テイルズオブゼスティリア-破壊神の力を持つ流転者-   作:黒乃 柳

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今回は聖剣祭シリーズの最終回です、多少グロ描写が出てくるので苦手な方は閲覧注意でお願いしますm(_ _)m


聖剣祭-絆-

『な、なんなんだ此奴等ッ!?』

 

『ママーっ』

 

 

聖堂入口から飛び出た勇気が耳にしたのは突如現れた異形の侵略者に逃げ惑う住民達の悲鳴であった、今日は長年控えていた聖剣祭…兵士達も元々祭の為に普段より街を警邏する者が多かった事もあり幸い死人は見た限り出てはいない。

尤も負傷者の数は少なくはなく中には護るべき民を見捨て逃げ出す兵士も居た

 

『きゃあぁァ〜ッ!』

 

貴族の娘であろうか、身なりの良い女が躓き転んでしまう…その背後には暖かみ等微塵も無い金属の身体を持つバイナリスターがその凶刃を振り下ろさんとしていた

 

『やらせるかよッッ!!』

 

ギュンッ!と手にした釵を投擲、本来刺突と殴打を目的に作られた釵は侵略者の顔面を抉り其の儘昆虫標本の様に壁に身体を強く打ち付けられる

ビクビクッと痙攣していたが身体全体を強く打ち付けた影響からか次第に反応はなくなり死体を晒す

 

『あ…あぁ…っ』

 

『…立ッて歩けるなら今の内に聖堂に行きな、皆其処で保護為れてる筈だ』

 

『わ、解りましたわ…助けてくれて感謝致します…』

 

あまりにも悲惨な光景に怯えたような眼差しを向けてくる女に聖堂に向かう様に促し飛来してきた新手の一撃を左手の釵で受け止める、ガキンッという金属音で我に返った女は慌てて立ち上がるが自分を救った騎士に頭を下げ聖堂へと向かう

 

『あッちが心配だ…そろそろ本気で行くぜッ!』

 

『……ッ!』

 

重い一撃を難なく受け止め其の儘肘鉄を胸部に食らわせ体勢をぐらつかせる、だが流石に英雄のデータを元に作られた半有機生命体だけあってしぶとい

ぐらついた勢いを利用し宙返りの要領で顎に狙いを定め蹴りに掛かる…所謂サマーソルトを繰り出す

 

——然し勇気の方が上手であった、後方に反り返る動作に警戒し後ろへと僅かに引く事で其れを躱す

そして反撃行動が勇気の闘争心に火を付けてしまった

 

『…工夫(クンフー)が足りねェよ…ッ!』

 

たン…ッ

僅かに脚を上げ地を踏む、漫画やアニメで観る大振りな震脚では無い…積み重ねた研鑽から成る最小限の動きでの震脚だ

全身の頸力が極限迄高められた瞬間、"ズドッ‼︎"という音と共にバイナリスターの活動は停止する

 

『…金属の身体つッても核は人間と変わりないみてーだな、"氣を呑む"事が出来るなら俺の拳でも充分倒せるみたいで安心シたぜ』

 

背後から双刃を薙ぐもう一体に話し掛けるように言葉を紡ぎ乍刀身に乗る

 

『ッ!?』

 

さしもの半機械兵士といえど此れには驚愕したのか動きが一瞬固まる、…それが生死の別れ目であった

 

ゴスゥッ!!

刃に乗った体勢から強烈な脚撃を顔面にあたる部分にぶち込む、ひしゃげた頭部に目もくれず飛び降り壁に貼り付けに為れた死体から愛用の釵を引き抜くのとバイナリスターが数十メートル先迄吹き飛ばされるのは其の差数秒遅れであった

 

 

『ち…ッ、まだ貴族街には被害は出てないみたいだが早く片付けないと…そっちは頼むぜ…ブラスター•ブレード…ッ!』

 

着慣れない鎧を着ているというのに息一つ切らす事無く敵の気配を探る

今迄相手にしていた敵の気配とは異なる気配を地下から感じ取れば其の儘全力疾走で中央区を駆け抜ける

敵を討伐し乍街に残っていた民は粗方避難させた、後は騒ぎの元凶を打ち倒すだけだが…。

 

—————

———

 

 

ズガアァンッ!!

