~~~襲雷VS素良がデュエルを行う数時間前~~~
襲雷---start
赤馬の指示で俺たちはLDSの社長室に集まっていた。内容は至極簡単。今回の大会、舞網チャンピオンシップに紛れ込んでいる、【アカデミア】の人間かもしれない人物、紫雲院素良の事についてだ。
「紫雲院素良。彼の存在は以前から監視させてもらっていた。榊遊矢の所属している遊勝塾に通うデュエリストであり、融合召喚を使う少年だ。それだけなら我々LDSも珍しいというだけで、余り目に留まらなかっただろう。だが、問題なのは彼の使う融合召喚の召喚反応の数値だ」
赤馬は指を鳴らし、俺たちの前に紫雲院のデータと、実際にデュエルをしているシーンを再生した。
「見ての通り、デュエルの腕はそこらのデュエリストを圧倒している。それに加えこの召喚エネルギーの数値。これを見る限り、彼は【アカデミア】のデュエリストだと判断していいだろう」
赤馬がそう言うと、隼の顔が怒りに歪んだ。当然だろう。隼は【アカデミア】に自分の妹、瑠璃を攫われているのだから。
「そこでだ。彼の正体を看破するためにも【レジスタンス】から一人、彼の相手をしてもらいたい。これは極めて重要な作戦だ。彼が【アカデミア】のデュエリストなら本日、遅くても翌日中には彼の身柄を保護する。もし【アカデミア】と関わりのない一般人であるのなら放置する。…何か意見はあるか?」
「特にはない。だが、奴の、【アカデミア】のデュエリストとデュエルするのであれば俺にやらせろ!奴らには自分たちがやった罪の深さを、少しでも味わらせてやる!」
隼が今にも襲撃しそうな声で言う。それに少し苦笑いしながら俺は立ち上がる。
「悪いが隼。今回は俺に譲ってくれ。俺も、いや俺たち全員、【アカデミア】には復讐心は持ってる。それをお前一人に任せるわけにはいかねぇよ」
「襲雷!貴様、俺の邪魔をするのか!」
「そういう訳じゃねぇよ。ただな……俺も我慢ならねぇんだよ」
怒気を孕ませた声で俺は呟く。それに少しからず隼は驚く。
「あいつらのせいで俺たちの故郷は滅茶苦茶にされた。仲間を奪われ、家族を失い、今や生きるのにも一苦労だ。だけどな……復讐にばかり拘っていたら、身が持たないぞ」
「ッ……!」
「少し頭を冷やせ。そのためにも、今回は俺に譲れ。な?」
片目を閉じながらそう言うと、隼は浅く深呼吸をして少し逡巡した後、静かに頷いた。
「だが、やるからには必ず勝て。絶対にな」
「おう!言われるまでもないぜ!」
~~~回想終了~~~
(あの時、隼に譲ってもらったんだ。恐らく今、レジスタンスのメンバーの中で一番アカデミアに復讐心を持っているあの隼に。だからこのデュエル、俺は絶対に……勝つ!!)
襲雷 LP4000
場:サイバー・ドラゴン・ノヴァ(ATK2100 ORU×1)
サイバー・バリア・ドラゴン(ATK800)
魔法・罠:サイバー・ネットワーク(ターンカウント1)
タイムカプセル(ターンカウント0)
1
手札:1
Pゾーン:無し
素良 LP2100
場:無し
魔法・罠:1
トイポット
手札:3
Pゾーン:無し
[さぁ始まりました舞網チャンピオンシップ、1回戦第三試合!現在は木原襲雷選手がエースモンスター、『サイバー・ドラゴン・ノヴァ』を召喚し、紫雲院素良選手の『デストーイ・シザー・ウルフ』を破壊し、ライフを大きく引き離しました!ここからの紫雲院選手がどう巻き返すのか、大いに楽しみです!!]
