「……あ?ここは、どこだ……?」
全身から熱い何かに挟まれるような痛みに苛まれながら、俺はゆっくりと目を開く。だが、視界の先には何も映っておらず、自分の体があるはずの所に目を向けるが、何も映らない。そのことに少し恐怖するが、逆に暗い部屋の中にいるのかと結論付ける。
「……っ」
腕や足を動かそうと意識を向けると、動かそうとした部分に何かが絡まっている感覚がした。恐らく鎖。俺の全身が鎖のようなものに縛られているのだと考えられた。
「……目を覚ましたら何も見えない所に閉じ込められて、しかも全身が拘束された状態とか、どこのヤンデレルートだよ……」
ホラーゲームのような展開にため息を漏らす。すると、目の前に紅い光が突如として出現する。それに目をやられ、俺は目を細める。少しすると光が収まり、視界の先にはいつかの夢で見たあの扉。『運命の扉』の姿があった。
[………選択の時だ]
「あ?」
『運命の扉』が突然喋りだす。そのことに驚く俺だが、それを無視して扉は続ける。
[汝はデュエルに敗北し、それ故にこの世界に連れて来られた。汝のデッキに宿るある力に導かれて]
「ある力だと?」
[汝も気付いているはずだ。汝がハートランドと呼ばれた世界に転生した時に持っていた、三桁の数字を持つナンバーズのことだ]
「……!」
オーバーハンドレッドナンバーズ。ユート達のいたハートランドの世界でも、一般用に普及されていたナンバーズとは違う、俺だけが持つ特殊なナンバーズ。バリアン世界の神、ドン・サウザンドの力によって生み出された、呪われたナンバーズ。
「だが、あのカード達にはなんの力も無い筈だ!現に、ユートたちに貸してやったこともあったけど、暴走もしなかったし、凶暴化もしなかった!」
[それは、あのカードたちが主と認めた者にしか力を示さないからだ。そして、その時は近づいてきている。汝も気付いているはずだ。『暗黒物質』のカードを使ったときからな]
暗黒物質……『No.95』のことを言っているのか。確かに、オーバーハンドレッドナンバーズを使った時には何も痛みも感じなかったが、『No.95』のカードだけは違った。あのカードを使う時、胸が急に苦しくなる現象が起こる。それも、俺が慣れてきたと思った時に強くなってきている。
[百越えのナンバーズは待っている。汝が我が扉を開き、真の力を継承するその時を]
「俺は………」
段々意識が遠のいていく。それにつれて、『運命の扉』の姿もぼやけ始める。それに心の何所かで安堵する自分がいれば、何所か悔やんでいる自分もいる。そんな俺を嘲笑うように扉が重々しい声で俺に囁く。
[精々悩むことだ……。いずれ来る選択の時。後悔のない道を選択するためにな………]
扉のその言葉を最後に、俺は再び意識を失った。自分の心に、ほんの僅かな闇を抱きながら。
「………っ。ここは?」
何か鋭い刃物で刺された様な痛みが体に奔るが、気合でそれを押しのけて起き上がる。清潔なベッドに、自分の着ている物が診察服というのに少しだけ時間をかけたが、自分の置かれた状況を理解する。
「とりあえず、赤馬に連絡しないと。今の【アカデミア】はやばい。下手したら一瞬でスタンダードが壊滅しかねない……!」
俺が意識を失う前。つまり真紅とのデュエルで露になった新たな事実。それは、【アカデミア】の中でも、より優れた階級に属する者たちは、融合召喚以外の召喚法を操るということ。だが、電話をしようにも、肝心のディスクが見当たらない。
「くそ。誰かが持っていったのか?仕方ねぇな」
目覚めたばかりで、まだふらふらと揺れる体に力を込め、ベッドから出て立ち上がろうとしたときだった。誰かが部屋をノックし、中に入ってくる。
「入るぞ秋人。目は覚めた……」
部屋に入ってきたのは、青いコート着て首に赤いスカーフを巻いた青年。隼だった。一瞬、俺が起きていた事に驚いて目を丸くさせるが、すぐに猛禽の様な鋭い目つきに変わる。
「……目は覚めたか。秋人」
「お、おう。心配かけ……痛い!?」
素直に謝ろうと首を下げると同時に、何かが俺の頭部に突き刺さる。余りの痛さに、さっきまで揺れていた視界も元に戻る。ゆっくり刺さったものを抜くと、『エクゾディア』のパーツカード一式が頭に刺さっていた。
「ふん。今はそれ位で許しておいてやる。……傷のほうは大丈夫か?」
割と真剣に怪我の具合を聞いてくる。診察服から腹部を見てみるが、包帯が少し巻かれていて、その他の部分は傷がうっすらと残っているだけで、殆ど治りかけている。
