数分前
「……ところで君は」
「?」
戦いの最中であるにも関わらず、僕を名乗る喰種はその場に腰掛けて、嘉納が逃げていった先を遠い物を見るかのように見つめていた。
「僕と君、どっちが親父の最高傑作だと思う?」
……親父、嘉納のことか。
「僕は嘉納の作品なんかじゃない。僕は僕、金木研だ」
「ハハッ、出たカネキの癖」
「な、何を……」
不覚にも動揺してしまう。
「君の心の弱さだよ。君はいつも自分に都合の悪いことがあれば、『違う』『そんな筈はない』『助けて』って、逃げるように考える。そうヤモリの時だって、……いや違うか。それ以前の問題だ」
「あの日の悲劇、『半喰種』になったあれから、君は未だに自分の悲劇を受け入れられていないんだ」
「………黙れ」
「自分は『金木』という存在……でもあるし事実、嘉納に作られた存在である。そして喰種に襲われ、アオギリに攫われ、拷問され……それはあの時のお前が弱かったからだ。だけど受け入れたと思えば、お前はアジトで親父と対面した時、誰のせいにした?」
「黙れ……黙れ」
「全部、親父のせいだ。それがお前の弱い所」
(違う……違う。違う違う違う僕はカネキケン上井大学に通ってた1人の学生違う僕は弱くない僕は強者だ僕は弱くない僕が皆を守るんだ僕が僕がぼくがぼくがぼくが)
頭の中で僕は一生懸命、突きつけられた現実を否定した。自分は強者で皆を守る存在だと。
「ああああああああああああ!!!!!」
赫子を出現させて、謎の喰種を迎え撃つが、落ち着いてーー否、容易く赫子を薙ぎ払われて対処される。
「僕と君と……後もう一人いるけど、その中で親父の最高傑作を決めるとしたら?」
「当然、僕だ」
彼はそう言って、不適に笑って、僕(リゼさん)の赫子を出現させた。
*
「ん? 誰からだ?」
ピッ
「ああ、エトさんか」
「講演会はどんな感じ? って、電話から聞こえてくる音から察するにもう始まっちゃ様だね」
「フフフ、有名人は大変だよ」
「ところであの2人はどこなの? 置いていっていいの?」
「何、心配いらないさ。滝澤くんは流石、アカデミーを次席で卒業しただけある。身体能力なら新しいカネキくんより上だし、何より赫子との相性ばっちりだ」
「へぇ」
「まぁ、カネキくんも彼に劣らないけどね。身体能力、格闘術といった点では劣るけど、彼には強さへの執着があり、彼の赫子は特別だからね……」
*
カネキが赫子を弾きとばた。彼もこれには驚いたのか、カネキに驚きの表情を向けた。
(いける!)
そしてカネキがその隙に再び攻撃しようとした時だった。
ドドドドドドドド
突然、胴体に衝撃が走った直後、それは激痛へと変わり、カネキの足を止めた。
「が……なん……だ…?」
カネキが下を見れば、そこには『羽赫』の赫子が深々と刺さっていた。そのダメージは大きく、回復が間に合わず、血がどんどん出てくる。
「お前と同じ赫子、赫者(梟)の赫子、この2つを併せ持つ僕こそ、親父の最高傑作であり、最強なんだ!」
そこでカネキの意識は薄れ始めた。体が後ろへと傾く。が、倒れることをその喰種は許さず、カネキの首を掴み、絞めた。
「ガハッ!」
「これで証明された。かつての最高傑作に俺は勝った。つまり俺が『カネキ』だ」
「弱いお前なんて誰も必要としていない。お前はもう用済みなんだよ」
意識を失いかけていたカネキだが、今の言葉だけはハッキリと聞き取った。
(僕が……必要とされていない?)
