東方雷人伝   作:ドディドドン

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第十話 雷神平定

剣二は刀を腰から抜き差し頭上に掲げ神力を解放しながら刀を抜いた。

 剣二はそのまま己の力を解放し、稲妻を纏う。そして、一振り刀を振ると、青空が黒雲で覆われた。また、一振りすると、風が吹き荒れ、もう一度振ると大粒の雨が叩きつけるように降り始めた。

「『剣砲・鳴神』‼」

 分厚い雲に鳴神をぶっ放す。すると、稲妻が龍の如く空を駆け巡った。

 風は森林をなぎ倒し、海を荒立て、雷は轟き地上を震わす程の稲妻を落とした。そして、極め付けは剣二の殺気。

空を飛ぶ鳥は驚き、全身を硬直させ地上に堕ちた。水中の魚は心臓を止め海面に浮かんでいた。

 天鳥船も恐怖を抑えられず、カタカタ揺れている。天鳥船には剣二の後ろに修羅の姿を見た。

(何だこの力は、どの神々をも超えている!)

「……さて、決着をつけてやる。行くぞ」

 剣ニは短く言うと、天鳥船から降り歩き出した。その姿を見て、天鳥船も人間の体になって後ろを歩き出した。

 天候は曇り、風は木々を時たま強く揺らす風が吹いている。砂浜を歩いていると、遠くから多くの人の気配が感じられた。 剣ニと天鳥船はお互いに頷いてその場に止まった。

「どうします?」

 天鳥船が尋ねた。

「……待ち構えていよう」

 そう言って剣二は腕を組む。だかふと何か思ったようで天鳥船に向かって言った。

「天鳥船にはすまないが、布都御魂の鞘に隠れていて欲しい」

 そう言って鞘の口を向けると天鳥船が鞘の中に入ってしまった。

『剣二様!?』

「すまないな、これから本気で相対するが殺気で精神がイカれてしまっては困るんでね、安全なところにいてもらう。こっちの様子は見えるはずだ、何か分かったりいい案があったら教えてくれ」

『承知致しました』

「よぉし。来たぞ」

 話をしていると前から1人の男がやってきた。いずれも人ではなく神の力を持っている。

『剣二様、あ奴は……』

「ああ、大国主だろう」

『兵士などは連れていませぬが』

「大国主といえど馬鹿ではあるまい。下手に対立するより対等に話をしたほうがいいさ」

『確かに、剣二様ここは様子を見たほうがいいかと』

「そうだな。……天鳥船、先に遣わした使者どもは来ないようだが?」

『彼らは地上に降りて地上に暮らし地上の穢れを取り込みました。私や剣二様は常に穢れを神力で浄化しして存在しておりますがそれができるのは短時間でしかございません。長時間、ましては何年も浄化はできません。地上の食べ物を喰らい汚物として出したあ奴らはもう腸まで穢れ我々の仲間ではございません。もう月へと帰れませぬ。それを知っていているので我々の前には現れないのでしょう。剣二様の剣に首をはねられる事が分かっているので』

「そうか、あ奴らはもう敵か。だがしかし、斬らねばならぬ。あ奴らは月のことを知っておる、我らの事を知っておる。生かしておくにはいかないな」

 残念だ、と最後に悲しそうにつぶやく剣二の顔には悲しみが現れていたが、直ぐに表情を切り替え悲しみを怒りに変えて目の前に立つ2人の神を見据えた。

「我の名は建御雷!!天照より使われし使者なり!!要件は分かっておろう、国を譲り隠居をするか、この俺に殺されるかどっちだ!!」

 剣二は天に届けと言わんばかりに大声で怒鳴り、刀を鞘走らせ剣先を天に向けその上に胡座で座った。

 この姿を見て大国主は肝を潰して地に伏して言った。

「申し上げます、私はもう隠居した身です。このことは私から答える事ができませぬ。このことは、私の後をついだ子である八重事代主神(コトシロヌシ)がお答え申しましょう。しかし、あいにく今鳥狩りや魚捕りをするといって、美保の岬に行ったまま、まだ帰ってきていないのです」

