遊戯王ARCーV アイズの名を持つ龍の主   作:青眼

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大変長らくお待たせしました! これからは少しずつですが、遊戯王の方も更新していきます!! 
久しぶりに執筆したので、少し自信がありません。なにか不明なところがありましたらご指摘ください!


44話 答えを求める戦い 

紫雲院素良 LP4000

木原襲雷 LP4000

 

「…………決闘するのは構わないけどよ。お前、本当にどうしたいんだよ」

 

 互いに5枚のカードを引き、ディスクを構えた後に襲雷は目の前の少年へと尋ねる。決闘をするのは構わないし、理由もなく行うのも特に問題は無い。だが、自分は『アカデミア』を倒す為に活動する『レジスタンス』の一人で、素良は自分達をゲームの獲物だと狩り続けた『アカデミア』の一人。故郷を、家族を、友を奪われた『レジスタンス』の一員である襲雷の心の奥底には消えることのない復讐心がある。『アカデミア』のデュエル戦士と知れば問答無用で決闘を挑み、完膚なきまでに相手を叩き潰した後にカードにしている。それはきっと変わる事は無いだろうし、心に刻まれたこの思いが消えるには長い時間がかかるだろう。

 

 だが、その復讐心が今回に限って顔を出さない。それは、素良に一度勝っているからという慢心から来るものではなく、かといって彼が敵ではないと思っているからでもない。自分でもよく分からない感情に自分でも左右されているのだと実感しているが故に彼は問う。この決闘が始まる前、素良が言った言葉を反芻しながら。

 

「自分だけの決闘を見つけたい。それで、お前はそれを見つけてどうしたいんだ。俺達に謝罪しながら、懺悔でもしながらカードにされるのか? それとも、俺達に協力して『アカデミア』を倒す為に協力でもするのか?」

 

 半ばどうでもよさ気に聞いてはいるが、襲雷の表情は硬い。瞳には心なしか怒りが滲み出ており、カードを握る指には力が籠っている。そこには、中途半端な答えを出したら容赦はしないと、口に出さずとも理解させられるような思いが込められていた。それを一身に浴びた小さな戦士は、口に含んだ飴を取り出して困ったように笑った。

 

「………まだ分かんない、かな。僕だって色々と悩んでるんだ。今まで通り『アカデミア』の誇るデュエル戦士として戦おうという思いはある。けど、遊矢や柚子。権ちゃんみたいにスタンダード次元で過ごした楽しい決闘を知って、僕も思ったんだ。こんな風に決闘が出来たら楽しいんだろうって。ずっとずっと、このまま楽しい決闘が出来たらいいのにって思った」

 

 輝かしい物を思い出すように目を閉じて独白する青髪の少年。心なしか両手が震えて見えたのは錯覚か、それとも本当に震えているのか。けれど少年はそれを口に出すことなく再び飴を口に咥え、カードに目をやりながら今の自分が持てる答えを出す。

 

「だから、もう一度君と決闘をして答えを出したいんだ。あの時、君は僕に言ったよね。『今度は一人の決闘者としてリベンジしに来い』って」

「………ああ。確かに言ったな」

 

 思い返すは数日前、舞網チャンピオンシップのトーナメント戦でのこと。襲雷が素良を下した直後に言った言葉だ。あの時の言葉が今でも自分の頭から離れないと、少年は口に出して苦笑した。

 

「ここに来るまで、僕は一度だって負けることは許されなかったんだ。偵察に来たときは実力を隠す必要もあったから仕方なかった。けど、あの時の僕は全力で決闘して負けた。『アカデミア』だと君は知っていたのに、『レジスタンス』の決闘者である君は僕をカードにしなかった」

「…………何が言いたい」

「この際だからはっきり言うよ。あの時僕には君が、襲雷は眩しく見えたんだ。本当は今すぐにでも僕をカードにしたいだろう。けど、遊矢や柚子が自分達みたいにならないようにと思って堪え、僕に一度だけチャンスをくれた。

 ………今までの僕なら侮辱されただの、情けを掛けられたんだって思ってたよ。けど、今は違う。こうやって君ともう一度決闘が出来るということに感謝している。だから―――」

