さっきのタックルはでかい図体のうちの一人だろう。多分、パワーなら万丈さん以上だ。
「よぉ、兄貴の仇の『白髪野郎』!!」
どうやらあれが僕の呼び方のようだ。と、考えている場合じゃない。早く怪我を治さないと……
「骨が綺麗に折れたなぁ。だけど、それ治んないぜ。なにせタタラさんと『マッドサイエントス』が開発した…………えっと?」
「ガゴゴ」
「そうそう! 『Rc抑制剤』を注入したんだ。効果は薄いから赫子は抑えられねぇが、回復能力なら止めれる何かこう……すげぇやつだ!」(何で『ガゴゴ』で通じたかは、ご想像にお任せします)
「!?」
Rc抑制剤!? 嘉納はそんな物まで自作しているのか! マズイ、低い防御力を回復力で補っていた僕にそれはかなりマズイ!
「怪我して痛いまま苦しんで……兄貴にあの世で会ってこい!!」
と、ナキの赫子で殴り飛ばされる。
「ぐはっ!!」
また車にぶつかり、車ごと一緒に倒れる。
*
「? 扉が……」
突然の衝撃で目を覚ました亜門は車の外に出る。そこで亜門が目にしたのは、昨日自分に話しかけてきた喰種と彼の側近かと思われる2人の喰種、そして……
「眼帯…?」
(何故、お前がここに? アオギリのいる場所に何でお前はいつも現れる?)
だが、眼帯の喰種はすでにボロボロでナキに殴られ続けている。
「早くくたばれよ! 死ぬのが怖いか! なんとか言ってみろよ!!」
「……僕は死ねない。まだやらないといけない事があるんだ」
「亜門さんを助けるまで……死ねない!!!」
「!?」
(俺を……助ける!? 眼帯、お前はそのためだけにここで戦って、傷ついているのか?)
*
と言っても、体はボロボロで赫子を出す体力も残っていない。
「大体、お前の力なんて何もねぇんだよ! 元人間が手に入れた喰種の力は……お前の力じゃねえよ!」
……確かにこの力はリゼさんのだ。僕のじゃない。だから僕は今、僕の力だけで君を倒す。
「アオギリは僕に取って目障りの存在……」
「お前も消えろよ」
その時、僕の指先に熱い感覚が現れた。僕の両手は赫子と同じ色に染まっていく。
「? 何だ、手品かぁ?」
分からない……これは一体? と考えながら、ナキに手を触れた。すると……
「熱っつ!!!! ……どうなってんだよ、その両手から出てる変な液体は!!」
そんなに力を込めて殴ってもいないのにダメージを与える事が出来た。これは……?
いつのまにか手は赤黒い色から、黒に近い紫色に変化している。
この力なら……
「や……やめろ! その手で俺に触れるなぁ!!!!!!」
「うおおおおおお!!」
僕は全ての力を振り絞って、ナキの体を貫いた。 グシュ、と何かが溶ける様な音、或いは腐る様な音がした。
「ぎゃあああああああああ!!!! 痛てぇええええええ!! 痛てぇよ、兄貴ぃぃぃぃ!!!!」
ナキはその場でジタバタと暴れながら、転がる。2人の喰種はその様子を見て、ナキを担いでどこかに消えていった。その姿を見届けて、僕の意識も薄れていった。
*
「…………まさか」
眼帯の喰種の近くに駆け寄って、亜門は彼を見つめながら考える。
(あれは喰種の中でも一部しか使えない力、《赫熾》。あれが篠原さんが言っていた……)
『いやー、赫者の『梟』2人に加えて、『ムカデ』まで出てくるんだもんな。こりゃ《赫熾》が出てもおかしくないねぇ』
『赫熾……? それは一体?』
『《赫熾》またの名を《赫紋》。Rc細胞を体のあらゆる部位から噴出すると同時に、Rc細胞の形質を変化させる日本では珍しい喰種の力さ』
『形質を……変化させる?』
『分かりやすい例で言うなら……有馬の『ナルカミ』見た事あるだろ? あれは羽赫と『雷』の赫熾のハイブリッドのクインケさ』
『! そんな物が……』
『実際に雷に変化させるんじゃないよ。あくまで『雷に似たもの』、だけど実際の雷と何ら変わらないよ。他にも炎や水といった物が確認されているね。海外では100人に1人、その力に目覚めると言われているが日本ではさらに少ない。まぁ、その分『赫者』は多いと言われてるけどね(苦笑)』
(あのナキが一撃で……赫熾か…………)
とその時、サイレンが聞こえてきた。それはこっちに向かってきている。CCG或いは警察だ。どちらにせよ、亜門達は保護されて……
「!」
と同時に亜門は気づいた。それではここにいる自分たちを助けようとした喰種『眼帯』はどうなるんだ、と。間違いなく、捕まる。さらに赫者で赫熾の力も持ってるとなれば、確実に駆逐される。
「…………これで借りはなしだぞ」
亜門は眼帯の喰種を誰の目にもつかない山へと落とした。眼帯の力なら傷を回復して生き延びられるだろう、と
*
「研?」
その三時間後の午前3時、カネキは四方に発見された。