テイルズオブゼスティリア-破壊神の力を持つ流転者-   作:黒乃 柳

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今回は遂にフードの敵達の正体が明らかになります、と、言ってもヴァンガードファイターなら前回のあとがきで察した事でしょうが(苦笑)


聖剣祭-強襲-

時を同じくしてレディレイクが地下、ヴィヴィア水道遺跡ではマルトランとフードの者達が時を待っていた

 

 

[…そろそろ頃合いか……バイナリスター…と呼ばれていたな、手筈通り各自散開して街を襲いつつ聖堂に向かえ…場合によって私も御前達を討つ側に回るが上手く立ち回れよ…?]

 

バイナリスターと呼ばれし者達は一斉にフードを脱ぎ捨てる

 

[[[………]]]

 

機械の身体を持つ半有機合成生命体達、彼等からは怒りや恐怖といった感情は感じない…謂わば無、只々与えられた任務を全うする機械人形である

 

[…行け]

 

 

その数凡そ10兵数だけで言えば分隊規模だが彼等は三英雄のデータを元に作られた機械人形…戦闘力だけを取れば1体で人間の兵士10人分…否、それ以上のポテンシャルを持つ

 

——尤も、其れも想定の4割を下回りオリジナルには及ばぬが試金石には丁度良いと踏んだのであろう

 

更に其れらを指揮する司令塔の役割を担う者、ツインガンナーもステルス機能を作動させ乍静かに歩を進める

 

[さて…如何出る?勇者よ…]

 

マルトランとツインガンナーの指示と共に一斉に地上へと駆け上がるバイナリスター、虚ろなる殺戮人形は唯与えられた任務を全うすべく其の凶刃を振り下ろすべく状況を開始為る…!

 

—————

———

 

[…成る程、ね…つまり彼…スレイさんがアリーシャが暗殺者に狙われているのを知って態々人里に降りてきたんだ?]

 

若干苛立ッていたがミクリオから話を聞き漸く険難(けんのん)な威圧感を収める勇気

 

[…嗚呼、勿論其れだけが理由では無いけど概ねそんな処だ…それにしても、光の勇者…

御伽噺の題材にもなる人物がまさか実在の人物とは正直驚いたよ]

 

言い乍ちらりとブラスター•ブレードの方を観るミクリオ、勇気も一週間程此の世界の文字や文献、その他必要になってくるであろう情報を旅の準備と並行して調べていた為に光の勇者の伝説は知っていた

 

[…火の無い処に煙は立たない、とも言うしね…ハイランドとローランス…此の両国の王族は同じ人を御先祖に持つらしいけど何か関係あるのかな?アリーシャはやたら此の御伽噺に精通していたようだけど…?]

 

話の出処と成ったブラスター•ブレードに問うように話を振る、尤も本人は多くは語らないだろう…つまり此れはアリーシャに対する問いでもある

 

[済まない…私も父から聞いただけで多くは知らないんだ…唯、]

 

案の定沈黙を護るブラスター•ブレード、そして答えを持たない事に申し訳無さそうにするアリーシャ…意地の悪い現人神である

 

 

[唯…?]

 

先を促す勇気に対しブラスター•ブレードはぴくりと眉を動かす

 

[…其の御先祖様が光の勇者と共に戦った戦士であるかもしれない…、そして皆も知っている御伽噺は気が遠くなる程の昔…神代の時代に実際に起きた事であるかもしれない、と…]

 

御伽噺自体は何処にでもある話だ

 

だが彼女の話とブラスター•ブレードが此の世界に降り立った時代を照らし合わせるに凡そ1000年…口伝という手法を取った理由は解らないがおぼろげ乍今代迄良く語り継いだとほとほと感心する——…一人は感心を超えたレベルでブラスター•ブレードと接触しようとしているが

 

[本当に居たンだな!光の勇者…昔ジイジに読んで貰ったっけ、ミクリオも覚えてるだろ?]

 

[だから人前で呼ぶなとあれ程…!]

 

…機から観ればギャグでしか無い二人と違いブラスター•ブレード、そして勇気は漸く街に居る何者かの気配に気付く…が、全く同じ気配を持つ者が複数居る事に不可解と言わんばかりの顔をしていた

 

[アリーシャ…そろそろだ]

 

何時の間にか居たマルトランがアリーシャに声を掛ける、式典の為の演説を促しているようだ

 

[…君もだ、ユウキ…勇者の出現は民達の希望になる…光の勇者の伝承に擬えて作った鎧を着て是非式に参加して欲しいと陛下からの御達しだ]

 

まさか自分にも白羽の矢が立つとは思わなかった勇気は一瞬戸惑う

 

(如何する…外の奴等が何なのか調べなきゃいけないのに…!)

 

アリーシャは促される侭台座へと既に歩んでいる…此の流れで断れば大なり小なり遺恨を残すのは眼に視える

 

(…仕方が無い、私が外に向かおう…一応時間を稼ぐが期待は為るなよ?)

