……というか夏休みに入ったのに、なんで学校に行かなくちゃいけないんだ……。おかげで全く創作できてません。というか、今回は文字数が多いのに、中身が哀れなほど薄っぺらな話です。…こんな話しか書けない、非力な私を許してくれ……。
それと、今回は諸事情により次回予告がないです。予定が付き次第、書かせてもらいますので、気長にお待ちしてもらえたら嬉しいです。それでは、本編スタートです!!
「―――ううん。もう朝か」
窓から差し込む日差しに目をやられ、俺は布団から這い出る。あ~~くそ。昨日のデュエル、というかその後が疲れたからな。あのデュエルの後、春菜と襲雷のためのカードを探すために時間がかかっちまった。ふと横を見てみると、ぐーすかと、気持ちよさそうにキサラがソファの上で寝ている。まぁ、キサラにも手伝ってもらったからな。もう少し寝かせとくか。その時だった。これまでのことをふと思い返ってみる。この世界に来てからのこと。【レジスタンス】に入ってからのこと。それからここ、【スタンダード次元】に来てからのこと。その時にふと思い出した。最近いろいろあって、遊矢たちと会ってないことに。
(そういや、あいつらに
どうすっかなぁ~~と頭を悩ませる。そこでふと思い出す。
「もしもし――か?俺だ、秋人だ。――ああ。今日空いてるか?そうかよかった!いや、ちょっと付き合って欲しいことがあってな。ああ。昼頃に頼む。それじゃまた後でな」
そう言って俺は電話を切る。その後もう一人、ディスクに登録している相手に電話する。
「あ―――もしもし赤馬か?今時間空いてるか?」
[桐原か。ああ。今ペンデュラムカードの量産化に少し目処がついたところだ。少しなら話ができる。それで、一体何の用だ。用も無く電話してくる訳でもなかろう?]
「さっすが!天下のLDSの超若手社長!話が早くて助かるぜ!それじゃ、早速本題に入らせてもらうぜ」
そこで俺は、さっき思いついたことを赤馬に提案する。電話の先から息を飲むような音が聞こえたが、その後すぐにいいだろうと赤馬が言った。
[別に私は構わないが、君たちはいいのか?ばれてしまっては色々と面倒ではないのか?]
「心配ご無用!というかユートが沢渡と、隼が他のLDS生を襲ったせいで、あいつらと何度か顔を会わせちまってるからな。そろそろ、俺たちのことを話してもいいんじゃないかって思ったんだよ。それに、今日はは舞網チャンピオンシップの一週間前。お前の話じゃ遊勝塾のメンバー、全員出場資格を手に入れてるんだろう?だったらいい機会だ。大会に入ってからじゃ遅いしな」
[……そこまで考えているなら何も言うことはない。今日はセンターコートを君の貸切にしておこう。用事を済ませてくるがいい]
「おう!サンキューな!赤馬!」
そう言って、俺は通話を切る。それから窓のカーテンを開く。さっきまで少ししか見えなかった太陽は、もう見上げる所にまで来ていて、俺を見下ろしていた。
「え?今日LDSに?」
「そうなんだよ。なんか秋人に呼び出されちゃってさ。なんでか柚子と一緒に来いって」
学校が終わったその帰り、俺はいつものように柚子と2人で帰っていた。今話題になっているのは、今朝、秋人から来たメールのことだ。学校に行く直前ってところで秋人からがメールが来て、昼休みに気になって開いてみると、放課後、柚子を連れてLDSに来てくれとのことだった。
「まぁ、何はともあれ、秋人の誘いだからな。行くしかないだろう」
「そうね。それじゃ早く行きましょう!」
そう言って、俺たちは足先を遊勝塾ではなく、LDSに向けて歩き出した。
「………来たか」
LDSの入り口で立って待っていた俺は、遊矢と柊の姿を見えたときにほっとした。今朝送ったメールに返信がなかったので、もしかしたら無視されたかもしれないと危惧していたのだ。それはどうも杞憂に終わったようだが、何はともあれ本当に良かった。メールを送ったのに、それが帰ってこないのは本当に辛いからな。ソースは俺。いや、学校の友達(笑)にメールしたら、誰一人さえ返信してくれなかったからな。あれは本当に辛い。俺の(防弾)ガラスのハートが壊れちましそうだぜ!はい嘘ですごめんなさい。
「あ!秋人!どうしたんだ?急に呼び出したりして?」
「まぁそう焦るな。とりあえず中に入れよ。赤馬に話はつけてあるからさ」