MCのニコが現在の状況を大雑把に説明する。それを聞いて笑いながら紫雲院のターンが始まる。
「行くよ!僕のターン!」
紫雲院 手札3→4
「まずは手札を増やさないとね!トラップ発動!『
「ちっ、また面倒なカードを……!」
「この効果で僕は、エクストラデッキの『デストーイ・チェーン・シープ』を公開して、素材となる『エッジインプ・チェーン』と、墓地の『融合』を手札に加えるよ!」
紫雲院 手札4→6
通常ドローと今のサーチ&サルベージで手札が一気に6枚に増えた。融合召喚は手札消費が激しいはずだが、簡単に手札を増やしたことに舌打ちを打つ。
「行くよ!手札から『融合』を発動!手札から2枚目の『エッジインプ・シザー』と『ファーニマル・ラビット』を融合する!悪魔の爪よ、野獣の刃よ!神秘の渦で一つとなりて、新たな力と姿を見せよ!」
素良 手札6→3
2体のモンスターが渦に飲み込まれ、新たなモンスターが出現する。
「融合召喚!現れ出ちゃえ!全てを切り裂く密林の魔獣!『デストーイ・シザー・タイガー』!!」
渦が爆発し、体を鋏で切り裂かれ真ん中に鋏を刺され、不気味な声を上げながら新たなモンスターが出現した。
デストーイ・シザー・タイガー/止み属性/☆6/悪魔族/ATK1900 DEF1200
「『デストーイ・シザー・タイガー』の特殊効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、融合召喚に使用した素材の数だけ、相手の場のカードを破壊する!『シザー・タイガー』!奴のモンスターを切り刻め!」
『シザー・タイガー』が不気味な声を上げながら近づき、『ノヴァ』と『バリア・ドラゴン』を切り刻んだ。
「これで君のモンスター達は全滅!ダイレクトアタックで一気に決める!」
「調子に乗るなよ…!まだ『ノヴァ』の魂は死んじゃいねぇ!『ノヴァ』の最後の効果を発動!このカードが相手のカードの効果によって破壊された時、エクストラデッキの機械族融合モンスター1体を特殊召喚する!」
「なっ!融合モンスターだって!?」
切り刻まれた『ノヴァ』の体が浮上し、光に包まれる。それは、新たな力が目覚める鼓動の様に感じられた。その光に向かって手を伸ばす。
「機光竜に宿りし新たなる力よ!今こそその力を解き放ち、その進化の一端を示せ!特殊召喚!現れろ!レベル8!『サイバー・ツイン・ドラゴン』!!」
光に包まれた『ノヴァ』体が爆発し、双頭となった『サイバー・ドラゴン』、『サイバー・ツイン・ドラゴン』が現れる。
サイバー・ツイン・ドラゴン/光属性/☆8/機械族/ATK2800 DEF2100
「エクシーズの人間が……融合モンスターを使う…?……ははっ、ははははははは!!」
『サイバー・ツイン・ドラゴン』の登場した直後、紫雲院が壊れたラジオテープの用に笑い出した。そのことに観客もどうしたんだと騒ぎ出す。
「……ふざけるな!!エクシーズの負け犬の分際で!崇高なる融合モンスターを使ってるんじゃない!!」
突然キレだした紫雲院に、観客がざわめきだす。その事に俺は落ち着いて言葉を返す。
「こいつは俺が秋人から教わった力だ!俺はもう迷わない!融合だろうがシンクロだろうが、勝つためだったら手段は選ばない!そう!俺は勝つためのデュエルをする!そして!必ずてめぇらをぶっ潰す!!」
「負け犬風情が!その五月蝿い口を黙らせてやる!融合素材にされた『ファーニマル・ラビット』、そして『エッジインプ・チェーン』のの効果発動!『ラビット』の効果で墓地の『ファーニマル・オウル』を手札に加えて、『チェーン』の効果でデッキから『エッジイップ・ソウ』を手札に加える!更に手札から『ファーニマル・オウル』を召喚!その効果でデッキから『融合』を手札に加える!」
紫雲院 手札3→5
本性を現した紫雲院が、再び手札に『融合』を手札に加えていた。だが、攻撃力2800の『サイバー・ツイン』を超えるモンスターなんてそうそう……
「一気に終わらせてやる!手札から2枚目の『融合』を発動!フィールドの『ファーニマル・オウル』と、手札の『エッジインプ・チェーン』を融合!悪魔の鉄鎖よ、煉獄の眼よ!神秘の渦で一つとなりて、新たな姿と力を見せよ!」
紫雲院 手札5→3
再び発動された『融合』により、梟と鎖の魔物が一つになる。
「融合召喚!現れ出でよ!すべてを封じる鎖のケダモノ!『デスト-イ・チェーン・シープ』!!」
デストーイ・チェーン・シープ/闇属性/☆5/悪魔族/ATK2000 DEF2000
