テイルズオブゼスティリア-破壊神の力を持つ流転者- 作:黒乃 柳
一夜明けて何事も無くレディレイクに到着した勇気、彼は試練の前にした約束を守るべく橋の中央に立っていた
「…あまり長居したつもりは無いのに人で賑わっているね、ブラスター•ブレードは何故か解るかい?」
機から見たら独り言を呟くアブナイ青少年であろう勇気は自身の腕に装着された手甲…もっと詳しく言えば甲の中心に光る宝玉へと語り掛ける
「——さて、私は永い間あの遺跡で次代の勇者を待っていたからな…その話振りだと君は何か知っているのでは無いか?」
宝玉から光の聖剣士、ブラスター•ブレードが現れ相槌を打つ
「ふぅん…そっか、そう言えばアリーシャやシエルが近々導師の選定が…ッて言ってたから其れかな、だとしたら予想以上に活気があるね…後ろから馬車も来てたみたいだし——暗殺者か何かかな、足運びが普通の人と違って見えたけど」
そんな配慮も敢えて気にした素振りも見せず旅立つ前を思い出して一人頷く、淡い赤髪の少女と数名の同行者の挙動を思い出しぽつりと呟きながら
(…ほんの少しすれ違っただけで見抜くとは…戦闘力と洞察力は並外れたものがある…昨日も感じたが彼の騎士としての資質は相当優秀だ…然し、)
勇気の呟きを聞いて感心と憐れみの両方の感情を抱くブラスター•ブレード
彼の描く理想郷は確かに実現すれば理想郷に成り得るだろう、此の世は争いと裏切りに満ちている…その所為で傷付いてしまう人々も決して少なくは無い、それを無くす為に絶大な力を得ようとするのも一理ある。
——だが…それだけでは駄目なのだ…と、願わくば今世の勇者の"闇"を払う者が現れる事を期待しつつ光の剣士は見守るように己が影を体現せし今代の勇者に随伴していく
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人混みを掻き分けて橋の真ん中で湖を眺めていた勇気であったがアリーシャとのもう一つの約束を果たすべく片腕を突き上げようとしたが
「ユウキ様…!」
タッタッタ…と走り寄る音と声に振り向いた勇気の胸にぽすんと重みを感じ声の主を抱き留める
「数日ぶりだね、シエル?」
銀色の髪を腰迄伸ばした少女…試練の時に挫け掛けた時に助けられた声の一人であるシエルの髪を解く様に頭を撫でるがこほンと咳払いを為る人物も此の場に居た
「…二人は仲が良いな、アリーシャが此処に居たら内心穏やかではあるまいよ」
冗談半分とばかりにくすりと口元に笑みを浮かべシエルの横に並ぶマルトラン、シエルは頬を紅く染め俯いてしまう
「——まァ、僕が此処に来て初めて出来た友人ですからね…勿論アリーシャも、大切に為るのは当たり前でしょう?」
にこやかな微笑みを浮かべ二人の友人は自分にとって大事な存在であると宣う勇気、機から聞けば所謂ジゴロだが本人は未だ二人を本当の意味で異性として見ていない為ある意味余計質が悪い…否、失恋してすぐに他の女に乗り換えないだけマシなのだろうが
「ふ…そうか、其のアリーシャだが君より1日早く戻ってきたよ、…昨日はアリーシャ自らが様子を見にきていたが私達は彼女に頼まれて約束の場所とやらの様子を見に来たら君が居たという訳だ。——アリーシャは今は導師選別の儀を執り行う為に教会に居る筈だ…勇者の凱旋を王に報告し次第逢いに行ってやると良い」
「あ…じゃあ私もお屋敷に戻りますね…?ユウキさん…また後ほど…♪」
一瞬、ブラスター•ブレードに視線を向けた様に見えたマルトランに促されシエルに片腕を掴まれたまま勇気は国王への謁見の為に宮廷へと向かうが勇者と成った今、街中や彼女から感じた"闇"がより明確に感じ取れたのだが人前である事と何より自分が帰ってきた事を純粋に喜んでくれているシエルの前で事を荒立てることを望まず唯黙って付いて行く
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「…ふゥ…ある意味試練の時より疲れたよ、あのブルドッグみたいな顔の…なんだっけ名前」
