剣二が街「未来都市」に来て4年が過ぎた。最初は電気で動く物や空飛ぶ車などを見ては驚き、永琳に笑われたりと色々あったが都市の人々や永琳のおかげですんなり慣れていった。仕事は妖怪退治などでお金を稼ぎ、たまに永琳の研究所で手伝いをしたり、永琳の弓の稽古に付き合ったりとそれなりに充実した生活を送っている。
今日は、研究所で刀で弾幕を斬る稽古をしていた。研究所では最新の銃などがあって、それを自分に向けて撃たせ、飛んでくる弾を神速の速さで叩き切っていた。
そのお蔭か今では、目隠しした状態でも銃弾を斬ることができる。
「せいやっ!!」
刀を振るい、銃弾を斬る、そしてそのまま踏み込み、固定したマシンガンを粉砕する。そこで、アナウンスが入る。
「あーっ、また壊した!何回壊せば気が済むの!?ちょっと私の所まで来なさい!」
・・・やっちまった。これで10回目かな、またうるさくなるな。そう思いながら鬼神(永琳)がいるモニタールームに行く剣二。モニタールームの扉の前で深呼吸、意を決して扉を開けると鬼神(永琳)が仁王立ちしているのを確認、そのまま扉を閉め帰ろうと後ろを振り向くとモニタールームにいたはずの鬼神(永琳)が目の前にいた。
「ヤア、エイリンサン、ドウシタノデスカ?」
「あら、剣二さん。・・・覚悟はいいでしょうね?」
血の気が失せた表情で挨拶をする剣二、一方永琳は「イイ笑顔」をしながら挨拶を返すと同時に右手に持っていた注射器を持ち上げる。
「ちょっ、永琳!!やめろぉ!!」
そう叫びながら脱兎の如く走り出す。
「フフフ、逃がさない」
永琳は剣二を追いかける。
「何回物を壊せば気が済むの!?今日という今日は許さないんだから!!」
「悪かった!!だから、その注射をしまえ!!」
「その言葉は聞き飽きたわ!この注射でその馬鹿な頭を直してやる!!」
「なっ・・・、ふん、俺の頭を直すより、いつも気にしている胸を大きくする注射でも自分にしたらどうですか!?」
「ギッ、言ったわねぇ、私が一番気にしていることぉ!!」
「ハッ、胸大きくするより心大きくしろよ!!」
「うっさい!!これでも月夜見より大きんだから!!」
「知るか、ボケ!つか、月夜見にめっさ失礼なこと言ったぞ、お前」
「事実だもん!!」
もはや、幼稚園児の喧嘩である。すると、剣二でも永琳でもない声が聞こえてきた。
「誰が事実ですか」
声がした方を見ると大きな小槌を永琳目掛けて振るう月夜見の姿を確認した。
ふん!ゴンッ!!グヘェ。
一瞬で幼稚園児の喧嘩は月夜見の乱入という結果で終了した。
「何したの、月夜見?」
「えっ、見てわかりません?」
「い、いやそうじゃなくて、何しに来たの?」
「あ、え~と、剣二さんと永琳に用があってここに来たんですが、何やら永琳がものすごく失礼な事を私に言ったので、潰しました。」
「ああ、そうなんだ。ハハハハ・・・」
乾いた笑い声を挙げる剣二。すると気を失っていた永琳が目を覚ました。
「う~ん、ここは何処?ん、月夜見?なぜに??」
どうやら永琳は喧嘩の記憶を失っているようだ。
「私の方が大きいですよ」
「?」
「永琳、剣二さん話があります。来てください」
場所を移して月夜見の部屋。ここでは剣二と永琳と月夜見の3人がいた。
ここで、月夜見について紹介したい。
「月夜見」
未来都市を治める神で、夜の世界を統治する神でもある。容姿は黒く長い髪を持ち、服装は巫女服を着て、いつもお祓い棒を持っている。
人々からはその圧倒的なカリスマ性でかなりの支持を受けている。
永琳とは数少ない親友で、剣二が永琳を救ったとき日に永琳から紹介され知り合い友人となった。
たまに、剣二と一緒に酒を飲み語り合っているので軽い冗談を話せるくらいになり、永琳が剣二に恋心を抱いているのを気付き、恋の相談に乗ったりしている。
「で、用って何だい?」
剣二が質問する。月夜見は頷き答えた。
「はい、剣二さんはここ最近、人が原因不明で亡くなっているのをご存知ですか」
「ああ、昨日まで元気だった人が次の日になって死んでいたってやつだろ」
ここ数年いきなり人が死んでいく事件があり話題になった。病気でもない者が、まるで役目を終えたように死んでいったのだ。その中に永琳の両親も含まれている。
「ええ、病気でもなく死んでいく。この原因がわかったんです」
「「本当!?」」
「原因はこの星にある『戯れ』が影響しているのです」
「戯れ?」
剣二が初めて聞く単語だ。月夜見は説明を続ける。
「はい、ところで剣二さんはここ最近妖怪退治をしますが、戦って気付いた事はありませんか?」
「・・・・・・殺気立っている」
月夜見に質問され腕を組み、考えてみて思ったことを呟いた。しかし、永琳はその言葉を理解していないようだ。
