またゆっくり投稿していきます。
模擬戦闘と織斑千冬との再会を果たした一夏は束の待つ研究所へと帰ってきた。
いつものように帰ってくると同時に束が抱きついてくるだろう……そんなことを考えていた一夏であったがその予想は見事に覆される。
「おかえりなさいませ、一夏様」
いつもと違う落ち着きのある女性の声に出迎えられ、一瞬一夏は固まった。
そこにいたのは束ではなく一夏と同い年か、もしくは少し年上のきれいな銀髪を持つ少女だった。
「君は誰だい?」
一夏は率直に疑問を投げかけた。
束を良く知らない人間だったらここで束の身を案じるのだろうが一夏はそうは思わない。
銀髪の少女を見たとき
束さんがこの程度の女に遅れをとるわけが無い……そう思える確信があった。
そして考えられることは
「私はクロエ・クロニクルといいます。束様に拾われてここにやってきました」
予想通り束さんの知り合いかいつもの気まぐれ。
今回は後者に当たったようだ。
「そうか……まあ細かい話しは当事者に聞こうかな……ねっ、束さん」
一夏の言葉に部屋の奥で物陰から少しだけ飛び出た兎耳がピクリと反応した。
「あ、あはは……おかえり~いっくん。これには深い訳があるのだよ~」
「へ~、詳しく教えてよ」
焦る束があまりにかわいらしかったためわざと不安を煽るように聞き返した。
「さ、最近暇なときに世界各国飛び回ってみたんだけどさ!!ドイツに行ったときにね、なんか遺伝子強化試験体、まあ生物兵器として試験管ベビーとして生まれたらしいんだけど……この子失敗作として言いように使われて、その後使い捨てられそうだったんだよね。だからこれは助けなきゃーって思ったのだよー。それに家事はいっくんばかりに任せてたからIS学園に在学している間、この子に家事をやってもらうことにしたんだ」
「そうか」
返事をする一夏。
一応すじは通っている。
しかしどうにも一夏は腑に落ちない。
(今までならたとえ気まぐれスキルを発揮しようとも自分と関わりの持たない人物は助けない気がする。それに家事も束さんなら家事スキルの持ったロボットとか平気で造れそうだし……まあ考えても仕方が無い……束さんもいろいろ変わったのだろう)
一夏はそう自己完結することにした。
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何とかごまかせたかな……
束は内心安堵する。
実際束は変わった。
一夏と深く関わることで他人のことも少しは想えるようになった。
しかしそれだけではクロエを助けることは無かっただろう。
助けようと思った理由は飛び回ったときたまたまクロエの顔を見たときだ。
普通の人が見れば唯の無表情だったかもしれない。
しかし束は気づいた。
あのとき……誘拐事件があった後の一夏と似ていると。
あれは何もかもどうでも良くなり少しずつ心が死んでいく顔だ。
自分なんて誰からも必要とされていない、自分なんてどうなってもいいと思う顔だ。
一夏ほどでは無いにしろ将来は過去の一夏のように壊れてしまう可能性があった。
束のことを心から想ってくれる一夏であるが、千冬の扱いを見るとやはり誘拐事件で助けが間に合わなかったことは今でも後悔し続けている。
そのため
まだこの少女なら間に合う……今度は助けられる。
だから
「ねーねー、一緒にこない?私には君が必要なんだ」
そう声をかけた。
束には分かっている。
これは
贖罪だ。
一夏を救いきれなかった後悔をここで償おうとしているのだ。
そんな後ろめたい理由を一夏に知られたくなかった。
「そんなわけでIS学園入学までは3人暮らしだね!!」
内心を悟られないよう、束は明るく言うのだった。
こうして奇妙な3人生活が始まる。
クロエ登場。
束のクロエ救出理由は超絶オリジナルです。
クロエのこと、束の後悔などはIS学園に入学する前に決着がつきます。
またクロエの存在が一夏を少し変えていく予定です。