序 自分の最期
その時は突然起こった。俺、桐原秋人はどこにでもいるごく平凡な高校生だ。そんな俺が今でもやっているゲームがある。デュエルモンスターズというカードゲームだ。説明すると長くなるので簡略化するが自分が数千種類以上あるカードの中から40~60枚までカードを選び、それを使って遊ぶというどこにでもあるようなカードゲームだ。俺は今日、馴染みのカード屋で1つパックを買った。それが原因だった。
「さぁて、今回はどんなもんが当たるかなぁ?ま、どうせ俺が買うものなんて大抵外れなのだが」
俺は正直に言って俗にいうパック運というのが全くと言っていいほどない。どんなパックを買ってもほとんどはレアばかりで、スーパーレアが当たったことは数える程度しかなく、ウルトラレアなんてパックを箱買いでもしない限り当たったことなんてない。だからこのパックを買ったとしても当たるのは30円コーナーにあるようなカードだろう。そう思っていた。半ば諦めながらもパックの封を切り、中を見る。中に入っていたカードを見ると俺は目を丸くして呟いていた。外枠は黒く、全身が真っ黒なドラゴン。その名は―――
「【ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン】………?!」
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン。今放送されいているアニメ、遊戯王ARC-Vの主人公と瓜二つな少年、ユートのエースモンスター。アニメ内ではその効果が1ターンキルよろしくで、OCG化されて少し弱体化したが、その強さと人気で最近高騰化してきたカードの1枚だ。このカードは『ネクスト・チャレンジャーズ』というパック、つまりは俺が気まぐれで買ったこのパックの表紙のカードで、当然の事ながらウルトラレアカード。それを引き当てた俺はというと………
(ウワ―――!!ダーク・リベリオンだ――!!ウルトラレアだ――!!キャッホ―――――イ!!)
その、なんというか、あらぶっていた。
(はっ!!、落ち着け、冷静になれ、揺るがぬ境地、クリアマインド、とりあえずこのカードは厳重に保存しないとな)
腰のバッグからストレージボックスを取り出し、適当なスリーブに入れて、着ているコートのポケットに入れる。
(さて、もう満足したし、そろそろ帰るかな?)
そそくさとカード屋から出る。あー今日はなんて良い日なんだろう!!まさかダーク・リベリオンがあたるなんてなぁ!さぁて、今日は早く帰って撮り溜めしているARC-Vでもみるかな~~。信号機を確認しながら交差点を渡る。俺の隣の人も、目の前にいる人も、そして俺も。その時だった。隣から物凄い勢いで近づいてくる鉄の物体。―――トラックだ―――。その存在を確認した時には既に俺の体は宙に浮いていた。―――あ、れ―――?走る衝撃、宙に浮く浮遊感、揺れていく視界、空高く浮かんだ自分が段々落ちていくのが分かる。風を切る音が耳を通り抜け、体が数秒間離れていた地面と再開する。そこに奔るはずの激痛や衝撃はなかった。段々遠ざかる意識とは裏腹に何故か思考は冴えきっていた。直後直感した。あぁ、俺、ここで死ぬのか、と
(い、やだなぁ、まだぜん、っぜん満足し、てないの、によぉ………)
こんな時でも遊戯王のネタを言えている自分にどこか呆れて苦笑いする。あぁ、俺、本当に馬鹿なんだなぁと自嘲しながら。薄れていく意識と視界、段々止まっていく心臓の鼓動。それら全てを無視して俺はこう願っていた―――
(まだデュエル……したかったなぁ―――)
閉じていく視界が最後に捉えたのは何の変哲もない血で溢れ返った道路だった。直後彼の心臓は動くのを止め、それと同時に彼のコートが光ったのを見たものはいなかった―――。