 

 五枚あるカードの中から一枚を引き抜き、それをディスクへと置く。眩いエフェクトと共にそれは姿を現し、少年の後ろにて陽炎の様に揺らめく。

 

「だから、僕はこの決闘で見つけたいんだ。今まで通り『アカデミア』として戦うのか。それとも、遊矢たちと共に歩むのかを! それを、この決闘で見つける!」

 

 確固たる意志を以て宣言する素良。その表情には今までには無い熱い思いが浮かび上がっている。道が分からない、どう進めばいいのか分からないし誰も道を示してはくれない。だから、今度は自分で進む道を決める。誰から指示されたわけでもなく、外ならぬ自分の気持ちに従って。それを襲雷は、素良とは対照的に困ったように笑った。

 

 

 

(あぁ……これは困ったな。どうやら俺は、余計なことをしちまったらしい)

 

 

 

 今の素良はあの時戦った時とは違う。少なくとも、決闘者としてはあの時よりもかなり成長している。今はまだ自分の進む道が分からない? 冗談は休み休みに言って欲しいと、溜め息を漏らしながら襲雷は微笑む。

 

 

 

(気づいていないだけで、お前はもう道を選んでるよ。あぁクソ、これだからガキは嫌なんだ。気づかない内に、さっさと成長してるんだからな―――)

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆

 

「行くよ、僕の先行! まずは手札から永続魔法『トイポット』を発動! このカードの効果により手札を一枚捨ててデッキから一枚ドロー! それを互いに確認し、ドローカードが『ファーニマル』モンスターなら特殊召喚。それ以外なら墓地に送る!」

 

 

 突如出現した杖を持ったガチャピンのようなもの。手札という名のコインが投入されると同時にカプセルが転がり出し、素良もカードを一枚引く。それを高らかに掲げてからディスクにセットする。それと同時にカプセルの蓋が開き、中から一匹のフクロウのぬいぐるみが出現した。

 

「引いたカードは『ファーニマル・オウル』! よってこのカードを特殊召喚してその効果を発動! 『オウル』が手札からの特殊召喚に成功した時、デッキから『融合』を手札に加える!」

 

 

ファーニマル・オウル/地属性/☆2/天使族/ATK1000 DEF1000

 

「『ファーニマル・オウル』のモンスター効果発動! ライフ500をコストに手札・フィールドのモンスターを素材として融合召喚を行う! 僕はフィールドの『ファーニマル・オウル』と手札の『エッジインプ・チェーン』を融合させる!」

素良LP4000→3500

 

 

フクロウの一鳴きと共に様々な色が交じり合う渦が出現し、二体のモンスターがその中に飲み込まれる。それから数秒と経たないうちに渦から閃光が奔り新たなモンスターが姿を現す。可愛らしい羊の人形だったもの内側から這い出るように何本もの鎖が溢れ出し、不気味な声と瞳を晒しながら素良の前へと舞い降りる。

 

「融合召喚! 現れでちゃえ、全てを封じる鎖のケダモノ! 『デストーイ・チェーン・シープ!』

 

デストーイ・チェーン・シープ/闇属性/☆5/悪魔族/ATK2000 DEF2000

 

「『チェーン・シープ』の素材になった『エッジインプ・チェーン』のモンスター効果! このカードが手札から墓地に送られたことによりデッキから『デストーイ』カードを手札に加える。僕は『魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)』を手札に加えて、カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 

 

素良 LP3500

場:デストーイ・チェーン・シープ(ATK2000)

魔法・罠:トイポット

     2

手札:2

ライトPゾーン:なし

レフトPゾーン:なし

 

襲雷 LP4000

場:なし

魔法・罠:なし

手札:5

ライトPゾーン:なし

レフトPゾーン:なし

 

 

 

「どうした、1ターンは『チェーン・シープ』だけでいいのかよ?」

「先行で展開してもあまり意味がないからね。まずは様子見といかせてもらうよ」

「そうかい、それを後悔しないといいけどな! 行くぜ俺のターン!」

 

 