そう言って、俺は2人を連れて中に入る。中に入ると、LDSの生徒が遊矢を見て険悪な視線を向けるが、俺が近くにいたのを見ると、そそくさと逃げ去っていく。それを見た遊矢が俺に声をかけてくる。
「凄いな秋人。周りの奴らお前を見るとすぐに逃げてくぞ?ここにいる間に何かしたのか?」
「そうか?いや、俺は特に何もしてないんだが……」
「いや、でもすれ違う人たちから『秋人さんだ』って言ってるわよ?本当は何かあったんじゃないの?」
「いや、本当に何もないぞ?デュエルを吹っかけていた奴とデュエルしたり、むかついたからワンキルしたり、『先行エクゾワンキル』しただけだぞ?」
「「それが原因だ(よ)!!」」
何故か声を揃えて遊矢と柊が言い切る。えぇ……。なんでや。なんでなんや。なんでこんなに言われなあかんねんや。何故か内心で大阪弁になりつつ愚痴っていた。
「というか『先行エクゾ』ってあの幻の『エクゾディア』のこと!?一体どこでそんなレアカードを!?」
「カードは拾った」キリッ
「キリッ、じゃない!そんな幻のレアカード、そんな簡単に落ちてるはずないだろ!?」
「いや割と落ちてるぞ?ここ、2階が全部カード屋なんだけど、どうもステータスしか価値を求めていないらしくてさ。低ステータスなのに強力な効果を持つカードとか安値で置いてるんだよ」
これは割りとマジな話である。この間することもなかったから、ストレージを漁ってたんだが、『魔導雑貨商人』とかあったし、『幽鬼ウサギ』という、見たことがなかったカードだけど、効果を読んだら恐ろしいことしか書いてないカードが500円で売られていた。春菜や襲雷におみあげにいいと思い、自分の分も含めて3枚ほど買ったものだ。というかLDSの生徒たちよ。パワーカードもばかり使うなよ。もうちょっと搦め手も使えよ。だから弱いんだよ。ちなみに『エクゾディア』のパーツカードは、前に持ってきてたケースの中に入ってあった。いやぁ『ブルーアイズ』を使った『先行エクゾ』は楽しかったですねぇ(ゲス顔)。使ってる時にキサラが《ああ……私がどんどん墓地に送られていくぅ……》って嘆いてたけど、あのデッキを使うのはキサラが調子に乗ってイラッと来た時だけだから。普段はそんなことはしないからな?
「おっ、ここだここ」
喋りながら歩き続けていると、【センターコート】と書かれたプレートが見えた。そこの扉の鍵を、赤馬から予め借りておいた鍵で開く。中はアクショデュエルができそうな位大きな空間がだった。
「ここは確か…前に沢渡とデュエルしたとこだな」
遊矢が思い出したように沢渡の名前を出すと、柊の顔がだんだん暗くなっていく。それを見た俺はニッと笑った。
「それで?一体俺たちに何の用なんだ?」
「まぁまぁ、そう慌てるなよ。まずは舞台を整えないとな?」
そう言うと俺は、手を宙に向けて宣言する。
「アクションフィールドオン!!フィールド魔法『未来都市ハートランド』発動!!」
プロジェクターが作動し、フィールドを見たこともない建物に変えていく。その街の姿は名の通り『未来都市』に相応しいだろう。フィールドが完全に展開され後、俺は指をパチンと鳴らす。すると、俺の隣に遊矢と瓜二つな少年、ユートが現れた。
「あなたはあの時の!!」
「え!?俺!?というか透けてる!?」
突然現れたユートに2人は別々の反応を見せた。それに少し笑いながらも事情を説明する。
「安心しろ遊矢。ここにいるのはお前じゃない。それに姿が透けて見えるのは3Dホログラムだからだ」
[そういうことだ。榊遊矢、君には初めましてだな。俺はユート。秋人の友だ]
さてと、まずはどの辺りから始めるとしようか。そこまで考えていた時だった。俺たちが入ってきた扉が勢いよく開き、誰かが中に入ってきた。
「瑠璃ィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!」
「[お前かよ!!!]」
ふざけんなよ隼!?今回のために俺がどれだけの人に頭を下げたと思ってんだ!!え――と、まず説明の現実味を強くするためにユートだろ。次にユートがどこかに行かないよう、3Dホログラムを貸してくれって頼んだ赤馬と中島さんだろ。で、最後に隼を見張っておいてくれてって頼んでおいた春菜と襲雷だろ。あれ、もしかして俺知り合い全員(隼や遊矢たちを除く)に頼んでないか?そこまで思考が言ったその時だった。赤馬から貸してもらった通信機に着信が入った。
[―――あ―こちら襲雷。応答願いますどうぞ―?]
