いっくんが私と一緒に暮らし始め1ヶ月がたった。
普段いっくんのことを知らない人が今のいっくんを見ても何も違和感が無いかもしれない。
でも……昔から知っている私から見たら……ひどい……
話しかけたら普通に返してくれる。
笑顔も向けてくれる。
でも……全てが台本を読んでるような……いっくんが目の前にいるのにそこには誰もいない…そこにはただテープレコーダーを再生しているようだった。
いっくんを救おう、そう思ってがんばろうにも何をしていいのかわからない。
そんな中、今日は久しぶりに研究室にこもることにした。
一度研究に没頭して頭をリセットしよう……この1ヶ月一夏関連で忙しかったため碌に働かなかったし……丁度いい。
何時間モニターとにらめっこしていただろうか。
ふと扉の開く音がした。
「束さん、ご飯ですよ」
いつものように淡々と話す。
「うん、区切りがついたら行くね」
そう言ってまたモニターへと目を向けていたが一向に一夏はその場から動かない。
「いっくん?」
一夏はずっと部屋の奥に並べられたISから目を離さなかった。
誘拐されてから一夏が初めて興味を持つものに出会った……そう思い束はISのことをいろいろと一夏に話し始める。
「これはね、私が作った物でね。名前は………」
言葉が止まらない。
別にISの事で聞かれている訳では無いのだけれども……あのいっくんが私の作ったものに興味を持ってくれている……それだけで束の喜びは溢れていた。
どれだけ話していただろうか、その内容を反応が鈍いまでもしっかり聞き続ける一夏。
だからだろうか……束は口を滑らせる。
「あ…そうだ、安心してね、いっくん。ISはいっくんにも特別使えるようにしているから」
少しでも喜ばせようとしたためか、言ってはならないことを口に出してしまいあわてて口を押さえる束。
「えっと……いっくん」
衝撃的な事実を伝えても一行に反応を示さないため、少し俯いて表情の見えない顔をのぞいて見る。
「っっ」
言葉にならない。
一夏は今まで見せたことがないほど笑っていた。
しかし一夏の笑顔は束を恐怖させるほどの深い闇を感じさせる。
「ねぇ…束さん……」
びくっと体がはねる。
「その話し……詳しく教えてほしいなぁ」
このとき、束は選択を間違えてしまったかもしれない……そう思いながらも話し続けるしかできなかった。
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全ての話しを聞きだし、一夏は笑う。
「ははは、面白いよ……」
一夏の感情を呼び起こしたものは、結局血なまぐさい兵器であった。
狂いながらもこれで少しはまともになるのかも。