少し隣の異世界で   作:狐のテイル

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第2話 逃避行

「まさか単独で飛行する事が出来たなんて!」

 

 私にお姫様だっこされてながら鞄を抱えるルキは興奮した声を上げる。

 

「それ以上に私がビックリしてるよ!いきなり入ってきた人が発砲するわ武装集団が撃ってくるわ、超能力に目覚めるわなんか生えてくるわ空飛んでるわ、今日はなんて日だ!」

 

「事故に遭って、死んだと思いきや実は死なずに異世界に飛ばされるしね!」

 

「空も飛んでるしね!」

 

 元々あったらしいけど、ルキ曰く

 

〝左側に120度の円の弧が外に向いていて、一辺が垂直になっており、

そしてもう一方の辺から順に長い結晶が伸びている翼のような部位が。

右側は青色の光る細かい粒子がすごい勢いで噴出している。〟

 

な翼(右側)を巨大化させて飛んでいる。

 もともとこの翼に推力が有るのか、はたまた噴出してる部分に推力が有るのかは解らないが高速移動出来ているわけで……。

現在はルキが仲間と合流すべく指定した地点へ向かっている。

 

「ねぇ!アナタあの光は何だったの?!」

 

「あの光?ムカついたから記憶を消しといた!」

 

――以下、回想

 

「あっはっはっはっはっ!どうした?一人じゃ何もできないんですかねぇ?!」

 

 完全に沈黙したパワードスーツに狼狽えるオッサンに、私は青く輝く右手を向ける。

 

「こ、こんな事をしてただで済むと思うなよ……!我々が持つ全戦力で貴様を殺してやる!!」

 

「はん!こちとら5分かからずこの文明を捻り潰せんだよ……アンタの戦力と、私が文明ぶち壊すのと、どっちが早いだろうねェ?」

 

 なんとか相手の隙を作るべく、虚勢を張り根拠もない事を述べ続ける。

矛盾が出ないように、常に頭をフル回転させながら。

 

「くっ……!!なら今ここで殺ってやる……!全機再起動!!」

 

 一体彼は何を言ってるのだろう?

一人で大声を出し、勝手に慌てふためく初老の男性を可哀想な物を見るかのごとき眼差しを送っていた。

 

「な、何故だ!何故実行されない!」

 

「あー、ひょっとして、システムだかプログラムだかにその結晶がクラックしてるとでも思ったの?はぁー、哀れだなぁ……ホント哀れだ……余りにも可哀想だから優しい優しいこの葵さんが全部教えてあげよう……。

その結晶はね、そのオモチャに着いてる動力源をブッ壊したの。

電源が入らなきゃそれはただのオブジェって事。」

 

「そ、そう言う事――」

 

 すかさずオッサンの右手で頭を掴み、脳幹の血管を流れる血液を操作して意識を強制終了させた。

 

「コンプリートか。それにしても……まるで空気だな、貴様 」

 

 頭から手を離し、どや顔でルキの方を見る。

 

「そりゃあんな超展開について行ける訳ないでしょうが……。このまま逃げるわよ。煮るなり焼くなり、やり残したことは今のうちにやっといて……」

 

 そう言ってスマートフォンらしき端末を取り出し、誰かと連絡し始める。

 やり残したこと、なんていきなり言われても本当に焼却するしか無いんじゃ……。

なら今後のためにどうするか……元の世界に帰還できるという可能性は少ない。帰れないかもしれない。

不確定要素は取り除きたいけど、どういう手段がある……。

 

――殺害?実行に移すにしても、非力な私には残りの少ない時間に片付ける事は不可能。

いや、目覚めた能力を使えば可能?反射した瞬間に能力を全て理解出来た。今浮かぶ手段でも何万通りと有る。

そもそも、何より平和的じゃない。

 

「……だったら相手から私の記憶を消せばいいんじゃ……」

 

 そう呟いた途端、地面から結晶が突き出て男たちの眉間に突き刺さって眩い光を放つ。

数秒後に結晶は光と共に跡形もなく消え去った。

 

「そろそろ時間が危ないわ。行きましょう」

 

――そして冒頭に戻る。

 

