テイルズオブゼスティリア-破壊神の力を持つ流転者- 作:黒乃 柳
今回は以前マルトランが下した名の内容に触れていきます…が、何分溜め込んでいた小説が消えるという目に見えない妨害に晒されている為後々加筆•修正が入るかもしれませんm(_ _)m
「…お早う御座います…ユウキさん…?」
「ん…ぅ…?」
ゆさゆさと揺さぶられ眼を覚ます…寝起きの頭は著しくその回転力を鈍らせており一瞬自分の部屋では無い洋風の部屋と眼の前の銀色の髪が眩しい少女に思考が追いつかずにいた
「お早、セシル…メイド服なんて着て如何したの?」
が、それも一瞬である…自分が異世界に居る事、眼の前の少女を助けた事…そして…姫騎士との邂逅。
自身を取り巻く環境が一日で変わり過ぎたが不思議と動揺はしていない…まぁ、幻想郷での日々に比べたら大して変わらないのもあるからだろうが…ふと何故かメイド服に身を包んでいるセシルに疑問を投げ掛ける
「此れですか?アリーシャ様の御厚意でメイドとして雇われました…!如何ですか?似合ってますか?」
疑問の答えとばかりに嬉々とした表情を浮かべ逆に感想を聞いてくるセシルに下の妹を思い出し笑顔を浮かべ乍頭を撫で[似合ってるよ、凄く可愛い]と褒める、此れに気恥ずかしさを覚えたのか頬を紅く染め乍セシルは俯いてしまう
そんな二人を何故か不機嫌な顔をして扉の向こうから様子を眺めていたアリーシャはバタンッ!と勢い良く開く
「済まない、朝から気合が入り過ぎてしまった様だ…ユウキ、怪我の程は如何だろう…?」
自分でも何故こんな態度を取ってしまったか解らないアリーシャはびっくりした様子の二人に謝罪を述べた後で勇気の怪我の具合を問う
「ん…僕は大丈夫だよ、硬化魔法である程度は防いだし…何よりアリーシャが部屋を提供してくれたお陰で安心して内気功で身体の自然治癒力を高められたから…有難うね?」
にこりと笑みを浮かべ頭を下げる勇気に対しアリーシャは複雑そうな表情を浮かべる、今の彼女の心情は怪我が順調に回復に向かっている事に対する喜びと昨日、彼女を庇う様にマルトランに食って掛かった勇気に対する申し訳なさ…様々な感情を現すような表情に勇気は首を傾げ、セシルは黙ってアリーシャを見詰めている
「そ、そうか…その…若し良かったら鍛錬に付き合ってはくれないか?師匠は軍務で忙しいようでね…如何かな…?」
場の空気に居た堪れなくなったアリーシャは此の空気を変えようと槍の鍛錬に付き合って欲しいと願い出る、無論互いに打ち合うような激しいものでは無くただ見て貰うだけで構わないのだろう
「うん、僕で良ければ構わないよ?寧ろ鍛錬をしようかと思っていたからね」
アリーシャの考えのやや斜め上を行き既にほぼ完治したと言わんばかりに二対一組の釵を手にする勇気、一般人なら打ち所が悪ければ即死と思われる打撃を喰らい普通に歩けていた事にも驚いたものだが驚異的な迄に速い傷の治り具合も合間って感嘆の溜息を吐くアリーシャとシエル
「…本当に凄いな…魔法というのは…」
「しかも、それを学習する学校があるんですよね…皆ユウキさんみたいな人なんでしょうか…お医者さん要らずですね」
唯々純粋な意見を述べるアリーシャ達に苦笑で応える
確かに医療魔法はあれどその特性故に定期的に掛け続ける必要がある為程度に依っては簡単には治らない…なのに何故僅か一晩で怪我が治っているのか?と、問われれば黒乃の家に伝わるある技法と勇気自身の時を操る魔法の賜物なのだが必要以上に情報を与えて混乱を招くのは忍びない
何より…勇気の時を操る魔法は対象が自分に所縁の無い生物であれば必ずと言って良い程に取り返しの付かない代償を支払わせる…過去にそれを行って酷く後悔したのだ、故に彼は彼自身の異能が好きにはなれない為にそんな一面を二人には見せたく無いのである。
「…そうだね、さ?僕の準備は済んだしやろうか…庭先で良いかい?」
暫く自己嫌悪に陥っていたがそんな事を悟らせぬ微笑を浮かべアリーシャを促す、アリーシャも同意する様に頷けば部屋を出て庭先に向かう…シエルはと言えば
「それじゃあ私、クッキーを焼きますね?御口に合うかは解りませんが…」
と、二人を気遣い台所へ向かう…内心ではもっと勇気と話をしたいと願い乍。
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キイィンッ…ガキャッ!!