「俺は手札から『サイバー・ドラゴン・コア』を召喚して効果を発動! このカードの召喚に成功した時、デッキから『サイバー』か『サイバネティク』と名のついた魔法(マジック)(トラップ)カード1枚を手札に加える。俺は『サイバー・リペア・プラント』を手札に!」

 

サイバー・ドラゴン・コア/光属性/☆2/機械族/ATK400 DEF1500

 

「次に手札からマジックカード『機械複製術』を発動する! こいつは自分の場の攻撃力500以下の機械族モンスターを対象に発動できるマジックカード。その効果により、対象となったモンスターと同じ名前のモンスターを2体デッキから特殊召喚する!」

 

 

「『コア』を対象にしてってことは、ランク2のエクシーズモンスターが狙い? けどランク2で『チェーン・シープ』を倒すなんてことは………!?」

 

 疑問に満ちた声で尋ねる素良だが、それを無視してデッキから飛び出した2枚のカードをディスクへとセットする。体の小さい『コア』を庇うように出現する2体のモンスター。それは『コア』の体とは比較にならない程に強靭な構造で出来ていた。

 

「俺は『機械複製術』の効果で通常の『サイバー・ドラゴン』を2体特殊召喚する!」

 

サイバー・ドラゴン/光属性/☆5/機械族/ATK2100 DEF1600

 

「な、なんで普通の『サイバー・ドラゴン』が? 『コア』を対象にしたなら『コア』を呼ぶしか………」

「残念だが、『コア』にはフィールドと墓地にある時は『サイバー・ドラゴン』として扱う特殊能力がある。つまり、『機械複製術』で召喚されるのは通常の『サイバー・ドラゴン』でも構わないってことさ」

 

 これとは別の方法ではあるが。『地獄の暴走召喚』というカードを使った場合でもこの効果が適用され、通常の『サイバー・ドラゴン』が複数召喚される。そのため名前だけなら『サイバー・ドラゴン』が3体以上出現することになるのだ。

 

「そっちが行かないならこっちから行かせてもらうぞ! 俺はレベル5の『サイバー・ドラゴン』2体でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

「っ、しまった。木原の狙いはランク5の、それもあのモンスターのエクシーズ召喚か!」

 

 2体の『サイバー・ドラゴン』が目の前に開いた黒い穴に吸い込まれる。暗闇の中に光る星のような輝きを放ちながらも、その中央で一際眩い閃光が周囲を照らす。やがて閃光が弾け飛び、中から赤い機械の龍が姿を現す。

 

「眩き赤雷よ、地上を照らす閃光となりて現れろ! エクシーズ召喚!」

 

―――ランク5! 『サイバー・ドラゴン・ノヴァ』!!

 

サイバー・ドラゴン・ノヴァ/光属性/★5/機械族/ATK2100 DEF1600

 

「このまま攻撃してもいいが、返り討ちにされるのは嫌なんでね。更に俺は『ノヴァ』を素材としてオーバーレイ・ネットワークを再構築する!」

 

 召喚されたばかりの『ノヴァ』が赤い光となり、自ら渦へとその身を沈める。それに伴い渦も大きさが増し、先ほどよりもより大きな閃光がフィールドを照らす。おぞましい咆哮がフィールドに轟く。黒い渦から再び赤い閃光が迸り、『ノヴァ』よりも禍々しい機械龍が姿を晒す。

 

「赤き光を纏いし機光龍よ。今こそ限界を超越し、無限の力を示せ! エクシーズ召喚! サイバネティック・エクシーズ・チェンジ!!」

 

―――殲滅しろ、ランク6! 『サイバー・ドラゴン・インフィニティ』!!

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ/光属性/★6/機械族/ATK2100 DEF1600

 

「っ、こんな序盤で『インフィニティ』を………!!」

「様子見なんてしねぇ、最初からクライマックスだ! 『インフィニティ』の効果により、自身の攻撃力を自分の持つORU(オーバレイ・ユニット)の1つにつき200アップする。今のORUは3つ、よって攻撃力が600上昇!」

 

サイバー・ドラゴン・インフィニティ

ATK2100→ATK2700

 

「まだだ! 俺は『インフィニティ』のモンスター効果発動! 1ターンに1度、フィールドに存在する攻撃表示モンスター1体を自身のORUにする! 対象は『デストーイ・チェーン・シープ』だ!」