「全くデタラメな能力ね。聞いた事が無いわよ……」

 

「そもそも超能力者ってこの世界ではゴロゴロいるわけ?」

 

「自然発生してる能力者は今現在も一定確率で確認されてるし、後天的に発現させる事だって出来たわ。それこそ掃いて捨てるほど。まぁ天然モノには精度も威力も勝てないけどね……。」

 

 その後天的に発現した能力者の事を魔法使いとか魔術師って呼ぶんじゃないかと勘繰りたくなる様な世界に飛ばされたそうです……。

 

「まぁそれを含めて全部説明してあげるから待って――」

 

 言葉が淀んだかと思うと、聞き慣れないような高い音が背後から聞こえてくる。

飛行機のジェット音を高くしたような感じだろうか。

 

「思った以上に早かったわね。私達の信用できる味方よ」

 

 黒く塗られたティルトローターのような輸送機が頭上を通過し、目の前に躍り出る。

ティルトローターと言ったものの――

 

「――プロペラがないよね。どうやって飛んでんのコイツ」

 

 機体後部のカーゴドアが展開。誘導員がライトを振っている。

 

「どうやってって……そうね、イオンジェットよ。」

 

「重力下でも航行出来るようになったとか未来世界かここは……。」

 

「プロペラって言ってたものね?」

 

「ジェットエンジンも有るっての!もう中に入るよ」

 

 誘導員に従って機体の貨物庫に近付き、翼の様な物をもとのサイズに縮小。

ゆっくりと内部に進入して着地。お姫様だっこしてたルキを地面に立たせた。

 

「葵、送迎ご苦労!もう解除してもいいわよ」

 

「お調子者かこいつ……」

 

 などとボヤきつつ腕と背中から生えた結晶を消滅させる。

 

「で、私をどこに連れてってくれるわけ?ねぇルキちゃん!この先夏が来るから海があるところがいいなーっ☆」

 

「そうね、海は有る……泳ぐには日本海とか瀬戸内海に行った方が良いけど。太平洋も良いねわ。あえて湖に行く?さぁ、どの都道府県かしら?」

 

「……大阪?」

 

「その通――」

 

 静かに安定して飛行していた機体が爆発音と共に激しく揺れ、大きく旋回する。

 機内に響き渡る警告音に全員が戦闘態勢に入っていた。

 

「敵襲だ!」

 

 一人が叫ぶ。

 

「敵影10機!後方より高速で接近してきます!」

 

 機内は切迫した空気に包まれる。

聞き慣れない単語が飛び交い、緊張感を徐々に増していく。

そんな中でも私は1人平然と機内を傍観していた。

仕方ないじゃん!襲われた事は解ってもそれ以上に何が起こってるか理解出来ないんだから!

 

「つーか、この航空機って何かついてないんすかー?機関銃とかフレアとか」

 

「フレア?装備してるはずだけど……どうして?」

 

「いやほら、今草木も眠る丑三つ時じゃん。肉眼にしろカメラにしろ目眩しにはなると思うんだけど……」

 

「しかし、追ってきてるのはおそらく新型で――」

 

「じゃあ全員!ありったけのスタングレネードだかフラッシュバンだか閃光弾を床に置いて私のところに送って!早く!」

 

 戸惑いながらも各々スタングレネードを転がしてくれた。

合計182個のスタングレネードは単三電池程のサイズだった。

 

「イメージしてたスタングレネードじゃないな……コレって性能的にどうなの?

まぁ、これだけ有れば時間は稼げるか。」

 

 爪先で床を小突くと、重力から解放されたかの様にフワリとスタングレネードが宙に浮く。

 

「歓迎しよう、盛大にな!」

 

「待て!何をするつも――」

 

「Let's rock!」

 

 右手を掲げ、指をパチンと鳴らす。

金属同士を軽くぶつけた音と共に光が辺りを昼のように照らした。

 

「音は軽く反射できたものの光は反射できなかったか……」

 

「……エネルギー反応、5機ロスト。残り半分です……」

 

「なるほど、こんなものか……。パイロット、今どこ?座標とかじゃなくて地名と距離でお願い。誰かゴーグルと通信機を……」

 

