東京喰種√S   作:torachin

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長くなってしまったので投稿が少し遅れてしまいました。
それに長い分、文章もいつも以上に下手くそだし、細かく書くべきシーンも簡潔に終わってるかも……ですがこれ以上、投稿を遅らせるわけにはいかないということで投稿します。本当に申し訳ないです!!(涙


赫悟

会場が崩れ落ち、火の海に包まれ、多くの人々の命が奪われた今もあらゆる場所で戦いは続く。しかしある戦いはもはや勝負と言えるものではなかった。

 

「がはぁ!」

 

勝ち目はなかった。

 

片やSSレートに認定を受けた時より凶暴さが増している赫者、片やその赫子と赫者《梟》の赫子を移植されたにすぎない喰種との戦い。

 

彼が嘉納から聞いた話ではカネキという男は《リゼ》の赫子を与えられたにすぎなかったが、他のリゼの赫子を持つ者とは違いその力を使いこなし、赫者にまで成り上がった。カネキは喰種としての高みを登り詰め、他からも《眼帯》《ムカデ》と恐れられ、自分が自分であると証明するものを手に入れた。それは『名』であり『肩書き』であり『看板』であった。

 

 

しかし彼にはそれがなかった。

 

本人も分かっていた。移植されてもそれは他人に与えられた力にすぎない。その性能を十二分に発揮出来てはいない。

 

それでも新たなカネキを名乗る彼はカネキに向かっては殴られ、弾かれ、貫かれ……暴走しているカネキに手も足も出なかった。しかし彼はそれでも闘志を剥き出しにして戦いを続けた。

 

(負けられねぇ!! お前を殺し、超えてーー)

 

「俺は"俺"になるッ!!!」

 

普通なら誰もが気になるその叫び、カネキの耳には届かず暴走は進みさらに赫子の量を増やした。

 

「俺は……私は……僕わあああああぁ!!!!!!!」

 

ムカデの様な不気味な赫子が再び、カネキを名乗る喰種を襲う。そしてその赫子はカネキの体を蝕み続けていた…………

 

「……俺の仲間だ。離せ」

 

亜門は怒りを押さえながら話した。トーカたちもここで亜門を相手にしたくはない、断る理由もなく静かに彼らを地面に置いた。亜門が攻撃してこない様子を見て月山は咳払いをして亜門の注意を惹いた。

 

「さてここで一つ提案があるんだが、僕たちはここが完全に燃えてしまう前に早く逃げなきゃならない。あなたもこの人たちを病院に連れてかなきゃならないわけだが……どうだろう? ここは僕たちを見逃してもらえないだろうか?」

 

月山は最もな理由を並べて交渉に乗り出した。亜門もアキラたちをこのまま見殺しにするわけにはいかない。「フーッ」とため息をついた後、今まで以上に真剣な表情を浮かべた。

 

「いいだろう」

 

 

「ただしお前が俺の仲間を連れて脱出し病院に連れて行け。もう1人……ラビット、お前は俺と戦え」

 

 

「「!?」」

 

予想外の返答に2人は驚きを隠しきれない。月山は慌てて話し始める。

 

「ま、待ちたまえ! いいのかい? ここで僕が彼らを連れて逃げても殺してしまうかもしれないよ?」

 

脅迫じみた発言をするも亜門が慌てる素振りを見せることはない。そして何かを語ろうとしたその時だった。

 

「フン……舐めるなよ、クズが」

 

「!」

 

その時、意識を取り戻したアキラは月山を睨みながら語りかけた。その両足は爆発の時に傷を負っていてとても歩けるものではない。

 

「その時は私が相手をしてやろう。あのガスをまた吸えば……どうなるか分かるな? 無線の1本でどこからでも捜査官はやって来るぞ」

 

「クッ!」

 

ガス、月山の頭には一つしか思い浮かばなかった。それは嘉納の研究所で吸ってしまった『CRcガス』確かにアレを吸えば面倒なことになる。

 

亜門は緊張の面持ちで2人の会話を聞いていた。

 

(よし、俺の代わりにアキラがハッタリをかけた。あの様子だとアイツは信じ込んでいるな)

 

CRcガス、成分比など未だ調整中の兵器。それは何度も持ち出せる程の物ではない。だが、そんな事情を知らない喰種だからこそこの駆け引きは都合のいい嘘ーー武器になりえた。

 

亜門は視線をトーカに移す。トーカと亜門の視線が合う。

 

「……行けよ、月山」

 

「霧嶋さん!?」

 

「大丈夫、逃げるだけなら何とでもなる。それにあいつは今、クインケを持ってない。あの腕だけなら……」

 

トーカの覚悟は揺るがなかった。月山はそれを理解し、2人を抱え上げアキラに肩を貸した。

 

「分かってるな? 少しでおかしなことをすれば……」

 

「ああ、君も間違ってここで使わないでくれよ。そんなことしたら力が抜けて、僕たち皆あの世行きだ」

 

月山は捜査官3人を連れて会場を脱出する逃げ道を探しにいった。

 

 

(……って『逃げる』とはいったものの、そう簡単にはいかないよな。とりあえず、腕か足を折って、先のことはそれから考えよう。大丈夫、相手は生身の人間だ)

 

「……眼帯といい貴様といいアイツ(ドナート)といい、俺はつくづく喰種に縁があるな。もっとも縁は縁でも『悪』の方だが」

 

そう言って亜門は右腕のクインケを起動させる。

 

「さぁ、終わらせよう。ラビット」

 

(終わらせてくれ!!)