 

質量を持った何かが壁に激突したような音が聞こえたと思えば聖堂の入口からは民達が我先にと転がり込んでくる、陣頭指揮を取るのはアリーシャとマルトランだ

 

といっても兵士達は既に勇気が出した命を守る様に円形の陣を組んでおり四方には空から強襲されても対処出来るように弓兵が警戒している、完全に護りに徹した陣形の前に勇気が出て行った後に空から襲ってきた侵略者は全身に矢を受けアリーシャとマルトランの槍捌きの前に討ち取られている

 

『ユウキ…』

 

『…心配か?アリーシャ』

 

だからこそ、単騎で出た勇気を心配するアリーシャ

確かに住民の安全を確保するには一箇所に集めて多勢で護る方が良い

 

元から自分よりも強かった彼の事だ、かえって自分が着いて行ったら邪魔になるだけだろう…然し

 

 

『……心配というよりは…悔しいです、結局…私は彼に追い付けないのか、と…』

 

 

槍を握る手が震えている

 

——初めて出来た友人が何処か遠くへ行ってしまったようで…そンな彼に何もしてやれない自分に悔しさを覚えていると言わんばかりにその手は強く槍を握っていた

 

『…仕方あるまい、彼の武技には一切の躊躇いも迷いも無い。あの歳で其処までの境地に達するには様々なものを捨ててきたのだろう』

『——否、寧ろ己が信念を守る為に敢えて捨ててきたのだろうな』

 

住民を迅速に招き入れられるように態と開いた侭の入口を見詰めていたマルトランは自分が見た黒乃勇気という人物の人となりを呟く

 

現にその感想は間違いでは無かった、彼は自分が護ると決めたものの為にその他を犠牲に為る覚悟を魔王と呼ばれた優しくも気高い幼馴染から…そして目的を叶える為に研鑽する姿勢を争いを憎む王の心を持つ幼馴染から学び、苦行を積んできた。

 

何時しか其れは彼の心の隅に孤独感を与えていたが彼はそれすら気付かないでただ自分が定めた信念…"護る"為にその卓越した力を振るい続けるだろう

 

——喩えそれが、自分を信じてくれたさ人々を最終的に裏切る行為だッたとしても…平和と平等を成し得てしまうのだろう。

 

『…それじゃあ…彼を救う者が居ないじゃないですか…!』

 

悔しさから声を荒げるアリーシャ、そンな彼女達に護られていた民達ならは不安から啜り泣く声や何故こんな事に…と嘆く声がざわめき立つ

 

『ッ、いけません…ッ此の侭では…憑魔が…!』

 

ライラが叫んだ瞬間、アリーシャや兵士達からすれば半狂乱となった男女関係なく数人の民が暴れ始めた

 

だがスレイやミクリオ、ライラには"ソレ"が人狼や特定の形を持たぬスライムにはっきりと見えたのだ

 

『憑魔になったッていうのか…!』

 

『こンな時に…ッ!』

 

辺りは憑魔が放った火が燃え移る、慌てて兵士が取り押さえようとするも止められずに陣形は崩れ始めた

 

——尤もこうなる事を予め予想してアリーシャを煽ったマルトランの所為とも言えるが

 

右往左往と逃げ惑う人々にアリーシャや周りの兵士達は必死に制止を呼び掛けるもパニックに陥った民達の耳には届かない…最早如何する事も出来無いと諦め掛けていたライラに今迄沈黙を守っていたスレイは語り掛ける

 

 

『浄化の炎を使えるように為るには…どうしたら良いんだ?』

 

 

勇気を交えた会話の中で彼女は言っていた、勇者とは湖の乙女であるライラの力に頼らずその剣の煌めきにより憑魔を浄化せしめる者、そしてその力は担い手を孤独に為る…と

 

『スレイッ!何を考えてる!?』

 

水の天響術を使い普通の炎は消せるミクリオであれど憑魔そのものと言っても過言ではない黒い炎は消せない、荒々しく声を上げるミクリオを余所にライラは重い口を開く

 

『……浄化の力は私が振るうのではなく此の剣を引き抜き私の剣となる者が扱えます…ですがそれは…!』

 

スレイは静かに頷くと剣の台座へと向かい柄に手を掛ける

其の眼には何ら迷いは無く純粋であった

 

 

『…私の剣になるという事は浄化の炎とユウキさんのように超人的な力を得る代わりに人に疎まれ心を打ちのめされるという事もあるでしょう、憑魔から人や天族を護る為に苦渋の選択をする事も…』

 

其の眼を見詰めた侭ライラは導師に成るとは如何云う事かを続ける、…其れが無駄な事であると知りながら

 

 

『…俺、世界中の遺跡を巡ってみたいんだ…天族と人間が共存出来る可能性があるかもしれない』

 

 

それに、とスレイは笑う

 

 

『ユウキとブラスター•ブレードを見たらさ、可能性じゃなくて可能なんじゃないか…って思えたよ、——だからライラ、今を乗り切る為じゃない…未来を掴む為にその力を貸してくれ…!』