 

 『インフィニティ』が咆哮と共に『チェーン・シープ』へと飛び掛かる。長く撓る尻尾でその体を拘束し、ゆっくりと口を開く。やがて放出される閃光が『チェーン・シープ』を覆いつくし己の力に変えようとした瞬間。素良がディスクに手を置く。

 

「消えろ、エボリューション・デコンポーザー・シュート!!」

「同じ手は、二度も喰わないよ! リバースカードオープン! カウンター・トラップ、『デストーイ・マーチ』発動! 自分フィールドの『デストーイ』モンスターを対象にされた時、それを無効にして破壊する!」

「なにっ!?」

 

 『チェーン・シープ』を拘束していた『インフィニティ』の体が突如として爆散する。その衝撃に身を揺らされる襲雷ではあったが、その場で踏みとどまり手札を確認する。だが、それをする暇もなく素良が更なる効果を発動させる。

 

「まだ終わらないよ! 『デストーイ・マーチ』の更なる効果! この効果発動した後、対象となった『デストーイ』モンスターを墓地へと送って、エクストラデッキからレベル8以上の『デストーイ』モンスターを融合召喚扱いで特殊召喚する!」

「カード効果の無力化に加えて、更なる『デストーイ』モンスターを呼び出すだと!?」

 

 『チェーン・シープ』の姿が消え、素良はディスクから飛び出たカードを取り出してディスクにセットする。気味の悪い猛獣の声と共に、新たなモンスターが姿を現す。

 

「現れ出ちゃえ、全てに牙剥く魔境の猛獣! 『デストーイ・サーベル・タイガー』!!」

 

デストーイ・サーベル・タイガー/闇属性/☆8/悪魔族/ATK2400 DEF2000

 

「おい待て、確かそいつは融合召喚されたら」

「そう! 『サーベル・タイガー』が融合召喚扱いで特殊召喚されたから特殊能力が発動! 墓地の『デストーイ』モンスター1体を特殊召喚する! 帰っておいで、『デストーイ・チェーン・シープ』!!

 

デストーイ・チェーン・シープ/闇属性/☆5/悪魔族/ATK2000 DEF2000

 

「まだまだ! 『サーベル・タイガー』のもう一つの効果! このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールドの『デストーイ』モンスターモンスターの攻撃力は400アップする!」

 

デストーイ・サーベル・タイガー

ATK2400→ATK2800

 

デストーイ・チェーン・シープ

ATK2000→ATK2400

 

「…………なるほどな。最初のターンで『チェーン・シープ』を出したのは俺に『インフィニティ』のを出させ、それを倒す為だったという訳か。随分と慎重じゃねぇか」

「あのモンスターには痛い目に遭わされたからね。真っ先に攻略しないと厄介だからさ。それよりいいの? 結構ピンチなんじゃない?」

 

 こちらのエースモンスターを破壊し、加えて自分のフィールドを厚くして余裕が出たせいか。こちらを煽りながら笑みを浮かべる素良。確かに召喚権も行使し、相手の場には攻撃力2000以上のモンスターが2体。明らかに襲雷が不利だろう。だが、そんな逆境の中にいながらも襲雷は不敵な笑みを浮かべて返す。

 

「おいおい………まさか、『インフィニティ』を倒しただけで良い気になってるわけじゃないよな?」

「…………!」

「俺のターンは、まだ始まったばかりだぜ! 俺は手札に加えた『サイバー・リペア・プラント』を発動! このカードは墓地に『サイバー・ドラゴン』が存在する時に発動でき、デッキか墓地のいずれかにある光属性・機械族モンスターを1体手札に加えることができる! 俺は墓地の『サイバー・ドラゴン』を手札に戻す」

 

 これで場と手札に存在する『サイバー・ドラゴン』の数は2枚。そして、手札にある1枚のカードを襲雷は取り出す。それはあの時以来、勝つために手段を択ばないと決めた時からデッキに入れたカード。彼の友人から渡されたカードたちの一枚が、今その姿を現す。

 

