「ここか…」
沫流は無事、青道高校へ合格し入学式の前に野球部の寮に入寮することになっていた。
グラウンドには誰もいない。今日は俺を含めた新入生の入寮を歓迎する為、上級生たちは寮の部屋で待っているらしい。同じ寮室を使う人は、増子透、倉持洋一、沢村栄純と俺の四人。沢村っていう人は俺と同じ1年だそうだ。入寮するにあたって受付で貰った案内図を見ると、ここが自分の使う寮室であるのが分かった。
(…よし、入るぞ)
コンコン
「今日からこの寮部屋でお世話になることになった林山沫流です。ドアを開けても良いでしょうか?」
「あ、少し待て!すぐ開けるから!」
何やら部屋内でドタバタドタバタと騒がしい。片付け中だったのか。そんなに早くは来てないよなと思いながら、待つこと三分…。
ガチャ…ギギー…
「「……いらっしゃあーい」」
ドアから出迎えてくれたのは何やらお化けなのか妖怪なのか分からない面相の男の二人だった。
「あ、間違えました。すいません」
取り合えずドアを閉めた。
「えっと…今日からお世話になる林山沫流です。宜しくお願いします。」
『宜しく、沫流ちゃん』
俺が挨拶したのに対して、返事を返してくれたのは増子さん。他の二人はドア付近で鼻を抑え、呻き声をあげながら芋虫みたいに転がっている。恐らく倉持洋一さんと沢村栄純だろう。俺がドアをいきなり閉めた為、顔にドアがぶつかったらしい。自業自得である。
「ええっと、増子透さんですよね?何で紙で返事を?」
「増子さんは試合でエラーしたから、それで罰として喋るのを禁止にしてるんだよ」
『その通り』
エラーをすれば喋るのは禁止と言うのは増子さんが自分に作ったルールであって、青道高校のルールで無いと知ってホッとした。
「あ、それと俺は2年の倉持洋一。お前が来たら歓迎会としてゲームすんの待ってたんだ!おい、沢村起きろ!」
そう言って、倉持さんは沢村にツイスト決めていた。
「痛い痛い!もっちー先輩痛いっすよ!」
「誰がもっちーじゃ、ごらぁ!」
既に沢村と倉持さんは仲良くなっている。これは沢村の人間性によるものなのか…。よし!自分も仲良くなる為には、倉持さんをもっちー先輩と呼ばねばなるまい。
「もっちー先輩、早くゲームしましょう!ゲームは得意ですよ!」
「だから、誰がもっちーじゃ!」
倉持さん、改めもっちー先輩は文句言いながらゲームの準備を始めた。ボソッとお前ら負けたら1年間俺のパシリなとか聞こえたけど気のせいだろう。…………沢村をボコして自分は逃れるか…。
「あ~痛ぇ~」
もっちー先輩にツイスト掛けられていた沢村がやっとこさ起きた。彼が痛がっているのはドアとぶつかった鼻なのか、もっちー先輩に決められた技で痛いのかは勿論知らない。
「俺は沢村栄純だ!ここにエースになりに来た!宜しくな!」
そう言って彼は手を差し出してきた。俺も握り返し握手しながら
「俺は林山沫流だよ。君と同じく投手希望だ」
「なぬ!!同じ部屋にライバルが!これは負けてられんぞぉぉぉ!!」
沢村がそう叫んだ瞬間、もっちー先輩に煩いと蹴飛ばされた。
「おい、そこの新入生!さっさと始めんぞ!」
ゲームの準備は出来たらしい。取り合えず、沢村を起こしてスタンバイについた。増子さんは?と思い振り返ったら
『俺はプリン食べてるからやってていいぞ』
……増子さんはどうやらゲームをやるより、プリンを食べてる方が良いようだ。よく見るとプリンの残骸が2、3個側にあった。食べ過ぎだと思うのは間違いないと思う。
「しゃ、林山の腕前見せてもらおうじゃねぇか、ヒャハハハ」
もっちー先輩に負けたら1年間大変なので、ここは本気で行かなければ。その為には沢村(生け贄)をボコらないと。
ゲーム大会の結果、沢村がドベと決まり、もっちー先輩のパシリとなった。ん?俺は当たり前の1位で先程からもっちー先輩に睨まれてる。………さぁ、明日に向けて早く寝よう。
誤字脱字等ありましたら、教えて頂けると有り難いです。