にしか感じていませんでしたが、貴方がその"奇跡の歌い手"でしたか」

 

彩鳥がおお、と拍手をすると奏は少し嬉しそうに、だが不思議と居心地が悪そうな表情をしていた。

 

「……すみません。あまりこの呼び名は好かれないようですね」

 

「あ、いえ。確かにあんまり好きじゃない呼び名ですけど……それでもそういう呼ばれ方をされるということはそれなりの評価をいただいているということですから」

 

これはあれだ。転校初日によくあるかまととぶる人。アレに酷似している。奏自身そう思っていた。敬語がものっそい敬語していて違和感しか感じない。

 

「ま、まぁとにかく、今日は彩鳥さんはここで泊まっていってください。どうせ寝るとこないんでしょうし、僕はどこか適当に友人の部屋で寝させてもらいますから」

 

「いえ!それは流石に世話になりすぎです!せめて誰かにご迷惑になるくらいならここで寝られても構いませんから」

 

「え、で、でも流石に女性と同じ部屋で一晩明かすのは……」

 

思わず顔を赤らめて否定する奏。なんか敬語がたどたどしくなってきている。

 

「そんな心配はいりません。私はそういうの気にしませんし、そもそも私には奏さんは女性を襲って喰ってしまうような人種には見えないですし」

 

まぁなんやかんやとあって、結局奏が折れるカタチで床に予備の毛布を敷いて寝ることになったのだった。

 

◆◇◆

 

時間はちょっと遡って夕方。

 

言い寄ってくる男共は完全に瞬獄殺だった。

 

それが今の竜胆と少女の状況。言い寄ってくる度に少女にはごめんねと言いながら竜胆は『俺の女になにすんの?』と発言→レズ扱い→キレる→フルボッコ→ぷんすか怒りながら少女の頼みで今日一日一緒にここらを見て回る約束を実行している。

 

「ゴメンね……急にあんな変なこと言ってさ」

 

「ううん。一応その辺はわかってるつもりだから」

 

ありがと、と竜胆は一言言うとふと目の前にある落書きされた看板に目が行った。

 

「うわ……乱雑……く、どう……あすか?様万歳……なんだこれ」

 

「あ……それ多分、書いたのは飛鳥のファンだよ」

 

「飛鳥?誰それ」

 

「え?知らないの?超有名なのに」

 

「うーん……?ゴメン、知り合いに歌手兼アイドルがいるけど、芸能とかあんまり興味ないんだ。あるとしたら……上京する前に大阪で上方歌舞伎やってたから、詳しかったとしたらやっぱり歌舞伎らへんかな?」

 

「歌舞伎、やってたの?」

 

「うん。小さい頃母さんに連れて行ってもらってね。その時色々あって歌舞伎に関わる機会もらって……家族に相談したらみんな『やってみたら?』って言うからつい、ね。それが楽しくて今も偶に踊ってるし、たまーにだけど白粉も塗るしね」

 

丁度塗り終わって久しぶりに踊ろうって服も着替えていざって時に会長に見つかってめっちゃ弄られたんだっけ……と思い出したくないことまで思い出す。以来学校で着替えるのだけはやめようと思ってたり。

 

「あっ、でも最近ウチの学校でアイドルが2人話題になってたな。なんだったっけ……1人は、えーと……髪が長くて、もう1人が、茶色のセミロングって聞いた覚えが……で、二人組のグループって」

 

「……そうなんだ」

 

少女はそれに対して淡白に返す。その返答にん?と思って少女を見ると、あれ?となる。

 

「そういえば、キミも髪が茶色のセミロングだね。偶然だね」

 

「……そうだね、偶然だね」

 

少女がそう返すと竜胆は普通にそうだよね〜なんて言う。

 

少女がホッとため息をつくと、思い出したように竜胆に向き直る。

 

「ね、こんな場所で会ったのも何かの縁だからさ。アドレス交換でもする?」

 

「え……アドレス?まぁ確かに2度も会ってこんな風に話し合った人と簡単に親交をあっさり切るのは俺も嫌だけど……」

 

「じゃ、キマリ」

 

少女は竜胆の携帯機器を取って何故か一発でパスワードを解除、LI◯Eアカウントとメールアドレス、電話番号を竜胆の携帯に登録させて同様の手順をまた行い少女のアドレスに登録を……とやると、途端に竜胆の向いてる方とは逆に踵を返した。

 

「3回もありがとね竜胆。またどこかで会おう」

 

「え!?ちょっと、まっ───」

 

行ってしまった。ご丁寧に駅のすぐ近くでだ。はぁー、と息を吐きながら竜胆は新しく追加された連絡先を目に通す。

 

「───、」

 

そこに書かれていた番号と名前を、竜胆はしっかりと覚えたのだった。

 

◆◇◆

 

時間は夜に戻って奏の部屋。本来奏が作詞作曲したいからという理由で1人部屋にさせてもらっていたことから、さすがにこの部屋で2人が寝るというのはなかなか背中にクる。まぁそれでもまだ寝る前だが。