「ああ。本調子ってわけじゃないけど、戦えないって状態じゃねぇよ。それより、俺はどれくらい寝ていた?」
「丸二日だ。幸い、お前の対戦カードは明日だ。大会には参加できそうか?」
「相手によるよ。あ、そういや俺のデッキとディスクはどこだ?見当たらねぇんだけど……」
そこまで言うと、隼が無言でディスクとデッキを手渡してくる。それを見て俺はまずデッキの確認をする。……信じたくは無かったが、やはり『
「……秋人。一つだけ、聞きたいことがある」
デッキを見て黙っている俺を見て、隼が言いにくそうに口を開いた。その先に続く言葉が何となく察したが、あえて黙っておく。
「あの時、お前がデュエルをした女のことを聞かせてくれ。お前を倒し、『フォトン・ドラゴン』のカードを奪ったその女を、俺は許すことはできない。だが、何か理由があるのなら、聞かせてほしい。他ならない、お前の口から」
真剣な眼差しで俺を見つめる隼。どこまでも愚直に、真っ直ぐすぎるその視線がどこか眩しくて、目を逸らそうとしてしまうが、一度目を閉じ、覚悟を決めて、隼の視線を受け止める。
「分かった。だけど、俺からも条件がある。このことはまだ、ユート達には知らせないでくれ。……頼む」
「……お前がそう言うのであれば、俺はそれに従おう。だが、時期が来れば必ずあいつ等にも話せ。それだけは約束しろ」
隼の意思のこもった言葉に感謝しつつも、俺はゆっくりと言葉を紡ぐ。俺があの世界。エクシーズ次元と呼ばれたあの世界に来る前の自分のことを。
翌日。自分のことを隼に話し後、俺はデッキの調整をして、今日の対戦に備えていた。今回は最初から本気で行かなければならない。体が本調子ではないため、長期戦は不利になる一方だし、今回の対戦相手はそれだけ強敵だからだ。
「その……本当に大丈夫ですか?」
「心配性だな春菜は。大丈夫だって言ってるだろ?」
わざわざ控え室にまでやってきた春菜に、俺は苦笑しながら呟く。それを聞いた春菜が心外そうに声を出す。
「だって、この間まで死ぬ間際にまでいたんですよ!!それなのにすぐアクションデュエルだなんて!それに、対戦相手がどんなものか知らないわけじゃないでしょう!?」
「……勝鬨勇雄。梁山泊塾という、“勝つためならどのような事をする”という理念を基にしたデュエル塾で育ったデュエリスト。去年の舞網チャンピオンシップでは準優勝を果たした、本大会の優勝候補の一人」
「デュエルの腕は言うまでも無くて、アクションカードを取る為にはリアルファイトで相手を病院送りにするという、非道極まりないことをする人ですよ!?本調子の秋人君ならまだしも、今の秋人君だと無理が――――」
心から心配してくれている。そのことがはっきりと伝わる春菜の言葉に、心が温かくなる。それが素直にうれしいと感じる。だが、だからこそ、俺は敢えて言う。
「それを知った上で、俺は戦いに行くんだよ。ここから先、俺達は負けられないんだからな」
「だけど!!」
「春菜。何をいっても無駄だ」
部屋の扉を開きながら聞きなれた男が春菜を呼び止める。部屋の外側から現れたのは、紫色の髪をした少年。俺達【レジスタンス】のリーダー、ユートだった。
「ユートさん!?どうして―――」
「言っても無駄だ。秋人がああいう性格なのは知っているだろう?だが、秋人。一つだけ願いが、いや命令がある」
いつものように優しい声音ではなく、【レジスタンス】のリーダーとしての声でユートが口を開く。
「お前はまだ体が治っていない。だから、無理だけはするな。体が動かなくなったらすぐに棄権しろ。それだけは約束してくれ」
「……ああ。勿論だ。ここで倒れて、【アカデミア】を潰すまで残れないとか、洒落にならないからな」
俺はそう言葉を返して、デュエル場に向かう。対戦相手の、
[お待たせしました!これより舞網チャンピオンシップ二回戦、第三試合を開始いたします!]
俺と勝鬨がデュエル場に入ると同時に、MCのニコが実況を開始する。それを見ながら俺は自分のデッキを見る。
[今回の対戦カードはLDSより桐原秋人選手!一回戦では『
ニコの実況を聞きつつ、デッキから『フォトン・ドラゴン』が抜けたこのデッキで、どこまでやれるか心配になる。
[対するは今大会の優勝候補!梁山泊塾所属の勝鬨勇雄選手!前大会では桜樹ユウ選手に敗れ、惜しくも準優勝を果たした強豪です!今回は一体どのようなデュエルを見せてくれるのか!注目の一戦です!]
