織斑千冬は一人黙々とお酒を飲み続ける。
一夏がいなくなってからというものお酒を飲む時間が極端に増えた。
忙しい仕事が落ち着き、久しぶりに実家に帰っても
「ただいま」
千冬の言葉は虚しく響くだけだった。
一番会いたい存在がそこにはいない。
実家に戻る回数が増えていくほど千冬の中には虚無感が膨らむばかりであった。
リビングで寂しさから目を潤ませながらお酒を飲む姿は周りから見たらさぞ滑稽であろう。
しかし千冬は実家に戻ることをやめない。
「おかえり、千冬姉」
何の前触れも無く求めた言葉が返ってくるかもしれない。
そんな淡い期待を持ち続けていた。
束に一夏に関して問いただそうにもいつも
「いっくんは大丈夫、安心して」
その一言のみ。
何度携帯を壊しそうになったか分からない。
自分が見守り続けた弟の近況が全く分からないというのに安心できるわけが無い。
千冬の精神は正直限界まできていた。
「いちか~」
手には空のグラス、テーブルにはビール缶からウイスキーの瓶、通常1日では飲みきれない量の残骸が広がっていた。
黙って呑み続けた千冬もついに許容量を超えたのか、凛とした姿から唯の呑んだ暮れに変貌していた。
「会いたいよ~」
もうはっきりと呂律が回っていない。
一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏一夏
思考は一夏で埋め尽くされていた。
「あれ…一夏?」
一夏のことを思い続けていると、ふと目がつけっぱなしにしていたテレビへと向いた。
そこで流れるニュース。
「緊急告知です。ISの生みの親、篠ノ之束氏が初の男性IS操縦者を発表致しました。名前は織斑一夏、詳しい情報は入っておりませんが初の男性操縦者は今後社会に大きな影響を与えるでしょう」
テレビ画面には織斑一夏の顔写真が報道されていた。
「あれ…」
初めはお酒による幻覚だと思っていた…しかし酔いつぶれ寸前の思考が一気に覚醒していく。
「なお本人の年齢、そして篠ノ之束氏の宣言から新学期、IS学園に通わせる予定とのことです」
この報道を聞き、千冬は泣き崩れた。
「あぁぁぁぁぁ」
千冬は現在IS学園の職員だ。
必然的に一夏と新学期邂逅を果たす。
今の一夏がどんな状況かはわからない。
それでも
一夏に会える
その事実が千冬を救った。
結局この日、織斑千冬は泣き続ける。
しかし、翌日の千冬の姿は憑き物が落ちたように元気な姿だった。
その姿はまさしく学院生の誰もが憧れたブリュンヒルデにふさわしい姿であっただろう。
IS学園の入試では教官との模擬戦闘が必ずある。
入学前、一夏と千冬の邂逅近い。