「こちら秋人。何やってんだ襲雷!なんで隼がこっちにいるんだ!?」
[あ――悪ぃ。隼がお前が連れてきた柊を一目見た瞬間、瑠璃!って叫んで出て行ったんだよ。それを事前に連絡を受けた俺と春菜で止めようとデュエルしたんだが……スマン、ワンキルされた]
その報告を受けた時、一瞬頭の中がフリーズした。え?襲雷と春菜がワンキル?嘘だろオイ。
[いや嘘じゃないんだ。春菜が先行1ターン目で『プトレマイオス』から『セイクリッド・ダイヤ』を出して、俺が『プレアデス』を召喚したのに、『ブラック・ガーデン』と『ライズ・ファルコン』でワンキルされちまった]
「いやお前、さっき自分で『プレアデス』と『セイクリッド・ダイヤ』出したって言ってたよな。それどうしたんだよ?」
[……言いたくないが、2体とも『ブラック・ホール』で破壊された。その後はやたら展開されて、俺たちの場が『ローズ・トークン』で溢れたその直後に、『ライズ・ファルコン』と『ストイック・チャレンジ』で文字通り瞬☆殺された]
「いやそれはしょうがないわ」
それに、2人とも伏せれるカードが無かったらしい。まぁ『サイバー流』と『テラナイト』じゃ、採用できるトラップカードも高が知れてるけど、それでもあの2人をワンキルって。恐ろしすぎるわ。
「春菜はどうした?一緒のはずだろ?」
[後ろで体育座りして頭を抱えてる。ワンキルされたのが余程ショックだったみたいだ]
「そうか、春菜にドンマイって伝えてくれ。あと、今回は2人共手伝ってくれてサンキューな。今度何か奢るな」
そう言って俺は通信を切る。そこでふと遊矢たちの方に顔を向けてみると、隼が柊に瑠璃!と迫り、それを聞いた柊が顔を青くし、それを見た遊矢が隼の前に立ち、ユートが頭を抱えているという、中々にカオスな雰囲気となっていた。それを見た俺がため息をついたのは言うまでもないことだろう。
「え~~と、それじゃ改めて紹介するな。こっちの3Dホログラムで来ているのはユート。俺の親友だ。で、こっちの赤いスカーフを着けているのが、そのまた親友の黒咲隼だ」
紹介されたユートがよろしくと言い、隼は無言で突っ立っていた。因みにさっきまでの騒動は、俺が腹パンすることで終わった。それでも柊の傍に行こうとする隼に―――
「次やったら【ファンサービス】するぞ」ニッコリ
と言ったら、体を凄く震わせながら分かったと言ってくれた。いやぁ良かった。全く、隼はちゃんと話せば分かってくれるんだから、いつもその通りにしていればいいのにな。いろいろと勿体無い奴だ。
「で、どこまで話したっけ?」
「いや、まだ自己紹介が済んだだけで、まだ何も聞いてない」
あ~そうだった。全く、とんだ茶番だぜ俺は!!さてと、互いに自己紹介を済ませたところで……
「そろそろ本題に入るとしようか」
俺がそう言うと、自分でも分かるほどに空気が変わる。それを少しでも感じたのか、遊矢は険しいそうな顔をし、柊は顔を少し曇らせる。
「まず、以前遊矢と柊が俺に聞いていたな。俺は何者なのかってさ。一言で説明するなら、俺は、いやここにいる隼とユート、それからあと2人いる俺の仲間は、この世界の住人じゃない」
そう言うとえっ、と柊と遊矢の顔がまるで鳩が豆鉄砲でも食らったような顔になるが、俺は構わず続ける。
「俺たちがいた世界と、この世界は違う。俺たちが住んでいたのはこのアクションフィールド、『未来都市ハート「ちょ、ちょっと待てよ!!」―――む?」
