「………………」
あれから数日が経つ。話しても話しきれないほど色んなことがあったはずなのに頭の中は不気味と思えるほどスッキリしている。
「カネキくん」
後ろから月山さんが歩み寄ってくる。その表情は僕に向ける顔としては珍しく心配そうな表情だ。
「月山さん……どうしました?」
「どうしました、じゃないだろう。霧嶋さんとはアレで良かったのかい? 君らしくもない」
「……やっぱりバレますかね? 僕、相変わらず嘘が下手だなぁ」
思わず苦笑いをしてしまう。これは今までのように何かを隠すための笑顔ではなく本心だ。それを月山さんも感じ取っているのだろう。僕に同情するのかのような視線を向けてくる。
*
「……残るんだな」
「うん。ここでやり残したことがあるし、それに仮にも神山さんに協力するという約束で来てるんだからね」
トーカちゃんとアジトで最後の会話をかわす。その様子を月山さんはそれを遠くから見てきている。会話もバッチリ聞こえているだろうけど気にすることはない。
「本当は離れたくないし、危なっかしいアンタを近くで見張っていたい」
「けど大学に戻らないと。せっかく頑張って合格したんだし」
トーカは少し残念そうに「そうだな」と悲しそうな表情を俯くことで隠し、月山さんは眉をピクリと動かす。が、真剣な表情のままこちらを見つめたままだ。
「それにしてもこっちでも大変な目に巻き込まれるってカネキ、相当運が悪いな」
「そうだね」
「私まで巻き込まれるって……まぁくっついて来たのはあたしだけど」
「ゴメンね」
素っ気ない会話が続く。いや、僕がそうさせているのか。もっと会話を広げられるかもしれないのにあえてそうしてないのかもしれない。
「カネキ、戻れそうになったら連絡くれよ。休んだ日の分、しっかりと働いてもらうんだからな。四方さんにもよろしく伝えといてやるよ」
「う〜ん、それは困るなぁ」
と、苦笑いを浮かべるがそこでトーカは何かに気づいた素振りを見せる。そうかと思えば、今度はさっき以上に悲しそうな表情を今度は隠さずこっちを向いたまま見せつける。
「…………もう時間だよ」
そう言ってトーカちゃんの背中を押しアジトの外に出る。万が一のために付き添うAnalyzeの喰種がトーカを見て「時間か」といった様子で立ち上がる。
「全部片付いたらすぐに戻るからね」
「……うん。待ってる」
そう言ってトーカは喰種に連れられて、日本へと戻っていくのであった。
*
「会話もあまり乗り気じゃなかったし、別れを惜しむ様子も見せない……紳士として言わせてもらうけどカネキくん、レディに対してアレは失礼だよ」
月山さんは顔をしかめながら話す。僕は振り返り、月山さんの目を見て答えた。
「逆ですよ、月山さん」
「!?」
「大切な人ーー仲間ーーそういった理由を並べて僕は現実に向き合えてなかった。僕がするべきことは一つ、負の連鎖を止めること。自分の問題を大切な人のためにと、さも『誰かのために』と理由をつけて自分の問題を捻じ曲げてきた。大切な人がいなくたって僕は前に進める。逆にいると目的が眩んでしまう。
今の僕に必要なのは目的のための協力であって目的を果たすための『心の支え』じゃない」
月山さんは驚くべき光景を見たかのように立ちすくみ、体を震わせていた。僕が変わったことに驚いてるんだろうか?
「……………」
そうじゃない。僕が変わったんじゃない。歪んだこの世界で生きるためにーー歪んだこの世界が僕を変えたんだ。
強くならないといけない、自分は弱かった。それじゃあ駄目だ、とあの事件の戦闘中にカネキが考えて辿り着いた状態がコレでした。自分自身へのプレッシャーや責任感、正義感によって心が崩壊した、いったところです。
更新ペースは遅めですが、よろしければ次回もお楽しみください