「……ここだね」
「う……うん」
トーカちゃんは上井大学の前でずっと校舎を眺めている。それは上井大学の校舎が綺麗だ、という感動じゃない事くらいは僕にも分かる。
「緊張してるの?」
「! し…してない!!」
「………………」
西尾先輩が言っていたことを思い出す。
『アイツの事だからな……お前がいない間もアイツは緊張とか恥ずかしさとか悩みとか全部隠してきたからな……カネキ、お前なら鋭いから分かるはずだ。そういうのちゃんと見抜いてサポートしてやれよ』
……絶対に緊張してるな。
「大丈夫だよ、過去問、英単語、数学の問題集とかやれる事はやったんだ。後は……」
『運だよ』、僕はそう言おうとした。
『運なんて存在しない。単なる状況と状況の組み合わせ』
リザさんはそう言ってたな。確かにそうかもしれない。
「……トーカちゃんのやる気とどんな問題か次第だよ」
トーカちゃんはそれを聞いて、もう一度校舎を見つめる。そしてまた僕を見た。
「……あんたがいて良かったよ」
「そんな今から死ぬ人みたいな事言わなくても……」
「いってきます」
「うん。いってらっしゃい」
僕は笑顔でトーカちゃんを送り出した。そして、ポケットの中から電話が鳴った。
「……いってきます」
*
「カネキ、持ち場にはついたか?」
「うん」
「よし、じゃあヒナミちゃんに電話して指示を待つんだ」
ヒナミちゃん……か、しばらく会っていなかったな。これが終わったら、またどこかに連れて行ってあげようかな?
そう考えながら、万丈さんとの会話を終わらせてヒナミちゃんに電話をかける。
「……もしもし、お兄ちゃん!」
「ヒナミちゃん、久しぶり。ゆっくり話がしたいんだけど、それはまた今度でいいかな?」
「うん! もうアオギリの車は見張ってるよ、お兄ちゃんのいる場所も音で分かる」
相変わらずヒナミちゃんの能力は凄いな。僕はこういうのはてんで駄目だから、ヒナミちゃんに教えてもらおうかな?
「お兄ちゃん、車はもう近くまで来てる。合図するからそのタイミングで飛び降りて」
「うん」
「4、3、2、1…今!」
ヒナミちゃんが叫んだと同時に電話を切って、15階もあるビルから僕は飛び降りた。さっきまで点のように見えていた人も車もハッキリ見えてくる。
だけどその光景は異様だった。高速道路を走っているのは5台の輸送車と周りには人が……喰種が走っているだけだ。間違いない、あれがアオギリの車だ。僕はその車を止めるように赫子を道路に叩き付けた。
「な、なんだ!?」
「何かが落ちてきたぞ!!」
周りにいた見張り達は動揺している。
「……彼らは僕がもらう」
そう言ってまず見張りの喰種を片付ける。叩き付けて、赫子で殴り飛ばして、あるいは喉笛に噛み付いて……
「『共喰い』も慣れてきてそんなにマズイとは思わなかったけど、やっぱり根が腐った喰種の肉はまずいな」
「ば……化け物か、お前は!!」
「うん、『喰種』である僕も……君たちもね」
そう言って最後の喰種を片付けた。そして中にいる人たちを助けるために警察に電話をしようとした時だった。
「ゴガッ!!」
「!?」
右から猛烈なタックルが向かってきて、躱す余裕など無くクリーンヒットした。『ミシミシ』と何かがきしむ音がして、そのまま吹っ飛ばされて1台の車にぶつかる。
「うううう……ぐっ!」
(あばらが折れた……少し休まないと…………)
「オラっ!!」
「!」
と、車の横で倒れていると見覚えのある赫子と声が僕に迫ってきた。慌ててそれをギリギリの所で躱す。そして地面に足をついた瞬間、横腹に痛みが走る。
「っ!」
(クソッ! 回復がまだ……どうして…………?)
顔を上げるとそこにはマスクをつけたでかい図体の喰種が2体とナキがいた。
中途半端ですがここまで!