――嘘つけこの狸

 剣二はそう思ったが連れて来て親子揃って改めて答えを聞けばいいと思い天鳥船を遣わすことにした。

「天鳥船」

『ハッ、ならば私が連れてきましょう』

「能力で送る。頼んだぞ」

 剣二は能力で鞘の空間にいる天鳥船を美保の岬まで瞬間移動させた。美保の岬では八重事代主神が急いで釣り道具の片付けをしていたが目の前に天鳥船が現れて驚いて腰を抜かした。

「私は雷神の使者である。わが主建御雷がお主の父親に国譲りを申したらお主が後を継いでいると申す。お主に国を譲るか訪ねたい、わが主の前まで来てもらう」

「しょ、承知しました!」

 天鳥船は八重事代主神の肩に手を置き剣二に伝えた。

『剣二様、瞬間移動を!』

 そう思った瞬間2人は雷神の前に移動していた。

「剣二様連れてまいりました」

「ご苦労、下がっていてくれ」

 剣二は天鳥船をまた鞘の空間に移動させ、息子の八重事代主神に国譲りをするのか訪ねた。

「恐れ多いことです。この国は天に預けます」

 八重事代主神が答えたので剣二は大国主に訪ねた。

「息子がこう言っているが他に意見を言う子供はおるのか?」

 剣二がこう聞くと大国主は言った。

「もう一人、私の子に建御名方神(タケミナカタ)がおります。この子をおいてほかにはいません」

どこにいると剣二が訪ねようと思ったとたん声が聞こえてきた。

「誰だ、我々の国でこそこそ話をしている奴は!ならばいっそのこと力比べして決着をつけようじゃないか。俺が先にその手を掴んでやる!」

 建御名方神は右手に大きな岩、というより小さな山みたいな大岩を軽々持ち上げて現れた。

『おい、天鳥船。あの岩を見てくれ、あれをどう思う』

『すごく大きいです……。じゃなくて、力の差を教えてやってください』

『お前が相手するか?お前でも倒せると思うぞ?』

『剣二様にお任せします。力仕事は好きではありません』

「ぶっ潰れよぉぉおお!!」

 建御名方神はそう言うと剣二に向かって大岩を投げつけた。剣二はニッと笑い右の人差し指で受け止めた。

「なかなか面白いやつだな。俺に喧嘩を売るとは。どれ、俺を投げ飛ばしてみろ」

 手首を動かし大岩を海に投げつけた。水柱が大きく上がる。

 それを合図に建御名方神は剣二の手を掴んだ。その瞬間剣二は己の腕に神力を流した。剣二の右腕は氷の柱に変わりそこから剣の先へと変化した。

「うっ、ぐわぁああ!!?」

 自分の右手が傷つけられ苦痛の叫びを上げ、手を離した。

「おい、そんなもんか?」

 剣二は一歩踏み出し建御名方神の手を掴んだ。そしてグシャリと手を潰すと雑草を引き抜いて地面に叩きつけるように建御名方神を投げ飛ばした。

「がはっ……。か、かなわん」

 そう建御名方神が言うと煙幕を発生しその場から逃げた。剣二はまだ答えを聞いていないので能力を使い追いかけようと思ったが、後々反乱など起こそうと考えを持つ者が現れないようにじっくり恐怖を人々に植え付けるために歩いて行くことにした。

「逃げたか。……まぁいいだろう、俺からは逃げられん。大国主よ、お主の子供を連れてくるからしばらく待っておれ」

 地面には点々を血が落ちている。それを見て追いかけるのは簡単だった。剣二は殺気を放ちながら全力で走った。建御名方神は逃げ足が速く結構な距離が出来ていたが、剣二が追いつくのは時間の問題だった。

『剣二様、建御名方神を殺すのですか?』

 天鳥船が聞いてきた。

「そうしてもいいが、大国主から国を取り息子を奪うのは流石に可愛そうだ。両腕切り取って二度と刀を持てぬようにして許そうかと思う」

『そうですか、ならば折角なので国を治めて貰いましょう』

「……どういうことだ?」

『このまま行くと諏訪の国と呼ばれる場所に着きます。そこは大きな湖がある国です。そこを収めてもらったほうがいいのではないのでしょうか?』

「別にどうでもいいが、その案採用しよう。私も実験したいことがあるのでね、ついでだ、それもやってしまおう」

『実験とは?』

「切り落とした腕から神を作り出すのさ」

 