「この瞬間!『シザー・タイガー』の更なる効果発動!このカードがフィールドに存在する限り、フィールドの『デストーイ』の攻撃力を、自分フィールド『デストーイ』・『ファーニマル』モンスターの数×300、攻撃力をアップする!」
デストーイ・シザー・タイガー
ATK1900→2500
デストーイ・チェーン・シープ
ATK2000→2600
「バトルだ!『チェーン・シープ』で『サイバー・ツイン』に攻撃!」
「迎え撃て!『サイバー・ツイン』!エヴォリューション・ツイン・バースト!!」
『チェーン・シープ』から赤い熱線が、『サイバー・ツイン』から黄色い閃光が放たれる。それは一瞬だけ拮抗したが、攻撃力の高い『サイバー・ツイン』の一撃が『チェーン・シープ』を仕留める。
「…っ!破壊された『チェーン・シープ』の効果発動!相手によってこのカードが破壊された時、攻撃力を800アップさせて復活する!」
紫雲院 LP2100→1900
デストーイ・チェーン・シープ
ATK2000→2800
「…っ!成るほど、自爆特攻してきたのはそういうことか!」
「この瞬間!『シザー・タイガー』の効果により、『チェーン・シープ』の攻撃力は更に600アップ!」
デストーイ・チェーン・シープ
ATK2800→3400
ライフを200払っただけで、『サイバー・ツイン』を超える攻撃力3400の怪物が出現する。
そのことに舌打ちをしながら、アクションカードを求めて俺は走り出す。
「あれぇ?今さら逃げ出すの?それともアクションカードを探しに行ったのかな?残念だけど、『チェーン・シープ』が攻撃する時、相手はカードの効果を発動ができない!」
攻撃力を上昇させて復活する効果に、安全に攻撃する能力。更には『シザー・タイガー』による火力を上げる。正直に言うとやってられなくなる状況に軽く舌打ちをする。
「行け!『チェーン・シープ』!偽者の融合を蹴散らせ!」
『チェーン・シープ』がさっきとは比べ物にならない程の太い熱線を放ち、『サイバー・ツイン』を簡単に吹き飛ばした。
「『サイバー・ツイン』……!!」
襲雷 手札4000→3400
苦悶の声を上げながら消滅する『サイバー・ツイン』に、行き場のない怒りが俺の中に溢れるのを感じ、憎憎しげに紫雲院を睨みつける。
「おいおい、勝手に融合モンスターを使ったのはそっちだろう?それに、こっちは君たちみたいな負け犬が、【融合】を使ってるだけでも虫唾が走るんだよ。だから……これでも喰らって地に這いつくばれ!やれ!『シザー・タイガー』!負け犬にダイレクトアタック!」
『シザー・タイガ』が奇妙な声を上げながら飛び掛り、俺を思いっきり殴り飛ばした。
「ガッ………!?」
襲雷 LP3400→900
殴り飛ばされた俺は、リアルソリッドビジョンによって実体化したビルに叩きつけられる。口の中で鉄の味して、口を切ったのが分かった。足が痛みで震えるが、足を殴りつけ、気合を入れ直して立ち上がる。
「あれあれぇ?まだ立つの?しつこいなぁ、この観客の中じゃカードにできないから、再起不能にしようっていう僕の優しさが分からないの?」
「五月蝿ぇよ。終わるならとっととターンエンドしろ……!」
殺意を込めて睨みつけると、紫雲院は手を振りながらターンエンド、と宣言した。
紫雲院 LP1900
場:デストーイ・シザー・タイガー(ATK2500)
デストーイ・チェーン・シープ(ATK3400)
魔法・罠:無し
手札:3(1枚は『エッジインプ・ソウ』)
Pゾーン:無し
「俺のターン!この瞬間、『サイバー・ネットワーク』と『タイムカプセル』のターンカウントが、それぞれ進む!」
襲雷 手札1→2
サイバー・ネットワーク
ターンカウント1→2
タイムカプセル
ターンカウント0→1
「更にリバースカードオープン!トラップカード、『エクシーズ・リボーン』発動!このカードは自分の墓地のエクシーズモンスター1体を特殊召喚し、このカードをORUにすることができる!蘇れ、我がデッキの象徴!『サイバー・ドラゴン・ノヴァ』!」
発動されたカードの前から紫色の輪が広がり、その中から『ノヴァ』が姿を現す。そして、発動したカードも『ノヴァ』のORUとなって飛んでいく
サイバー・ドラゴン・ノヴァ/光属性/★5/機械族/ATK2100 DEF1600
ORU0→1
「またそいつ?それで攻撃力を上げて攻撃するの?君たちっていっつも思うけど行動がワンパターンだよね」
