Evangelion二次創作 作:0053
俺は受話器を持っていた。それは緑色でテカテカしていた。
スピーカはなにか重要なことを伝えているようだが、内容はあまりわからなかった。
なぜ緑色かというのは、目の前の受話器の親分がカードをゲロったところでわかった。公衆電話である。
俺は、昨日は布団で寝たのに、なぜいきなり家を飛び出して公衆電話の前で突っ立っているのだろう、と疑問に思ったが、
最近ネットで見た明晰夢の情報を思い出し、そうかこれは夢なのかと納得した。
この、俺の夢の中の公衆電話はどうやら避難を指示しているようだった。
――――――――――
何かの建物内の湖をボートで進んでいる。真っ暗でよくわからないが、少し血の匂いがするのでホントの湖ではないようだ。
地獄の血の池のようで、そしたら俺は閻魔に裁かれる前の罪人だろうか。夢の中にいるつもりで死んでいるのなら笑い話にもならない。
俺はまだまだ若いのでやることをたくさん持っているからだ。
幸い地獄でも何でもなく、俺の他に二人の三十路(憶測である)が同伴している。ここに来る前、その人に資料をもらったが内容は極秘らしい。
極秘らしい資料を読んでいると、この夢の年代設定は現実と同じ―2015年―という記述があった。
それにしては俺のところより科学が進歩しているようなしてないような気分だ。
「ついたわよ」
三十路の金髪のほうが岸に上がれと指図した。この人は俺の趣味ではないが、なぜ夢に出てくるのか甚だ疑問である。現実で会ったことはない。
しぶしぶ陸に足をつけると、いきなり鬼のような巨人が顔を真紫にして俺を睨んでいた。やはり俺は裁かれるのだ。そして紫の巨人は言い放った。
「久しぶりだなシンジ」
シンジとは夢の中での俺の名前である。らしい。多分。というのは金髪ではない方の三十路がミサトというのだが、それが俺をシンジと呼んだからだ。
俺の本当の名は……あいにく夢の中では曖昧が大部分を占めるようだ。
つまり、久しぶりシンジ会いたかったよ、ということである。紫の巨人とは面識がないのだが、俺は涙ながらに「久しぶり」といった。
久しぶりついでに裁かれるのである。酷な話だ。
「出撃」
「なんですって、本気ですか司令カクカクシカジカ――」
ここから俺のわけのわからない話が3分くらい続いた。
「――逃げちゃダメよ何事からも」
ハッしたとき、わけのわからない話はカオスを巻き込み、それこそ目の前の巨人のように俺を潰しかねない概念となった。
つまり、紫の巨人に乗れということである。ここからかなり端折ってしまった部分の話になるが、受話器を戻して唖然としていた時、
まさに怪獣が街をぶち壊さんばかりに暴れまわっていた。そこにミサトさんが助けに来てくれて、お父さんのところに行くわよというわけである。
流れからして、目の前の巨人がお父さんだろう。じゃあ俺が乗れと指図されてるのは、お父さん?
「わかりました乗ります!」
いつのまにか連れて来られた少女には触れなかった。
―――――
全て終わったころには、気を失っていたのだが、無事病院で目が覚めた。それと同時に覚めてはならないのだという強烈な焦りが俺を襲った。
つまり、俺が夢だと思っていたのは、実は夢ではなく、夢で夢が覚めるということは、つまり現実ということである。
では俺が現実だと思っていたことが夢だったのかというと、そうでもない気がするのだ。いままで過ごしてきた日々は……曖昧である。
「うひゃー困ったぞ」
困った気分は底抜けだ。困ったついでに散歩をした。
そこで紫の巨人はただのロボットであることを知り「ええー!!ロボットなんですか?」というと通りがかりの金髪―リツコ―がムッとした。
――――
当然住むところがない。だが夢の中で家に住んで、寝食を行うというのも狂気を地で行く話である。
植物状態の人間でもこんな芸当は無理だろう。でも植物状態なら、働かなくても物をくっていけるし、物を食えないとしても苦しみを感じないから楽に死ねるなと思った。
今の状態は植物状態よりもひどい。夢の中で巨大ロボットに乗って怪獣を倒す日々である。現実の俺はもうちょっとで死ぬのではないだろうか。
「一人ぐらし?のんのん私のところに来なさい!」
おせっかいばばあというアダ名をつけてやろう。