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講演会会場
「おい、他の喰種はどうなってる?」
「だいぶ追い込んでる。残ってるのは逃げ足の速いのと強い奴のどっちかだ」
ドイツ語でそんなやり取りをしている捜査官は既に講演会が行われていたフロアのほとんどを制圧し、退路を塞いでいた。残ったほとんどの喰種は地下15階近くまで逃げている。
「よし、俺たちも上に………」
と、残りの捜査官数十名が階段に向かおうとした瞬間、急に壁が崩れ1人が受け身をとりながら飛ばされてきた。肋骨が折れているのか体からみしみしと軋む様な音が出ている。それはさっきまでカネキを追いつめていたはずのもう1人のカネキだった。
「せ……隻眼だ!」
「!」 (捜査官……いい所にいた。滝澤は?)
その喰種は耳を澄ませた。そう遠くない位置から羽赫特有の音が響く。
(あの馬鹿……まだこんな所にいるのか!? ……いや、ここは滝澤を無視して上に逃げるか。こんな捜査官でも時間稼ぎにはなる)
そして彼は天井を崩しながら、逃げていった。
「逃げたぞ!」
「手負いの状態だ! 追……」
その時、
ビキキキキキキキキキキ
不気味な赫子の音、そして何かが高速で動き風を切る音が捜査官たちの耳に届いた。
「な……何だ?」
『だめ……だめだ…………この人たち…駄目だってッ』
そう言いながら、現れたのはカネキだった。ムカデの様な赫子は以前よりRc細胞が多いのか、長く、しなり、早く、伸びる。
「こいつ、赫者だ…!」
「だが、全身は赫子に包まれていない。俺たちでもやれる。応戦しろ!」
一斉にカネキを銃弾が襲う。が、カネキはそれを見てニヤリと笑うと、
ゾルルルルルルル
ムカデの様な赫子を壁に向かって飛ばし、突き刺した。
「!?」
そして、
『ケハッ!』
赫子に引っ張られて、まるでワイヤーが巻き取られるかの様に高速で壁へと移動した。それを何度も繰り返し、捜査官たちの頭上を飛び交う。以前壁を走って移動していた時と比べ、段違いの早さだった。
「なっ!? 早すぎる!」
「狙いが定まらない!」
『不味そうな人ばっかり……さっきの、さっきの喰種どこぉ?』
*
「はぁ!」
一方、カネキたちが戦っている所からそう遠くないあの場所では……
「いい、いいよ! 全然、攻撃が当たらねぇ!! こういうのだよ! こういう奴と俺は戦いたかったんだ!!」
「そうか、だが俺にはそう時間が無いんだ……早いところ終わらせてもらうぜ!」
桐ヶ谷捜査官は2本のクインケを持って、滝澤へと突っ込んでいく。
「早いです……ね」
「ああ、有馬特等殿よりパワーは劣るが、彼以上の反応速度を持っている」
二人は異次元とも言える彼らの戦いを見届けるしか無かった。
(このクインケっていう武器、軽いな。だけど、このクインケの力なら……)
桐ヶ谷捜査官は何か思いつき、『リパルサー』を背中に収める。そして、残ったクインケを構えた。
「《片手剣2連技》……」
(? 何だ?)
突然、桐ヶ谷捜査官のクインケの一つ『エリュシオン』が輝きを放つ。そしてまるでクインケが獲物を襲う生き物の様に滝澤へと襲いかかった。そしてクインケを左から右へ、続いて右から左へ素早く水平にそれも連続で振るう。
が、
「!?」 (何だ、クインケが左右同時に!?)
滝澤にはそれが、左右から同時に薙ぎ払っているようにしか見えず、回避もままならないまま腹を切り裂かれた。
「ぐおっ!!」
「《スネークバイト》」
(救世主の1撃! 英雄(桐ヶ谷)の戦いと悲劇のヒーロー(カネキ)の戦いの行方は!?)