「そうかもな。だが、俺のデッキがそれだけで終わると思うんじゃねぇぞ!俺はランク5の『サイバー・ドラゴン・ノヴァ』でオーバーレイ・ネットワークを再構築!」
『ノヴァ』が咆哮と共に飛翔し、飛んで行ったその先に開かれた穴に飛び込む。完全に姿が見えなくなった時、穴から一筋の光が迸る。
「紅き光を纏いし機光竜よ!今こそ限界を超越し、無限の力を示せ!サイバネティック・エクシーズ・チェンジ!!殲滅しろ!ランク6!『サイバー・ドラゴン・インフィニティ』!!」
光が走ったところから這い出るように、紅いオーラを纏った竜が姿を現した。その存在感に気圧されたのか、紫雲院の表情が驚愕のそれに変わった。
サイバー・ドラゴン・インフィニティ/光属性/★6/機械族/ATK2100 DEF1600
ORU2
「…はっ、無限の力とか言ってたけど、攻撃力2100?そんな攻撃力じゃ、僕の『デストーイ』は倒せないよ!」
「黙ってろ。『インフィニティ』の攻撃力は、自身の持つORUの数×200アップする効果を持っている。現在のORUは2つ。よって攻撃力は2500となる」
サイバー・ドラゴン・インフィニティ
ATK2100→2500
「それでも、一番攻撃力の低い『シザー・タイガー』にも届かな…」
「黙ってろと言ったはずだぞ。『インフィニティ』の効果はそれだけじゃねぇ。1ターンに1度、攻撃表示のモンスター1体をこのカードのORUにすることができる!『チェーン・シープ』を消し去れ!エボリューション・デコンポーザー・シュート!!」
俺がそう宣言すると、『インフィニティ』から青色の光が放たれ、『チェーン・シープ』の体に直撃すると、それを分解して球体に、ORUに変換して自分の力へと変える。
「当然、ORUの数が増えたことにより、その攻撃力は更に200アップする。そして、お前の『シザー・タイガー』は『デストーイ』が減ったことにより、その攻撃力は300下がる!」
サイバー・ドラゴン・インフィニティ
ORU2→3
ATK2500→2700
デストーイ・シザー・タイガー
ATK2500→2200
「バトルだ!『インフィニティ』で『シザー・タイガー』を攻撃!エボリューション・インフィニティ・バースト!」
『インフィニティ』からオーラと同じ、紅い熱線が放たれる。それを見た紫雲院が地面に落ちていたカード、アクションカードを拾って発動した。
「させるかァ!アクションマジック『大脱出』発動!このターンのバトルフェイズを終了させる!」
「無駄だ。『インフィニティ』の第3の特殊能力を発動!相手が発動したカードの効果を、ORUを1つ使うことで無効にし、破壊する!」
『インフィニティ』の周囲を漂っていたORUの1つが、エネルギー体の刃に変わり、紫雲院が発動したカードを切り裂く。
サイバー・ドラゴン・インフィニティ
ORU3→2
ATK2700→2500
「これでバトルは続行!やれ!」
『インフィニティ』の熱線が地面を突き破り、その先にいる『シザー・タイガー』を貫く。不気味な声をあげながら、『シザー・タイガー』は爆発四散して消滅する。
「…ッ!『シザー・タイガー』!」
紫雲院 LP1900→1600
「カードを2枚伏せ、ターンを終了する」
襲雷 手札2→0
襲雷 LP900
場:サイバー・ドラゴン・インフィニティ(ATK2500 ORU×2)
魔法・罠:サイバー・ネットワーク(ターンカウント2)
タイムカプセル(ターンカウント1)
2
手札:0
Pゾーン:無し
「どうした狩人さんよ。ちょっとピンチなんじゃないのか?」
挑発するように紫雲院にそう言うと、より一層殺意を宿した目で俺を睨んできた。
「ふざけるなよ…さっきから僕のモンスターを破壊したり、自分のモンスターの素材にしたりしやがって!もう許さない!絶対にここで叩き潰す!僕のターン!」
紫雲院 手札3→4
自分のモンスターがやられた憎しみ。それも、自分より格下だと思っていたエクシーズ次元の生き残りである俺に侮辱された紫雲院の怒りは、まさに最高潮を迎えている。その怒りを隠さずカードを引く紫雲院の姿は、まさに悪鬼の様だった。
「僕は手札から『
素良 手札4→3
「させると思うか?『インフィニティ』の効果発動!ORUを1つ使って、その効果を無効にして破壊する!」
紫雲院の発動したカードを、『インフィニティ』のORUの刃が切り刻む。不発となったカードを見ながら、俺は軽く舌打ちをする。
(『インフィニティ』がいる状況であんなカードを使う必要はないはず。ならば今のは本命じゃなく、次に生かすための捨石……!)