デッキを見つめていると、目の前からとてつもない殺意を感じる。それを感じて視線を前に向けると、冷たい目をした少年が俺を睨んでいる。それを見た俺は、子供とは思えないほどの殺意の濃さに身震いする。
[それではまずアクションフィールドの選択です!今回選ばれたアクションフィールドは~~~!『記憶の摩天楼』だぁ!]
俺達の中央に巨大なカードが出現する。その後、リアルソリッドヴィジョンによって闇に閉ざされ、ハート型の月とネオンの光のみが照らす町へと姿を変える。それを見て、俺はどこか見覚えのある町並みだと思った。
「よ。今日はいいデュエルにしようぜ」
「……自分のする事は変わらない。自分のデッキに宿りし不死鳥が貴様を焼き払う。それだけだ」
「へぇ……面白え。やってみな!」
互いにデュエルディスクを構え、闘いの準備を済ませる。それを見たニコが勢いよく喋りだす。
[それでは参りましょう!戦いの殿堂に集いし
「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い、フィールド内を駆け巡る」
「見よ。これぞデュエルの最強進化系!」
[[[アクショ~~~~~ン!!!]]]
「「
桐原 秋人 LP4000
勝鬨 勇雄 LP4000
「先行は俺だ!俺のターン!」
オートシャッフルされたデッキから5枚のカードを引き、手札を確認する。このデッキは、俺が『フォトン・ドラゴン』のカードを失ってから急遽変えたデッキ。それ故に、事故を起こさないか心配だったが、どうやら杞憂に終わったようだ。
「俺は手札から魔法カード、『竜の霊廟』を発動する!デッキからドラゴン族モンスター、『アレキサンドライドラゴン』を墓地に送り、通常モンスターを墓地に送った事により、デッキから更にドラゴンを墓地に送る!『エクリプス・ワイバーン』を墓地へ!」
秋人 手札5→4
1枚のカードで2枚のカードを墓地へと送れるカード。だが、まだ効果の処理は終わってはいない。
「墓地に送られた『エクリプス・ワイバーン』の効果により、デッキよりレベル8の『限界竜シュヴァルツシルト』を除外。そして、『エクリプス』を除外することで手札から『暗黒竜コプラサーペント』を、攻撃表示で特殊召喚!」
秋人 手札4→3
『エクリプス』のカードをディスクから取り出す事で、黒い竜が翼を広げながら出現する。
暗黒竜コプラサーペント/闇属性/☆4/ドラゴン族/ATK1800 DEF1700
「そして除外された『エクリプス』の効果発動!このカードで除外したカード、『シュヴァルツシルト』を手札に加える。カードを2枚伏せ、ターンエンド!」
秋人 手札3→2
秋人 LP4000
場:暗黒竜コプラサーペント(ATK1800)
魔法・罠:2
手札:2
Pゾーン:無し
「自分のターン!ドロー!」
勝鬨 手札5→6
カードを引く勝鬨。カードを勢いよく引くその様と、隼とよく似た猛禽の様な目つきから、冷たい殺意を感じ、背筋が寒くなる。
「自分は手札からマジックカード『おろかな埋葬』を発動。デッキから『炎王神獣 ガルドニクス』を墓地に送る。更に手札からマジックカード『炎王の急襲』を発動する。このカードは相手の場にしかモンスターが存在しない時、デッキから炎属性の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター1体を、効果を無効にして特殊召喚する!」
勝鬨 手札6→4
発動されたカードから火柱起こる。その中から翼が羽ばたき、一体のモンスターが出現する。
「現れろ!我がデッキに宿りし不死鳥!『炎王神獣 ガルドニクス』!」
炎王神獣 ガルドニクス/炎属性/☆8/鳥獣族/ATK2700 DEF1700
「……ッ!狙いはガルドニクスループか!」
ストラクに表紙として飾られたカード、『ガルドニクス』を2体使う事で発生する無限ループ。毎ターンのスタンバイフェイズで全てのモンスターを焼き払うという、中々にふざけたコンボを使ってくる。
火柱の中から『ガルドニクス』が炎を纏って出現する。その姿に、俺はこの前にしたデュエル。真紅とのデュエルで負った火傷が疼いた。
「『ガルドニクス』!『コプラサーペント』を葬れ!」
『ガルドニクス』が炎を纏って『コプラサーペント』に突撃する。その姿を見ながら、俺は伏せカードを一度見るが、ここで使うものではないと判断し、近くを見渡す。
(……!アクションカード!)
