インフィニット・ストラトス 黒刀の剣士   作:ぬっく~

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15話

私の時代で、第四世代は4機しか存在しない。

白式、紅椿、黒騎士、夜桜の4機だけ。

 

 

    ◇◇◇

 

 

アリアとの決闘宣言から一週間が経った。

一夏とアリアはIS学園の外れにあるアリーナにいた。

 

「あら、逃げずに来ましたのね」

 

アリアがふふんと鼻を鳴らす。

また腰に手を当てたポーズが様になっている。

けれど俺の関心はそんなところにはない。

そんなところは、ハイパーセンサーは感知しない。

 

(本当に『ブルー・ティアーズ』と全く変わらないな……)

 

鮮やかな青色の機体『ブルー・レイン』。

その外見はセシリアの『ブルー・ティアーズ』と全く同じく、特徴的なファン・アーマーを4枚背に従えていた。

それを駆るアリアの手には二メートルを超す長大な銃器が握られていた。

 

「最後のチャンスをあげますわ」

 

腰に当てて手を俺の方に、びっと人差し指を突き出した状態で向けてくる。

左手の銃は、余裕なのかまだ砲口が下がったままだ。

 

「チャンスって?」

 

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿を晒したくなければ、今ここで謝罪するというなら、許してあげないこともなくってよ」

 

そう言って目を笑みに細める。

それはあの時のセシリアの目と同じだった。

 

「そういうのはチャンスとは言わないな」

 

「そう? 残念ですわ。それなら―――」

 

 

―――警告! 敵IS射撃体勢に移行。トリガー確認、初弾エネルギー装填。

 

 

「お別れですわね!」

 

キュインッ! 耳をつんざくような独特な音。

セシリアの《スターライトmkⅡ》と比べ物にならい程のレーザーが、俺の身体を打ち抜く。

 

「くっ!」

 

撃ち方がセシリアと同じだったお蔭で、直撃は避けたものの、左肩の装甲が一撃で吹き飛ぶ。

直後、遅れてやってきた衝撃波(ソニック・ブーム)に左腕がねじ切られるように引っ張られて、神経情報としての痛みが稲妻のように走った。

 

 

―――バリアー貫通、ダメージ157。シールドエネルギー残量、410。実体ダメージ、レベル中。

 

 

(まじかよ……。セシリアの三倍近くあるのかよ。あのライフルは!!)

 

さすがわ未来のISのだけのことはあった。

スッペクから何でもかんでも違う。

 

「さあ、踊りなさい。わたくし、アリア・オルコットとブルー・レインの奏でる輪舞(ロンド)で!」

 

射撃、射撃射撃。まさに弾雨の如き攻撃が降り注ぐ。

しかも、それら全てが的確にこちらを狙ってくるため、凌ぐのですら難しい。

だが、このやり方は一度体験したことがあった。

 

(まさか……)

 

威力は違うが、()()()のやり取りだった。

そう、あの日の……

 

「遊んでいるわね……」

 

病室では、その戦いを秋葉は見ていた。

外出は出来ない為、ライブ映像を見ている。

 

「アリアちゃんも意外とエグイやり方で来たわね……」

 

アリアはこの試合を簡単に終わらせるつもりはまっとくなく、猫がおもちゃで遊ぶように痛めつける。

そして最後に、瀕死の所で一気に型を着けるつもりだと秋葉は読んだ。

 

「でも、アリアちゃん。私がお父さんに何もしないとは言ってないからね……」

 

秋葉には、秘策があった。

それは、この試合に衝撃的な印象を与えるとは、アリアは知らなかった。

 

 

    ◇

 

 

「―――二十七分。持った方ですわね。褒めて差し上げますわ」

 

一夏はこれまでのやり取りを見て、ようやく分かった。

アリアが行なった射撃は完全にアレだった。

 

「セシリアの真似をするとは、思ってもいなかったぜ……」

 

「あら? お気付きでしたか。ええ、そうですわ。この射撃は母が学生時代にあなたと対決した時の映像を再現したのですわ」

 

「舐められたもんだぜ……」

 

シールドエネルギー残量67。実体ダメージ中破。

零落白夜を使っていたら即終わっていただろう。

ここに来て、秋葉との訓練が役に立ったと思うと何故か、無性に勝ちたいと言う気持ちが溢れ出してくる。

 

「あなたも、もうお分かりでしょうしょうけど……」

 

「このまま行けば、負けるな……」

 

そう、このまま行けば、あの日の二の舞になる。

だけど、あの時ならば……なら。

 

