俺はこんなの望んでない。《加筆中》   作:赤 有馬

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なんとか間に合った(達成感
宿題は真っ白(絶望感

はい、ちょっとばかしシリアスと病みと闇がログインします。
苦手な方は回れ右。


番外・囚人公の中学3年間
reloadⅠ・絶望入学式


中学生。

それは多くの黒歴史を築く時期。

後になって悶え、苦しみ、後悔をすることだろう。

男も女も関係無い。

そう、それは主人公であろう例外ではない。

むしろ、彼だからこそ起こってしまったものもあるだろう。

 

さあ、では彼の辿った黒い三年間を……。

 

 

― × ― × ― × ― × ― × ―

 

《入学式》

 

桜咲いたら一年生という有名なフレーズが流れるこの春の日和。

とうに散ってしまって葉桜になるものもちらほら。

保護者諸兄は思い思いにカメラを持ち込み、子の晴れの姿を記念にするためフラッシュを焚く。

それは校門であったり、桜の木の下であったり、はたまた誰とも知らない銅像の前だったりする。

そこでは親だけでなく、つい先日に卒業を共にした友や、見知らぬこれからの友が交わり、新たな風を感じさせる。

この時既に多くの友を作る者もいるだろう。

 

やがて時がたてば、子も親も体育館に集まり、この学校の先人達と対面することとなる。

残念ながら全員が全員対面と言うわけではなく、都合によって幾つか席を空けている。

 

今回、この話の主人公となるのは、この晴れの日にめでたく入学できた者ではなく、不幸にも欠席することになってしまった、ある少年である。

勿論、誰かというのは分かりきっているだろうが……。

 

 

 

- × - × - × - × - × -

 

 

 

その少年は朝の6時にpipipi、という軽快な目覚ましの音によって目を覚ました。

彼は暖かい布団から体を起こさずに「ふああぁぁぁ」と大きな欠伸をし、伸びをした。

ジャラリ、と音がした。

彼の両手首には手錠が、両足首には鉄輪と鎖が、そして首にも同じように鉄輪と鎖が。

何より、両脇には眠る母と妹が。

両手首の手錠は彼女たちにつながっていた。

 

「これはどういう状況だ……」

 

彼はこう言うしかなかった。

 

 

-×-×-×-

 

 

彼女たちが目を覚ましたのは彼が目を覚ました3時間後の9時程だった。

時間的にいうなら、既に入学式は始まっている。

 

もちろん、彼も起こそうとは努力はした。

しかし、彼が動くたびに逆に彼女たちは密着し、動けなくなってしまった。

胸や太ももがヤバいが、母妹なので反応してはいけない。無心無心無心無心無心無心無心無心。

 

 

 

彼は身内が病んでいるという事態を甘く見過ぎていた。

それを"今"知ることになる。

 

 

 

「ねぇ、どうしてこんなことになってるの?」

 

寝ぼけた眼をこする二人。

そう尋ねると、二人そろって「なにが?」といった感じに小首を傾げられた。

犯人が母と妹ではなかった……。とほっとするのも束の間。

 

 

 

「これは私たちの愛よ」

「兄さんの……為…だけの愛……」

 

 

 

空気が凍ったと思ったのは俺だけだろうか。

両脇には母妹が居て体温が有るはずなのにゾッとするような冷たさだ。

凍りつくように身が固まる。

 

そんな俺に―――――

 

愛と云う名の拘束と、それを俺に与えた彼女たちが底無しの沼のようにヌルリと絡みつく。

絡みつく鎖は冷たく重かった。

しかし、それよりも彼女たち、母と妹の目が昏く、深く、冷たかった。

 

「やっぱり真ちゃんは此処にいるべきだと思うの」

「兄さん……の…居場所は此処……だけ…」

「誰も真ちゃんを傷つけたりしない」

「何も……不自由…しない」

「私たちがあなたに愛を与えるわ、真ちゃん」

「…だから……私たちを愛して…」

 