近くにあったアクションカードが目に入り、俺はそれに向かって走る。だが、それを見た勝鬨が俺に迫る。
「アクションカードは取らせん!」
俺に立ちはだかる勝鬨。そして、アクションカードを取りに行くふりをしつつも、俺に殴りかかってくる。俺はそれを見つつ、隼との訓練で培った技術で拳を躱す。すると、今度は蹴りを放ってくる。顔の近くにまで迫ったそれを防ぐべく、俺は咄嗟に腕を出してそれを防ぐ。
(っ!?クソ、真紅とのデュエルでのダメージがまだ……!)
間一髪、顔への蹴りを防いだ俺だが、踏みとどまるために腹筋に力を込めた瞬間、真紅とのデュエルで負った傷から痛みが奔る。その痛みで足が止まると同時に、『ガルドニクス』の攻撃が『コプラサーペント』に直撃する。
「ッ!ぐぁぁぁ!!」
秋人 手札4000→3100
『コプラサーペント』が破壊され、その衝撃で俺は吹き飛ばされる。辛うじて受身を取るが、胸の痛みが強すぎて息が上がる。
「クソ……。フィールドから墓地に送られた『コプラサーペント』の効果発動!デッキから『輝白竜 ワイバースター』を手札に加える!」
秋人 手札2→3
「自分はこれでバトルフェイズを終了。カードを2枚伏せ、永続魔法『補給部隊』を発動し、ターンを終了する。そしてこの瞬間。『炎王の急襲』によって特殊召喚された『ガルドニクス』が破壊され、自分の場のモンスターが破壊されたことにより、『補給部隊』の効果が発動。カードを1枚ドローし、ターンを終了する」
勝鬨 手札4→2
勝鬨 LP4000
場:無し
魔法・罠:補給部隊
2
手札:2
Pゾーン:無し
「はぁはぁ…俺のターンドロー!」
秋人 手札3→4
「この瞬間、前のターン『炎王の急襲』の効果で破壊された『ガルドニクス』の効果発動!墓地のこのカードを特殊召喚する!舞い戻れ!不死鳥よ!」
再び火柱が迸り、『ガルドニクス』が正しく不死鳥の如く舞い戻る。
炎王神獣 ガルドニクス/炎属性/☆8/鳥獣族/ATK2700 DEF1700
「くそ、鬱陶しい鳥だ!相手の場にしかモンスターが存在しないため、手札から『聖刻龍-トフェニドラゴン』を攻撃表示で特殊召喚する!」
秋人 手札4→3
聖刻龍-トフェニドラゴン/光属性/☆6/ドラゴン族/ATK2100 DEF1400
「更に、墓地の『コプラサーペント』を除外し、手札から『ワイバースター』を、相手の場に攻撃力2000以上のモンスターが存在することで、『限界竜シュヴァルツシルト』をそれぞれ攻撃表示で特殊召喚!」
秋人 手札3→1
輝白竜 ワイバースター/光属性/☆4/ドラゴン族/ATK1700 DEF1800
限界竜シュヴァルツシルト/闇属性/☆8/ドラゴン族/ATK2000 DEF0
「効果破壊で蘇るってんなら、戦闘で殴り殺してやる!自分場のモンスター全てをリリースし、手札から『真魔獣ガーゼット』を特殊召喚する!」
秋人 手札1→0
3体のドラゴンが消滅し、巨大な悪魔が出現する。現れると同時に悪魔が吠え、その姿を見た子供達が泣き叫ぶ声がした。
真魔獣ガーゼット/闇属性/☆8/悪魔族/ATK0 DEF0
「攻撃力0のモンスターだと?」
「『真魔獣ガーゼット』は通常召喚することはできず、自分の場の全モンスターをリリースすることで特殊召喚できる特殊なモンスター。その攻撃力は、このカードを召喚する為にリリースしたモンスターの攻撃力の合計値となる!」
真魔獣ガーゼット
ATK0→ATK5800
「攻撃力5800……」
「そしてリリースされた『トフェニドラゴン』と、フィールドから墓地に送られた『ワイバースター』の効果が発動!デッキから『コプラサーペント』を手札に加え、デッキから2体目の『アレキサンドライドラゴン』を守備表示で特殊召喚!」
秋人 手札0→1
アレキサンドライドラゴン/光属性/☆4/ドラゴン族/ATK2000→ATK0 DEF100→DEF0
「そして墓地の『ワイバースター』を除外し、2体目の『コプラサーペント』を特殊召喚!」
秋人 手札1→0
暗黒竜コプラサーペント/闇属性/☆4/ドラゴン族/ATK1800 DEF1700
「そして『コプラサーペント』と『アレキサンドライドラゴン』でオーバーレイ!『ダイガスタ・エメラル』をエクシーズ召喚!」
2対のモンスターが消え、全身が翡翠色の鉱石でできた戦士が出現する。
ダイガスタ・エメラル/風属性/★4/岩石族/ATK1800 DEF800
「そして『ダイガスタ・エメラル』の効果発動!