「行くぞ紫雲院! 俺の覚悟をその目でしっかりと焼き付けな!」

「…………来る!」

「手札からマジックカード『融合』を発動! フィールドの『サイバー・ドラゴン・コア』。そして手札の『サイバー・ドラゴン』を融合させる!」

 

 

 襲雷たち、エクシーズ次元に住まう者たちが忌み嫌うマジックカード。ある意味ではトラウマの象徴とも言える『融合』のカードの効果により、2体の『サイバー・ドラゴン』がエクシーズ召喚の時とはまた違う渦に飲み込まれる。

 

「原初の機光龍よ。核なる機光龍と共に、革命の嵐吹き荒れる渦にて一つとなり、新たな力共に降臨せよ!! 融合召喚!!」

 

 ――――レベル8! 『サイバー・ツイン・ドラゴン』!!

 

サイバー・ツイン・ドラゴン/☆8/光属性/機械族/ATK2800 DEF2100

 

「更に装備魔法『重力砲(グラヴィティ・ブラスター)』を『サイバー・ツイン』に装備! 攻撃力を400アップさせる!」

 

 発動させた装備カードにより、『サイバー・ツイン・ドラゴン』の瞳が真紅に染まる。さらに2つある首の間に新たな砲撃が装着され、攻撃力が上昇する。口の中に潜まれているものと合わせ3つの砲口が紫雲院へと向けられる。

 

サイバー・ツイン・ドラゴン

ATK2800→ATK3200

 

「行くぞ紫雲院! 『サイバー・ツイン・ドラゴン』で『デストーイ・サーベル・タイガー』に攻撃する! 同時に、この瞬間『サイバー・ツイン』に装着された『重力砲』の効果! 装備モンスターが相手モンスターと戦闘する時、その効果をバトル中のみ無効化する!」

「なんだって!? それじゃ、『サーベル・タイガー』の攻撃力が……!!」

 

デストーイ・サーベル・タイガー

ATK2800→ATK2400

 

「気持ち悪い玩具を消し飛ばせ! エヴォリューション・ツイン・バースト!」

 

 『サイバー・ツイン・ドラゴン』の備え付けられた三つの砲口から三色のビームが放たれる。効果を無効化された『サーベル・タイガー』は力なく俯き、抵抗することなくビームに体を貫かれて破壊される。

 

「くっ、っ―――! こんな簡単に『サーベル・タイガー』が……!」

素良 LP3500→LP2700

 

「この瞬間、『デストーイ・サーベル・タイガー』が消滅したことで『デストーイ・チェーン・シープ』の攻撃力が元に戻る!」

 

デストーイ・チェーン・シープ

ATK2400→ATK2000

 

「さらに、『サイバー・ツイン・ドラゴン』は自身の効果によって、一度のバトルフェイズで二回の攻撃が可能! 『デストーイ・チェーン・シープ』に連続攻撃! エヴォリューション・ツイン・バースト、第二打ァ!!」

 

 『サイバー・ツイン・ドラゴン』の砲塔に再び熱が灯る。再び放たれたビームが今度は羊の化け物の体を貫き、爆散する。その衝撃に当てられて素良の体が宙を舞うが、『アカデミア』で培った経験を駆使して無事に着地した。

 

「くっ――――!! やってくれたね………! だけどこの瞬間、戦闘破壊された『チェーン・シープ』の効果発動! このカードが破壊された時、墓地のこのカードの攻撃力を800アップさせて特殊召喚する! 帰ってこい、『チェーン・シープ』!!」

素良 LP2700→LP1500

 

デストーイ・チェーン・シープ

ATK2000→ATK2800

 

「はっ、だが攻撃力2800じゃ俺の『サイバー・ツイン・ドラゴン』の敵じゃないぜ! メインフェイズ2、カードを1枚伏せてターンエンドだ! さぁ、次はお前のターンだぜ!」

 

 

 

素良 LP1500

場:デストーイ・チェーン・シープ(ATK2800)

魔法・罠:トイポット

     1

手札:2

ライトPゾーン:なし

レフトPゾーン:なし

 

襲雷 LP4000

場:サイバー・ツイン・ドラゴン(ATK3200)

魔法・罠:重力砲(サイバー・ツイン・ドラゴン)