 

「先に上がらせてもらいました。奏、どうぞ」

 

「あ、ありがと」

 

そんな状況に駆り出されれば奏とて男。ていうか男以前にここの生徒に1日だけとはいえ女性を部屋に泊めていたことがバレれば瞬く間に噂が拡散メガ粒子砲してしまうだろう。笑の神様が舞い降りるとか冗談じゃない。

 

そう思って立ち上がって風呂場に目を向けると、そこに彩鳥。唐突に泊まることが決定したので服とかも勿論奏のだ。そいて高校3年生の奏の服を着た高校1年生の飛鳥……の双子の妹の彩鳥の風呂上がりはやっぱり蠱惑的だった。奏は内診やめろおおおおおおお!!うわぁぁああああ!無理ら……こんなモンスター、倒せるわけがない……とヘタれた王様みたいな気分だ。

 

ってかエロい。サイズが合ってない服のダボダボ感がどうしようもなくヤヴァい。奏はそう思ってる。

 

「あの……奏、お風呂、空きましたよ?」

 

「あ、ああ!うん、お風呂、だね!わかった!うん!」

 

奏はそのまま火照った身体を全力で冷やすべく最低温度まで下げた水で頭を洗い流した、

 

「……ふぅ」

 

「ず、随分と早かったですね、私が出てからまだ5分と経ってませんが」

 

「気にしないで。カラスのなんとかだから」

 

それだけ言うと奏は彩鳥と会う時に持っていた鞄からなにも書かれていない楽譜とノートの切れ端を取り出し、ペンを握る。

 

「……自作するんですか、歌は」

 

「はい。自分で書いた詩じゃないと歌えないくせにスランプなんですよ。図々しいことに」

 

はぁ〜、と自嘲気味に溜息。スランプなのは確かだし、この際誰でもいいから悩みを聞いて欲しかったのだろう。奏は少し感傷的になりながらそう語る。

 

「……そうですか。では奏。一ついいでしょうか」

 

「あ、はい。どうぞ」

 

「では。奏にとって歌とはなんですか?」

 

彩鳥の質問は今の奏にとって答えにくい問答だった。

 

前述した通り、彼は今の自分にとって歌とはなにかというのを全力で考えてたところだ。そんな質問をされればなんと答えればいいのか悩んでしまう。

 

金づる?それだけは断じてない。

 

楽しいもの?それが怪しくなったから悩んでいるのだ。

 

自分の唯一の特技で、縋るモノ?そんな風には考えたくもない。

 

思えば、歌詞を考えてる時は真剣に考えて、心を込めていたが、果たして歌う際はどうだったろうか。

 

そんなネガティヴな方向ばかりに考えがこんがらがっていく。なんとも答えられない。

 

「……質問を変えましょう。歌と友人のどちらが大事ですか?」

 

「それって……どういうこと?」

 

「例えば、です。親しい方が今にも死んでしまいそうな状況にあるとします。その方を救えるのは貴方だけ……ただし、その方を救うには代償として貴方の"歌"を犠牲にしなければならない……二度と歌えなくなるとします。その時貴方はどちらを選びますか?」

 

「そんなの、友達にっ……」

 

「真剣に答えてください。今貴方が友達と言えば貴方は"天歌 奏"である絶対条件と言っても過言ではない歌を棄てることになるんです」

 

彩鳥の牽制に奏は思わずたじろぐ。

 

確かに、そう言われると悩んでしまう。自分が幼い頃から一緒だった歌を手放す。こんなこと普通に考えればできっこない。それが人気歌手である奏なら尚更に。

 

「っ………」

 

「……それでいいんです」

 

「え?」

 

答えられないといった表情をしている奏に、ふと彩鳥は諭すようにそう言った。

 

「人生とは選択です。その都度最も自分が選んで、損をしない選択肢を選び続ける。まるでその択から木の枝のように可能性が広がる……ならば、存分に悩めばいいんです。その上で答えが出せないのなら、私や貴方の友人が背中を押します。まぁ、先程の質問は極端な例として挙げただけなんですが、あまりにも真剣に悩んでいたので……区切らせてもらいました」

 

まぁ、と彩鳥は続ける。

 

「そんなに悩むということは貴方は歌も友人も同じくらい大事に思っているんじゃないかと……私は思いました」

 

「同じ……」

 

瞬間、悩みが纏めて氷山に船が激突したように砕け散った。なんでこんな単純なことに気づかなかったのだろうか、どうしてこんなバカみたいなことに苦悩していたのだろうか。思えば思うほど自分がバカらしくなる。

 

「……彩鳥さん」

 

「はい」

 

「ありがとう。なんか吹っ切れたよ」

 

「いえ、お役に立てたのならなによりです。……それでは私は姉に連絡もつきましたし、奏のお邪魔にならないうちに寝させてもらいます」

 

その言葉と共に彩鳥の声が聞こえた場所辺りからもぞもぞ、と音が聞こえ、やがてその音は小さな寝息に変わっていった。

 