秋人 手札0→1
ダイガスタ・エメラル
ORU2→ORU1
↓使われたORU
アレキサンドライドラゴン
↓デッキに戻したカード
アレキサンドライドラゴン
輝白竜 ワイバースター
限界竜シュヴァルツシルト
カードを新たに1枚引き、それを確認すると同時に、勝鬨のフィールドを見る。奴の場には『ガルドニクス』と『補給部隊』。それから伏せカードが2枚。『補給部隊』のせいでカードを1枚引かせてしまうが、ここが攻めるべきだと決意する。
「行くぞ!『真魔獣ガーゼット』で、『炎王神獣 ガルドニクス』を攻撃!」
『ガーゼット』の両手に黒い光が凝縮されていき、小さい球体となったそれを打ち出そうとした瞬間、勝鬨がさっき攻防で手にしたアクションカードを拾って発動した。
「アクションマジック『奇跡』発動。自分のモンスターとの戦闘破壊を無効にし、バトルダメージを半分にする」
「だがダメージは受けてもらう!」
奇跡 (アニメオリジナルAカード)
フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは半分になる。
『ガルドニクス』に直撃するはずだった黒い球体が、見えない壁と衝突して消える。戦闘破壊さえできなかったとはいえ、ダメージを与えることには成功した。
勝鬨 LP4000→LP2450
「ちっ、手札から魔法カード『超再生能力』を発動!このターン、俺が手札から捨て、リリースしたドラゴン族モンスター数だけ、エンドフェイズにカードをドローする!この効果に該当するカードは3枚!よってカードを3枚ドローし、ターンエンドだ!」
秋人 手札1→3
「そのエンド宣言時にリバースカードオープン!速攻魔法『炎王円環』!自分の場の炎属性モンスターを破壊し、墓地の炎属性モンスターを特殊召喚する!フィールドの『ガルドニクス』を破壊し、墓地の『ガルドニクス』を蘇生!」
『ガルドニクス』の姿が砕け散り、まったく同じ姿『ガルドニクス』が再生される。それと同時に、『補給部隊』により、勝鬨の手札が1枚増える。
勝鬨 手札2→3
秋人 LP3100
場:真魔獣ガーゼット(ATK5800)
ダイガスタ・エメラル(ATK1800 ORU×1)
魔法・罠:2
手札:3
Pゾーン:無し
「自分のターン!このスタンバイフェイズ。効果は破壊された『ガルドニクス』が復活する!」
勝鬨 手札3→4
三度不死鳥が空を舞い踊る。その姿はとても美しいが、突如『ガルドニクス』が炎を纏う。
「自身の効果によって特殊召喚された『ガルドニクス』の効果発動!このカード以外のこのカード全てを破壊する!」
炎を纏った『ガルドニクス』が全てのモンスターを焼き払う。それがネオン街に赤く染め上げ、俺が勝鬨から逃げられないように炎の壁を作り出す。
「く、そがぁ!これじゃアクションカードも取りに行けねぇ……!」
「自分のモンスターが破壊されたことにより、『補給部隊』の効果で新たに1枚ドローする。そして手札から魔法カード、『ツインツイスター』を発動!手札1枚をコストに、相手の場のマジック・トラップを2枚破壊する!」
勝鬨4→3
2枚の伏せカードを飲む込む様に竜巻が起こり、それを吹き飛ばす。
↓破壊されたマジック・トラップ
リ・バウンド
ガード・ブロック
「っ!だが破壊された『リ・バウンド』の効果発動!カードを1枚ドローする!」
秋人 手札3→4
「それがどうした!バトルフェイズ!『ガルドニクス』でプレイヤーにダイレクトアタック!」
『ガルドニクス』が口から業火が放たれる。辺りを見渡すがアクションカードも存在せず、炎が俺に直撃する。
「ぐ、がぁぁぁぁぁぁ!!あ、あああああああ!!!」
秋人 LP3100→400
熱い。熱い熱い熱い熱い熱い!!
全身を覆う炎が俺の服を、ディスクを、体を焼く。真紅とのデュエルで一度味わったものとよく似た痛みに、俺はあの時のことを幻視する。
(くそ……がぁ……。あの時と、同じように、負ける……のか?)