     1

手札:2

ライトPゾーン:なし

レフトPゾーン:なし

 

 

 

「………見事にやってくれたね。おかげで僕のライフが半分も消し飛んじゃったよ」

「らしくない様子見なんてことするからだろ。ほら、見せてみろよ。お前のデュエルをよ………!」

 

 ディスクを強く構え直しながら素良を挑発する襲雷。全力で目の前を倒す襲雷のデュエルは、素良のフィールドを荒してライフを大きく削った。そして、場には攻撃力3200を誇る『サイバー・ツイン・ドラゴン』。だが、素良はそれを恐れることなくこちらを見つめてくる。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 勢いを付けながらカードを引き抜く素良。残りの手札は今のドローで3枚。その内2枚は公開情報として正体がバレている。『融合』と『魔玩具融合』の2枚では、襲雷のフィールドへと攻め入るには心もとない。だが、それは『融合』デッキの宿命とも言えるものだ。故に、その対抗策を素良はしっかりと用意している。

 

「僕は永続魔法『トイポット』の効果発動! 手札の『融合』を墓地に送ってカードを一枚ドロー! それが『ファーニマル』モンスターなら特殊召喚する!」

 

 公開情報でもあった『融合』をコストに新たなカードを手にする。引いたカードを確認しつつ、それをディスクへと叩きつける。

 

「僕が引いたのは『ファーニマル・ドッグ』! よってこのモンスターを特殊召喚! 更に『ファーニマル・ドッグ』が手札からの特殊召喚に成功したことにより、デッキから『ファーニマル・ペンギン』を手札に加えるよ!」

 

ファーニマル・ドッグ/地属性/☆4/天使族/ATK1700 DEF1000 

 

「次にトラップカード『融合準備(フュージョン・リザーブ)』を発動! エクストラデッキの『デストーイ・ホイールソウ・ライオ』を見せて、融合素材として指定されている『エッジインプ・ソウ』をデッキから手札に加え、墓地に『融合』のカードがあればそれも回収できる!」

「一気に手札を5枚にまで増やした!?」

「まだまだ! 墓地の『ファーニマル・ウィング』の効果! このカードと『ファーニマル・オウル』を除外してデッキから1枚ドロー! そして、『ファーニマル・ウィング』の効果で『トイポット』を墓地に送ってもう1枚ドロー! 最後に『トイポット』が墓地に送られたことで『エッジインプ・シザー』をデッキから手札に加える!」

 

 トラップと墓地に送られたモンスターの効果を駆使することで手札を一気に回復させた素良。手札に加わったカードの数枚は分かっているとはいえ、一気に5枚ものカードを手札に加えたその手際は鮮やかとしか言いようがない。

 

「手札3枚だったのにもかかわらず、もう手札が8枚に増えている……だと………!?」

「これだけあれば何でもできる! 僕は手札に戻した『融合』を発動! 手札の『エッジインプ・ソウ』と『ファーニマル・ペンギン』を融合させる! 悪魔宿りし鉄の歯よ。翼持つ海鳥と一つとなりて、新たな力と姿を見せよ!」

 

 

 

 融合召喚! 現れ出ちゃえ! 『デストーイ・ホイールソウ・ライオ』!」

 

 

 

デストーイ・ホイールソウ・ライオ/闇属性/☆6/悪魔族/ATK2400 DEF2000

 

「そしてこの瞬間、『デストーイ』モンスターの融合素材となった『ファーニマル・ペンギン』の効果発動! デッキからカードを2枚ドローして、手札を1枚墓地へと送るよ」

 

 

 

↓墓地に送られたカード

エッジインプ・シザー

 

 

 

「そして、最後にマジックカード『魔玩具融合』を発動ッ! フィールドと墓地に存在する融合素材モンスターを除外して、『デストーイ』融合モンスターを召喚する! 僕が融合素材にするのは墓地の『エッジインプ・シザー』と、『ファーニマル・ペンギン』!」

 

「っ、墓地を肥やしながら即座に二回目の融合だとッ!?」

 