「踏み込みが甘いッ!そンな軽い突きじゃ僕には届かないよッ」
アリーシャから訓練用の刃の付いていない槍を借り何合か撃ち合う金属音が辺りに響く、最初は互いに互角に見えた槍捌きであったが矢張り性別の差か…はたまた基礎体力の違いからか次第に息を乱しつつあるアリーシャと全く息を乱す事無く彼女の突きをいなす勇気
「は…ッ、はッ…まだまだァッ!」
槍をいなされた侭遠心力を利用し横薙ぎに振るうもそれすら見通され柄を短く持ち穂先を交差する事で受け止められてしまう
(く…ッ、矢張り強い…私と同年代だというのにまるで師匠を相手にしている様だ…!)
受け止めた体勢から微動だにしない勇気に槍術の師であるマルトランを重ねる、太刀筋や攻め方そのものは違うがどうも実力の底が掴めない…否、マルトランと勇気、両者共に底を掴ませないと言うべきか
「…13回…如何した、休ませてあげる程僕は甘く無いけど?」
息を乱し始めたアリーシャの槍を容易く弾き落とし突き返す等容易く出来る筈の勇気だが変わらず彼女に攻めさせていた、13回とは彼女に追撃の手を加えられたにも関わらず敢えて見逃した回数である事を当の本人であるアリーシャは自覚している
「ッ…何故…攻めてこない?私を甘く見ているのか?」
騎士としての矜恃を持つアリーシャとしては軽んじられているのかと思うのは致し方無い…が、勇気は唯々真摯な眼差しを向け閃光の如き鋭く其れでいて重い一撃を繰り出し乍淡々と語る
「…実力が違うだけなら僕は手は抜かないよ、だけどアリーシャ…何か様子がおかしいよね?今の君の槍からは迷いを感じる…朝は気付かなかったけど何合か撃ち合えば其れ位は解るよ。」
アリーシャの眼では追えない一撃を彼女は師との厳しい鍛錬の中で培われた体捌きで受け流そうとするが単純な力不足により槍を弾き飛ばされ「きゃ…っ」と小さな悲鳴を上げ尻餅を付く
「…見抜かれていたのだな…流石は光の勇者を継ぐ者…か」
尻餅を付いたアリーシャに手を差し伸べる勇気を見詰めふ…と笑い助け起こされ乍呟くアリーシャ
彼女は昨日、己が師であるマルトランが勇気に課した無理難題を今でも負に落ちないでいたのである
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「僕が…勇者の試練を受ける…?」
蒼き
「…まさかとは思いますがあの神話を鵜呑みにしていらっしゃるのですか?」
私の言葉に僅かだが口元を緩め肯定為る様に頷く師匠、嗚呼…矢張りか…一日に色々とあった御蔭でハイランドの姫として失念していたある神話を師匠は語り始めた
『…異世界よりの来訪者、その力を振るい異形を浄化する…、月と太陽が重なり地に異形なる者が溢れし時彼の者、勇気と覚悟を束ねし剣を以って災厄を齎す異形なる竜を討ち取らん…後に、彼の者の功績を讃え時の王と民達は光の勇者と呼び彼が振いし武具は試練の地で次代の勇者を待つ』
…グリンウッド大陸に伝わる神話だ、とユウキに語る師匠と彼を交互に見詰める…師匠にはユウキが異世界から来た者である事は伝えていないしその時間は無かった
「…先遣隊として寄越した兵士から君が異形と化した者を焼き祓ったと聞いた時にはまさかとは思ったがな…先程の口振りからして君は私達より技術的に進歩した世界から来たのだろう…と成れば神話も真実味を帯びてきた訳だ」
私やユウキの疑問を察した様に言葉を続ける師匠は静かにユウキを見詰める
「…何時現れるか解らない導師を選定為るよりも今眼の前に居る君に望みを掛けた方が建設的だ、それに君が本当に勇者ならアリーシャを擁護出来様…其れ程…勇者という者の発言力は強いのだよ…無論、試練は伝承に依れば命を危険に晒す過酷なモノであると聞くし双剣は一振りずつ遺跡に眠っている様だ…先ずは勇気の聖剣が眠る地に向かって貰う事に成るが…」
何も言わず、唯考え込むユウキに何故自分が此の様な条件を出したか…その答えとなる言葉を紡ぐ師匠に私は唯俯くしかない…大臣達のくだらない体裁の為に騎士として何も出来無い自分に嫌気が刺す
そんな私を知ってか知らずかユウキは静かに口を開く
「…正直、導師や勇者とかは僕には良く解らない…でも、さっきの様な怪物が蔓延る世界なンてぞっとしないよね…こんなに自然豊かなのに。…シエルやシエルのお母さんみたいな人を此れ以上増やさない為にも——…何よりアリーシャみたいな優しい子が真っ直ぐに生きれる様に…やりますよ、其の試練とやらを」
はっと顔を上げ彼の顔を見詰める、其の顔は今迄の誰よりも優しく…其れでいて強い決意を秘めた眼差しで私に笑顔を向けてくれていた
「ふ…良い眼をする…取り敢えず今は身体を休める事だ、追って連絡を入れる」