少し経つと炎が消え去り、辺りの冷たい風が俺の体を冷やす。それと同時に、俺は手札のカードをディスクに置く。
「自分の場に、何もカードが無い時にダメージを受けた時……。手札から『冥府の使者ゴーズ』を、特殊、召喚する……!」
秋人 手札4→3
冥府の使者ゴーズ/闇属性/☆7/悪魔族/ATK2700 DEF2500
「この、効果で特殊召喚した時、その時に発生したダメージの種類によって効果が変わる。戦闘ダメージの時、受けたダメージと同じ攻撃力・守備力の、『冥府の使者カイエントークン』を特殊召喚する……!」
冥府の使者カイエントークン/光属性/☆7/天使族/ATK?→ATK2700 DEF?→DEF2700
炎の壁を越えて、2体の戦士が俺を守るように出現する。それを見た勝鬨が舌打ちをしつつも、顔色一つ変えずにデュエルを続ける。
「自分は新たにカードを3枚伏せターンエンドだ」
勝鬨 手札3→0
勝鬨 LP2450
場:炎王神獣 ガルドニクス(ATK2700)
魔法・罠:補給部隊
4
手札:0
Pゾーン:無し
「はぁ……はぁ…俺の…く…」
カードを引こうとディスクに手を当てるが、真紅とのデュエル。そして今の『ガルドニクス』の攻撃で負ったダメージのせいで、地面に倒れる。それを見た勝鬨が始めて声色を変える。
「諦めろ。貴様の場にはモンスターが存在するが、それも『ガルドニクス』の効果で焼き払われる。それに対し、自分の伏せカードは4枚。それに加えて『ガルドニクス』が存在する。それを見た上で、まだデュエルを続けようというのか?」
「当たり、前だ!ライフが0になるまで、俺は絶対に諦めねぇ!」
理解できない。そう呟く勝鬨の声に対し、搾り出すように声を出す俺だが、全身から迸る痛みのせいで意識が朦朧とする。気のせいか、痛みも余り感じなくなってきていた。
(や…べぇ…意識、が……)
頭の中でそう考えたが、突如として睡魔が襲ってくる。俺はそれに打ち負け、意識を手放しかけたその時だった。
《力が欲しいか?》
頭の中に突然。声がした。聞いたことも無い。だが、何か覚えている。そんな感じがした。
(誰……だ?)
《俺はお前の体に宿っている力。オーバーハンドレッド・ナンバーズの力を封じている者だ。名前はバリアン》
突然、頭の中で聞こえた声。バリアンと名乗るそれに俺は驚く。夢で見た扉、『運命の扉』が、カオスオーバーハンドレッド・ナンバーズの力を握っていると思っていたからだ。
《その解釈で間違ってないぜ。俺は扉の内側に、オーバーハンドレッドナンバーズの集合意識みてぇな物だ。そして、テメェの闇の存在でもある》
(闇ってことは……お前を使うってことは、カオスの力を使うって事か)
カオスの力。人の欲望や憎しみ。怒りといった負の感情の集まったもの。アニメで言う【遊戯王ZEXAL】で出現したそれは、人の道を外れさせ、その身を破滅へと導いたものが多かった。いや、実際に滅んでいった。
《お前にはカオスの力を使う資格がある。そして、使わなけりゃ負ける。……もう嫌なんだろ?負けんのは》
バリアンの声が俺の心を刺す。使えと。勝つために。自分の為にカオスの力を解き放てと。
(俺は………)
決断に迷っていた時だ。目を閉じていたはずの俺に、『運命の扉』が出現する。それを見た瞬間。俺は自嘲するように笑った。そうだ。その通りだ。なら、選択肢は一つしかない。
(いいだろうバリアン!そして『運命の扉』!俺に奴らの力を扱う資格があるというのであれば!俺にその力を寄越せ!あいつらを、ユートや隼。襲雷や春菜を守る力を!!)
重々しい扉がゆっくりと開き、その中から紅い光が流れ出し、俺の全身を覆う。光が俺の全身を包むと同時に、俺の体にあった火傷や胸の傷が消えていく。まるで、俺にあった傷が、元から存在しなかったかのように。
「ふん。何を言おうが自分の必殺コンボ。ガルドニクスループは既に完成している。次のターン、自分の『ガルドニクス』が貴様のモンスターを焼き尽くし、ダイレクトアタックを決める。それで終わりだ」
傷が消え去り、意識がはっきりとしてきた俺に、淡々と言う勝鬨の声が聞こえる。だが、俺はそれがおかしく思えた。何故、目の前の男は既に勝ったと思っているのだろう。何より、何故俺は、この程度の雑魚に負けかけているのだろう、と。
「ーーーーははは」
「……何がおかしい」
俺の行動を見た勝鬨が、怒気を隠さずに言う。それだけで空気が変わる。自分が倒す相手から、倒される相手に変わる。だが、それでも俺は笑い続ける。
「ハハハハハハハハハハハ!!アハハハハハハハハハ!!アハハハハハハハハハ 」
ただただ笑い続ける。そして実感する。これだ。これが“決闘”だ。殺るか殺られるか、狩るか狩られるかを競い合う。これこそ、俺が望んだ“デュエルモンスターズ”!!
