テイルズオブゼスティリア-破壊神の力を持つ流転者- 作:黒乃 柳
チュンチュン…チュンチュン…
「ッ…?!」
鳥の囀りに促される様に重く閉じた瞳を開く…修練場…ではない、現代の日本では少し想像出来ない光景が辺りに広がる
遥か遠方に見えるは深緑の森林というべきか…緑豊かなな大地、半透明の水が流れる川岸…現代社会が技術の発展ばかりを目指し失ったものが其処にはあった
「…凄いな…何処か幻想郷に似ているよ…」
眼を覚まして直ぐに見知らぬ場所に居る自分自身に若干戸惑うも其れは大自然を肌身で感じる感動で描き消える
が、その感動も耳を劈く様な悲鳴に流されてしまうのだが
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「嫌ッ!離してッ…お母さんッ!!」
銀の長髪を揺らし少女は山賊から逃げ惑う、近くには彼女の母親であろう女性が胸に剣を付きたてられ暖かい血を流しその命の灯火を喪おうとしていた
「へへへ…ッ、漸く捕まえたぜェ?」
下卑た笑みを浮かべ少女の髪を掴む山賊の一人、手には村人を何人も斬り殺したのであろう…血が滴る剣を握っていた
「結局残ったのはオメーさんだけだなァ?最期位は良い想いをさせてから殺してやるぜェ!」
「いやッ!誰か…誰か助けてーーッ!!」
少女の住み慣れた村は黒い煙を放ち乍燃えている…悔しさと恨み、怒りから涙を流す少女の衣類を胸元からびりッと引き裂きその未成熟な果実に手を伸ばさんとする山賊…羞恥と此れから身に起きるであろう悍ましい行為から眼を背ける様にぎゅッと眼を閉じる少女
そんな中、山賊達に猛スピードで接近する二つの影に誰にも気付いていない…!
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「……?」
一向に変化が訪れない事に訝しむように恐る恐る眼を開く少女…彼女を襲わんとしていた山賊は頭を叩き潰され地に伏していた
「…大丈夫?」
「怪我は無いか!?」
自身の身の丈以上の槍で周囲の山賊を薙ぎ払う金髪サイドテールの少女が周囲の山賊を薙ぎ払い見たことも無い三又に別れた小型の武器を両手に持った少年が少女を襲おうとした山賊の頭を叩き潰していた
「え…えッ?!」
急な展開に眼を白黒させる少女、彼女を安心させる様な笑顔を浮かべる少年は背後から斬り掛かってきた山賊の鳩尾に後ろ蹴りを食らわせ水流が激しく流れ落ちる滝へと吹き飛ばす
そんな彼女を他所に未だ生き残っている山賊達を無表情で見詰める少年
「…貴方達は人では無い…獣だ、大の男がこんな娘に寄ってたかって襲おうとする…僕はそんな行いを絶対に許さない」
見慣れない服を着た少年は山賊達を人と見做していないと言い切り最後通告の意味を込め圧倒的威圧感と氣を発する
「大人しく業を償え!」
それに続くかのように金髪の少女は槍を向ける
二人のイレギュラーに気圧され怖気づく山賊達だが彼等のリーダー格である大男は大刀を振り子分達に怒号を張り上げる
「く…ッ!まさかアリーシャ姫も来るたァ…構わねェ!やっちまえッ!」
オオォォオッ!
残った山賊数名は狂気で理性をかなぐり捨て二人の戦士へと向かっていく
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「つ、強過ぎる…ッ…」
最期に残った子分の刀を釵の翼で圧し折られた挙句アリーシャの槍で切り倒された頭は2歩3歩と後退する
戦闘とは名ばかりの圧倒的戦力による制圧戦に僅かに残った数名の山賊達では数分も持たず打ち倒され頭は恐怖に支配される
「…諦めて投降して下さい、命が大事だと思うなら…」
血に濡れた釵を向ける少年は投降を勧める…少女の手前仇を取ってやりたいのは山々だが出来るだけ命を奪う事はしたくないのであろう
投降を勧める少年と此方に槍を構える姫騎士にちっぽけなプライドが投降を拒絶する頭
「ッ!ふざけンじゃねェ!!誰が御前等みたいな餓鬼にッ!」
刀を少年に向け袈裟斬りに斬りつける頭、だが彼の斬撃は子分がされたように翼で受けられ片方の釵で搦め捕られた後容易く破壊されてしまう
「……もう止めましょう…?貴方じゃ天地がひっくり返っても僕には勝てないよ」
「ば…化物か…テメー…ッ」
花弁の紋入り制服に返り血一つ付けず淡々と現状を突き付ける少年に頭は死の恐怖と理不尽過ぎる強さに恐怖を覚える
——そんな時、異変は起きた
(力が欲しいか…?)