王との謁見という名目で談話室で待っていたがその実枢機卿や大臣達との対話に表である思慮深く温厚な面で相対していた勇気は聖堂への道中はァ…と溜息を付く
「…バルトロ…か?未知の技術である"魔法"を軍事利用すべく少し諄い位に取り付こうとしていた様だが…君は歳の割にああいう場に慣れているのだな」
側に控えていたブラスター•ブレード、彼も自国の騎士として他国へ謁見する機会はあったが勇気はそんな彼の眼から見ても指摘為る事も無い程の立ち振る舞いをこなしていた
「まァ家柄が少し特別でね、お偉いさんと話したり腹の読み合いをし乍食事なんて流石に馴れたよ…其れより此の国の王が未だ小さい事に驚いたかな、……さてさて、どうしたものか」
あまりにも幼い王、周囲の欲深い大人…祭り事に疎いアリーシャも個人として頑張っているが此の儘ではアリーシャ自身が傷付くのは火を見るよりも明らかである…出来る事なら友人として最大限手助けしたい処だが勇気もまた王から頼み事を頼まれていた
「…霊峰レイフォルク…か、近隣の住人がドラゴンの咆哮の様な声に怯えているが兵士も周囲を警邏為るだけで調べられていないから俺に様子を見に行って欲しい…体の良い試金石だとでも思ったのかな?あの
目の前の人混みに若干圧倒するも王からの紹介状を渡し聖堂の中へと丁重に案内され人の列を何とか離脱出来た勇気はアリーシャの姿を探す…が、中々見つからない
代わりに人の列の終着点である聖剣の側で寝こけている女性と眼が合った
暫く見詰め合う、最初は気の所為だろうとでも言わんばかりに欠伸をしていた女性だが側に居たブラスター•ブレードを見遣り表情が変わり此方に近付いてくる
「ねェ…あの女の人知り合い?何かこっち来たけど」
周りには女性やブラスター•ブレードは見えていないのかひそひそと話す勇気に訝しむ様な視線を向ける、中には「ままー、あのお兄ちゃん誰とお話ししてるのー?」とか「しッ!見ちゃいけません!」等の声も聞こえる…実に哀れだ
「あ…あの、貴方はもしかして私の事が見えている…のですか?それに此の気配…かなりの高位天族とお見受けしますが…何なのでしょう、確かに人ではあるのに…天族の気配も…?」
あまりの言われ様に少なからずショックを受けていた勇気、何時の間にかキスが出来る位置まで顔を近付けていた女性に面を食らうも自らを恐れ敬う様な視線を向ける女性に対し一歩引いて体勢を整える
「否…その高位天族とやらの基準が何かは解らないけど僕…俺は黒乃 勇気という人間だよ——人ではあるけど人の身を持つ神、現人神…らしいけどね」
ブラスター•ブレードの試練を受けていた際自らの出自をも垣間見た勇気は事実をあるがままに伝える
此の身、育ちは人なれど…哀しきかな、此の魂はとある神の分霊である…と。
「然う…ですか、数奇な運命の持ち主なのですね…___に匹敵する程の力を秘めた御霊ですか…」
説明に納得したのかひとしきり頷くと思い出したとばかりに手をぽむと打つ
「私とした事が申し遅れました…私はライラ、貴方方の御名前も御聞きしても構いませんか?」
人の列の邪魔に成らぬ様に裏口付近に移動するライラと名乗る女性、シエルに似た銀髪を揺らし歩く様は何処か気品溢れる立ち振る舞いだ
「俺は黒乃、黒乃勇気です…こッちは…ブラスター•ブレードだよ」
「…済まない、本名は訳有ッて名乗れん…、遥か昔に逢った事があると記憶していたと思うが?」
問われるが侭に名乗る、ついでに傍に控えていた騎士の呼び名も
本来は彼が帯刀している剣の名前がブラスター•ブレードというらしい、本名は過去の記憶を垣間見て知ってはいるが俺以外には伏せていて欲しいと彼に言われていた為普段の呼び名で紹介する
「そういえば…身に付けている鎧や剣が少し違いますが…あの時の方ですのね…失礼しました、名を語れないという事は貴方も誓約を…?」