 

(……御免、助かるよ、俺も出来るだけ早く向かうから)

 

 

ブラスター•ハートを通し互いに意思疎通を図る二人

 

ふっ…と笑い乍背を向け裏口から出るブラスター•ブレードに視線を向ける勇気にライラを除いた3人は訝しむように二人を見詰めている

 

[えッと…何かあったのか?彼の人外に行っちゃったけど…]

 

問い掛けたのはスレイだッた、真実を語るのは造作も無いが此処で真実を語れば余計な騒動と成るだろう…そう考えた勇気は首を振り一言何でも無いと告げ兵士の案内の元着替えに向かう

 

—————

———

 

[…さて…如何したものかな…]

 

 

嘗ての親友であり我が忠義を捧げてきた王から賜りし愛剣に依り真っ二つに身体を裂かれた尖兵を見降ろし呟く

 

感じた限りで残りは8、否…9といった処か、聖堂の裏手を監視していた此奴を先に倒せたのはある意味僥倖と言えよう

 

[…今頃アリーシャ殿の演説が始まっているだろう、其れ迄に住民に悟られる事無く片付けたいが…]

 

警備として辺りを警戒していた二人の兵士の眼を閉じさせる…背後から頸動脈を絶たれている、何が起こったのか解らない侭絶命したであろう事がまた憐れでならない

 

[…ターゲット確認…状況開始…!]

 

仲間が屠られたのを察知し3体が此方へと向かってきた…彼等は過去の大戦で幾度と無く観てきた者達だ、其の実力は然る事乍彼等の厄介な処は其の名が指し示す通り"連星"…つまり何処かに司令塔となる機体、ツインガンナーも居るという事である

 

[…雑兵は兎も角、私一人では少々荷が勝ち過ぎるな…住民の避難も考慮せねばならない…ッ!]

 

一体一体はオリジナルに及ばないとはいえ其れは個としての話だ、絶妙なタイミングで繰り出される3体の攻撃は徐々にだがブラスター•ブレードを追い詰めていく

 

(ち…っ、余り長くは持たんぞ…勇気…ッ!)

 

—————

———

 

一方其の頃、アリーシャの演説、並びに"浄炎入刀"に参加していた民達から野次が飛び交う

 

[祈りがなんだッてンだ!これで俺達の仕事が戻ってくるってのか?えェ!?]

 

[評議会が武具や作物の通商権を占有したのは戦争をおっぱじめる為だろう!]

 

[俺達を野垂れ死にさせるつもりか!]

 

[こんなもンは評議会の自己満足だッ!]

 

[俺達はこンなご機嫌取りには誤魔化されねェぞ!!]

 

民達の不満や生活に於ける不安、そういった負の感情が次々と口をついて出る

 

(…無理も無い、彼等だって生活や守るべき家庭があるのだろう…でも…)

 

外の様子に内心焦りを隠せない勇気は歯軋りを起こす…言っても如何にも成らない無益な事で時間を費やしていたら被害は今此の場に居る者達にも及ぶというのに…!と

 

 

[黙れッ!祭りの邪魔をするなッ!!]

 

 

不満を募らせる民達を黙らせるべく一人の兵士が槍を構え乍前に出る、正直言って愚行以外の何物でもないと言えよう…抑圧された感情を逆撫ですると解らないのだろうか…——喩え此れが仕組まれていた事だとしても、空気を読んで貰いたいものだ

 

 

[やめないかッ!]

 

 

アリーシャが一喝する事で兵士の動きが一瞬鈍る、然しこつンと兵士のヘルムに何処からともなく石が当たり兵士と対面していた男性は一言[ざまァみろ!]と明らかに挑発する様な顔をし其れに激昂した兵士は構えていた槍を横薙ぎに振らンとする

 

調子付いたのか二投目の石が兵士の被るヘルム目掛け投げつけられそうになった瞬間此の場では部外者でしか無い一人の人物が石を片手で受け止め槍の柄を掴み辺りにざわめきが過る

 

[…良い加減にシろ…ッ!]

 

槍の柄を強く握り一切の動きを封じた勇気が兵士を一瞥している…だが、其の眼には憤り依りも深い哀しみが込められており兵士は抵抗の意思を挫かれてしまう

 

[貴方達も…同じ人で在るならこンなものを投げ付けられたらどンな気持ちに成るか解らない訳じゃ無いだろう!家族や恋人が石を投げ付けられたらどンなに悔しく…悲しいか解らない訳じゃ無いだろうッ!!]