 

確固たる決意、未来を掴む為に力を欲する少年に応える様に長い間引き抜く者の居なかった聖剣は…湖の乙女は新たな導師としてスレイを選んだ

 

 

『…行くぞッ!ユウキが外の奴等を何とかするなら俺達は中の憑魔をなんとか為るんだ!』

 

 

白銀の焰は悪しき黒炎を呑み込み浄化する、人の心に勇気の灯火を灯し心と意思の力を以って悪しき者を淘汰為る者が勇者なら導師は天族の力を借り人々の救世主たりうる者

 

然し、永い歴史の中で両者が同時に顕現した事等千年前の大戦以来無かった事、此れにはマルトランも苦虫を噛み潰した様な心境だ

 

 

(…勇者の力を測るつもりがまさか導師迄現れるとはな…)

 

半狂乱に陥った住民を取り押さえ乍憑魔を打ち倒していく導師を見遣る

武技、体捌き…全てに於いて勇者の方が上であり現段階では勇者程の脅威は感じない、だが其れはあくまで"現段階では"である

 

(…今はまだ生かしておくか…さて、そろそろ終幕だな)

 

—————

———

 

『…此れで…ッ!』

 

3機掛かりでブラスター•ブレードを追い詰めていたバイナリスター、然し歴戦の剣士である彼にとっては此の程度の窮地は何度も超えてきた事…己が剣技と聖剣の力を最大限に活かす戦いを繰り広げる三英雄の一人に当初優勢であった尖兵達は一機、また一機と討ち取られていた

 

『ギギ…がッ…』

 

剣先から放たれる極光に最後に残ったバイナリスターも呑み込まれその身体を焼き尽くされる、周囲には上半身と下半身を切り離されトドメに顔面を貫かれた機体と警備に当たっていた兵士2名の亡骸…犠牲者を出してしまった事を未だに口惜しそうに俯いていたが地下から感じる強大な二つの気配のぶつかり合いに顔を上げる

 

『無茶は為るなよ…勇気!』

 

兵士の亡骸に頭を下げ白き騎士は今代の勇者の元へと向かう…傷付いた身体を引き摺りながら

 

—————

———

 

ガガガガガガッ!!

 

 

『目標…ロックオン、Primary(プライマリー)Companion(コンパニオン)一斉掃射…ッ!!』

 

地下水路、ヴィヴィア水道遺跡手前の開けた空間で対峙する両者、勇気は最も慣れ親しんだ武具で応戦するも圧倒的破壊力を誇るプライマリーと捕縛を目的としたコンパニオンが織り成す弾幕の前に迂闊に近付けずにいた

 

『ちッ…うざッてェ…ッ!』

 

今迄倒してきた敵の発展型であるツインガンナー、筋組織も身体を構成する有機素材の質も今迄の比では無いというのに二丁の銃にはそれぞれバイナリスター100体分のエネルギーを秘めている

然し…勇気が感じているのは緊張でも恐怖でもない全く別のものであった

 

『…おらッ!こっちだデカブツッ!!』

 

サイオン弾を顔面目掛け放ち奥へと誘うように挑発する勇気、ヴィヴィア水道遺跡への入口はプライマリーが放つ弾丸により破壊されており中へ入るのは簡単であった

 

『目標…逃走行動確認…追撃開始…ッ!』

 

ニヤリ…不敵に口元を歪めた勇気であったが追跡者は自分が優勢である事を全く疑わず飛翔する——全てが勇気の理想通りの展開に向かっている事も知らずに

 

—————

———

 

やがてかつて祭壇として使われていたのであろう水が流れ落ちる広々とした空間へと出る、聖堂からはライラの導きの侭水道遺跡に足を踏み入れたスレイ、スレイを追ってきたミクリオとアリーシャが辺りを見渡している

 

 

『…うわ…随分と派手にやらかしてるな…此の壁…まだ壊されて時間が経ってない』

 

 

『時間の経過で朽ちたにしては不自然過ぎるからな…貴重な遺跡だというのに…』

 

遺跡に関しては強い好奇心を持つスレイとミクリオは憤慨しているがアリーシャは心此処に在らずとばかりに勇気を心配している

 

ズドドドドドォォンッッ!!

 

 

グギャアァァアぁaaッ!??!

