「……ここか」
6区の高層ビル『ハイテンド』、CCGが昔使っていたビルらしいが、今はもう屋上にあるヘリポートくらいしか利用されておらず、中はたびたび喰種の巣窟と化している。
(トーカちゃん……)
赫子を使ってビルを一気に駆け上がる。上に近づくほど、ある匂いが漂ってくる。血と男の加齢臭、そして香水。嫌な予感がしつつも屋上まで登りきった。
「お待ちしていました、カネキさん」
そこには鼠のマスクを被った喰種が待っていた。おそらくコイツがリーダーで電話をかけて来た奴だ。
「トーカちゃんは無事ですか?」
「ご安心を、ちょうど下で可愛がられてますよ」
下をちらりと見る。他の喰種と比べて苦手だけど耳を澄ますと、確かにトーカちゃんの声がする。
「という事は、あなた達を倒せば会えるという訳ですね」
パキッ
左目が熱くなっていく。感覚が研ぎ澄まされていくのが分かる。
「……何だよ」
そのとき、鼠のマスク喰種はエフェクトのかかった震えた声で呟いた。
「もっと悔しがれよ、悲しそうに顔を歪ませろよ」
「?」
「そんなんじゃあ、あの人が喜ばないだろうがぁああああああ!」
「!?」
声を荒げて、鼠はこっちに突っ込んできた。赫子は尾赫で、僕をとらえようと高速で動く。何度避けても、どこまでも追いかけてくる。
ポールで絡まさせようと回り込むが……
「甘ぇよ!!」
「!!」
赫子はポールをへし折り、地面へと落下させた。地上では悲鳴やクラクションで大騒ぎになってる。
(逃げ切るのは無理か。それなら……)
僕は奴の尾赫をギリギリまで引き寄せて……躱した。
「おっ!?」
(ココ!)
そして赫子で尾赫を叩き付けて断ち切ろうとした。
「馬鹿が! なめんな!」
「!」
が、奴の赫子はバネのようにしなって僕の赫子を受け止めた。そして絡み付いて僕をとらえた。
「ぐっ!」
(思ったより力が強い…!)
「捕まえて……からのぉ!」
鼠は不適に笑いながらさらに赫子を出現させる。その数……9本。
「いくぜぇ!」
そして9本もの赫子が僕に一気に襲いかかった。赫子は何度も何度も僕の体を殴りつけてくる。
「ハハハハハハハ!! 突いて突いて突いて!!!」
なるほど、トーカちゃんを攫うだけある。コイツは強い、けど……
パシッ! パシッ! パシッ! パシッ! パシッ!
「よし、捕まえた」
両手、両足、気づかれないように出現させていた赫子で全ての赫子を掴んだ。今度は僕が鼠に不気味な笑みを浮かべた。マスクで分からないだろうけど、左目だけで僕の表情を読み取ったのか、体がブルっと震えた。
「な、何っ!?」
掴んだ赫子を見つめる。高速で何度も襲いかかる赫子……まるで『ナルカミ』の様だ。でも…………
「これなら、有馬貴将のクインケの方が早いね」
「あ、有馬?」
鼠は何の事か分かってないみたいだが、関係ない。
「君、自分にいたずらしてくる相手をどうやったら黙らせられるか知ってる? 一番手っ取り早いのはね、痛い思いをさせるんだよ。それも自分にやられた方法でね」
「!!」
そう言って、僕は鼠の赫子を全て引きちぎった。血の飛び散るような不気味な音を立てながら、9本の赫子は地面に転がり落ちる。
「う……うわぁ!」
一旦、後ろに下がろうとバックステップをするが……
「逃がさないよ」
捕まえられている赫子で鼠を引っ張り返す。鼠は勢いにつられて宙を舞う。
「1、2、3、4、5……6!!」
そして今出している赫子全部で鼠の体を連続で貫いた。
「ぎゃあああああ! ぶげっ! がひっ!」
鼠はそのまま地面に落下して倒れた。
「ぼ……僕が負けた。だけど……これで…いい。僕は彼らの《玩具(おもちゃ)》」
「…………」
僕はそれを黙って何も思わず聞いていたが、
「最後に笑うのは《道化師(ピエロ)》」
「!?」
《ピエロ》!? 3区で活動していた喰種集団! 何で彼らの名前が……
「見つけたでぇ……」
「!」
後ろから声が聞こえた。
「どこにおるか、探し取ったらこんな近くにおったとはなぁ……」
振り向くと、ある人物に抱きかかえられたトーカちゃんが目に入った。
「! トーカちゃん!!!」
そして僕はその人の顔を見てさらに驚いた。
「!?」
何でこいつがこんな所に!?
「ムカデ……いや、カネキ!!!!!!!!!」
桐生 景虎!!!!
次回、、または次次回で《景虎編》最終回!
月山が現れて、カネキ達を巻き込んでいく《月山編》を意識して作ってみました。
感想、お待ちしています。