艦娘たちと共に ~海洋戦争戦闘録~   作:ヨシ ヒロ

1 / 27
読みくい所もあるかもしれませんがどうかご勘弁を…


プロローグ
1 海を求めて


 

 時は令和、全世界の海は人類のものでは無くなろうとしていた。

再び人類は海の覇権を争う事となった。

古の舟の怨念との間で…

 

 

 元号が平成から令和に変わってから11年後の12月、突如世界中の海から現れた謎の舟の化け物「深海棲艦」(便宜的にこの名称が用いられているだけで正式な名は誰も分からない)は、人類から母なる海を奪おうとしていた。理由はハッキリ分からない。

 人類の驕りへの報復なのか?あるいは地球外からやって来たのか?連日様々な憶測が飛び交ったが、それが明らかになる事は無かった。

 ただ一つ、説得力のある推測といえば「古の舟の怨念」といった所だった。

 深海棲艦には、現代の最新鋭の兵器では全くといっていい程ダメージを与える事は出来なかった。しかし何故か、かつて第二次世界大戦で使われた兵器なら打撃を与える事が出来た。

 しかし、そんな骨董品のうちまともに使える数、種類は限られており、深海棲艦の勢いを止める事は出来なかった。

 やがて太平洋における制海権は、令和12年5月にはフィリピン、硫黄島、ハワイを結ぶ戦線まで押し上げられた。

 誰もが絶望する中、希望もこれまた突然現れた。

 

 それは深海棲艦と同じ古の舟の生まれ変わり、「艦娘」である 。

 

 彼女達が現れてから戦況は一気に人類側に傾いた。8月には世界各地で艦娘を中心とする反抗作戦が開始され、太平洋戦線においては、自衛隊による反抗作戦が小笠原方面とフィリピン方面で同時に行われ、作戦は成功。戦線は一気に南下する。

 しかしここに至って自衛隊は進撃を停止しようとした。当時の彼らには領海の外側に出るほどの権限はなかった。

 要するに日和見という訳だ。

 しかしこれには国際世論から非難が殺到。『日本は血を流す気はないのか』という声に押され、ついに自衛隊は領海の外への進撃を開始した。

 やがて小笠原方面軍はマリアナ諸島の南端部に位置する小さな島、ムエルタ島に(一部の国内の反対の声を押し退け)艦隊の拠点である鎮守府を設置する。

 しかしここにきて敵勢力も戦力を建て直し、進撃のスピードは次第に落ち、やがて完全に止まった。そして南国の無数の島々が浮かぶ広大な海原で、連日のように母なる海を巡る争い始まった。

 こうして後に「大海洋戦争」と呼ばれる事になる人類と深海棲艦との戦いは、激しさを増していくこととなった。

 

 

 ここ、ムエルタ島はマリアナ諸島の南端に位置する小島だ。それは典型的な南の島と言うやつだ。上を見れば南国の太陽が嫌と言う程照りつけ、横を見れば真っ青な海が、太陽の光を照り返しながら水平線の向こうまでずっと続いている。きっとバカンスにはうってつけの場所になるだろう。

 だが今、この島に居るのは皆職業軍人だけだ。もっと具体的に言えば本多昌宏(ほんだまさひろ)海将率いる第1特殊艦隊所属の艦娘と、陸上自衛隊第5特任中隊の隊員達だけだ。

 

令和13年4月1日

 今日はエイプリルフール、世界中のありとあらゆる人々の間で嘘が飛び交う日だ。きっと今頃、イギリスではBBCがまた大がかりなドッキリをやっているに違いない。

 

 そして、鎮守府の中枢たる執務室では今日もデスクの上の紅茶を前に無精髭を生やした壮年の男がこれは何かの冗談か?とうなだれていた。この、どちらかと言うとコワモテな顔をした新潟生まれの北国男児がこの島のボス、本多昌宏海将だ。

 この身長が180cm近くはあろうかという、どちらかと言えば戦車でも乗り回していたほうが似合いそうなこの男は、防衛大学校での優秀な成績や、数十年に及ぶ海上自衛隊での実直な勤務態度から、霞ヶ浦や市ヶ谷のお偉いさんからこの艦隊の指揮を任されたのだ。

 そんな、今や日本だけでなく世界中の希望たる任務を任されたこの男は、目の前のデスクに座るこちらはまだ幾分若い陸自の幹部自衛官が、熱々の入れたてのコーヒーを置くのを見て、今度は思わずため息混じりの愚痴を呟いてしまった。

 

「いいなあ…」

 

その身体には似合わない消えそうな低い呟きが執務室にかすかに響いた。

 

「どうかいたしましたか?海将?」

「いや…あのな…三佐…。」

「はい?」

「君のコーヒー、とてもうまそうだな…。」

 

 本多がうまそうだと言っている、目の前の三等陸佐が飲もうとしているコーヒーは、その辺のスーパーで売ってそうな安物のインスタントコーヒーだ。大河内三佐からすれば、こんなものはまずくもないが、特段旨いと言えるようなものでもなかった。

 

「飲みたいんですか?コーヒー?」

 

 すると海将はハッとした目になり、

「いやあ!!そんな事は無い!あ~紅茶は旨いもんだなあ!!」

 

 と自分に暗示を掛けるように声を出すと、一気にティーカップの紅茶を飲み干した。

 無理しなくていいのに…と三佐は心の中で同情しながらコーヒーを啜った。こうして改めて味わうと、インスタントでも悪くはない味わいだ。

 

 そう、この哀れな海将は今日で丁度丸々3ヶ月、毎日紅茶漬けの生活を送ってきたのだ。

 3ヶ月前に、英国生まれの怪しい日本語を喋るとある戦艦の艦娘の紅茶をうっかり「うまいなぁこれ」と一言言っただけでそれ以来朝、昼、晩問わずの紅茶三昧の生活を送る羽目になってしまったのだ。

 そして情けない事にこの男は、もう紅茶は飽きたと面と向かって言う勇気を持ち合わせていないようだ。明日こそは…明日こそは…と思ってもその明日になればいつも通り『紅茶が出来たネー!!』という勢いに流されてしまうのだ。

 

(いやいや明日こそは…)

 

と思い立った刹那、執務室のドアが開いた。

 

「提督、緊急報告が入っています。」

ドアを開けたのは通信司令係の大淀だ。手には紙を握っている。

 

「哨戒機より報告があります。」

 海将、三佐は一瞬にして指揮官の面持ちに表情を変えた。

 

「鎮守府西方、サンタジョージア諸島周辺海域にて敵艦隊を発見とのこと。」

「詳細は?」

 

 海将の頭の中では、瞬時にサンタジョージア諸島周辺の地図と今現在すぐに出撃出来る艦娘の情報が展開していた。

 こう見えても意外と優秀なのだ。

 今日も出撃だ。騒がしい1日になりそうだ。

 




素人仕事ですがおたのしみ下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。