東方雷人伝   作:ドディドドン

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剣二の過去話編序章になります。


第十一話 雷神の穢れた記憶・序章

剣二が地上に降り立ち、地上を平定したのが広まるのはあっという間だったが、その噂が過去の物となり街中が人々が噂を話題にすることがなくなるのもあっという間だった。

 日時にすると数ヶ月。月の都は毎日がお祭り騒ぎだったりするので仕方がないかもしれないが。

 しかし、人々が剣二が地上で活躍したことを事細かに想像するものがいなくなったりしても一部姫様は未だに想像していたり地上に憧れを持っていた。

 依姫と豊姫である。

 この姉妹は未だに地上に興味があるそうで、永琳や剣二に会うたび「地上について教えてください。」などとせがんでくる。一方かぐや姫は地上よりも月の都の方が興味があるそうで、此方も変わらず剣二に遊びに行きたいとせがむ。今までだったら、やかましいとかうるさいなとか思う剣二なのだが、最近の依姫や豊姫の質問攻めの後にわがままを言われると「お前はこのままでいてくれ。」と思ってしまうのだった。

 そんな日が続くと夜はいつも愚痴ばかり口から出てしまう。

 永琳がテーブルに肘をついて右手を当てている。相当参っているようだ。

「はぁ、地上の何があの子達を駆り立てるのかしら?」

「気持ちは分からなくもないが。」

「いつもいつも『地上について教えてください』よ。大体は教えたし、今は私たちが知っている地上とは随分変わってしまったもの、答えることなんてできないわ。」

 グラスに入ってある酒を一口飲んで永琳はジト目で剣二を見る。剣二はいつもと変わらず愛刀を手入れしている。剣二が地上に行かなければこんなことにはならなかったのに、と思う反面、剣二が戦う姿を見たかったな、と思う自分が居るのを永琳は知っている。

「剣二、貴方はあの子達に質問されないの?」

「ん、ああ、されるよ。」

 刀の手入れをしているため永琳が話をしていても剣二は相槌は打っても目を見て会話をしなかったが、一通り手入れが終わってようで、刀を鞘に収めて永琳を見た。

「そう、じゃあ雷神様はどうやってあの子達の質問を躱しているのかしら?」

 意地悪く質問したら剣二は少しムッとして答えた。

「永琳に聞け。」

「うわぁ、最悪。私に任せるなんて酷い!」

「ふっ、嘘嘘。ちゃんと教えているよ。」

 フッとクールに笑ってお酒を飲み 剣ニは言った。

「そうだな、最近は正直に話しているよ?」

「私には話さないで?」

「お前も地上を知ってるだろう。」

「最近の地上は知りませんよーだ。」

「はぁ、何拗ねているんだ?」

「拗ねてないもーん。」

 剣二は思った。拗ねていないなら「よーだ」や「もーん」なんて言葉は使わないだろう。それに年を考えろ。こんな事言ったってやかましいだけなので、言わないが。

「最近の地上ってもな、観光したわけではないからな。詳しく知らないな。どうしようもないくらい嫌な空気だったが。」

「そりゃそうよ。穢れた土地なんだし。」

「おい、そんなこと言うな。」

 剣ニの一言で永琳は黙った。

「俺たちが住んでいた土地なんだ。しかも俺たちは寿命が来るのを恐れて月に逃げ込んだ人間だ。見方変えれば俺たちは死ぬのを怖くてビビって逃げた愚か者だ、偉そうに穢れたなんて言うんじゃあない。」

 剣二は真剣な表情から力を抜いて「と、俺は思うぞ。」と肩をすくめて言った。

「そんなことを言うなんてどうかしたの?」

 永琳はコップを両手に持って聞いた。剣二は言った。

「いや……まぁ、ちょっと昔を思ってね。」

 剣二はコップの中に入っている酒を見てポツリと言った。

「いまじゃ、月の都ここに住んでいるが、俺が生まれた時は穢れた地上の人間だったんだなぁってね。」

 永琳はそれを聞いたとたん声を張り上げて言った。

「そんなことはないわ!剣二は穢れてなんかいない!!」

「いいや、俺は両手を100本あったとしても足りないくらい人を殺してきた。……俺は地上に居るべき者なのかな。」

「剣二?」

 永琳は剣二の発言に耳を疑った。どうしてこんなことを言うのだろう、と。

「地上の人間は俺やお前がいなくても、時間をかけて進化してきている。穢れたためにたった50年しか生きる事ができない彼らは世代に伝え、引継ぎ進化している。だが、俺たちはそれがまるでできていない。いくら俺が綿月姉妹に武術を教えても師匠である俺をを超えることはできていないし、いくらお前があの子達に様々な事を教えても超えることができていないじゃないか。神となった俺を超えることは難しいだろうし、お前の頭脳を超えることができるのはまだまだ先かも知れない。しかし、地上の人間は俺やお前を俺たちがあくびしている間に追い抜くことができる。この意味分かるだろう?」

「……剣二、疲れているの?」

「永琳、今に見たまえ。地上に住んでる人間はそのうち強かに成長するだろうよ。」

 その言葉に永琳は背筋がゾッとした。おかしい、今日の剣二はおかしい。いきなりこんな事を言うなんて私の知っている剣二じゃない。今日はもう休んだほうがいい。

「け、剣二もう寝ましょ。貴方疲れてるみたいよ。」

「ん、そうか。まぁ明日から連休だしゆっくり休むか。」

 コップを片付けようとする剣二を永琳が代わりに片付け剣二を寝室に向かわせた。永琳は頭がグラグラするのを抑えてさっさと食器を下げ自分も寝室に向かった。しかし、どうも剣二が気になり一緒に寝ることを決めた。

「…………静かね。」

 永琳がそーっと剣二の寝室に入ると剣二はベットに潜り込みスヤスヤと寝息を立てていた。じっと剣二の顔を診てみる、微かな疲労は見えるが別に問題ない。なんであんなことを突然言うのだろう。

「ちょっと今夜は一緒に寝るわよ。」

 小さな声で永琳は言うともぞもぞとベットに潜り込んだ。剣二は小さく呻いたが、起きなかった。

――私が知っている剣二じゃないと言ったけど、そもそも剣二が私と出会う前のことなんて全然話してくれないわ。それと何か関係あるのかしら?