「ほんっと、君たちは愚直にしか行動しない!だからいつも負けるのさ!僕は墓地の『ファーニマル・ウィング』の効果発動!墓地のこのカードと『ファーニマル』モンスターの『ラビット』を除外し、更に自分の場の『トイポット』を墓地に送ることでカードを1枚ドローする!」
紫雲院 手札3→4
紫雲院が手札を補充する行動出た時、やはりと俺は呟きかけた。だが、紫雲院の行動は、まだ終わってはいない。
「まだだ!墓地に送られた『トイポット』の効果でデッキから『エッジインプ・シザー』を手札に加える!そして魔法カード、3枚目の『融合』を発動ッ!」
「3枚目の『融合』!?まさか、今のドローで引き当てたってのか!?」
「手札の『エッジインプ・
紫雲院 手札4→1
2体のモンスターが渦に飲み込まれ、新たなモンスターが出現する。
「現れ出でよ!全てに牙向く魔境の猛獣!『デストーイ・サーベル・タイガー』!!」
渦の中から現れたのは、いつものように全身を切り裂かれた玩具だったもの。だが、このモンスターから溢れる狂気は、他の『デストーイ』モンスターを凌駕していた。
デストーイ・サーベル・タイガー/闇属性/☆8/悪魔族ATK2400 DEF2000
「『サーベル・タイガー』の特殊効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、墓地の『デストーイ』モンスターを特殊召喚できる!帰って来い!『デストーイ・シザー・タイガー』!」
「ウヘヘヘヘヘッ!!」
デストーイ・シザー・タイガー/闇属性/☆6/悪魔族/ATK1900 DEF1200
「『シザー・タイガー』が蘇っただと!?」
「まだだ!手札から魔法カード、『
紫雲院 手札1→0
3体の『デストーイ』モンスターの姿現れ、渦に飲み込まれる。だが、その演出が他の『デストーイ』より狂気的だった。『融合』の渦が、3体の『デストーイ』を捕食するように飲み込んだのだ。
「悪魔宿りし非情の玩具よ。歯向かう愚民を根こそぎ滅ぼせ!!融・合・召・喚!!現れ出でよ!全ての玩具の結合魔獣!『デストーイ・マッド・キマイラ』!!」
渦の中から3体のモンスターの首が連結したような、『デストーイ』モンスター。『マッド・キマイラ』が姿を現した。その姿を見た観客の子供たちが、その不気味すぎる外見に悲鳴を上げる。
デストーイ・マッド・キマイラ/闇属性/☆8/悪魔族/ATK2800 DEF2000
「この瞬間!『サーベル・タイガー』と『シザー・タイガー』の効果発動!『サーベル・タイガー』は自分の場の『デストーイ』の攻撃力を400アップさせ、『シザー・タイガー』は自分の場の『デストーイ』の数×300、攻撃力をアップする!今、僕の場にいる『デストーイ』は3体。よって攻撃力は300×3で900アップ!つまり、『サーベル・タイガー』と合わせて1300アップする!!」
デストーイ・マッド・キマイラ
ATK2800→4100
デストーイ・サーベル・タイガー
ATK2400→3700
デストーイ・シザー・タイガー
ATK1900→3200
「攻撃力3000オーバーが3体……!!」
「更に!『マッド・キマイラ』は『チェーン・シープ』と同じで、一度攻撃したら相手はバトルが終わるまで効果を発動できない!つまり、この攻撃で終わりなんだよ!!」
自分のモンスターが出揃ったことで余裕を取り戻したのか、『マッド・キマイラ』の特殊能力を説明してくる紫雲院。その余裕に感謝しながら、『インフィニティ』に乗ってフィールドを飛び回る。
「……ッ!あった!!」
空を飛び、ビルの窓に置かれたアクションカードを回収。カードを確認すると、今の状況に最高に合うカードだったことに、運が良かったと安堵しつつ、紫雲院がバトルフェイズに入る前に発動する。