「だ、誰だッ!?」
突如頭の中に響く声に辺りを見渡す山賊頭、彼の異変に少年とアリーシャは訝しむような視線を送る
(…誰でも構わないだろう?力が欲しいなら…くれてやるッ!)
「がッ!?グガァァアーッ!?」
ごきっ…メキャキャッ!
骨が軋む嫌な音が辺りに響き渡る…みるみる内に頭の身体は人から醜く肥え巨大化してゆく
「な…何だあれは!?」
あり得無い光景に驚愕の表情を浮かべるアリーシャ、打って変わり冷静に状況を把握しようとする少年…直後、野太い声を発し頬に血涙の如き模様が入った一体のトロルが三人を見降ろす
「ガハハッ!イイキブンダ…テメーラゼンインブッコロシテヤルァーッ!!」
近くに生えていた木を棍棒の代わりに三人に叩き付けるトロル、見た目の割りには俊敏な動きに二人は其々回避行動を取ろうとした。
「くッ…!大丈夫か!?」
ズゴォンッ!バキャァッ!
重量感のある一撃に飛び退いて何とか退くアリーシャ、彼女と打って変わり何故かトロルに背を向け血を流す少年、追撃を掛けるように横薙ぎに振るわれた大木から少女を抱き抱え身を呈し庇い続ける少年に声を掛けるも彼は無言で怪物と化した頭…では無く、木に潰され掛けたが何とか遺体は綺麗な侭で済んだ少女の母親に視線を向けていた
「…君、少し隠れてて…?」
少女を地に降ろし笑みを浮かべる少年、少女は小さく頷き言われた通り邪魔にならない様に岩陰に隠れる
少年は背中と腕から血を流し乍異形と化した頭に近付く…少女に見せた微笑みとは正反対の無表情な顔持ちで
「ナンダァ…?ブッコロサレニキタnブハァッ?!」
ゲラゲラと下品に笑う怪物だったが一瞬、疾風の如き風が奔ったと思えばトロルは歯を2、3本圧し折られ乍殴り飛ばされる
「…貴方に少しでも慈悲を与えようとした僕が愚かだった…そんな身に成って迄力が欲しいのか…?」
吹き飛んだトロルに背を向け少女の母親の前に屈む少年、彼は避けられる攻撃を態と背中と腕で受けたのだ…彼女の母親をせめて綺麗な侭で逝かせる為だけに
「アタリメェダロウガ…チカラガナケリャソコノクソアマミテェニイヌジニスルダケナンダヨォッ!」
がらがらと岩壁から姿を現す怪物…最早人としての知性を感じない言葉遣いと時が経つにつれ巨大化したトロルに近い姿をした彼の者はぺッと血の混じった唾を吐き突進してくる…彼は気付いていないのだ、少年こと黒乃勇気の氷河の如き無表情の顔とは裏腹に其の身を焼き焦がす激情に油を注いだ事実に
「…もう良い…御前は…死ね…ッ!」
瞬間、空気を焼き焦がす焔が立ち昇り暴風雨の如き風が勇気を中心に吹き荒れる…!
