テイルズオブゼスティリア-破壊神の力を持つ流転者- 作:黒乃 柳
今回はオリジナルブラスターシリーズと黒乃の歪み、一部ネタバレ回になります
……戦いは凄惨なものであった
互いの血を血で洗う死闘、過去のしがらみに縛られ相手を憎む黒き騎士…自らの命を燃やし限界を超えた力を振るう黙示録の龍、仲間を駒や道具としか見ず必要が無くなれば糧として喰らう奈落龍と呼ばれし黒き騎士達の黒幕…
然し、勇気が最も心を痛めたのは
(ッ…こんなのが…こんなものが貴方達の正義だと言うのか…ッ!)
何ら力も無く、戦火に巻き込まれ悶え苦しむ民達の悲痛な姿であった
勇気は慟哭する
護る為の戦いにも関わらず争う事で結果的に戦火の元と成っているロイヤルパラディンに対する失望感にも
負の感情を利用•支配されたとはいえ民達を苦しめるシャドウパラディンに対する嘆きと奈落龍に対する憤りにも
武人を気取りただ強者との戦いを望む大君主とそれに付き従いし竜騎士達に対する浅はかさにも
自分が始末した山賊の頭と同質…或いはあれ以上に禍々しく強大な力を持ち乍遥か遠くで三つの軍勢を高みの見物と迄に薄ら笑いを浮かべているであろう存在達に対する怒りにも
…そして…過去の出来事とはいえ観ている事しか出来無い自分に対する無力感…否、惑星クレイとやらに赴き自分自身を過去に送れば介入は出来様…然し、場所すら解らない星には行けぬというもどかしさが自身を苛むのである
(目の前で消え逝く命を見ているのに…っ…僕は……俺は…ッ!)
最早何に対し怒りを覚えているのか解らない、遠くで眩い光を刀身に纏わせ強大な力を放つ騎士の存在を感じる…如何やらロイヤルパラディン、シャドウパラディンの双方が奈落龍を討つべく共闘する事と成った様だがそんな事は彼にとっては如何でも良い事だ
然し
光と影を内包した極光の一閃を眼にした勇気は遠い過去…母が亡くなる前に託した願いと自分自身に誓った約束を思い出した
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「…戻ってきたか」
意識を取り戻し瞼を開いた勇気を見詰める騎士
「………」
勇気は唯小さく頷く…凄惨な迄の戦を見届けてきた彼の眼には疲れの色は無く寧ろ白き騎士にも負けぬ程の力強さが秘められていた
その眼差しから何かを感じたのか白き騎士は剣を構える
「…此れは試練…貴殿の意思を試すものであると言った…我が名はブラスター•ブレード、ブラスターシリーズの最後にして最強の武装を扱える器か否か…此の剣を以って見定め為せて貰おう…!」
騎士の名乗りに対し若き勇者は母の形見である双つの釵を構える
「思い出したよ…ブラスター•ブレード、此の試練を超えて僕は…俺は…俺が目指した無敵への道を突き進む…ッ!」
互いの獲物を交差為せ乍二人の勇者は武を競う、一合一合がまるで語り合うかの様な鬩ぎは優に三日三晩続く事になる。
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『お母さんッ!』
バタンッ!と病室のドアが今にも弾け飛びそうな音を立て開かれる
病室の主である黒乃真弓は自分を看取る為に駆け付けた息子、勇気と既に最期の会話を済ませた彼の姉と兄に[二人きりで話したい…]と今にも消えそうな声で頼む
母の最期の頼み…誰一人として逆らう者はなく勇気と真弓は二人きりとなる
『お母さん…っ…死なないで…!』
病状が急に悪化したとの報を聞き慌てて駆け付けたのであろう、黒い稽古着に身を包んだ少年は涙ながらに母に縋る…それが彼女を困らせる事であると知りつつも。
『ごめ…んね……お母さ、ん…がんばった…けど…ダメみ、たい…』
はっ…はっと荒い吐息を吐き乍弱々しく微笑む母…彼女が愛用した釵は静かに勇気の手に渡る、彼は母の手をぎゅっと握る…祈るように…此れが最後だなんて認めたくないとばかりに
『…ゆ、うき…私の…さいごの…お願い……家族を…まもっ、て…次期当主としてでは、なく……さいごに…わが、ま、ま…』
最後の力を振り絞り口にしたのは愛する家族の事
幼い頃から父から厳しい鍛錬を受けてきた勇気は義務感や責任感…そういった童心とは掛け離れた感情で行動する、そんな彼に次期当主という枠では無く家族として皆を護って欲しい…それが母なりの最期の愛情表現であった
だが…如何に大人びた考え方で動くとはいえ勇気は未だ齢10歳の少年、尚且つ敬愛すべき母を死に到らしめた病の遠因である世界を憎んでいた事もあり"家族"を"家族以外の全て"から護って欲しい…そう歪みを孕んだ解釈をした。
『…うん…任せて…おれ…僕は、皆を護る"無敵"になるから……争いも裏切りも無い世界を作るから…!だから…流転の意思の元に安らかに…ね、眠って…』
最期位は笑顔で…と涙をボロボロと零し転生の輪へ還っていく母を見送る…此の日を境に勇気は唯一途に"力"を渇望しより一層鍛錬に励んだ…全ては母との約束の為に…否、それすら言い訳でしか無いのだろう…そうでもしないと少年の心は母の死を受け入れられなかったのだから。
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一体何日経っただろう、ブラスターブレードの苛烈な迄の斬撃を受け、いなし、時には脚撃に依る反撃を交え何時の間にか意識を手離していた様だ。
「…夢…か、何時の間にか忘れていた…否、忘れようとしていたのか、俺は」
意識を手離しておいて其れでも白き騎士の剣筋を見切るのは流石というべきか、長年培われた武の賜物というべきか…仮に彼が催眠術に掛かったとしても身体は術者を屠る為に"無意識"に動くだろう…其れだけの苦行を断固たる決意の元に行っていた勇気は精神面以外では勇者の器であろう。
「——試練中に居眠りか…良いだろう、今ので幾重にも覆い隠された貴殿の心は垣間見えた…其の悲壮な迄の決意、本物であれば此の一撃…耐えてみせよッ!!」
距離にして3歩…互いの攻撃が確実に届く立ち位置でブラスターブレードはその力を解放為る
かつて邪悪なる意思を持ってユナイテッドサンクチュアリを混乱と絶望の坩堝に貶めた奈落龍を打ち倒した星刻の一撃…覚悟と勇気の双つの剣を束ねた真の力…"マジェスティ•ロード•ブラスター"の光の奔流を迸らせ乍
(く…ッ…彼の力は過去の世界で見た…俺の力で防ぎきれるか…!?)