 右腕に結晶を纏わせ、背中から翼と粒子を放出する。

一人の兵士が壁に掛かっていたゴーグルを取り、通信機と共に渡してくれた。

 

「伊豆半島石廊崎から30キロ地点です」

 

 わざわざ海から大阪に向かってるのか……。地上から見つけられるリスクは確かに少ないか……が、航空部隊がいる。連携は完璧。

 

「……え、コレって巻けるの?」

 

「ジェネレーター出力を最大限に上昇させれば可能よ。ステルス航行でね」

 

「あと時間はどれだけ掛かる?」

 

「約460秒です」

 

「へぇー……そんなに時間があるんだ……」

 

 機体が再びぐらつく。先程の爆発に比べて被害が少な――

 

「メインシステムダウンしました!」

 

――たはー!いやぁー、甚大でしたぁー!

 

「じゃ、ちょっと時間稼いでくる!」

 

 輸送機の後方数メートル先に自身をテレポートさせ、追跡者達と対峙する。

 追跡者はどれも身体に密着した黒いスーツに頭部、胸部、腕部、脚部にグレーの装甲を装着。背部にはブースターを中心にX状に並んだウイングが生えたバックパックを背負っていた。

 

「へぇー、女の子も戦線に立つんだ。君たちバイト?」

 

「しゃ、喋った?!」

 

 何だこの扱い。こっちに来てからなんなんだろうね?

 

「ハン!ただの能力者になにビビッてんだよ!ウチらの仕事は未確認機の撃墜だけだ。とっとと撃墜すりゃ良いんだよ!」

 

「で、でも……!」

 

 仲間内で揉める彼女達をマジマジと見つめて解析する。

ものの数秒かからずに解析を終えたものの、たいして危険視するほどのモノは無かった。

強いていうならピッチピチのボディースーツがかなり強度が高く、装甲は電磁波で弾丸を弾くって事。あと一定時間動きを機敏にできる事かな。

 

「オラオラなにボサっとしてんだ!」

 

 一人が鋼鉄製のブレードを構えながら突撃してくる。

肉薄した瞬間、自信に満ち溢れた表情になり、目にも止まらぬスピードでブレードを私の胸に触れようとした。

 

「甘ぁーい。君、未知の敵に近距離戦は無謀だったねェ!」

 

 ――その時、ブレードは砕け散りバキバキと音を立てて腕が捻じ曲がった。

彼女は声にも成らないような悲痛な叫びを上げ、自信に満ち溢れた表情は絶望に歪む。

 痛み支配された彼女は姿勢制御が出来なくなり、ふらふらと漂いながら高度が下がっていった。

 

「はははははは!格が違うんだよ!格が!」

 

 絶望が支配する。見た事も聞いたこともない正体不明の敵に攻撃が通らない絶望が。

 

「か、勝てるわけない……!」

 

 右手を広げ、ゆっくりと掌を呆然としている四人へ向ける。

 

「う、うわぁぁぁぁぁあ!」

 

 アサルトライフルを構え一斉に発砲。雨のように降り注ぐ弾丸を全身で受け止め、全てを反転。

跳ね返された弾丸は特殊な素材で出来ているスーツの耐久を超え、彼女達の身体を貫いていった。

 

「……そろそろ時間か」

 

 輸送機と通信回線を開く。

 

「捕虜は必要?要らなかったら全員落すけど」

 

「余裕があれば1人お願い」

 

「りょーかい」

 

 回線を閉じ、右腕の結晶体と同じ形状で大きめの腕を別に作り出す。被弾の少ない女性を選び、新たに作った腕を発射。ガッチリと捕縛して引き寄せた。

 

「やることやったし、見逃してもらうよ」

 

 右腕から超高圧の電撃を放出。紫電が残り三人に襲いかかり、感電。システムがダウンし、落下していった。

 

「ふぇー、帰還する。カーゴドア開けてー」





大変遅くなって申し訳有りませんでした。
一応世間では祝日と言う訳で、少しずつ放出して行きます。

お楽しみにー…。

ホントにすいませんでした。
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