カネキは気がつくと、ヤモリの拷問の時と同じように自分の作った精神世界にいた。だが、そこにリゼは何故かいなかった。が、そこには董香とヒナミがいた。
「トーカちゃん、ヒナミちゃん!」
何故、ここにいるのかは分からないがカネキにとって2人は大切な人だった。
カネキは2人に歩み寄る。が、董香とヒナミは振り返って離れていく。カネキがどんなに速く走っても、それ以上の速度で2人は離れていく。
「待って、トーカちゃん! ヒナミちゃん!」
すると董香は叫ぶカネキに一言呟いた。
「カネキ、もう大丈夫だから」
それはカネキがいなくてもいい、という一種の拒絶であった。
「そんな……」
そして、また後ろに誰かが現れた。振り向くと、ヒデがいた。
「ヒデッ!」
今度は親友のヒデの元に歩み寄ろうとした時だった。
「もういいよ、カネキ。今までありがとう」
「え?」
「この世界を正そうとしてきたのに、皆を…俺たちを守れないお前は、この世界に必要ないから」
ヒデがそう言った瞬間、カネキの周りに今までに出会い、友好的な関係を作り上げた人たちが現れた。
「カネキ、ありがとな」「もういいんだ」「ゆっくり休んでくれ」「大丈夫だから」
その言葉一つ一つがカネキの心を傷つけた。
「やめてよ。お願いだよ。皆、僕を見て……僕を1人にしないで。こんなことになるくらいなら死んだ方がマシだよ」
『なら、少し休めばいいじゃない』
「!?」
急にどこからか分からないが声がした。
『大丈夫よ、あなたは私で、私はあなたなんだから』
「誰!?」
『どうだっていいじゃない、そんなこと。ねぇ、カネキくんおいで』
(ああ、そうだ。そんなことはどうだっていい。こんな辛い思いをするのはもう嫌だ。弱いと思われたっていい。少し……休もう)
僕はその優しい声に誘われるかのように眠りへと陥りそうになる。そして、意識が消え失せる寸前、急に僕の足下は柔らかくなり、僕はそのまま意識という名の湖に沈んだ。そして、入れ替わるように誰かが僕の意識に表出化した。
『リゼ……さん?』
*
一方、アキラたちの方では事態が急変していた。
「……何だよ、つまんねえな。アキラ」
滝澤はアキラの目の前で棒立ちしていた。そんな余裕を見せる理由は、彼がアキラの異変に気づいたからだ。
「斬ってみろよ、なぁ」
「……出来ない」
「私にかつての同期だった……仲間だったお前を殺すことなんか出来る筈がない!」
そう、アキラも1人の人間だ。仲間を想うアキラに同期だった滝澤にクインケを向けることなど出来なかった。
「くだらない理由だな」
滝澤はアキラにとどめを刺そうと、赫子を向ける。が、什造がそれを阻もうと滝澤に攻撃を仕掛けてきた。『13's ジェイソン』のギミックにより出現した赫子が滝澤の胴体をかする。
「痛てぇな、おい」
「させません」
滝澤は自分の血を舐めて、什造を見て不気味な笑みを浮かべた。
「チッ、やっぱ先にお前を倒すか」
「やってみてくださいよ」
「じゃ、そうさせてもらうわ」
滝澤は人間ではあり得ない速度の蹴りを什造の右足に当てた。
「なっ!」
「義足で良かったな、右足(ニヤッ)」
そして当然、右足の義足はその衝撃に堪えられず、鈍い音を立てて壊れてしまった。什造は地面に叩き付けられる。
「あうっ!」
「さぁて、アキラ。どこから壊してほしい?」
アキラは何も答えず、什造は必死に地面を這いずるが、もう間に合わない。そして滝澤が赫子を構えた時だった。
ドシャ
滝澤の赫子が地面に転がった。当然、斬ったのはアキラでも什造でもなかった。
「待たせてすみません、二人とも。後は俺に任せてくれ」
「おっと……赫子が斬られちまった。お前、面白そうだな」
駆けつけた青年は既に展開させてあった2本のクインケを背中の鞘から抜いた。
「お前の相手は俺だ」
「…桐ヶ谷……三等」
『桐ヶ谷 和人』『クインケ 羽赫/リパルサー 羽赫/エリュシオン』
*
決着がつき、気絶したカネキを壁に叩き付けて、謎の喰種はその場から離れようとしていた。彼はカネキに勝利したことに昂揚していた……が、
『ペンチで……………指を……』
バキッ
「!?」
『芽ぇ……摘まなきゃ………俺? 私? 僕、僕が皆を守るからぁ』
「馬鹿な……!」
彼は慌てて後ろを振り向いた。すると、壁に叩き付けられ、瓦礫の上で倒れている筈のカネキの姿がそこにはなく、代わりに後ろから気配がした。
「なっ!?」
そして彼は背後にいた何者かによって吹き飛ばされた。慌てて受け身を取り、顔を上げるとそこにいたのは……
「ここで目覚めたのか……噂通り『ムカデ』みたいだな」
喰種 CCG名称『ムカデ』 赫子/鱗赫 赫者/発達率70%
『さぁ、仕上げに私に喰べさせて?』
(キリト参戦! カネキ改vs赫者、勝つのはどっち!?)
ようやくキリトが出せたけど、どうやって書こうか考え中。
クインケ名はそのままのわけにはいかないし、アレンジしました〜♪