 

亜門はトーカに突っ込んだ。トーカも迎え撃つ体勢をとり、地面を強く蹴った。トーカの左足と亜門の右腕がぶつかりあう。

 

「チッ!」(やっぱ硬いな……砕くのは無理か)

 

その後もお互いの攻撃はぶつかりあう。必死の形相で畳み掛ける亜門。一方、トーカも平然とした顔をするウサギのマスクの下で驚きを隠せないでいた。

 

(コイツ、どんな鍛え方してんだ!? 喰種の攻撃を生身で受け止めるって普通じゃねぇぞ!)

 

そう、亜門は素手でトーカの攻撃を捌いていたのだ。普通なら喰種の攻撃はパンチでも当たれば骨折しかねない威力だ。それだけ喰種の筋力、生み出す運動エネルギーはデカいのだ。

 

亜門は生身での攻防を続けながら、今は亡き真戸呉緒との会話を思い出していた。

 

 

『……亜門くん』

 

『はい?』

 

『身体能力で劣る人間がいかにして喰種に勝つか、君は体力と筋力の鍛錬は欠かせないと言った。私は君を誰よりも間近で見てきたが君なら出来るかもしれないね』

 

『?』

 

『グールの生み出す運動エネルギーはヒトの4~7倍と言われているが常人の数倍のパワーを発揮できる人間であれば理論上生身でもグールに対抗できる。……ただそれが可能な人間はほんの一握りーー全人類の0.01%にも満たないであろうが』

 

『真戸さん……私を何だと思ってるんです?』

 

『なに……私は君を評価しているのさ。ヒトは才能を持って生まれてくる。だが生涯でその才能を開花できるとは限らない。私は才能より才能を開花するための努力を評価するタイプでね…………』

 

日々の鍛錬で鍛えられてきた筋肉、しかしオーバーワークのあまり亜門の筋肉には本人も気づかないうちにダメージを負っていた。

 

そして右腕に加工された赫包、クインケが移植されたことで喰種が元来持つ回復能力からほど遠いものの高い回復力を得た亜門の肉体ーー筋肉は修復、増強されたのだ。

 

そして赫包を埋め込まれた亜門の肉体はわずかではあるが喰種に近づいていたのだ。

 

 

「ラビットオオォ!!!」

 

叫びとともにトーカの鳩尾(みぞおち)に亜門の左拳が直撃する。クインケではない方の拳。だが十分な威力だった。それを証明するかのようにトーカのマスクから血が滴った。

 

「げぼっ!」(コイツ本当に人間かよ…クインケじゃない方の腕で!)

 

 

亜門はその後も息を切らせながらも攻撃を続ける。トーカは今の一撃で動きが鈍くなっている。

 

「お前さえいなければ…………」

 

その時、亜門はトーカに語りかけた。

 

「?」

 

 

「お前たちさえいなければ……失うことはなかった!! 父・母、親の虚像、仲間、そして師も! 貴様らがこの世界の平和を壊しているんだッ!」

 

 

「ッ!?」

 

 

 

その叫びはトーカの中の時間を止めた。そう錯覚させる程、トーカに衝撃を与えた一言だった。

 

(失う? なんだよ……なに被害者面してんだよ。 私だってただアンタらに奪われてきた。父さんも涼子さんも店長も古間さんに入見さんも!! 皆、私の周りから消えてしまう。アイツらのせいで……)

 

「う…うわああああああああ!!」

 

怒りのあまり暴走する赫子。今まではうまく発現しなかった右の羽赫もうねりをあげている。その赫子の放つ異様なオーラに亜門は思わず立ちすくんでしまう。

 

「なっ!? 赫子が……」

 

(コイツらが憎い! 全部、憎い!! 人間がーー)

 

『トーカちゃん!』

 

そのとき、頭の中で聞き慣れた自分を呼ぶ声が聞こえた。

 

「!」

 

(あ、違う…依子は…特別だ。でも依子も私の正体知ったら私の前から消えちゃうのかな? イヤだ! 依子…クラスメイト、そんな大切な繋がりを切りたくない。でも、コイツらは……人間は私たちから何もかも奪うんだ)

 

トーカの頭に同じアパートに住んでいたおばあちゃんの顔が思い浮かぶ。今まで優しく接してくれていた彼女もトーカ達が喰種と知った途端、手のひらを返した。『平和』『繋がり』『人間との共存』全てを奪われた。そんな人間の中に依子といったクラスメイトも存在する。

 

「私にどうしろっていうのよ……?」

 

「?」(闘志が…消えた?)