巨大な光の一撃が遺跡を貫き天を衝く、今は未だ自分の意思で破壊神と成れぬ勇気はバキッ…!と空間に歪が出来る程の膨大な魔力を一気に解放する
「全てを歪ませ破壊せよ、ディストーションディストラクトォッッ!!」
バキ…メキャァッ!と空間が歪み極光からなる一撃を呑み込む…殺傷ランクで表せぬ程の規格外の魔法と星に名を連ねた程の斬撃…両者が単独で繰り出せる最高の一撃は拮抗する——…かに見えた。
「く…ッ…!」
先に膝を付いたのは勇気であった、三日三晩に渡る積み重なる疲労もさること乍今の彼には普段の様な冷静さが欠けていた…何故か、ブラスターブレードが見せた過去の出来事と己の魂に刻みし誓いの行き着く先が同じである事を彼自身が無意識に把握しているからだ
「どうした!貴殿の力はその程度かッ!其れでは無敵など夢のまた夢だぞッ!!」
グググッ!と其の儘歪んだ空間ごと勇気を叩き斬らんとするブラスターブレード
(…ダメなのか…!俺じゃ…っ)
今迄の出来事が走馬灯の様に脳裏を過る
幼馴染達と桜舞う季節に交わした誓い
時を超え、出逢う事無き人成らざる友人達
…母や家族以外に温もりを与えてくれた元婚約者
(ユウキ様…!)
(ユウキ…!)
——そして、此の世界で初めて出来た幼馴染以外の友達、今迄生きてきた中で出逢った人達との思い出が…記憶が…心が彼に新たな力を与える。
「!?…此れは…!」
目の前に浮かぶ球体がブラスターブレードの斬撃を防ぐという目の前の現実に驚愕の色を隠せない勇気
「…ブラスター•ハート…私達惑星クレイの民の戦いの記憶を媒体とした宝玉…貴殿の悲しみの中の優しさと争いを憎む正義に宝玉が反応した様だ」
ブラスター•ハートと呼ばれた宝玉は淡い光を放ち乍勇気の手に収まる…そして宝玉は手甲と成り一人でに装着される。
「…——ブラスター…ハート、不思議な武器だ…胸が暖かくなるような…」
淡い光を放つ手甲を見詰め不思議と胸が暖かくなる感覚に眼を細める…ブラスターブレードは剣を鞘に収め此方を見詰めている
「おめでとう…貴殿はブラスター•ハートの適合者に選ばれた…時空を超え、次元すらをも超え次代の勇士を待っていた身としては此の瞬間を何れ待ち望んでいたか…」
ブラスター•ブレードは語る、惑星クレイとグリンウッド大陸は文化圏も異なれば其処に住まう生命も異なる…だが、過去のビジョンを見せられた際に感じた異質な存在感を放っていた謎の勢力、彼等と惑星クレイの民達との争いが激化しブラスター•ブレードとその仲間が過去を遡る事で囚われた為に時間軸や次元の境界に揺らぎが生じたらしい…彼や彼の仲間達はその時に次元牢と呼ばれる場所から脱出し自身を捕らえていた者達と彼等に依り変異した原住民を刺し違える事で打倒したのだと
「…だが、微かだが彼の者達と同じ気配を放つ者が何かを企てている様だ……あの時完全に倒した筈の者達の気配を感じる。——勇気殿、此の世界を回りより多くの"絆"を紡いで欲しい、そして各地に点在するスピリットと出逢ってくれ…私も微力乍力に成ろう。」
語るべき事を語り白き勇者は新時代の勇者の力となるべくブラスター•ハートの中へと吸い込まれていく
…言われる迄も無いよ
争いも裏切りも無い世界を創る
…其の為に邪魔な者が居るなら…
——俺は迷わない、敵は…討つのみだ
こうして、古から語り継がれし勇者は今世に顕現する事となる…幼い頃誓った優しくも歪な願いを胸に秘めたまま彼は約束を果たすべくレディレイクへと帰還するのであった。
次回はいよいよ本編に深く絡んでいきます、主に導師の選定の場等d( ! )