「では、閉幕(フィナーレ)と参りましょう」

 

アリアは笑みとともに右腕を上にかざす。

すぐさま、命令を受けたビットがアリアの元へ戻る。

 

「~~~~♪ ~~~~~~♪」

 

ビットが戻ると否やアリアは歌いだす。

その歌は周りにいた者全員を首づけにする。

 

「永遠語り……だけど、私のは違う」

 

アリアが歌っているのは永遠語りだが、秋葉の知っている永遠語りとは全く違う。

ただ、一部同じ歌詞があった。

そして、アリアのブルー・レインに異変が起こった。

 

「~~~~~~♪ ~~~~♪」

 

四つのビットが開き、青色の機体は赤色へと変わる。

一夏はこの時を待っていた。

 

 

一週間前。

 

「多分、終盤にアリアちゃんは歌を歌う」

 

「はぁ? それはどういう事?」

 

鈴は秋葉の言っている意味が分かんなかった。

戦いの最中に歌を歌うなんて、常識外れだからだ。

 

「アリアちゃんのビットには、ある歌を歌うことで起動する装備が内蔵されているのよ」

 

映像を最初の所を再生されると、全員納得する。

しかし、この起動した装備には、全員驚かせていた。

 

「ですが、これを避けるなんて不可能ですわ」

 

「そうだね。数からして万単位……その上、追尾まであるとなると……」

 

セシリア、シャルルはこれを見て結論にたどり着く。

だが、秋葉はこれを打破する案があった。

 

「確かに、これをまともに相手すれば無理ね」

 

「では……」

 

「だけど……」

 

それを聞いた者は、分かってしまった。

この化け物級のレーザーの弱点に。

 

 

    ◇

 

 

―――現在のロックオン数99,987,986。シンクロ率76%

 

ブルー・レインから現在のレーザー数が表示される。

それでも、アリアは歌い続ける。

この一撃に全てを賭けるつもりだった。

 

(あなたを倒し、秋葉さんは返していただきますわ!)

 

アリアは今の思いを込め歌う。

それに答えるかのように、ブルー・レインのシンクロ率が一気に上がる。

 

 

―――シンクロ率100% ロックオン数100,000,000。

 

 

ついに、白式に対するロックオン数が一億に達する。

そして、決着の時が訪れた。

 

「この世界から消えない!!」

 

ブルー・レインの四つのビットから隙間もない程のレーザーが放たれた。

そして、アリアは勝ちを確信する。

しかし、それは一夏に届く事は、なかった。

 

「え……」

 

アリアは不甲斐ない声を漏らす。

なぜなら、標的である一夏が()()()にいたのだから。

 

「油断するところは、セシリアにそっくりだな」

 

アリアの放った一億のレーザーは次々と地面に当たっていく。

そう、これがこのレーザーの弱点。

 

 

    ◇

 

 

「だけど、それは()()()()()()ならだけどね」

 

「それは、どういうことなんだ?」

 

一夏はいまいち理解出来なかったのか、頭の上に?マークを作る。

 

「レーザーっていうのはね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

いくら数があろうと、それは()()()()に変わりない。

 

「一度離れたレーザーは軌道にそって進む。その為、正面に向かって瞬時加速(イグニンション・ブースト)すれば、このレーザーを避けれるのよ」

 

それは至って簡単な攻略方法だった。

 

 

    ◇

 

 

「うおぉぉぉ!!」

 

一夏は雪片弐型を振り下ろす。

アリアは、先程のレーザー軍の発射の影響で、機体が上手く動かない。

 

「くっ! わたくしは、ここで……」

 

銃器につけられた銃剣でガードする。

しかし、それも限界だった。

 

「負ける訳にはいきませんわぁ!!」

 

機体の冷却処理が行なわれる中、アリアは接近戦に持ち込む。

一夏の雪片弐型を弾き、銃口を定める。

引き金を引こうとした瞬間、一夏は笑っていた。

 

「楽しかったぜ。アリア」

 

黒い斬撃がアリアの持っていた銃器を切り裂く。

 

「そ、それは!?」

 

一夏が左手に持っていたのは、秋葉の剣。

黒刀・夜桜だった。

三撃目のアリアは目を瞑った。

 

「わたくしの負けですわね」

 

最後は笑顔を浮かべた。

 

「零落白夜」

 

金色になった一夏はそのまま、雪片弐型でアリアに一太刀入れる。

それと同時にブザーが鳴る。

 

 

―――勝者、織斑一夏。

 

 

こうして、アリアと一夏の試合は幕を閉じた。

 

 

    ◇

 

