そう言えば、私はアリアちゃんのお父さんを見た事がない。
お父さんとお母さんを含めて、箒さん、セシリアさん、鈴さん、シャルロットさん、ラウラさん、楯無さんと、初めて会ったのはオルコット家の庭でお茶会をした時だった。
その時、初めてアリアちゃんと出会った。
私たち以外に子供はいなく、それが私の最初の友達。
◇◇◇
徹夜を繰り返しながらも、システム開発は無事なんとか形になった。
気付いたらもう朝。
そして、今日はタッグ・トーナメント当日。
「う~。眠い……」
ここ数日の睡眠時間を合計しても一日にならない程の時間を費やして、システム開発を行なっていたのだ。
「一年の試合は午後からだったな……。それまで、間に合えばいいか」
支度、移動を計算して目覚ましを掛けた。
一夏は自分が起きた後、秋葉を起こそうとしたが、張り紙があったので、それを読む。
『午後には合流するので、今は起こさないでください。 秋葉より』
タッグ・トーナメントは一日かけて、行うので授業はない。
その為、殆どが自由行動なのだ。
まあ、ぶっちゃけ言えば、自分の出る試合に間に合えばいいだけのこと。
「ん。そっか」
とりあえず起こすのはやめ、一夏はアリーナへと向かった。
◇
アリーナに到着すると、観客席はほぼ満席だった。
そして、本命はアリーナに設置されているディスプレイに出ていた。
「…………」
一夏はその対戦表を見て、目を細める。
一夏の対戦相手は……
「手間が省けたな……」
ラウラ、箒コンビだった。
別の所ではラウラが三日月の様に口を曲げていた。
「ついにこの時が来た……」
その後ろで箒は別の事を考えていた。
それは、ラウラの一件があった日の夜のことだった。
タッグ・トーナメントのタッグを申し込もうと、わざわざ部屋まで来たのだが、すでに遅し。
一夏はもうタッグを組んでいたのだ。
「どうして、私ではないんだ……」
秋葉と言う娘が来てから、私と言う存在が薄れていく。
訓練に来ても、かならす彼女がいる。
「勝つんだ……。そうすれば……」
タッグとは別で、箒は一夏に一方的な約束事をしていたのだ。
もちろん、一夏のアレで別の意味として伝わっているが。
「そうすれば……付合えるんだ」
たぶん、叶うことのない願いに箒はかけていた。
そして、タッグ・トーナメントの開始の時間がきた。
◇
午前中は三年、二年の試合。
専用機持ちは殆どいなく、あっさりと終わる。
昼休みを挟んで、午後の試合が始まった。
最初の試合は一夏の試合。
「待ちくたびれたぞ……織斑一夏」
「そうかい……俺は楽しみでしょうがなかったぞ?」
お互いに睨み合いながらも、カウントダウンが始まる。
そして、決着の時が来た。
「「ぶっ潰す!!」」
一年の最初の試合が始まった。
◇
「始まったわね……」
秋葉は部屋で作ったシステムを夜桜に組み込んでいた。
試合の様子は小型モニターで確認している。
システムも組み込み終わり、稼働を確認したので、全ての作業が終わる。
「……出てきたら? お母さん」
ここに来てからずっと視線を秋葉を感じていた。
最初は整備室に来る人のだと思っていたが、違った。
「…………」
物影から彼女は姿を現した。
その顔は秋葉と同じの少女。
この世界では、秋葉の母にあたる存在。
一年四組、クラス代表の更識簪だった。
「初めまして、お母さん」
「……初めまして」
簪の目は私ではなく、後ろにある物だった。
「やっぱり、これが気になるのね」
「…………」
「専用機が完成していないことは知っている。それがお父さんのせいでもあることも。でも……」
秋葉は一度口を閉じ、夜桜の方を向く。
「私のお母さんは、沢山の人たちの手を借りて作り上げた。打鉄弐式を……そして、これを」
その後ろ姿はとても大きかった。
簪は思った。
秋葉は偉大な人の後ろ姿を見て育ったのだと……。
「時間だね……」
「え?」
突如、緊急用のアラームが鳴り響く。
その時が来たのだ。
ラウラがVTシステムを発動させる時が。
「え? なに?」
簪は急に鳴り響くアラームに戸惑う。
秋葉は夜桜を待機状態にし、簪の手を握る。
「私は見届けないといけない……お母さんは避難してほしい」
「で、でも……」
「大丈夫」
その言葉だけは、なぜか、心を安心させる。
簪は平常心を取り戻す。
「行ってくるね」
秋葉はそれを言い残して、アリーナへと向かった。
◇
来た頃には、シャルルが白式にSEを移動させていた。
「間近に見ると、えげつない物ね」
「秋葉はあれが何か分かるのか?」
「もちろんよ。ラウラさんがVTシステムに乗っ取られたんでしょ?」
「VTシステム?」
一夏はあんまり分かっていなかったようだ。
それもその筈、これは国家機密に関わる内容なのだから。
「その話は後にしましょ。今は目の前のことをね」
「ああ。そうだな」
白式にSEが補充される。