 剣二と出会った時にいろいろ聞いたが「ガキにはちときついからダメだな」とか「飯の前に言うような話じゃないな」とか「寝るときに話すとオバケが出るからやめたほうがいいな」とか脅かし全然話してくれなかった。

――私って剣二のこと知らなすぎじゃないかしら?

 少し頭を上げて剣二の横顔を見る。雷を纏い、一瞬で多くの敵を切り倒し、天下無双の剣士。死んだと思ったらここにいたと言っていたが、何故、圧倒的な力を持った剣二が死に掛けなければならないのか。よく考えればおかしいことばかりだ。

 今度ばかりは聞かなければならない。

「剣二……。」

 しかし、永琳は感じていた。これを聞いたらまた剣二が遠い場所へ行ってしまうのではないか。剣二ならば簡単に永琳の前から消えることが出来る。だが、これも聞いていないとどこかへ消えてしまう可能性がある。

「お願いだがら何処にも行かないで……。」

 永琳は剣二の腕の中ですがるように言った。

 

 

――――名も忘れた戦場。真夏日に当てられ腐敗した死体したいが砂利のように転がっている。ここ3日ばかり何も食っていないのか空腹が酷い。

 喉が渇いているが死んだ兵士の水筒は飲めない。栓を抜いて水を出すとウジがどぼどぼとこぼれてくるのは分かっている。歩くのもしんどい。俺は、転がっていた槍を拾い杖がわりにして一歩一歩丘まで歩いて行った。

 時代は戦乱の世。織田信長が今川義元を打ち破ったのだろうか、武田信玄が上杉謙信を倒したのか分からないが1つの大戦が終わったのは間違いない。

 何故こうなったのだろう、俺は将来父親の跡を継いで豪商として暮らすのではなかったのか。許嫁もいた、金もあった。だが時代は父を殺し、母を殺し、兄弟を殺し、俺の女も殺した。

 俺の両足は限界だった。ぐらりとよろめくと天を仰いで倒れた。

 黒いが天を覆って大粒の雨を降らす。俺は口を大きく開けて水を飲んだ。雨水が跳ねて口の中に泥が入るが構わず飲んだ。

 腹から怒りがこみ上げ、悲しみが吹き荒れ気が付いたら俺は叫んでいた。

「ああああああああっ!!!!何故俺は生きているっ!!何故死ななかった!!これほどの地獄があろうかっ!!」

 己が涙を流しているのか分からなかったが、槍を支えに立った。

「殺してやる、俺が全てを殺してやるっ!!俺から全てを奪った奴らを殺してやる!!」

 俺は槍を天に突き上げ吠えた。

「殺してやるぅ!!!!」

 その瞬間、天から大木ほどの大きな雷が俺の体を強く打った。滝のように俺に降りかかり怒りの感情を膨大な力として溜まっていく。

 雷を受けた衝撃を受けまた俺の体は地面に倒れたが、ふっと体が軽くなったと思ったら俺は、森の中に倒れていた。そこで意識を失った。

 

「……じ、…………nじ、ねぇ、大丈夫剣二!」

「うっ、ああ、んあ?……もう朝か。」

「剣二、大丈夫?」

 永琳が心配そうにこちらを見ていた。随分昔の過去を見たものだ。何万年と見ていなかった過去をここまではっきりと思い出すのは初めてかも知れない。

「ん、ああ、大丈夫だ。喉が渇いているがな。」

「すごい汗だったもの、うなされていたのよ。はいこれ、タオル。これで汗を拭いて、今水を持ってくるから。」

 ぼうっと周りを見渡す。いつもの自分の寝室だが、脳裏からさっきの夢が離れない。取り敢えずベッドから出て汗を拭き始めた。

 永琳が水を持ってきたのでタオルと交換して一気に飲み干した。冷たい水が火照った体を冷やしていく。やっと落ち着きを取り戻すことが出来た。

「はぁ、おはよう永琳。」

「おはよう、剣二。大丈夫?」

「ああ、まあね。ちと夢を見たんだ。」

「そう。それって自分の過去の夢?」

 永琳の一言に剣二は驚いた。それを見て永琳はやっぱりねと呟いた。

「剣二聞きたいことがあるの、いいかしら?」

「ああ、いいぜ。」

 剣二は大体何を聞かれるか分かっていた。

「剣二が私と出会う前の過去を教えて。」

 剣二は内心「やっぱりな。」と思った。今まで誤魔化してきたが、今回ばかりは誤魔化すこともできないだろうし、誤魔化す必要もない。

「それならちょっと長くなるし折角だ、地上に興味のあるあの子達も一緒混ぜて話をしよう。」

 

 

 

 

 ここは城内のひと部屋。ここには剣二と永琳。綿月姉妹と輝夜がいる。酒と軽いつまみを用意し、剣二の昔話をすることにした。

 剣二は集まった4人の顔を見てニッと笑いこう切り出した。

「話をしよう。」 

 パチンと右手に持った扇子を閉じ剣二は話を始めた。

 

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