「アクションマジック、『高速神言』発動!デッキの速攻魔法カードをゲームから除外することで、その効果を発動する!」
高速神言(オリジナルAマジック)
デッキから速攻魔法カードを1枚、除外して発動できる。このカードの効果は、除外したカードと同じとなる。
「俺が除外するのは『リミッター解除』のカード!このターンのエンドフェイズに全ての機械族モンスターが破壊される代わりに、その攻撃力を2倍にする!」
サイバー・ドラゴン・インフィニティ
ATK2100→4200
「ちっ、アクションカードに守られたか。まぁいい。たかが1ターンの延命措置だ。次のターンで終わらせてあげるよ!僕はこれで、ターンエンド」
紫雲院の宣言と同時に、『インフィニティ』の体が木っ端微塵に吹き飛ぶ。自分の発動したカードの副作用とはいえ、エースが消滅する様を見て、心の中で謝罪する。
「…お前のエンド宣言時に、速攻魔法『サイクロン』を発動する。その効果により俺は自分の場の『サイバー・ネットワーク』を破壊する」
自分の発動したカードから竜巻が発生し、自分のカードを破壊する行動に紫雲院が怪訝そうな顔をする。
「この瞬間、墓地に送られた『サイバー・ネットワーク』の効果を発動。このカードが墓地に送られた時、除外されている光属性・機械族モンスターを可能な限り特殊召喚する。俺は『プロト・サイバー・ドラゴン』を守備表示で特殊召喚」
俺の目の前の空間が皹が入り、そこから1体の小柄な機械竜が現れる。
プロト・サイバー・ドラゴン/光属性/☆3/機械族/ATK1100 DEF600
素良 LP1800
場:デストーイ・マッド・キマイラ(ATK4100)
デストーイ・サーベル・タイガー(ATK3700)
デストーイ・シザー・タイガー(ATK3200)
魔法・罠:0
手札:0
Pゾーン:無し
(……場には低レベルのモンスターが1体。対する相手は攻撃力が3000を超えているのが3体、か。……似ているな、あの時と)
俺はふと、今の自分に置かれている状況と、以前、アカデミアに襲われたときのことを思い出していた。あの時は訳も分からず、ひたすら襲い来るアカデミア兵を倒してきた。
仲間が消滅する様を見せ付けられ、怒りで頭の中が真っ白になったこともあった。大事な家族が消えているのを知り、自暴自棄になってしまったこともあった。だが、だからこそ俺は決めたんだ。もう二度と振り返らない。前だけを見て、真っ直ぐに進むと。そして必ず、平和だった【ハートランド】を取り戻すのだと!
「負けない。いや、負けられないんだよ!!俺たちは!!俺の、タァァァァァン!!」
襲雷 手札0→1
勢いよくカードを引き込む。そのカードを見た瞬間、まだ希望が残されいることを知る。
「この瞬間!『タイムカプセル』の発動から2ターンが経過したため、棺に封印されていたカードを手札に加える!」
襲雷1→2
不気味だった棺が破壊され、その中から1枚のカードが出現し、俺はそれを手札に加える。
「更に手札から『サイバー・ヴァリー』を召喚!」
襲雷 手札2→1
サイバー・ヴァリー/光属性/☆1/機械族/ATK0 DEF0
「『サイバー・ヴァリー』はレベルも攻撃力・守備力も低いカード。だが、そのステータスの代わりに3つの特殊能力を備えている。俺はその中の一つ、"このカードと自分フィールド上のモンスター1体を除外し、カードを2枚ドローする〟効果を選択する!よって、『ヴァリー』と『プロト・サイバー』をゲームから除外し、新たに2枚のカードをドローする!」
襲雷 手札1→3
場のモンスターを犠牲に、新たなカードを引く。その引いた2枚の内、1枚のカードを見た瞬間、俺は目を疑った。
(……そうか。そういうことか。仕方ねぇ。胸糞悪いことこの上ないが、こいつで決着をつけるとするか!!)