ラファールのSEが少なかった為、部分展開が限界だったが、あれをやるには十分だった。
「行ってくる」
「ちゃんと、連れて帰りなさいよ」
「おう!」
一夏は零落白夜を発動させ、VTシステムで出来たスライムを切り裂く、それと同時にラウラが倒れ込んできた。
「殴るのは、勘弁してやるよ」
ラウラの救出が完了し、全てが終わろうとしていた。
だが……
「!? お父さん、離れて!!」
「え?」
完全停止したと思っていたVTシステムが再起動し始めたのだ。
急の事で、一夏はその場から動くことが出来なかった。
秋葉は慌てて夜桜を展開し、それを切り裂く。
「今の内に!」
「ああ」
VTシステムはうねうねと動き、斬り裂いた筈の部分と再度融合し始めった。
そして、爆発するかのように触手を放つ。
鎮圧の為に来ていたIS部隊にその触手が当たる。
捕まったISは操縦者ごと取り込もうとしていたので、秋葉はその触手を切るが、数が数だった。
脱出できた者もいたが、何機かは取り込まれてしまう。
「一体何が起こっているの?」
秋葉は分からなかった。
私の知っている話だと、ラウラを助けたら終わるはずだった。
だけど、現実は違った。
「私が来た事による歪みなのか……?」
分からない以上、この場で対処するしかない。
「皆は避難して!」
「秋葉を置いて行けるわけないだろ!!」
「なら、今の状態で満足に戦えると思っているの? ここで、誰かが足止めしないといけないんだよ? 分かる?」
「だが……」
「大丈夫。私は死なない」
再び、スライムに目を向けると黒い球体化となっていた。
大きさとして、私の二倍近く。
そして、その球体が孵化する。
「ぐぉぉぉ!!!!」
出て来たのは銀色面をした化け物だった。
骸の面に紅のランスに紅の龍。
龍と言うより、人型に近い。
「こりゃあ、骨が折れそうだね……」
秋葉は苦笑いするしかなかった。
相手も獲物を見つけると、一直に走ってくる。
「もってちょうだいよ……夜桜」
黒刀と白刀を取り出し、秋葉も突っ込む。
カリギュラ・ゼノ(秋葉が命名)は両腕にある扇子に近い刃を展開し、秋葉はそれを止める。
お互いにインファイトが続き、遂に限界がきた……白刀が。
「っ!」
白刀を捨て、雪片弐型を展開するも、既に遅かった。
カリギュラ・ゼノの尾によってクリーン・ヒットしてしまったのだ。
装甲が全くない夜桜は絶対防御を発動させるが、完全に防げなかった。
(やばい……アバラが何本か逝った)
持っていた剣は弾き飛ばされたと同時に、手放してしまった。
残るのはあのランスだけ。
カリギュラ・ゼノはゆっくりと、歩きこちらに向かってくる。
次受けたら、確実に死ぬだろう。
「私だって……死ぬわけにはいかないんだぁ!!」
ヴァルキュリアを取り出し、構える。
カリギュラ・ゼノはそれを見ると突っ込んでくる。
秋葉はそれと同時にある物を投げる。
投げたのは、スタングレネードだった。
その光に当てられ、カリギュラ・ゼノはひるむ。
「お前がっ……お前がっ……!!」
そのまま、飛び上り、
「お前が死ねえぇ!!」
秋葉はランスをカリギュラ・ゼノの頭に突き刺した。
その一撃が決まるが、カリギュラ・ゼノは倒れない。
ランスごと振り落とされ、満足に着地も出来ず、地面へと叩き落とされた。
「ぐっ……。本当にしぶといわね」
片目を潰せたのはよかったが、こちらも限界だった。
秋葉はもう、立っているのが限界。
完全な積みだった。
(ああ、まだ死にたくなかたったな……)
一滴の血がヴァルキュリアに落ちると軌跡が起こった。
ヴァルキュリアの塗装が光と共に剥がれ落ちたのだ。
「な……なに?」
そして、夜桜からあるメロディが流れる。
「このメロディ……」
なぜ、このメロディが流れるのかは、分からない。
だけど、今はこれにかけるしかない。
「~~~♪ ~~~~~~♪」
秋葉は歌う。
“永遠語り”を
その歌にヴァルキュリアは反応し、渦巻模様のランス先が回転し始め、周囲の空気をかき集め始めた。
カリギュラ・ゼノは本能的に危険と感じ、一気に間を詰めるが、複数のレーザーに阻まれた。
「これ以上は行かせませんわ!」
援護射撃にセシリアが来たのだ。
その射撃はとてもタイミングが良かった。
ヴァルキュリアに集まった風は、一つの嵐となって解き放たれた。
「これで……終わりよ」
その嵐はカリギュラ・ゼノの飲み込み、跡形もなく消し飛ばした。
それと同時に物凄い衝撃と光を放った。
光が止む頃には、秋葉は倒れており、セシリアは慌てて駆け寄る。
そして、その光景を見てしまった。
秋葉が放った一撃は一直線にアリーナごと消し飛ばしていた。
「これは……」
セシリアは息を飲んだ。
「あ……」
「秋葉さん! 大丈夫ですか!?」
意識を確認したセシリアはそのまま、秋葉を連れ、緊急治療室へと向かう
タッグ・トーナメントは重症者を一名を出して幕を閉じた。
多分もう、やつは出てこないと思う。