「な…ッ此れは…!」
明らかに異様な光景に息を呑むアリーシャと少女、吹き荒れる嵐から現れた少年は焔を背に三又槍の穂先を構え異形のモノを肉片と化す迄光速で穿つ、槍の名手であるアリーシャでさえ残像すら眼に留められないのだ…唯一知れるのは
「グギャァァア〜〜ッ!?!?」
辺りに断末魔の声が木霊する声、そして巨躯が見る見る内に削り取られて行く光景のみ
「——識るが良い…魂の流転を…そして…御前の罪を…」
数秒後、頭だった肉片は勇気の焔により焼かれその魂は流転の旅路に着いたのであった。
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「本当に…有難うございました…っ」
廃村と化した村で母親と村人の遺体を焼いた灰を掘った墓穴に埋める少女は命の恩人である二人に頭を下げる
「いや…結局私に出来たのは山賊の掃討だけだ…」
少女の礼に俯いてしまうアリーシャ、それは勇気自身も同じ心境だったからこそ理解出来る感情である
「…ごめんね…もう少し早く来たらもしかしたらお母さんは助けられたかもしれない…」
鎮痛な面持ちで逆に詫びてしまう勇気に少女は首を振る
「いいえ…!貴方様が来て下さらなければ私も…それに…見ず知らずの私やお母さんの為にあんなに怒ってくれた…それだけで…それだけで…っ…」
言葉を続けようとしつつも涙を流す少女をそっと抱き寄せて頭を撫でる勇気、それを皮切りに今迄溜め込んでいた感情を爆発させわんわんと泣き出してしまうが勇気は優しく頭を撫で続けていた…。
暫くして漸く落ち着きを取り戻した少女はアリーシャの勧めで王都へ向かうべく最低限の荷物を荷造りする、二人は捕らえた山賊達を異変に漸く気付き出動した兵士達に引き渡した後村人達の墓に祈りを捧げている
「…それにしても…御強いのですね…」
先に声を掛けてきたのはアリーシャであった、何故か敬語に成っているが勇気は特に気にした様子は無く首を振る
「…僕は強くないよ…弱い人間だ…」
アリーシャから表情は読み取れないが本当にそう思っている事は言葉の端々から察する事は出来る、否定するように向き直るアリーシャを他所に釵を腰のベルトに引っ提げる勇気
「そんな事はありませんッ!現に貴方様はあの怪物から少女を救ったではありませんか!」
「…勇気で良いよ…でも、あの娘のお母さんは救えなかった…」
辛そうに微笑を浮かべ尚も否定する勇気にアリーシャは言葉を呑むも意を決した様に手を取る
「…ユウキ様…貴方は天族の方ですよね?見た事も無い服に先程の人間離れした力…」
天族…聞き慣れない単語に内心首を傾げるが響きからして天使等の人とは異なる存在である事は察せたので否定も肯定も出来ず沈黙する勇気
そんな彼の様子に肯定と受け取ったアリーシャは言葉を続ける
「ユウキ様…貴方はあの少女だけで無くあの少女の母親の尊厳も護ったのですよ…だから…そんなに辛そうな御顔を為さらないで下さい…」
精一杯の励ましに少しは心に纏わり付く靄が晴れたのかくすりと笑う勇気、何故勇気が笑うか解らないアリーシャは小首を傾げる
「ふふ…ごめんね、君があまりにも知り合いに似ているから…うん、ありがとう…?」
愚直な迄に真っ直ぐな彼女に嘗て許嫁だった想い人が重なり久しぶりに笑顔を見せる、そんな彼に見惚れた様に固まり頬を紅く染める姫騎士
「い、いえ…そんな…私如きが天族の方に差し出がましい事を…」
背中を向け何やらボソボソと呟くアリーシャに本格的に首を傾げる勇気、そんな彼等を他所に一人の兵士が近付く
「アリーシャ殿下、準備が整いました…何時でも出発出来ます!」
こほん、と咳払いをし再び勇気に向き直るアリーシャを見詰める勇気は遠くから呼ぶ少女の声に気付き手を振る
「…あの…宜しければ私の家に足を運んで下さい、大した持て成しは出来ませんが傷を治療しませんと…」
自分で傷を癒せるが雨風を凌ぐ場所も伝手も無い勇気には願っても無い話だが悪いとも思え躊躇してしまう
「…良いの?邪魔にならないかな…?」
「邪魔だなんてとんでもない!是非とも御礼を…っ」
慌てて首を振るアリーシャに再びくすくすと笑う勇気に何か可笑しい処があったのかと青ざめたり赤らめたりとコロコロ表情を変えるアリーシャが本当に恋に似ている為[じゃあ…御世話になろうかな…?]
と、満面の笑みを浮かべアリーシャの申し出を素直に受け入れた勇気にアリーシャは花の様に眩い笑顔を浮かべ[はいっ!]と応えるのであった
私が此の後書きを書いているのは日曜の19:10、反映させる日時は一日後の19:00にセットしたので私自身が楽しみにしています(笑)
まぁ私が確認出来るのは早くて20時以降になるかもですが( ! )
次話は確認後に木曜か金曜辺りにしようかな…。