激戦、そして
「……ここはV14。ここから先、《喰種》を通す事は出来ない。君は……」
そう言うと、有馬は黒のアタッシュケースのクインケ《ナルカミ》を展開させる。有馬が持つクインケの一つ、赫子にも関わらずまるで雷のような形状をしている。
「14(これ)以上進めない」
左目を貫かれ、大ダメージを負った僕は有馬に対して恐怖以外の感情を抱く事が出来なかった。その瞬間、僕の頭の中にはある考えしか頭に浮かばなかった。
(逃げよう……逃げるしかない!)
このまま突っ込んでも殺されるだけだ。店長を助けるためにも今は……今だけは逃げるしかない!
「はじれ…」
僕は有馬を攪乱させようと走った。その速度は常人ならついて来れない筈のスピードだ。
しかし、有馬はそれに容易く対処した。ナルカミが再び起動し、命を容易に刈り取るであろう雷が僕を襲う。
「っあああああああああ!!!!」
かろうじて体をひねり、これを回避する。雷は僕の背中をかすめた。かすめただけ……にも関わらず背中に鋭い痛みが走る。傷口からは血は流れていない。僕の治癒力? いや、治癒力のおかげならダメージは0に等しいはず。
視線を動かすと傷口が熱で焼けていた。かすめただけでコレ、危うく死ぬ所だった。その一つの状況がより僕を恐怖へと陥れた。
逃げる事すらこの人の前では無理なのか? いや、まだだ!
「……ありまぁあああああああ!」
走って駄目なら、赫子でクインケを壊す! 相手は人間だ、そうすれば……!
1,2,3…………
4本ッ!!
出現させた4本の赫子を巧みに動かし、ナルカミの動きをまずは封じる。そしてその後、ナルカミを破壊すればいい!
が、僕の怒涛の攻撃は有馬に容易く避けられる。
「!?」
クインケで防ぐ必要も……ないってことか!?
「………………」
有馬は無言でナルカミをこちらに向けた。攻撃モーションに入ったままの僕はその攻撃を容易に躱した有馬からすれば格好の的。
一瞬だった。『ドッ』という鈍い音が三連続で聞こえ、そして遅れてやってきた痛みが僕の腹部を襲った。
「ゲハッ!!!」
雷は僕の腹を3カ所貫いていた。あまりのダメージでその場に倒れてしまう。
僕は…死ぬのか? ここまでか…………
『カネキ!』
「!!!」
頭の中でみんなの声がした。
…………トーカちゃん……ヒデ、ヒナミちゃん、ヨモさん、店長、皆…………
そうだ、帰るんだ。店長を助けて、店をやり直して、またあそこに集まって楽しい日々を取り戻すんだ。死ぬわけにはいかないんだ。
けど、だからといって……ただ逃げても捕まるだけだ。この人に全力でぶつかるしか……
暴走したっていい。僕を傷つけてもいい。
だから、もう一度僕に力を貸してください……
「リゼさん」
パキッ
*
「……ムカデ、か」
暴走する喰種の力にすべてを委ねたカネキは、半赫者となり有馬をじっと見つめる。
「だ…だる…ま……だ…だりま…………」
既に正気を失っているカネキに敵味方の区別はつかない。それでも本能が叫ぶのだろう。目の前にいる有馬を無視するという選択肢はなく敵と見なし、臨戦態勢にはいっている。
「これで最後だ。来たまえ、カネキケン」
「有馬ぁあああああああ貴将ぉおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
カネキの不気味な赫子が有馬を襲う。が、有馬の目の前に現れた『何か』がそれを防いだ。有馬が所有するもう一つのクインケ《IXA》だ。ナルカミを有馬が持つ矛というならば、IXAは有馬が持つ盾だった。しかし……
「……!」
IXAの防御壁にヒビが入ったのを有馬は見過ごさなかった。ただ本能の赴くままに戦うカネキはそれに気づいてはいないだろう。カネキは構わず攻撃を続ける。
「ああああああああああああ!!!! ま…ままままま……まだ戦えるっ、戦えるううううううううう!!!!!」
「…………」(このままだとIXAが砕かれる。やむを得まい)
有馬はIXAの隙間からナルカミを突き出した。一点に集約されたエネルギーはIXAを砕こうと攻撃を集中させているカネキの視界には入っていなかった。
「カネキくん、サヨナラだ」
バチチチチチチチ!!!
激しく鋭い音を立てながらナルカミから発せられたその音は伸びていきカネキの耳に届く。と、同時にナルカミから発せられた雷は再びカネキを今度はしっかりと確実に全身を貫くのだった。
「ぐへあ!!!」
意識が一気に奪われそうになる。だがそうなる前にカウンター……出来なかった。一瞬の攻撃でカネキの全ての赫子は切り落とされていた。
「あ……ああ…ああああぁ…………………」
何も出来ないまま、あの男の前で無力のまま、薄れゆく意識の中にいるあの笑顔全てに謝りながら、カネキは水の中へと消えていった。
「トーカ、ここで少し休むぞ」
「…………」
トーカと四方は人目のつかない川辺で夜を過ごしていた。20区が立ち入り禁止となってからもう4時間である。他の仲間がどうなったかも分からないままここまで逃げてきて、トーカは仲間が心配で仕方が無かった。特に……
「また…一人で突っ込んでないわよね……バカカネキ…」
トーカが一人で川を見つめている中、四方は火をおこしていた。そこらからかき集めた落ち葉や枝をまとめて、持っていたマッチで火をつける。辺りはさっきまで、真っ暗だった川も流れてくる木やゴミが見えるほど明るくなった。
トーカはそれを気にする事無く、ただずっと川を見つめてる。その間、トーカの中の時間は止まっていた。何も考えず、何も感じず……
「……っ! え…………?」
が、トーカはそれを目にした瞬間立ち上がった。そして目を凝らすと、黒い服を身にまとった誰かが川から流れてきた。そしてそこから漂う匂いは……鉄臭い血の匂い。
「!」
トーカは迷わず川に飛び込んだ。
「!? おい、トーカ!」
四方の声など耳に届かず、泳ぎ続け、流れてきた男性の腕をつかんだ。そして、そのままその男の腕を強引に引っ張って岸まで戻る。
「ぷはっ! ハアハアハアハア……」
岸に上がり、彼の手首の脈を測る。……生きてる。それだけでもう一安心だ。そしてトーカは彼の髪を拭いてやり、顔も拭こうと、彼を仰向けにしてやり……
「え……?」
驚愕した。何故なら、左目は無いとはいえ、その白髪に整った髪に顔は間違いなく……
「カネキ………?」
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