どうやら二人には面識が有る様だ、ぺこりと頭を下げる姿は先程とは違い少し愛らしい
誓約云々の話は良く解らないがこくりと頷く彼の神妙な顔持ちからして重要な事なのだろう
「ユウキ…?ユウキじゃないか!良かった…無事に帰ってきてたんだな…」
不意に背後から聞き慣れた声が聞こえる、振り向くとアリーシャと隣に見知らぬこげ茶色の髪をした青年、更にその斜め後ろに中性的な顔立ちをした青年が此方を見ていた
「…久し振り、アリーシャ…其処の二人は誰かな?」
静かに微笑みを浮かべ乍自分やブラスター•ブレード、ライラと似た様な気配を持つ銀髪の青年に視線を向けて問うが当のアリーシャは訝しむ様に首を傾げる
「…?再会したばかりで済まない…ユウキのいう二人とは誰の事だろうか、スレイと私以外には此処から入ってきた者は居ないのだが…ユウキには何か視えているのか?」
如何やらアリーシャにも周りの人達と同じ様にライラ、ブラスター•ブレード、そして銀髪の青年の姿は観えていない様だ
何と説明為れば良いか悩んでいた処突如、黒乃の未来を垣間見る力が彼の脳に働き掛ける
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「……ふぅん」
「…何か視えたか?」
何処か不愉快そうな表情へと代わる勇気、彼の能力を知り得ていたブラスター•ブレードに問われ振り向こうとした処スレイと呼ばれた青年が眼を輝かせていた
「天族が視える人間ッて矢っ張り居るんだな!いや…それにしては変わった服を着ているし何処と無く人…ッて感じじゃないようなな…ミクリオ、どう思う?」
如何やら此の青年には二人の姿が視えている様だ、天族と分類される者は普通の人には視えないまっくろくろすけの様なものなのだろうか?
ミクリオと呼ばれた銀髪の青年は溜息を吐く
「僕に聞くな…それに人前では知らないふりをしろとあれ程…——まァそれはおいておくとして、人か天族かは正直今一つ掴めないが彼から途轍もなく強い力を感じるのは確かだ…其処の騎士からも…ね。」
ブラスター•ブレードと勇気の交互に視線を向けるミクリオ、その整った顔立ちは勇気の内に眠っている力を本能的に怖れを抱いてか僅かに歪んでいる
一方的に怖れを抱かれて面白いと思う人間は少ないだろうが思いの外勇気は笑顔の侭だ…
(…失礼だな、俺は人間だよ…少なくとも身体は、ね)
アリーシャや周りの人々以外には聞こえない所謂テレパシーの様なものを脳に直接送りにこりと微笑み続けている…然し眼は笑っていない
「「!!」」
スレイ、ミクリオ両者は脳に響く声と目の前に居る青少年のギャップに驚く
(初対面の人に少し失礼が過ぎるよ?)
微笑んだ侭最後にそう伝えると其の儘不思議そうにしているアリーシャの方へ視線を向け
「…一応、視えてはいるけど初対面の人に些か失礼ではあるね…僕にも僕を産んでくれた母や育ててくれた父が居る、其れを蔑ろにするような発言は如何かと思わないかい?」
アリーシャやスレイ、基本的に生物には親が居る、家族を何よりも大切にしている勇気としては自分を産み落としてくれた母や父を蔑ろに為れた気分だ
「そ、そうか…確かにスレイの発言は私も腑に落ちないが…何かあったのか?普段はもう少し落ち着いているだろう…私の知っているユウキは…」
出逢って間も無いが滞在中はほぼ毎日と云って良い程手合わせをしたアリーシャは何処か様子のおかしい勇気に戸惑う
スレイはスレイで一言[ごめん…悪気はなかったンだ…]と申し訳無さそうに謝る
彼等は知る由もない、何故此処迄不愉快…否、嫌悪感を剥き出しにしているのか
裏切りを許容しない彼が断片的に垣間見た一つの未来が原因である事を知っているのは彼のみなのだから
次回から本編の流れとは少しだけ逸脱します、具体的には防衛戦…でしょうか、見える人には見える憑魔と違いフード付き達は半有機生命合成体なのd( ! )