「初めてここに来た時より妖怪の殺気が恐ろしいくらい増えている。しかもあれは俺たち人間に向けられているもんだ。特に俺なんか目を合わせた時に伝わってくるぞ。『コロシテヤル、クッテヤル』ってな」
それを聞いて月夜見は頷き「やはり」と呟く。
「それが原因で『戯れ』が溢れ出てきて、私たちに寿命を一気に無くしてしまうのです。このままだと私たちも気がついていたら黄泉の国に・・・と、なるでしょう。そうなる前に手を打たねばなりません。」
「そうね、でもどうすればいいのかしら?」
月夜見はコップに入れてある水を1口飲んで言った。
「戯れの無い、月へ行きそこで生活します」
月への引越し作戦を立てて、永琳はシャトルの制作、剣二は妖怪への対応、月夜見は月の情報収集などで忙しくなった。
剣二は妖怪が街を攻めて来るのを必死で止めていた。日に日に妖怪からの攻撃が増して来て、戦いが終わった後、白い胴衣が血で赤く染まったりして戦闘の激しさを物語っていた。傷も受けたりして、永琳に心配を掛けていた。
そして、いよいよ出発の日。シャトルは3機用意し、1号機には月夜見を筆頭に出発し、2号機は永琳率いる科学者たちが乗り、3号機は剣二率いる軍人と一部民間人が出発する予定だ。
月夜見が出発して無事、月に到着したと連絡が入り、2号機も発射準備に取り掛かった。
剣二は永琳のところに行き、様子を見に行った。
「永琳、いるか」
「あら、剣二じゃない。どうしたのかしら」
「ん、緊張してるかなぁ~って思って来てみた。」
「ふふ、ありがと。私も貴方に会いたいな~って思っていたの。」
「・・・緊張しているのか」
「・・・解る?」
剣二は苦笑しながら頷いた。
「まあな、いつもより元気がない」
「だって、失敗したらって思うとね。」
少し俯きながら言う永琳を見て、剣二は永琳を抱き寄せた。突然の事で心の準備が出来てなかった永琳は顔を真っ赤にしていた。
「大丈夫、絶対うまくいく。俺らならやれるさ」
「剣二・・・///」
「なっ」
「ええ!そうね!!私たちなら何事も上手くいけるわ!」
永琳が明るくなったのを見て頷く剣二。そして、懐から1つの箱を取り出して見せた。そこには、青い3つの勾玉が付いたネックレスがあった。
「これは、昨日俺が丹精込めて作ったネックレスだ。お守りとして首に掛けときな。あと、瞬間移動の目印になってもいるから、ピンチって時に霊力を流せば駆けつけてやるからな」
そう言いながら永琳の首に掛けてやった。永琳は勾玉を優しく両手で包み込み「ありがとう」と礼を言った。
剣二は満足そうに頷いた。すると、一人の博士がシャトル準備が出来たことを伝えに来た。
「分かったわ。それじゃあ先に私は行ってるわ、貴方も月に来たら一緒に餅つきをしましょう。」
「ああ、ずんだ、用意しててね」
「ふふ、ゴマも用意しとくわ」
「それじゃあ。月で会おう」
「ええ、月で会いましょう」
そう言ってお互い手を振って別れた。
シャトル2号機が出発してから数時間たった。ついさっき月から無事に2号機が着いたとの連絡があった。
出発の準備をさせてる間、剣二はふと空を見上げた。雲一つない綺麗な夜空である。たくさんの星が散りばめられており、美しく輝いていた。もう少しでこの宇宙へと旅立ち、月へと赴き新しい生活を始めるのだ、そう思うと心が踊った。
その時、とてつもない寒気が剣二の背中を走った。後ろを振り返ると巨大な火の玉が、今まで暮らしていた未来都市を飲み込んでいた。隕石の衝突。炎の津波が剣二へとものすごい速さで迫っていた。
豪炎の波は剣二を飲み込んで、シャトルを飲み込んで人類がいた痕跡を何一つ残さずに地上から消し去った。
月ではシャトル3号機が出発するのを待っていた。それと同時に到着した際の宴会の準備をしていた。
八意永琳は想いの人、鍔基剣二が到着するのを待っていた。彼が、到着したら思いっきり抱きしめて皆の前で「あなたのことが好きです。一緒に居させてください。」と告白しようと決意していた。正直皆の前で言うのが恥ずかしいけれども、私にはお守りがある。きっと、上手くいく。そう自分に言い聞かせて告白する決意を決めたのだった。
突然部屋に月夜見が駆け込んできた。
「永琳!!地球に、地球に隕石が!!!」
それを聞いたときは冗談だと思いたがったが、月夜見の目には涙が溢れていた。
「剣二!!!」
最愛の人の名前を叫びながら外へ出ると青く綺麗な地球が、赤く爆発しているのが見えた。
「あ・・・ああ、嘘よ、嘘よ!!けええんんじぃいいいいい!!!!」
そこで永琳の意識は途絶えた。
という、ことになりました。次回は剣二に変化が起こります。
テスト期間に入るのでしばらく休みますが、もしかしたら土日に書くかもしれません。
誤字脱字がありましたらご連絡下さい。