 

 

『な、なんだ!?』

 

『あっちから聞こえるッ、行ってみよう!』

 

突然響き渡る断末魔と周囲を激しく揺らすような衝撃音、それも衝撃音に至っては断続的に続いている

よろめくスレイを他所にアリーシャは何故か音が聞こえた方に勇気が居る気がして駆けていく、それに追従するように3人は後を追うが…

 

『…御前達が襲った街の皆の痛み…その身体で償わせてやるよ…ッ!!』

 

聞き慣れた声と共にまたあの地響きのような音が木霊す、祭壇の間に入った瞬間辺りの異常な迄の熱気に四人は忽ち汗をかく

 

其れも其の筈、勇気の前には無数の熱線により既に事切れた鉄塊とも肉塊ともつかぬ物体が横たわっていたのだ…余りの凄惨な光景に凍り付くスレイ達…。

 

——然し、たった一人だけ勇気に近付く者が居た

 

『……ユウキ…もう良い…もう、良いんだ…』

 

 

アリーシャはぎゅ…ッと勇気を抱き締める、もう戦いは終わった

だからもう…犠牲者を救えなかった自分を責め苦しめるな…と、力強く抱き締める

 

 

『………アリーシャ…』

 

空間を引き裂き出でた"孔"から降り注ぐ熱線は次第にその勢いを弱め孔も閉じていく

漸く全ての孔が閉じた頃には勇気も落ち着いたのか恥ずかしそうに俯く

 

『…その、ありがと…も、もう大丈夫、だから…』

 

『す、すまないッ…でも…良かった、私の知っているユウキだ…』

 

すっかり荒々しい印象は失せ代わりにしおらしくなってしまった勇気とそんな彼を抱き締めている事に今更乍羞恥心を覚えるアリーシャ

 

 

『あらあら…青春ですわね…♪』

 

『全くだな…まァ、彼がどういった人柄なのかあの場に居た僕達はある程度把握しているしな…他人の為に涙を流し他人の痛みを自分の事のように受け止める…ある意味スレイよりお人好しだ…スレイ?』

 

そんな二人を微笑ましく見守るライラ、ライラに同調する様に頷き乍何の反応も無い幼馴染に振り向くミクリオ

 

『そう…だな…ほん、と…よ、かっ、た…♪』

 

バタンッ

 

『『スレイ(さん)!?』』

 

突如倒れてしまったスレイに驚きの声を上げるミクリオとライラ、二人の声に我に返り駆け寄るアリーシャと勇気

 

『ライラ…此れは…?』

 

『…あまりに馴染み過ぎていたので忘れていましたわ…恐らく、輿入れの反動でしょう…導師に成るという事はこういう風な不測の事態もあるのですわ…』

 

『…そうか…矢っ張り導師に成ってしまったんだね…彼は』

 

スレイの唐突な異変に既視感を覚えた勇気は此の場で最もスレイの状態を熟知しているであろうライラへ問う、尤もそれは勇気なりの"再確認"の意味もあった

 

案の定ライラは勇気が未来予知で垣間見た答えを出す、『え…?』とライラが勇気に振り向こうとしたが隣に立っていた筈の勇気はスレイを肩に担ぎ入口へと歩き出す

 

『…取り敢えず…彼を何処か休める処に運ぼう、アリーシャは先に戻って住民の安否確認をお願い…それから、薬や治療が必要な怪我人が居たら俺を呼んで、薬学には少し明るいから』

 

『解った…何から何まで済まない…』

 

ズルズルとスレイの脚を引き摺り乍前へ進む勇気にアリーシャは頭を下げる、だが言い忘れていたとばかりに振り向き

 

『ユウキ…おかえりなさい…♪』

 

万感の想いを込め勇者ではなく黒乃勇気個人としてに微笑み掛け凱旋を喜び迎えの言葉を贈る

面を食らったような顔になるもふ…っと笑えば穏やかな笑顔を浮かべ

 

『ただいま…アリーシャ…♪』

 

確かな絆が其処にあった、見知らぬ土地に飛ばされ無意識の内に孤独を感じていた勇者の心は…何時の間にか孤独ではなくなっていた

 

(ふふ、本当に青春していますわね)

 

初々しい遣り取りに口元を抑え微笑むライラ…然し、と思い直し

 

(先程ユウキさんの内に感じたあの力…私の勘違いでなければ上位天族処か五大神に匹敵するかもしれません…彼で分霊というのであれば彼の本体である方の力はどれ程のものなのでしょう…)

 

頭を振り勇気の後を付いていくライラ、力とはただ強いか弱いか…真の強さとは力だけでは無い事を、先代導師と災禍の顕主が引き起こした惨劇で身を以て知っている…今はただ、皆で勝ち取った勝利と平穏な時間に微睡みたい気分であった。





次話からは霊峰レイフォルク編が始まります、聖剣祭以上にオリジナル要素が絡むと思いますが今迄通り読んで頂けたら幸いです(笑)
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