 

亜門はトーカの様子に困惑する。が、すぐに拳を握りしめ直す。

 

(この矛盾した関係をどう受け止めればいいんだよ…! 私は誰を憎んで、何を守らなきゃいけないんだ!? カネキ、アンタなら一体…………)

 

「うおおおおお!!!」

 

「! しまっ………」

 

トーカが思い詰める中、亜門は警戒態勢から攻撃に転じた。闘志があろうがなかろうが亜門にとってトーカの赫子が脅威であることには変わりなかった。トーカは赫子で受け止めることも躱すこともせず、亜門の攻撃を正面からマトモに喰らう。

 

床に叩き付けられてもトーカは反撃に転じようとしない。そんなトーカに亜門は今度こそ『右腕』を構えた。

 

(大切な人を奪われた憎しみは消えない。私はコイツらが憎い。でも依子に憎しみなんて感情はないし、依子もきっとそうだ。依子を巻き込みたくない、これは私とコイツらのーー)

 

「!」

 

その時トーカは目を見開いた。それと共にトーカの赫子が背丈を大きく超える程、大きくなる。亜門は驚いて距離をとった。

 

「……ようやく本気になったか」

 

 

(人間と喰種……憎みあう存在、だから私たちは何かを奪われ、アイツらから何かを奪い続けるんだ。それは相手も同じ。これが続く限り、私たちは奪われ続ける。なら答えは簡単だ。

 

『奪わなければいい。こんな無駄な争いを終わらせればいい』

 

たったそれだけのこと。店長は喰種と人間の架け橋のために『あんていく』を作ったんだ。20区の喰種が奪わないために……争いを生まないために! だったらその理想を私が引き継げばいい!)

 

「悪いけど死ねないんだよ、私は!」

 

死ねば、まず間違いなくカネキが復讐に走るはずだ。そうすればまた憎しみの連鎖が始まる。だからこそトーカは今、ここで絶対に死ぬ訳にもいかなかった。

 

 

トーカは体を低く身構える。その体勢はーー鯱(しゃち)と瓜二つの構えだった。

 

「俺も……死ねないな」

 

アキラ、什造、また大切な仲間を残して消えるわけにはいかない。

 

そして桐ヶ谷、亜門はあの時見逃さなかった。彼が腹部に負っていた大きな傷を……もしかしたら彼は死ぬかもしれない。が、そんなネガティブに考えてはいけない。

 

(桐ヶ谷、俺はお前を上司として褒めてやらなければならない。よく戦った、と。そして謝らなければいけない。新人のお前をこんな目に遭わせたのは俺の責任だ。いや、それ以前に俺はお前の過去にあえて触れようとしなかった。それはお前を気遣ったからじゃない。……不安だったんだ、俺があんな顔をするお前の助けになれるのか……だからこそ俺はお前に聞きたいことが、伝えなければならないことが山ほどあるッ! とりあえずこの作戦が終わったらーー)

 

 

(2人で一緒に飯でも食いながら語り合いたいものだな)

 

 

亜門も右腕のクインケを稼働させる。赫子が蠢くたびに地面が、空気が振動する。

 

お互い、今できる最高の技を繰り出そうとしていた。そして地面を蹴ったのも同時だった。

 

 

「ラビットオオォォ!!!!!!!!!!!!!」

 

「はあああああぁぁ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

亜門の右拳が突き出される。トーカはその軌道を読んで体を傾ける。が、クインケの能力で突き出された拳が突如、あり得ない速度で加速した。赫者の拳がトーカを頭の上から殴りつけた。トーカは頭から床に叩き付けられ、床も岩盤を貫く勢いで崩れていく。クインケが返り血によってさらに紅く染まる。

 

(やったか…!?)

 

亜門はトーカの様子をうかがう。トーカは力が抜けたかのようにピクリとも動かない。と、思ったが次の瞬間トーカは右足で倒れ込むのを踏ん張り、とんでもないスピードで体勢を立て直した。

 

「な……!」

 

体を傾けた時、トーカは僅かではあるが赫子を放出し後頭部への直撃は避けていたのだ。でなければ、頭は果実のようにつぶれていたであろう。とは言うものの赫者の一撃、トーカも気を失いかけていた。が、そうさせなかったのは『死ねない』という覚悟からきた意志の強さだった。

 

「おらあああああ!!!!!!」

 

羽赫をさらに放出し加速する。その動きは亜門からは消えたようにしか見えなかった。が、次の瞬間トーカは亜門の懐にはいっていた。亜門の顔が驚愕に包まれたのは、トーカの鋭い膝蹴りが決まったのとほぼ同時であった。その速度は見切れない程の速さーー鯱の正拳となんら変わらないものであった。

 

 

そして2人は同時に倒れ込んだ。




残るは2人のカネキ! ですが、この深い因縁のある2人の話はまだ終わらないかもしれないのだ。
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