俺はそう意気込み、3枚ある手札のうちの1枚を発動する。
「手札から魔法カード、『サイバネティック・フュージョン・サポート』を発動!このカードは自分のライフを半分を払うことでのみ発動できる!その効果により、俺は1度だけ、機械族モンスターを融合召喚する時、手札・デッキ・墓地のモンスターを素材に融合召喚を行うことができる!」
襲雷 LP900→450
「なっ、除外されているカード以外のモンスターを素材にできる融合補助のカードだって!?まさか、さっきの『タイムカプセル』で手札に加えたカードは……!!」
発動されたカードから、淡い水色の渦が出現し、融合召喚を行う準備が整う。そのことに紫雲院が驚愕する。そのことを目にしつつ、俺は残りの2枚の内、1枚のカードをディスクにセットする。秋人から託された、このデッキの切り札となるカードを。
「行くぞ紫雲院。こいつがお前を葬るカードだ!!手札から機械族モンスター専用の融合カード、『パワー・ポンド』を発動ッ!さっき発動した『フュージョン・サポート』により、俺はデッキと墓地に眠る3体の『サイバー・ドラゴン』で融合召喚を行う!!」
ディスクから光が溢れ、その中から俺の相棒とも言えるモンスター、『サイバー・ドラゴン』が透明な姿で現れる。3体は俺を見て一度、大きい声で咆哮し、意を決したかのように水色の渦に向かって飛んでいく。
「電脳を統べし原初の機光竜よ!革命の嵐吹き荒れる渦にて一つとなり、我が敵の全てを討ち滅ぼさん!!融合召喚!!」
『サイバー・ドラゴン』が飛び込んだ渦から稲妻が迸る。やがて渦は爆発し、新たな力を宿した、竜が咆哮と共に姿を現す。
「蹂躙しろ!"終焉〟の名を持つ、最強の機光竜!!レベル10!!『サイバー・エンド・ドラゴン』!!!」
サイバー・エンド・ドラゴン/光属性/☆10/機械族/ATK4000 DEF2800
咆哮と共に現れたのは、俺の持つ『サイバー・ドラゴン』の白い姿ではなく、真っ黒に染まった禍々しい外見を持つ三つ首の機械竜。その姿を見た観客は唖然とする。が、紫雲院はその姿を見た直後、それをあざ笑った。
「はっ。このターンで葬るとか言ってたけど、攻撃力4000?そんな攻撃力じゃ、僕のどのモンスターを攻撃しても僕のライフは残るよ!!」
まだ自分が有利に立っている。そう思いたいのか、紫雲院はそう言って今の状況を笑った。だが、その言葉の裏で焦っているのが感じ取れた。それを察した上で、俺はあえて口にする。奴の薄ら笑いを止めるために。
「行ったはずだ。このターンで終わりだってな!『パワー・ボンド』の効果発動!このカードによってモンスターの融合召喚に成功した時、そのモンスターの元々の攻撃力分、攻撃力をアップする!!」
サイバー・エンド・ドラゴン
ATK4000→8000
「何ッ!?攻撃力8000だと!?」
「バトルだァ!『サイバー・エンド・ドラゴン』!!『デストーイ・マッド・キマイラ』を攻撃ッ!!!」
純黒の『サイバー・ドラゴン』が咆哮と共に飛翔する。その姿を見て、自分の劣勢に気づいた紫雲院が必死になってアクションカードを探す。やがて、自分の進む先にカードが堕ちているのに気づき、それを拾って発動する。
「アクションマジック『防衛体制』発動ッ!自分のモンスターが攻撃された時、そのモンスターを守備表示に変更する!!」
防衛体制(オリジナルAマジック)
自分の場のモンスターが攻撃対象に選択された時に発動できる。攻撃された自分のモンスターを守備表示に変更する。
デストーイ・マッド・キマイラ
ATK4100→DEF2000
「これで僕のモンスターは守備表示!戦闘ダメージを受けることはない!!」
「無駄だ!『サイバー・エンド・ドラゴン』は守備表示モンスターと戦闘するとき、貫通能力を備えている!!」
「…ッ!?そん、な。ふざけるな……ふざけるな!!僕が負けるはずがない!!エクシーズの負け犬なんかに、この僕が!!」
紫雲院が自分の敗北を悟り、それでも諦めずに新たなカードを捜し求めて走り出す。だが、それを合図に、『サイバー・エンド』の攻撃の準備が整った。
「やれ!『サイバー・エンド・ドラゴン』!!終焉の光に飲まれ、散るがいい!!エターナル・エヴォーリュション・バースト!!」
三つの首からそれぞれ、信じられない程の太さの熱線が放たれる。それは『マッド・キマイラ』の体を簡単に飲み込み、その体を吹き飛ばす。やがてエネルギーの奔流が紫雲院の体を飲み込む。
「ぐ、がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
紫雲院 LP1800→0
紫雲院の小さい体が簡単に吹っ飛び、広場でその体を寝転ばらせる。その無防備な体の上空から高層ビルが降ってくる。近くで『マッド・キマイラ』が派手に吹っ飛ばされて壊したビルの欠片が落ちてきたのだ。そのことに気づいた俺は咄嗟に『サイバー・エンド』に指示を出した。
「ッ、『サイバー・エンド』!!」
俺の指示を受けた『サイバー・エンド』が飛び立ち、紫雲院の体を首と翼で守る。その背にビルが降り注ぐが、その巨体には余り効果を示さない。それを見ながらMCのニコに向かって叫ぶ。
「ニコ!!早くソリッドヴィジョンを切れ!!」
[は、ハイ!!システムを早く落としてください!!早く!!]