昏く、深く、冷たい彼女らの目が俺の目を射抜き、顔を近づける。

俺は背骨に氷柱を突き込まれたように動けない。

標本のように捕らわれた存在になった。

顔を近づけた彼女たちが、俺も分からないうちに、いつの間にか流れだしていた涙を舌先で掬う。

その時の彼女達の顔は―――――

 

  正気じゃない

 

     ―――――興奮で朱く染まっていた。

 

 

 

恐怖した。

前世を含め、これほどに人間を恐れた事は無かった。

心臓が早鐘を打ち、息が少しずつ荒くなっていく。

にも関わらず、体が緊張から汗も出ない。

ただ先ほど舌が這った箇所のみがじっとりとして不快を与える。

触れる人肌が沈むようにねっとりと絡みつく。

鎖の冷たさと、重み、硬さ、そしてその金臭さだけが現実を示しているような気がした。

 

 

俺は捕らえられたのだ。

彼女たちの歪んだ愛に。

重く苦しい束縛に。

 

 

 

それを直視しないように、心をごまかし、体から絞り出すように言葉を吐き出した。

 

「は、はは。母さん、冗談はほどほどにしてよ。もう中学の入学式が始まっちゃってるよ」

 

自分でもだいぶ苦しい言葉だと思う。

しかし、それくらいのものしか喉を通らなかった。

 

もちろん、そんな言葉が彼女たちに届く筈もなく。

 

「冗談なんかじゃないわ。あんな所行かなくていいの。籍だけ置いておけばなんとかなるわ。私が何とかするもの」

「安心……して兄…さん。私も…もう…小学校なんて……行かないから。ずっと…一緒だから」

「そう、」

 

 

 

「「死ぬまで一緒だから」」

 

 

俺は目の前が真っ暗になった。

 

 

-×-×-×-

 

 

再び目が覚めた時、時計の針はもう直ぐ短針長針の両方が12を指すところだった。

 

下の階からは良い香りがする。

きっと昼飯を作ってくれているのだろう。

 

鎖で縛られた俺の為に。

 

 

「真ちゃん、ご飯よ」

 

やや時間が経ち、母が昼飯を載せたプレートを持って部屋に戻ってきた。

妹はまだ帰ってこないらしい。

いつ帰ってくるのだろうか。

 

捕らえられているという現実を受け止めつつも、心がそれを諦めているらしい。

もう逃れられない。きっと。

これは心が折れかかっているのかもしれない。

……終わってしまう。

此処で一生を終わらせてしまう。

そこまで思考が逝きハッとなった。

 

そう考えると諦めきれなくなった。

 

死にたくないんじゃない。

死ぬように生きたくない。

 

「母さん」

 

言葉は不思議と口から出てきた。

 

「母さんは僕に学校に行かせてくれるって約束したじゃないか」

「それは……」

「母さんは約束を守ってくれると信じてたんだ」

「………」

「僕だって友達が欲しいよ……」

「……………」

「母さん……母さん!!」

 

不意にゆらりと瞳が揺れる。

そして、光が差し

 

「ダメ……だよお母さん…」

 

再び闇に引き込まれた。

 

「兄…さんを危険な……外に出す……なんて…ダメ……だよ。…私たち…の…兄さんが誰……に奪われる…か…わからないん…だから。…だから……兄さんは此処に……居る…。私も……此処……一緒に…居る。そして…お母さんも……そうすれば私たちは………幸せ……に…なれる………」

 

扉を開けて立つ妹は、俺の意識が沈んだ時よりも瞳は昏く、

 

 

 

 

 

血の付着した包丁を持っていた。

 

 

 

 

 

 

"ソレ"からは血の雫が滴っていた。

まるで今さっき誰かを刺したかのような……。

 

 

 