 

試合から数日。

秋葉は退院し、平和な日々が訪れると思っていたが、ある出来事でそれが一発で砕け散った。

 

「シャルロット・デュノアです。改めてよろしくね」

 

デュノアが“くん”じゃなく“さん”に変わったことなど、どうでもいい。

一夏と秋葉は知っていたからだ。

それより、()()()にいる()()()()()だった。

 

「アリア・オルコットですわ」

 

なぜか、アリアがこのクラスに転入してきた。

まあ、毎度おなじみの悲鳴がひびわたる訳だ。

 

「なんで、まだいる訳だ? 帰った筈じゃぁ……」

 

「あら? わたくしは()()()()()()()()()()()()()()()

 

一夏は思い返していた。

あの時の言い合いを。

 

『わたくしが勝ったら、秋葉さんを連れて帰りますわ』

 

『いいぜ。だが、俺が勝ったら……』

 

『わたくしたちは、()()()()()()()()()()()()。わたくしの情けで一週間だけ、時間をあげますわ』

 

確かにアリアは一言も帰るとは言っていなかった。

 

「とういう訳で、よろしくですわ。小父様」

 

「あははは……」

 

一夏は苦笑いするしかなかった。

それよりも、更なる問題が発生する。

 

「お、小父様だと!? 一夏どういう事だぁ!!」

 

窓側に座っていた箒がいきなり立ち上がる。

 

「知るかぁ! って、あぶねぇだろ!?」

 

箒は日本刀を抜き、振り下ろしてくる。

さらに、教室が吹き飛びもう一人入って来る。

 

「一夏ぁっ!!」

 

どどんと登場、凰鈴音(ファン・リンイン)

その顔は烈火の如く怒り一色。

 

「死ねぇ!!」

 

ISアーマー展開、それと同時に両肩の衝撃砲がフルパワーで解放される。

完全に明日の朝刊一面が決まりである。

 

『哀れ高校一年男子、同学年の幼馴染である女子に殺害される。死体は原型をとめておらず、クラスメイトは口々に悲しみの声を漏らす』

 

 

ズドドドオンッ!

 

 

「ふーっ、ふーっ、ふーっ!」

 

怒りのあまり肩で息をしている鈴がいる。

その姿は毛を逆立てて怒る猫のようにも見えた。

 

「…………」

 

ラウラが一夏と鈴の間に割って入って、お得意のAICで相殺したのだ。

 

「ラウラ!? ……っていうか、もう大丈夫なのか?」

 

「……あの程度で音を上げる程、私は貧弱じゃない」

 

「ははは……そうだ―――むぐっ!?」

 

いきなりの出来事だった。

俺の胸ぐらを掴まれ、そのまま―――唇を奪われた。

 

「!?!?!?」

 

驚天動地。

何が起こったのか一夏は分かっていなかった。

それどころか、鈴を始めとするその場にいた全員があんぐりとしている。

 

「お、お前は私の嫁にする! 決定事項だ! 異論は認めん!」

 

「……嫁? 婿じゃなくて?」

 

混乱のあまりにそんな冷静なつっこみが出てしまう。

 

「とういう訳で嫁!! 早速だが子作りをやるぞ!!」

 

なんとまぁ……とんでもない爆弾を落として来る訳だ……

 

「あ、あっ、あ……!」

 

ぱくぱくと口を動かして、声にならない声をあげる鈴。

 

「アンタねえええっ!!!!」

 

「待て! 俺は悪くない! むしろ被害者側だ!」

 

「全部、アンタが悪いに決まってんでしょうが!」

 

どういう理屈だよ!

言葉のキャッチボールすらならいので、ここは……

 

 

ビシュンッ―――!

 

鼻先を二本のレーザーが掠める。

恐る恐る俺はそちらに顔を向けた。

 

「あらら、一夏さん? 何処へいくのですか?」

 

「じっくりとO☆HA☆NA☆SI☆をしせんか? 小父様」

 

血管マークが……少なくとも五つはついているセシリアとアリアが、ゆらりと近づいてくる。

その手にはライフルが握られていた。

 

「一夏、貴様どういうつもりだ?」

 

「待て待て待て! 説明を求めたいのは俺の方で―――おわあっ!?」

 

聞く耳を持たん! というばかりに鋭い斬撃が襲いかかる。

 

「秋葉! ヘルプ!!」

 

最後の手段、秋葉に助けて船を出すもが……

 

「ゴメン。無理」

 

その日のHRは轟音と爆音、そして絶え間のない衝撃でクラスが文字通り揺れた。

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