東方化猫記 作:Mia・Sim
月の光が凄く眩しくて起きた。と同時に何か頭に浮かんで来た。
『陰と陽を操る程度の能力』
なんぞそれ?と思ったが、百聞は一見に如かず。とりあえず陰…たぶん影のことか、を操ってみよう、ということで、その辺の本の近くに影があるのを見つけて念じた。
(そこの本の影私の近くにこい。)
と。
すると、音もなくババババババッと本の影が折り重なった。
本当にびっくりした。ポカーンって擬音がぴったりなくらい。
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そんなことをぼんやり思い出していると、主人が来た。
あの後わかったことなんだけど、私を拾ったメイドさんの名前は十六夜咲夜(いざよいさくや)という様だ。
『時を止める程度の能力』を持っていて、ナイフ投げが得意で、瀟洒(しょうしゃ)で…
うん、主人の自慢してたらきりないわ。あぁそうだそうだ、私を正確な意味で拾った金髪赤目幼女、その子の名前はフランドール・スカーレットという。
『ありとあらゆる物を破壊する程度の能力』を持っている。凄くおっかない。本気出せばたぶんこの辺り一体消し飛ぶわ。
「さあ猫さん、お嬢様にお会いしましょう。ですからグルーミングもちゃんとしましょうね〜♪」
うきうきと私の毛に一日に何回もブラシを入れるのは一日で慣れた。
それだけ私の毛が好きなのだろうか。
「咲夜〜、頼まれてた関連の本とってきたわよー」
「ありがとうパチェ。えーと綺麗に、しっかり、ゆっくりとやる、焦りは禁物…」
主人…貴方が今ブラッシングしようとしてるの化猫だよ?少なくとも主人よりはたくさん生きてるよ?
齢600年は軽く越してるよ?ちょっと前までは森育ちだったけど。
「よし!できた!さあ、お嬢様にお会いしましょうね?」
うん、つっやつやになったのは感謝します主人。ありがとうございます。ただ一つ、耳をくいくいするのをやめて。
-夜、紅魔館
「…お嬢様、例の猫をお連れしました。入ります」
「この子が昨日拾った猫です。いかがいたしますか?」
「……ゔぁろゔぇんぬ。」
「え?」
「その子の名前よ、ヴァロヴェンヌ。その名前しかあり得ないわ。」
「…!ありがとうございます!お嬢様!」
これで、主人の主人に認められたのだが…どうも幸せな日々は長く続かないらしい。
-ある日の日中
「ククク、紅魔館ノ門番ハ居眠リバカリシテイルカラナ…」
「フーッ‼︎フギャァァ‼︎」
「ハッ、ネコゴトキニ何ガデキル?ケケケケケケケケ…」
「…猫ごときで悪かったわね、この木っ端妖怪が。」
「!? 妖怪カ!!」
「ごめんね?私は今、とーーっても怒ってるから、手加減は無しで。」
といった瞬間、腕をもぎ取る。
食べる気も起こらないほど怒りが凄まじかった。
腕をもぎ取った時に気付いた。影が自分の意のままに動くなら…と。
妖怪は怯んでいる様だが、そんなことはどうでもいい。
「…韓紅花にみつくくるとは」
ぼそりと不意に浮かんだ百人一首の下の句をいった瞬間、妖力を解放し影を操って妖怪を葬る。
「…別当、散り花の価値もあらず」
そして、妖怪の足元の影や林の影が起き上がり、凄まじい濁流となって妖怪を無残に飲み込んだ。
あたりには静寂が戻った。だが、それは本当の静寂ではなかった。
「…ヴァロヴェンヌ…?ヴァロヴェンヌなの?」
主人に気づかれてしまった。私が妖怪だということを。それは、別れを意味することだ。
「ごめんなさい、ご主人。私はあなた様を騙しておりました。ですが、私がもらった名前は忘れはいたしません。また、ドコカでお会いいたしましょう。お嬢様と妹様にはご迷惑をおかけいたしますが、よろしくと言っておいてください。
私はご主人を裏切った罰として、百鬼七異形、と名乗らせていただきます。では。」
「ひゃっき、なのいなり?」
次の瞬間には、猫、否、ヴァロヴェンヌの姿はなくなっていた。