 手札を回復し、公開情報であったカードを墓地に埋葬することで新たなモンスターを呼ぶ布石とする。どのデッキでも言えることを素良はさも当然の様に行い、それに応えるように彼のデッキも回り続ける。墓地から現れた二体のモンスターが一つとなり、新たな魔物が姿を現す。

 

「融合召喚! 現れ出ちゃえ、『デストーイ・シザー・タイガー』!」

 

デストーイ・シザー・タイガー/闇属性/☆6/ATK1900 DEF1200

 

「げっ、確かそいつ特殊効果って」

「ふふん、結構厄介な効果だよ♪ 『シザー・タイガー』が融合召喚に成功した時、素材になったモンスターの数だけ相手のカードを破壊する! 『重力砲』とリバースカードを破壊するよ!」

 

 不気味な笑い方をしながら、腹部から伸びた巨大なハサミがリバースカードを切り刻まんと迫る。

 

「破壊されるくらいならここで使う! トラップカード『和睦の使者』発動! このターンに俺が受ける戦闘ダメージを0にし、モンスターの戦闘破壊を無効化する!」

 

 『シザー・タイガー』から伸びたハサミが襲雷のカードを切り刻む。だが、その中から開かれた1枚のカードから光の粉が降りかかり、『サイバー・ツイン・ドラゴン』と襲雷の体を包み込む。これでこのターンは凌げる、そう考えていた襲雷ではあったが、一つだけ失念していたことがあった。

 

「『重力砲』が破壊されたことで、『サイバー・ツイン・ドラゴン』の攻撃力は元の2800に戻る」

「こっちは『デストーイ・シザー・タイガー』の効果で、自分の場の『デストーイ』モンスター1体につき300アップする。僕の場にいる『デストーイ』モンスターは3体。よって、僕の『デストーイ』モンスターの攻撃力はそれぞれが900アップする!」

 

サイバー・ツイン・ドラゴン

ATK3200→ATK2800

 

デストーイ・チェーン・シープ

ATK2800→ATK3700

 

デストーイ・ホイールソウ・ライオ

ATK2400→ATK3300

 

デストーイ・シザー・タイガー

ATK1900→ATK2800

 

 場に揃う高い攻撃力を誇るモンスターたち。そのどれもが『デュエルモンスターズ』におけるある種の基準である3000に近く、それを超えるものばかり。そんな中、素良は残念そうな表情を浮かべるも、すぐに笑みが戻る。

 

「戦闘破壊できない、か。ならここで『デストーイ・ホイールソウ・ライオ』のモンスター効果発動! 相手フィールドの表側表示モンスターを1体破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを与える!」

「なにっ!?」

 

 『ホーイルソウ・ライオ』の顔に取り付けられたチェーンソーが飛び出し。『サイバー・ツイン・ドラゴン』の体を切り刻み、その体が爆破する。その攻撃力2800のダメージが襲雷の体に叩き込まれ、体が勢いよく吹き飛ばされた。

 

「くっ、うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

襲雷 LP4000→LP1200

 

 爆発の勢いに吹き飛ばされた襲雷の体が古代都市エリアの部屋へと叩きつけられた。とてつもない激痛が襲雷を襲うが、そのままゆっくりと立ち上がる。その時、襲雷の目の前に一枚のカードを見つけた。

 

(…………アクションカード!)

 

 道端に落ちていたカード。それは、今行われているアクションデュエルにて使われる特殊なカード。これを拾うことでいつでも手札から即時発動できる便利なカード。それを拾うと手を伸ばした襲雷。だが、手が届く寸前で伸ばした手を引っ込める。

 

(……いや、これは紫雲院の答えを求めるデュエル。なら、こんな姑息な手を使わず正々堂々と戦う必要がある! なら、こんなものは必要ねぇ!)