「い、いきなりそんなこと言われても信じられないって!え―とこの世界の住人じゃない?別の世界?そんなこと、信じられるわけないだろ!!」
遊矢が俺にそう怒鳴る。それを聞いた隼が貴様!と怒気を孕んだ声と共に遊矢の襟首を掴み上げる。
「貴様!俺の仲間になんと言った!信じられないだと!?それでも貴様は秋人の友か!!」
「落ち着け隼。今のは俺が悪い。いきなりそんなことを言っても信じられるわけがない。だが―――」
ふと視線を柊に向ける。その視線はユートに向けられていて、難しい顔をしていた。
「柊は意外と信じられそうな顔してるけどな」
俺は意地悪そうに言い、それを聞いた遊矢がハッとして柊に話しかける。
「まさか……柚子は信じられるのか!?こんな突拍子もない話を!?」
「ゆ、遊矢………」
柊はたじろぎながらも首を縦に振る。それを見た俺はふっ、と鼻で笑いながら続ける。
「さて、柊が信じてもいいと言ってくれたからな。少し話すとしよう」
俺がそう言うと、ようやく遊矢も話を聞いてくれるようになった。それを見て少しほっとしながらも、俺は話を続ける。
「まず、最初に言った俺たちが別の世界の住人と言ったことだが、あれは本当だ。それを証明する証拠はいくつかある。その1つになるのが、今回は3Dホログラムで来てもらっているユートの存在だ。そこで一つ聞きたいんだが、柊は2度、ユートと会ってるよな?」
「ええ。沢渡の時と、港の時に会ってるわ」
「なら、それを踏まえて聞こう。その時に共通している点がある。それが何か分かるか?」
「共通している点?………あっ!!」
柊が、俺の言わんとすること気づいて遊矢に顔を向ける。それに遊矢が驚くが、俺は構わずに続ける。
「そうだ。その2回に共通している点。それは柊がユートと一緒にいる時に遊矢が来ると、柊のブレスレットが光り出し、ユートを何所かに飛ばしてしまうことだ。現に―――」
俺はふと視線を柊のブレスレットに向ける。ブレスレットに埋め込まれてある石のようなものは、まるで何かに反応するかのように光が点滅していた。
「今も何かに反応するように光が出てる。ユートが近くにいなくてもだ。ここでもしユートが来たら、間違いなく光り出してユートを、もしかしたら俺たちも飛ばされるかもしれない。それを防ぐために、ユートにはすまないが、今回は3Dホログラムで参加してもらったんだ」
我ながら、中々に考えられた物だと思う。質量を持ったソリッドビジョンの製作に成功しているのだから、
「他にも証拠はあるぞ。例えばこのデュエルディスク、こいつは【ハートランド】しかない特注品でな。ここで言う【リアルソリッドビジョンシステム】内蔵している。つまり、モンスターが質量を持った状態で召喚できる」
「【リアルソリッドビジョン】を内蔵したデュエルディスクだって!?そんな物が本当に……!?」
信じられない物を見る様に、遊矢が俺と隼のデュエルディスクを見る。それを見ながら柊が弱弱しく隼に尋ねる。
「あの~黒咲さん、でしたっけ?私のことを見て瑠璃って言ってましたけど、もしかして私とそっくりな人がいたの?」
それを聞いた隼が、酷く顔を歪ませる。さすがの俺もこれに関しては言いづらい。どうしたものかと悩んだその時だった。
[……瑠璃の本名は【黒咲瑠璃】。隼の……妹だ]
「ユート!!」
[秋人。お前が言ったんだろ。自分の、俺たちのことを話すと。なら、包み隠さず話すべきだ。隼も良いな?]