ならば負けるわけにはいかない。こんな所で狩られてなるものか。必ず生き残ってやる。たとえ、どのような事をしようともなァ!!
「俺のターーーーーン‼」
高らかに宣言する。すると、俺の手に黒い何かが現れる。『ダークマター・ドラゴン』が纏っている瘴気に似たそれは、俺の手から意志を持っているかのように揺らめく。
「全ての闇よ!絶望よ!我が左手に宿りて、新たなる“冀望”の道を示せ!バリアンズ・カオス・ドロー!」
秋人 手札3→4
揺らめく瘴気が輝き、新たなる力と共に煌めく。その瞬間、俺に始めて味わう快感が奔る。新しい力。この力で
「俺はデッキの『青眼の白龍』を除外!手札からこのカードを特殊召喚する!」
引いたカードをディスクに叩きつけると、目の前に『ブルーアイズ』が出現する。それと同時に、陽炎の様な透明な姿でキサラも現れる。
《秋人……貴方は……》
(悪ィなキサラ。だが、こうでもしねェと真紅に追いつけねェンだ。俺が愚かだって言うなら見限っても構わねェぞ)
ありのままの感情を伝える。すると、キサラは顔を少し困った様に顰めるが、首を横に振った。
《どこまでもお供します。私たちの力は、貴方と共に……》
そう言うと、キサラの体が闇に包まれる。その中から現れたのは青白かった髪が青黒くなり、着ていた服は麗人の様な美しい黒色のドレスへと変わる。彼女は受け入れてくれたのだ。俺の心の闇を。ならば、俺もそれに応えなくてはならない。
「やるぞ、キサラ!」
《はい!我らの力、その全ては秋人と共に!》
「《我が魂たる白き龍よ。世界の罪を身に纏い、闇すらも己が力へと変えよ!」》
『ブルーアイズ』の体に様々な機械が拘束具の様に装着されていく。その姿はとても歪で、邪悪だった。
「《現れよ!『Sin青眼の白龍』!》」
秋人 手札4→3
Sin青眼の白龍/闇属性/☆8/ドラゴン族/ATK3000 DEF2500
「ここに来て攻撃力3000だと!?くっ!」
『ブルーアイズ』の姿を見た勝鬨が走り出す。俺はそれを見てアクションカードで対抗する気だろうと察しがついたが、あえて放置する。
「自分の場にレベル8のモンスターが存在する時、手札の『星間竜パーセク』はリリース無しで召喚できる。来い!『パーセク』!」
秋人 手札3→2
星間竜パーセク/光属性/☆8/ドラゴン族/ATK800 DEF800
「悪ィなァ勝鬨。お前はここで死ね!レベル8の『Sin青眼の白龍』と、『星間竜パーセク』の2体でオーバレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!」
2体のドラゴンが咆哮と共に飛び立ち、上空に現れた漆黒の空間に向かって飛翔する。
「顕現せよ!『
穴の中から黒曜石の四角錐が出現し、口上と共にその形状を変化させる。やがてそれは『107』の数字を体に刻んだ漆黒の竜へと変わる。
「現れろ!ランク8!『
No.107銀河眼の時空竜/光属性/★8/ドラゴン族/ATK3000 DEF2500
「グォォォォォォォォォォ!!」
「くっ……!!」
『タキオン』が吠え、それに勝鬨の足が竦んだ。俺はそれを気付かずに『タキオン』を見る。新しい力を得た俺に喜んでいるのか。それとも、自分の
「驚くのは、まだ、早い!見せてやろう。貴様とのデュエルに幕を下ろすカードをな!手札からマジック発動!『
秋人 手札2→1
「ランクアップマジック!?」
「このカードは自分の場に存在するエクシーズモンスター1体を、同じ種族でランクが1つ上の『
『タキオン』が咆哮と共に、その漆黒の翼を羽ばたかせながら飛び立ち、進む先に広がる黒い空間に飛び込む。その後、細長い黄金の四角錐が出現する。それと同時に、俺の体を紅いオーラが包み込む。そして俺は感じた。全身に漲る力を!
「顕現せよ。『
口上と共にその形状が変化していく。『タキオン』とは比べ物にならない巨大さ。そして威圧感を携えた黄金の
「現れろ!黄金に輝く龍の星!ランク9!『
CNo.107 超銀河眼の時空龍/光属性/★9/ドラゴン族/ATK4500 DEF3000
[な、なんと!桐原選手!別ブロックで戦っている黒咲選手と同じ『RUM』を使い、モンスターをランクアップさせた!!しかもその攻撃力は4500!]
「驚くのはまだ早い!『ネオタキオン』の特殊効果発動ォ!