ニコの必死な声を聞いたのか、リアルソリッドヴィジョンが消えていく。それを見て俺もディスクの電源を切って、『サイバー・エンド』が守ってくれた紫雲院の元に駆け寄る。体にさっきの攻撃の火傷や、転んだ時にできた擦り傷から血が流れているが、命に別状がないことを確認する。
(…全く、何をしてんだがな。こいつは敵で、"俺たち〟の敵なのに、な……)
自嘲しながら立ち去ろうと歩き出す。それを止める声が後ろからする。
「ま、て……」
「…驚いたな。立つだけの力が残ってるのか」
震える両足に手を置いて、紫雲院が立ち上がっていた。そのことに驚くが、当の本人はそれを無視して続けた。
「そんな、ことは、どうでもいい…!何で、何で僕を庇った!!僕は君たちの敵だ。それなのに、何故!!」
気力だけで持っている体から悲痛な声を漏らす。そのことに俺は自嘲しながら、言葉を返した。
「……お前にも、仲間がいたから、かな」
「え……?」
俺の返答に驚いたのか、紫雲院が以外だったのか。信じられない物を見るような顔する。俺はそれを見ながら客席にいる紫雲院の仲間、ユートや瑠璃と瓜二つの二人、榊遊矢と柊柚子の姿を目にしつつ言う。
「ここでお前をカードにしてやりたいのは山々だが、そいつをしたら、この世界でできたお前の仲間が、榊と柊が悲しむ。そいつをしたら、あいつらまで憎しみの連鎖に巻き込んじまう。それを理由に襲ってこられたら、堪ったものじゃないからな」
それでも理由にならないなら。俺は言葉を紡ぎながら歩き出す。真っ直ぐ、俺の仲間が待っている場所へ。
「今度は【アカデミア】のデュエル戦士じゃなくて、一人のデュエリスト。紫雲院素良としてリベンジしに来い。……待ってるからよ」
ディスクをポケットに仕舞い、出口に向かって歩き出す。明日へ、いつの日か、アカデミアを打倒する、その日に向かって。
襲雷「木原襲雷だ。今回は俺がキーカードを紹介するぜ!今回のキーカードはこいつ!秋人から渡された、俺とあいつの友情のカード!『パワー・ボンド』だ!」
パワー・ボンド(通常魔法)
自分の手札・フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、機械族のその融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は、その元々の攻撃力分アップする。このカードを発動したターンのエンドフェイズ時、自分はこのカードの効果でアップした数値分のダメージを受ける。
襲雷「機械族モンスター専用の融合カードで、融合召喚したモンスターの攻撃力を2倍にする効果を持ってるぜ!だが、発動したターンのエンドフェイズに、召喚したモンスターの攻撃力分のダメージを受けるから、使いどころを見極めるようにしような!
襲雷「例によって誤字・脱字の報告もよろしくな!それじゃ、次回予告だ!」
~~~次回予告~~~
襲雷のデュエルが終わるのを見届けた俺は、自分の持つ知識を頼りにユートが向かうであろう公園に向かって走っていた。だが、そこに謎のデュエリストが立ちはだかった!
「そこをどけ!俺はその先に行かなくちゃいけねぇんだ!!」
「それなら、私を倒して行くんだね。ま、負けるつもりはないけどね!」
次回、【遊戯王ARC-Ⅴ アイズの名を持つ龍の主】
『狂いだす世界』
「会いたかった……会いたかったよ!秋人!!」