 

勇気の怒声に周囲は口を噤む、もしも自分の家族が同じ眼に合わされたら…然う意識した瞬間互いへの敵意はなりを潜め唯沈黙のみが此の場を満たしていた

 

 

[…俺は此の国の者では無い、でも貴方達と同じ血が通った人間だ…仕事が無い苦しみも解る、だが苦しい時だからこそ人としての矜恃は捨ててはいけない。——憎しみだけで人を傷付けたら其の時点で人としての矜恃を無くすから]

 

民達の苦しみを理解し様と為る姿勢は多くの人々の心を確かに突き動かした、此の中には何処から来たとも知れぬ余所者が…と内心苦々しく思っていた民も少なからず居る

 

然し、そンな人々も彼が見ず知らずの者達の為に流す涙に嘘偽りは無い事は解る、目の前の少年は人の不幸を悲しめる優しさを持った人物であるとも

 

[——此の槍は何の為に…今迄鍛え上げた力は誰の為に…今一度考え直して欲しい、貴方達兵士の護るべきモノを]

 

槍を離し此の場に居る兵士達全てに問い掛ける、何故兵士に成ろうとしたのか…中には困窮した生活から抜け出す為に剣を取った者も居るだろう

 

だが、そンな理由であろうとも護るべきモノは各人持っている…何より、兵士で在る事に誇りを持つ者も中には居るだろう

 

[…見苦しい真似をしてしまッた…済まない]

 

拘束を解かれた兵士は深々と頭を下げる…勇気に対してでもあるが自分が槍を向けようとした男性や周りの民に対して、である

 

 

[い、いや…俺こそ悪かったよ…そうだよなァ…あンたら兵士も俺達と同じなんだよな…]

 

 

頭を下げられ困惑した様に後退るも申し訳なさそうに謝罪を述べる男性、国境付近では隣国との小競り合いもある…其の時真っ先に矢面に立つのは自分では無く目の前の兵士かもしれない…それは家族を持つ者なら何より恐ろしいだろう

 

そういう意味では目の前の兵士も自分達同様苦しい立ち位置に立たされているのだろう、そう考えたら自分の発言が余りにも恥ずかしくなり余計申し訳なさそうに俯いてしまう

 

 

気付けば敵意は無く代わりに互いが互いを弁解し合うという珍妙な光景が繰り広げられていた、此の光景を眼にしたライラはくすくすと笑っている

 

[ユウキさん…不思議な方ですわね…]

 

今にも憑魔が生み出されそうな気配を感じていたライラはぽつりと漏らす、導師では無く勇者…人々の心に勇気を灯す者の片鱗を垣間見た気分だ。

 

然し乍此の頃には外で次第に苛烈な剣戟も聞こえ始め周囲も何事かと気付き始める

 

ばたンッ!

 

[ッ…何事だ!?]

 

場の和んだ空気に緊張が走る、見れば人混みを掻き分けて現れた傷だらけの兵士が息を切らしアリーシャやマルトラン達の方へと駆け寄ってきた

 

[も、申し上げます…正体不明の敵が警邏隊を強襲…奮戦はしているものも我々では持ち堪えられませッぐぎゃぁあァァッ!?]

 

息も絶え絶えに青き戦乙女の勇名を頼りに聖堂へと逃げ込んできた兵士は突如天井を突き破り飛来してきたバイナリスターに依り斬り捨てられてしまう

 

[きゃあぁァーッ!!]

 

此れを眼にした民達は恐怖と混乱のあまり叫びを上げ逃げ惑うが既に外は4体のバイナリスターに囲まれており逃げ場等無い

 

絶対絶命と思われたその時…!

 

[ッ!!]

 

ズゴォォォンッ!!と雷が落ちた様な轟きと共にバイナリスターは右手脚のみを残し跡形も無く消し飛ぶ…稲光が走る手甲を装着した勇気が繰り出した鉄拳に依るものだ

 

[ッ!?]

 

アリーシャを含めスレイとミクリオは驚愕の表情を浮かべる、アリーシャは純粋に驚きから…スレイとミクリオはカムランでの生活が今迄の全てであった為にジイジことライゼン以外に雷を扱う者が居たという異なる驚きから

 

[…兵士の皆は民間人を中心に方円の陣を組んで、民間人の皆は其処から絶対に出ては行けない…アリーシャ、後は頼むよ?]

 

此の場で一人を除き浮き足立ッていた兵達に冷静に指示を出す、兵士は最初戸惑うも[お•応!]と直様実行に移す

 

 

(…ほう…)

 

予めこうなる事を知っていたマルトランはその手腕に内心ほくそ笑む、確かにこうなった以上下手に外に出る依りは中で防戦に徹した方が生存率は上がる…戦慣れしているその冷静な迄の判断力には青き戦乙女も眼を見張るものがあったのだ

 

[ま、待てよ!あンちゃんはどうすンだい!?]

 

先程の男性が心配そうに問う、如何に人智を超えた力を持つ勇者といえ敵は複数、敵陣に単身特攻を仕掛けるものだと案じているのだろう

 

[…言っただろ?俺は貴方達と同じ血の通った人間だ、と…——だから、俺が護りたいモノを全力で護る…ッ!全力でだッ!!]

 

そンな人々の心配を笑い飛ばす様に勇気は其の猛々しい迄の本性を現す

 

其れは怒りに依り目覚めた神としての本性…此れ依り今代の勇者は侵略者の根絶を目的とした比肩する者の居ない魔神と化す…ッ!

 

 

 

 

 





次回はいよいよ聖剣祭編終了です、はたしてスレイは導師に成れるのか、其れは次回で明らかに(笑)
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