より鋭利的な構造になったORU。CORUが『ネオタキオン』に取り込まれ、3つの首が同時に咆哮する。すると、時が巻き戻るような演出が起こり、『ガルドニクス』の動きが静止する。
「そしてこれで終わりだ!装備魔法『巨大化』を『ネオタキオン』に装備!俺のライフが貴様のライフより低いため、装備モンスターの攻撃力を倍加する!」
秋人 手札1→0
「ギュオオオオオオオオオオオオ!!!」
CNo.107 超銀河眼の時空龍
ATK4500→ATK9000
[なんとォ!!この土壇場で攻撃力9000のモンスターを召喚した!!]
「だが自分の伏せてあるカードはモンスター蘇生の『リビングデッドの呼び声』!ダメージ無効の『ガード・ブロック』!効果ダメージを無効にする『地獄の扉越し銃』!攻撃モンスターを手札に戻す『神風のバリア-エアーフォース-』!この鉄壁の布陣を越える事などできるはずがない!」
「ならば試してみなァ!その鉄壁の力をよォ!ラストバトルだァ!『CNo.107 超銀河眼の時空龍』で、『炎王神獣 ガルドニクス』を攻撃!」
『ネオタキオン』のそれぞれの首から、黄金の光を貯める。その光が会場を満たした時。それが放たれる。
「死ねェ!勝鬨勇雄ォ!アルティメットタキオン・スパイラルバーストォ!」
全ての口から黄金の一撃が放たれる。全てを飲み込むその光は、会場を眩く包む。
「トラップ発動!『神風のバリアー-エアーフォース-』!これで貴様のモンスターは消滅する!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!『ネオタキオン』がタイム・タイラントを発動したターン!相手はフィールド上であらゆるカードの効果を発動できない!」
勝鬨が発動したカードが発動されること無く消滅する。その上、勝鬨の伏せカード諸共、『ガルドニクス』。そして勝鬨をも飲み込んで吹き飛ばす。
「うォォォォォォォォォォ!!」
勝鬨 LP4000→LP0
『ネオタキオン』の一撃が地面を抉り、対戦相手の伏せカード。モンスター。そしてプレイヤーのライフ全てを破壊する。そして、無様にも地面に這い蹲る勝鬨の姿を見て、俺は笑う。
「ふはははははは!!あーはっはっはっはっ!!」
高笑い共に、『ネオタキオン』の姿が消滅する。その様を見たニコがはっ、とマイクを持って宣言する。
[はっ!しょ、勝者!桐原秋人選手!!序盤は押されがちでしたが、『RUM』。そして攻撃力9000のモンスターを召喚して勝利を収めましたァ!!」
ニコの勝利宣言と共に、観客から万雷の如く拍手が送られる。その拍手の聞き心地の良さを感じながら、一人静かに会場を去るのだった。
秋人「今回のキーカードは『CNo.107 超銀河眼の時空龍』だァ」
CNo.107 超銀河眼の時空龍/光属性/★9/ドラゴン族/ATK4500 DEF3000
レベル9モンスター×3
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する全てのカードの効果はターン終了時まで無効になり、このターン、相手はフィールド上のカードの効果を発動できない。また、このカードが「No.107 銀河眼の時空竜」をエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。●自分フィールド上のモンスター2体をリリースして発動できる。このターンこのカードは1度のバトルフェイズ中に3回までモンスターに攻撃できる。
秋人「最上級ランクのエクシーズモンスターで、攻撃力4500。『No.107 銀河眼の時空竜』がランクアップした姿だ」
秋人「CORUを1つ使うことにより、こいつ以外の表側表示のカード効果は無効となり、発動ターン、相手はフィールド上から一切カード効果の発動はできない」
秋人「それに加え、『ネオタキオン』は通常の『タキオン』を素材としている時、自分の場のモンスターを2体リリースすることで、モンスターに3回連続で攻撃する事ができる。場合によってはワンショットキルが可能だァ」
秋人「今回から少しの間、この口調になるから指摘もよろしく頼む。それ以外にも誤字・脱字とかの指摘も頼むわァ。ンじゃァ次回予告だァ」
~~~次回予告~~~
(地の文は秋人)
新しい力。カオスの力を手に入れて勝鬨を粉砕した俺の帰り道。俺は二人の男女に襲撃される。
???(女)「貴様……エクシーズ次元の残党だな!!」
秋人「だとしたらァ……どうするつもりだァ?」
???(男)「決まっている!デュエルだ!貴様を倒し、プロフェッサーに功績を立てるのだ!!」
次回、【遊戯王ARC-Ⅴ アイズの名を持つ龍の主】
『勲章と自由を求めし者』
秋人「さァ……俺を楽しませろよ?三下どもォ!!」