ユウキの返事に満足気に口元を緩めると師匠は城の方へと立ち去っていくのを見送った後、昨日はシエルとユウキ、そして私の三人で食事を取って二人にそれぞれ部屋を割り当て休んで貰った
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アリーシャは勇気の事が理解出来無いでいた
何故何ら関係の無い世界の為に命を賭せるのか
確かに騎士としてならば困った民は見捨てないだろう…だが、彼は自分を一介の学生だと言った。そんな人間が命を賭して迄此の世界…否、自分やシエルを含め顔も解らぬ人々の為に何故其処迄出来るのか?と、至って普通の疑問を抱いていた
「その…私なんかの為に済まない…勇者の試練というのは本当に過酷なものと聞く…其れでも行くと言うのか?」
其の様な考えからか、吐いた言葉に自分でも思い上がりだと思えるものであったが明らかに自分を擁護した結果でもある為居た堪れ無い気持ちになり助け起こされて尚俯いてしまう
漸くアリーシャの異変の原因を呑み込めた勇気は居住まいを正し真面目な表情を浮かべ
「…先ず、昨日も言った様に困っている人が此の先必ず出て来るというなら放ってはおけないし人助けに異界も他界も関係無いっていうのが僕の意見だよ、それに元の世界に帰ろうにも余程時空が歪んでる所為か元居た世界の気配…とでも言えば良いかな、それが今の段階では感じられないから今は動いていた方が落ち着くんだ…」
と、現状置かれた状況と考えを纏め乍それに…と口元をくすりと緩め
「…シエルとアリーシャが好き…だからかな?」
と冗談ぽく微笑む、ぱりンッ!と皿が割れる音と共にぼっ!と顔から火が出るのでは無いか?と疑える程度には赤面するアリーシャ
…余談だが恐らく皿が割れる音はシエルだろう、アリーシャに元々仕えているメイドの大きな咳払いと彼女の謝罪の声が真昼だというのに良く響く
「なッ!?ななな…ッ?!ゆ、ユウキ様ッ?!!?」
明らかに狼狽えている様子が解る、普通に接し様と努めていたが思わぬ返答に呼び名が戻ってしまっている
アリーシャの様子に頭の上にクエスチョンマークを付け首を傾げ乍勇気は語る
「…?二人とも好きだよ、シエルはあンな事があって苦しい筈なのに前向きだし…アリーシャは女の子なのに強く在ろうとしている…二人とも人として好きに成れる人柄をしてるよね」
決して不誠実では無い穏やかな微笑みを携え乍の発言に聞き耳を立てていたシエルは感動すれば良いのやら、はたまた突っ込みを入れれば良いのやら自分自身の気持ちを持て余し(ユウキさんは天然なのかしら…)と終いには失礼極まりない事を考え小休止の為に用意した紅茶とクッキーをテーブルに並べる
アリーシャもアリーシャで慌てふためいていた自分を恥じたのか俯きながら「そ、そうか…」と相槌を打つしか無かった
眼の前のアリーシャの様子に益々訳が解らないとばかりに首を傾げる勇気、が…彼が彼女達の為に何かをしたいと考えた最たる理由は彼自身の口で紡がれる
「……昨日…少し話したけどさ…僕の家、黒乃家は古い家で僕達が住んでいる国の中でも良くも悪くも影響力がある家なんだ…だからかな、"黒乃"という家柄じゃなく"黒乃勇気"という僕個人を受け入れてくれたのは二人が二番目なんだ…他人からしてみれば些細な事かもしれないけど——凄く嬉しかった、だから…二人の力に成りたいんだ…」
穏やかな微笑みを携え乍静かに…それでいて確りとアリーシャに聞こえる様に嘘も偽りも無い本心を語る勇気
アリーシャも姫という立場ではあるが王である父が平民である母を孕ませた結果産まれたという微妙な立場である為勇気の苦悩は何となくだが理解出来る…また、彼は"二番目"と言う際に哀しみを堪える様に笑顔を浮かべていた…未だ知り合って間も無いが普段は何時も笑顔でいる勇気が、である
その孤独…苦悩に自分を重ねたアリーシャは勇気の手をぎゅ…っと握る、掌から感じる温もりは優しく溶け込む様で勇気はアリーシャの顔をまじまじと見詰める
気恥ずかしいのか彼女の頬は僅かに赤みが差しているが眼の前の不器用な友人を元気付ける様な眩いばかりの微笑みを浮かべ万感の想いを込め言葉を贈る
「——有難う…私もその…嬉しいし…ユウキの事が人として好きだ、だから…無事に帰ってきて欲しい、私も私が出来る事を頑張るから」
照れ臭そうに笑う姫君と目元に涙を溜め微笑み返す異界から現れた勇者候補…優しくも不器用な二人、やがて此の二人がグリンウッド大陸を導く先導者と成ろうとは此の時の二人には予測すら出来ないのであった
気が付けばお気に入りに入れて下さる方が増えていて驚きつつも嬉しく思います…此の場を借りて感謝の言葉を!
次話はいよいよ一人旅に出る訳ですが時系列的にはアリーシャがスレイと出逢う少し前、なので次の次辺りにスレイとばったり遭遇するかもしれません(笑)