「お…母さん……。ごめん……ナサイ…。お父さん……うっとおしい…から刺しちゃった……。お腹…だからまだ…生きてる……かな?」

「ありがと、紅留美。目が醒めたわ。お父さんはほっときなさい。どうせ死なないでしょう」

「お父…さん、『鈴音ぇぇェ…ェェェエ!! 謀…りやがったな……ぁぁぁ!!…』って……叫んで……た。お母さん…何…もやってない……。私が…うっとおしい…からやっ……ただけ。…お父さん、それ…を…わかってない……」

「紅留美の口調だと黒徒さんに似てないわね。それにしても黒徒さんったら本当にあなたのことが好きね。紅留美にこんなに嫌われてるのに。私も嫌いですけどね。」

「ウザい…臭い…いやらしい…。」

 

「「だけど 真ちゃん・兄さん のことだけは感謝してもいい」」

 

瀕死であるだろう父親に遠慮無い言葉が並べられていく。

実際にお父さんが言われたら悲しいであろう言葉「ウザい、嫌い、臭い」等の刃が、関係のない、ただし内年齢としてはそれなりの歳の俺にも突き刺さる。

唯一感謝されるのが嫌いな俺を産ませたことというのもまた悲しい。

こんな状況であるにも関わらず少なからず同情はしてしまった。

 

「ああ、お…兄ちゃん……。話…逸れたけど……、とりあえず…お父さんの事……忘れて……? 兄さん……の家族は私……とお母さんだけ……。そして…私たちは……兄さんを…愛する……から。兄さんも……愛して…。」

 

思い出したかのように二対四つの濁り、冷たい目がこちらに向く。

 

「兄さんは…誰にも……渡さ…無い。」

「二度と真ちゃんを危ない目には合わせない」

 

母が手に昼食のプレートを持ち、右側にしなだれかかってくる。

妹が血のついた包丁を放り、左側に身体を押し付けるように抱きしめてくる。

 

嗚呼もう詰んだかもしれない。

 

だが、諦めない。

まだ藻掻いてやる。

あの神様(糞野郎)に拳の一つ、文句の一つすらぶつけていない。

母妹に意思を任せたら……人として死ぬ。

目的は果たせない。

そもそも、アリアの世界で誰とも顔すらも会わせていない。

生きなければ。

 

「ああ……そう…兄さん…。」

 

俺の左腕を胸に抱きながら、妹が上目遣いで声をかけてくる。

さっき生きると決意した直後に声をかけられ、多少ドキッとする。

 

「な、なんだ」

「兄さん……まだ諦めて…無い。でしょ……?」

「―――――ッ!!」

「目……わかる…。私たちだけ……を…見つめ…てない……」

「それは―――ッ!!」

「あの…ね…、兄…さん。お母さん…は学校…許し……たかも…しれないけど、私…とは…そんなの関係……無い! もし…お母さん…から逃げて……も私が…兄さん…を捕まえる。絶ッッ対……逃がさない……!!」

 

ゾクリ、とした。

こちらを見る上目遣いの目は、奈落のように光が無かった。

 

 

 

家族の内、一番幼く、小学生であるはずのこの子()は誰より危険な存在だった。

 

 

 

 

 




最終狂気妹・紅留美様
小学四年生。病みと闇に呑まれし者。
最《凶・狂・恐》の小学生様。
作者の感想としては「何故こうなった」

申し訳有りませんが、前回に続きもう一つアンケートをご協力お願いします。
前回のラストでキンジさんに押し倒された真くん。
大切なモノを失った、ということですが……。
さて、大切なものは奪われ、
Ⅰ. 下手したら責任一直線待ったなし
Ⅱ. 魔法使いになる資格はまだ奪われてない

あ、Ⅰだからと言って即結婚(ガチ)endにはなりませんので。

次回はキャラ紹介にするつもりのため、それなりに投票の期間があると思います。

ご指摘、感想、評価をお待ちしております。
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