 

 建御名方神は諏訪の湖まで走りってきたがとうとう疲れ果て岩に背を預けていた。そこに刀を下段に構え剣二が歩いて来た。建御名方神は剣二を倒そうと気などなく恐怖心しかなかった。

「わかった、許してくれ。どうか俺を殺さないでくれ。俺はこの地を除いてほかの国には行かない。わが父の大国主の言葉にも、事代主神の意向にも背くことはしない。この国は、天つ神のお言葉に従って、すべて差し上げましょう」

「俺に喧嘩を売ってただで済むと思っているのか」

 剣二は低く訪ねた。建御名方神の顔は血の気を失っていた。

「貴様は俺に喧嘩を売った挙句逃げ出した。首を切り落としてやりたいが大国主から息子を奪うのはちと心苦しい、だから……」

 剣二はそこまで言うと刀を下段から上段に構えた。

「貴様は二度と剣を握れないようにしてやる」

 そう言うと剣二は刀を振り下ろし建御名方神の両腕を切り捨てた。刃には電気を流し血管を焼ききり神経を麻痺し建御名方神に痛みすら与えなかった。

「これで許してやろう。さて、大国主へ行くとしよう」

 剣二は切り落とした建御名方神の両腕を持ち大国主の場所へ瞬間移動をした。

 

 

「おまえの子供たち、事代主神と建御名方神の二神は、天つ神の御子の言葉に従いますと申したぞ。改めて尋ねる、お前の意志は?」

 剣二は大国主の前で聞いた。大国主は答えた。

「私の子ども、二神の申しあげた通りに、私も従います。この国は、建御雷様の仰せのままに全て差し上げましょう。ただ1つ、1つだけお願いがあるのです。私の住処を、天つ神の御子が神聖な皇位におつきになる光り輝く壮大な御殿のように、地底の岩盤に柱を太く立て、天にも届くほどに立派につくってください。それならば、私は遠いところへ隠れていましょう。また、百八十にものぼるわが子どもたちも、事代主神が先立ってお仕えするならば、背く神もおりません」

「いいだろう、その願い聞き入れた。ならば……」

 剣二は柄に手を掛け居合の構えを取った。

『雷人弐ノ型』

 一閃。すると遥か彼方の山々が中腹から上が吹き飛び真っ平らな平地となった。剣二はその山々を剣先で示しながら言った。

「今俺が斬った山々に大国主が望む御殿を作ろう。明後日には出来るだろう、それまで待っておれ」

 そう言うと剣二は背を向け月に変えるべく海辺まで歩き始めた。

「剣二様裏切り者はどうしますか・?」

「あ奴らはその内処刑されるだろう。俺が手を出す必要はない、さて帰るとしようか」

 

 その後の剣二は来た時と同じように天鳥船に天の浮舟まで帰った。そこで切り落とした腕を取り出した。

「その腕をどうするのですか?」

「これを1つは俺の力を、もう1つは建御名方神の力を与えて神を作る。そして地上に落とす。地上に落ちた神はそのうち地上を上手く統べるだろう」

 剣二は切り落とした腕を投げ上げ刀の峰で撃ち落とした。すると左手は蛇に、右手は帰るに変わって地上に落ちていった。

 それを剣二と天鳥船は見届け天照に国譲りが成功したことを報告をするため天の浮舟を去った。

 左手は剣二の力に影響され軍神と崇められ、剣二によって潰された右手は建御名方神の力より怨念に影響され祟り神として祀られる事になる。

 そしてこの2神同士がでまた戦う事になるとは剣二は知る由もない。

「蛇は『八坂神奈子』でカエルは『洩矢諏訪子』かな?」

「何がですか、剣二様」

「名前だよ、名前。どうだ、いい名前だろう」

「いいえ、思いません。ネーミングセンスありませんね」

「酷い奴だな、まぁいい飲みに行こう。」

「剣二様の奢りなら」

「ああいいぜ、奢ってやろう。フハハ」

「ではいただきます。フフフ」

「「アハハハハ!」」

 こうして剣二は葦原中国を統べたのであった。

 

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