それを聞いた隼が、逡巡するように顔を更に歪ませるが、やがて意を決した様に、ああと答えた。
[俺たちはこことは違う世界、【エクシーズ次元】と呼ばれる世界からやって来た。【エクシーズ次元】はのどかで、平和ないい所だった。この世界のように皆がデュエルしていて、皆笑顔だった。………あの日までは」
「あの日?」
遊矢がユートの言ったセリフを言い返した。それに答えるように隼が言う。
「……まだ俺たちの世界が平和だった頃。ある日突然、奴らが、【融合次元】のデュエリスト達が襲って来た。平和ボケしていた俺たちは、奴らに為す術もなく敗北し、一人、また一人と仲間を消し去って行った。俺たちの友を、両親を。そして妹を、瑠璃を………ッ!!」
両手を堅く閉ざす。握り締めた拳から、力を込めすぎたせいで血が流れだしていた。それを無視して隼は続ける。
「だが、幾度の侵略から俺たちは生き残った。そして、生き残った仲間たちから【レジスタンス】という組織を作った。生き残った仲間たちと手を取り合い、【融合次元】のデュエリストを倒して、倒して!!倒して!!倒し続けてきた!!いつの日にか、【融合次元】のデュエリストを殲滅するその日を目指して!!」
そこまで言うと、隼からどことなく殺気を感じた。どうやら自分の思っていることを、本心を吐露したことで、心の内に秘めていた感情が、復讐心が湧き上がってきたようだ。そして、それに応じるかのように、隼のエクストラデッキから光が溢れる。それを見た隼は、デッキから光を発しているカードを取り出し、その名前を呼ぶ。
「『海咬龍シャーク・ドレイク』……ッ!!」
それを見た隼の顔から2つの雫が、涙が流れた。それを見た俺は突然のことに少し動揺する。あの隼が涙を流す所など、今まで見たことがなかったからだ。それを見たユートが説明してくれる。
[……『シャーク・ドレイク』のカードは、瑠璃の形見のような物なんだ]
「形見……?」
柊が呟くようにそう言い、それにユートがああと応える。
[まだ【ハートランド】が平和だった頃、隼の誕生日を俺たちが祝ったことがあったんだ。その時に俺は隼にスカーフを、瑠璃はカードパックをプレゼントしたんだ。その時のパックに入っていたのが……]
「『シャーク・ドレイク』だったて訳か。だが、それを加えても……」
俺は『シャーク・ドレイク』のカードをじっと見つめるが、やはりカードが勝手に光っているだけであった。俺のキサラやクドのように、精霊が宿っているのならともかく。何の力も宿してはいない、ただのカードになってしまった『ナンバーズ』が、自分から光を放つなどありえるのだろうか。ふと、そんなことを考えていると、柊が隼の手を握った。
「黒咲さん。私は貴方の妹の、瑠璃って人じゃないけど、その人は私とそっくりな人、なんだよね?」
「………ああ。本当に瓜二つだ。だから、あの時、初めて会った時は本当に驚いた。瑠璃がここにいると、生きていたんだって本当に思った」
少し照れ臭そうにそう言う隼。また、見たことのない隼の一面を知り、俺は驚く。
「それなら、私は瑠璃じゃないけど、話し相手ぐらいにはなるわ。それで黒咲さんが、少しでも楽になるなら、ね。多分その瑠璃っていう人も、黒咲さんの苦しんでたり、悩んでたりしている姿は見たくないと思うから」
あくまで私の想像だけどね。と柊が付け加えた。だが、その一言が心に響いたのだろう。隼は首元につけてあったスカーフで顔を乱暴に拭い、涙をふき取った。それから、少し照れ臭そうに言った。
「……時々、話し相手になってくれ。勿論、お前の時間の都合がつく時でいい」
「うん!けどお前って言うのはやめて。あ、まだ自己紹介してなかったわね!それじゃ改めて!私は柊柚子!これからよろしくね!黒咲さん!」
「…黒咲でいい。よろしくな、柚子」
そう微笑しながら、隼は手を差し出す。それを柊が取って互いに握手を交わした。それを見ていい話だな―と思いながら、遊矢に声をかける。
「なぁ遊矢?」
「なんだよ秋人」
「……安心しろよ。隼はお前の彼女を取ったりしないからな!!」