 

 爆発の影響で砂埃が舞うフィールドの中。その中から飛び出し、デュエルを続行する意思を表示する。それを見た素良が安堵するように表情を変え、手札から2枚のカードを引き抜く。

 

「……僕は、カードを2枚伏せてターンエンド」

 

 

 

素良 LP1500

場:デストーイ・チェーン・シープ(ATK3700)

  デストーイ・ホイールソウ・ライオ(ATK3300)

  デストーイ・シザー・タイガー(ATK2700)

魔法・罠:2

手札:3

ライトPゾーン:なし

レフトPゾーン:なし

 

襲雷 LP1200

場:なし

魔法・罠:なし

手札:2

ライトPゾーン:なし

レフトPゾーン:なし

 

 

 

「さぁて、これで君の場にはカードは存在しない。それに引き換えモンスターが3体。リバースカードも2枚ある。さて、君はこの盤面をひっくり返せるかい?」

「はっ、これくらいの逆境どうってことぁねぇよ! 見てな、次の俺のターンで逆転してやるよ!」

 

 往復して合計4ターンしか経っていないのにもかかわらず、激化していくデュエル。この戦いの果てに素良は自分の求める答えは得ることが出来るのだろうか。

 

「行くぞ、俺のターン!!」

 

 

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 

「っ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………!!」

 

 場面は変わり、氷河エリア。この場に立ち並ぶ二人のデュエリスト。片方の場には異形のドラゴンが3体並び、一方の場にはリバースカードしか残っていない。息を荒くしながら膝を着く少女を見下ろすのは一人の青年。だが、その瞳には冷酷に戦況と少女を見るのみ。

 

「無駄だ星野。お前じゃ、俺に傷をつけることさえできない。早くサレンダーでもして、オベリスクフォースを倒しに行くんだな」

「ま、って。待ってよ。まだ、デュエルは、終わってない………!!」

 

 半ば興ざめだと言わんばかりにディスクを下ろし、膝を突く少女に背を向ける。つい先ほどまで戦っていた相手のことを鑑みず、己の目指す先にひたすら歩き続けるその背中はあまりにも孤独にすぎる。それを止めたくて、その理由が知りたくて少女は青年にデュエルを挑んだ。だが、その結果がこれだ。デュエルで相手と対話するどころか、満足に戦えてすらいない。そんな少女に時間をかけているほど男は時間が残されてはいないのだ。

 

「………聞こえなかったのか。これ以上は時間の無駄だと言ってるんだ。互いに不毛な時間を過ごすこともない。俺には俺の目的が、お前はお前のために――――」

「私のライフはまだ残ってるッ! デッキだってまだ残ってるッ! なら、私はまだ戦い続けるッ! それが!」

「レジスタンスの決闘者の心構えってかァ? はっ―――――笑わせんじゃねェぞ」

 

 春菜の声に対し何も感じず、それを鼻で笑いながら青年は仕方ないと言わんばかりにディスクを構えなおす。開いていた目を細め、己の進む道を阻む外敵を駆除するべく決闘者特有の殺気を放つ。

 

「―――――っ!」

「なら、とっとと終わらせてやるよ。二度と俺の前に立ちはだかるなんて馬鹿な真似が出来ないように、そのガラス細工の自信を粉々にしらやらァ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




素良「今回のキーカードは『デストーイ・マーチ』!」



デストーイ・マーチ (カウンタートラップ)
(1):自分フィールドの「デストーイ」モンスターを対象とするモンスターの効果・魔法・罠カードを相手が発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。その後、以下の効果を適用できる。●対象となった「デストーイ」モンスター1体を墓地へ送り、レベル8以上の「デストーイ」融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、次の自分エンドフェイズに除外される。



素良「『デストーイ』モンスターを対象とするカード効果を無効にできるカウンタートラップで、最上級『デストーイ』融合モンスターを特殊召喚できる! 作中で出したように『サーベルタイガー』を出せば、墓地に送った 『デストーイ』モンスターを特殊召喚できるコンボが強力だよ!」



~~~次回予告~~~

激化する二人のデュエル。一人の少年は己の求める答えを追い求め、もう片方の少年は戦いにきた少年に一人の男として付き合う。それとは別に少年と少女の戦いも苛烈を極めていく。

襲雷「さてどうする? この圧倒的な“力”を前に、どう戦う!!」
素良「見つけたんだ。ようやく、僕のやりたいことが! だから、僕は――――!!」

次回、遊戯王ARC-Ⅴ アイズの名を持つ龍の主

『融合合戦。デストーイVSサイバー・ドラゴン』

素良「これが、僕の全力だ――――――!!」


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