「……ありがとう、彩鳥さん」

 

奏は小さく呟いて、真っ先に思いついた歌の名を書き記すのだった。

 

◆◇◆

 

それから1週間後。

 

学生寮の食堂にて。

 

「そーいや奏」

 

「ん?なに、吹雪くん」

 

「先週お前新曲出したって聞いたから買ったけど、今週のオリコンチャートどうよ」

 

「うーん……どうだろ。僕としては傑作のつもりなんだけど。ようやく向こうにもOKもらった曲だしね、色々あった分思い入れ深いからさ」

 

「へー、そうか。俺、アイドルってなんでこんな酷いくらい格差あるんだろうなって思ってたことあったけど……お前は結構売れてるから今のところそういう心配はいらないな」

 

奏と吹雪は向かい合った席に座る。その奏の姿をすぐに悟が見つけ、テレビのリモコンをかっさらう。

 

「おーい!奏が新曲出したからオリコンチャートのウィークリー気にならない!?チャンネル変えていいかなー?」

 

「「「いいともー!」」」

 

「いいですとも!」

 

パワーがメテオに集まるわけはないが、なんだか2943と2971を連想させる声があった。まぁいいや、と悟はチャンネルを変える。

 

『───以上2位まででした!それでは今週のオリコンチャート第1位は……』

 

丁度いいタイミングだった。もし仮に1位じゃなくてもトップの10か5まではもう一回記載されるだろう。不思議と、周りに緊張した空気が流れていた。

 

『───♪』

 

そして、その1位の曲が流れ始めた。

 

「この曲って───」

 

そして、誰かが呟いた。

 

すぐにわかったのだ。その曲がなんなのかは。

 

『天歌 奏の"彩鳥(イロドリ)"でした!』

 

一瞬、食堂に静寂が訪れた。だがすぐに男達は食堂のマナーを忘れたようにワーワーと騒ぎ出し、食堂なのに奏に群がって胴上げまで仕出す始末。

 

「えええええ!?ちょちょちょ、嬉しいのはわかるし僕も嬉しいのはわかるけどなんでこんなところでこんなことしてるの!?」

 

「やったな奏ええええええ!!今夜は無礼講じゃァァアアアアアアアアアア!!!」

 

でもそんなこと御構い無し。むしろ食堂の人まで便乗するというこのどうしようもないノリ。

 

胴上げされて重力を一身に受ける奏はなんか色んな意味で泣きそうになり、心の中で彩鳥に感謝していた。

 

(ありがとう、彩鳥さん……何回目かわかんないけど、曲ができたのは彩鳥さんのおかげだよ……!)

 

オチとしては騒ぎを嗅ぎつけた五月雨が強引に騒動を止め、奏が後頭部から地面とキスしたということだ。

 

で、その中のもう一つのオチ……

 

『2位のtruthの2人……久遠 飛鳥と春日部 耀の2人も惜しかったんですけどねぇ。今回の彩鳥はまさに傑作でしたから』

 

カタン、と誰も気づかないほど小さな音を立ててスマートフォンが落ちる。

 

その携帯機を持っていた人物───竜胆が握っていた携帯は確認し終えてはっきりと理解したように……彼のメールアドレスには"春日部 耀"と書かれていた。

 

 






ナ、ナンダッテー(棒)だった方、気にすることはない。名前以外仕草も何も隠す気なかったし。

ところで、例のカップリングの件ですが、一人か二人返信が来ませんが、ほぼ全員がOKと返してくださった以上はアリの方向で進めていきたいと思います!ってか、今回まさにそんなんでしたし。



しかし、原作キャラから十六夜を抜いて初めて明確に原作キャラとわかっていながら喋ったのはまさかの彩鳥さん。フェイスさんじゃないよ、彩鳥さんだよ。



次回予告コーナー

奏「彩鳥さん、見ててくれたかな……?」

吹雪「にしてもイロドリ、ねぇ。読み方を変えれば人名に読めなくもないが、まさか……」

奏「え、え!?なんの、ことかな?」

吹雪「お前これからの歌詞は読み方を変えて人名に読めるようなタイトルで売る気だな!」

奏「……ああ、うん。安心と一緒に変な気分になってきたよ……」

悟「さて、そんな中の次回の主人公は、と───」

竜胆「やっぱり俺なんだって……作者曰く毎話出てるから早々にメイン張るのは避けたかったらしいけど、孤独の狐みたいにもどかしい関係が長く続くのが嫌だったらしいよ。だからこの話と最終的な展開も原作とは全然違うってさ」

奏「へー。それじゃあ竜胆くん、次回予告いってみよう!」

竜胆「う、うん。えーと、次回、『母親との生殖と書いてクソ野郎と読む』……え゛」

悟「なんというか……かなりアレなタイトルだな。流石の俺もちょっと引いたぞ」



次回の主役

高町 竜胆(問題児たちと孤独の狐が異世界から来るそうですよ?)

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