「ハァッ!?ちょ、柚子とはそんな関係じゃないって!!」
「アーーハイハイソウデスネ。スイマセンオレノカンチガイデシターー」
「その棒読みはやめろ!!」
そう言いながら遊矢は俺に走って近づく。それを俺は笑いながら走ってそれを避ける。
「逃げるな!というか笑うなコラァーー!!」
「逃げるなと言って逃げない奴が何処にいるかよバーカ!!」
そう言いながらも、自分も笑いながら俺を追いかける遊矢。それを見たユートたちが苦笑いしたのは言うまでもない。
「あ~~疲れた!」
LDSの自室に戻って、俺はすぐにベットに転がり込む。そこで俺はふと、今回のことを振り返ってみた。あの後、遊矢たちにはこの世界とは別に、3つの世界のが存在し、召喚法によって世界が存在することを伝えた。それから、【アカデミア】と【融合次元】こと。未だに目的が不明で、恐らく存在するであろう【シンクロ次元】のことを話した。2人共、最初の方は信じてはいなかったが、最初に隼や、ユートのことを話したからだろうか。後半の方は俺たちの話しを信じてくれた。
「けど、【ランサーズ】のことを話さなかったのはマズかったか?いや、でも言ったら絶対遊矢怒るしな」
【ランサーズ】。それは、俺たち【レジスタンス】と、赤馬たちで作る対アカデミアの為の組織のことだ。この舞網市で行われる大規模な大会、【舞網チャンピオンシップ】で、【ランサーズ】に相応しいデュエリストを見つける。それが、俺たちの今のところの目的だ。そこまで考えて、俺はふと、この世界に来る前までに見た、【遊戯王ARC-Ⅴ】の事を思い出す。舞網チャンピオンシップで行われる隼と素良とのデュエル。そして、その回の次回予告にあったユートVS素良のデュエル。ユートが負けるとは思わないが、何故だろうか。少し胸騒ぎがした。
「余計な心配だな。ユートが負ける訳ないだろうが」
そこまで言って、今日、遊矢と柊、俺と隼でやったタッグデュエルのことを思い出していた。俺たちが話し終わった後、遊矢がいきなりデュエルをしようと言ったのは本当に驚いた。自分たちのことを話し終わって、俺個人としては今すぐにでも休みたかったが、周りの空気がデュエルをする感じになっていたから、仕方なくしたが、あれは楽しかった。けど、柊が『ブルーム・ディーヴァ』を召喚した時の隼の顔は、失礼だとは思ったが、思いっきり吹いてしまった。だってあの隼のポカンとした顔がおかしくてなww。
「いつか、またしたいな。今度は春菜や襲雷、権現坂とかも誘って」
そう言って、俺は今日のことを忘れないようにと念じながら、意識を手放した。
その日、俺は夢を見た。夢の中で目を覚ました俺の目の前に広がっていたのは、どことも知れぬ断崖の道。一歩足を踏み外せば奈落底へ落ちるかもしれない不気味な場所だ。その道を、俺は無意識に歩いていく。歩いた先に辿り着いた目の前には、幾重にも鎖で厳重に封印され、巨大な魔物のような扉が、カードでいうところの『運命の扉』が聳え立っていた。そして、扉の向こうから声が聞こえる。
「この扉を開く者は、新たなる力を得る。しかしその者は代償として、一番大事なものを失う。その覚悟があるのであれば―――」
扉を開くがいい。扉がそう言うのと同時に、俺の意識は現実世界に戻っていった。それを思い出した俺はふとこう思った。
(あの扉が出てきた。なんでだ?俺が転生者みたいなものだからか?だが、俺はあの扉は絶対に開かない。あの扉からなんとなくだが、嫌な感じがした。まるで―――)
心の中の暗い感情に飲み込まれるような、そんな感じがした。
誤字・脱字の指摘、評価もお願いします!!
〜〜〜次回予告〜〜〜
黒咲「これはまだ俺たちの世界、【ハートランド】が平和だった頃の、俺の日常に1ページだ。俺はいつもの学校に行き、デュエルをして皆で楽しく過ごしていた。だが、あの日だけは違った。一体何があっというのだ?」
次回、【遊戯王ARCーⅤ アイズの名を持つ龍の主】
【懐かしき思い出と、成長する魔物】
黒咲「さぁ、デュエルを始めるぞ!!」