艦娘たちと共に ~海洋戦争戦闘録~   作:ヨシ ヒロ

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2 前哨

交戦部隊一覧

 

海上自衛隊

 

第1機動群(対サンタ・ジョージア防空部隊)

旗艦「赤城」

空母「赤城」「加賀」

軽空母「鳳翔」

航空戦艦「伊勢」「日向」

航空機250機

重巡洋艦「青葉」「衣笠」

軽巡洋艦「球磨」「多摩」

駆逐艦「睦月」「如月」「白露」「村雨」「雪風」「舞風」

 

第2機動群(対第3機動部隊)

旗艦「飛龍」

空母「蒼龍」「飛龍」「大鳳」

軽空母「祥鳳」「瑞鳳」

航空機249機

重巡洋艦「利根」「筑摩」

航空巡洋艦「鈴谷」「熊野」

駆逐艦「弥生」「卯月」「皐月」「深雪」「叢雲」「磯波」「浜風」「谷風」

 

 

第1打撃群(鎮守府防衛部隊)

旗艦「長門」

戦艦「大和」「長門」「金剛」「霧島」

重巡洋艦「高雄」「愛宕」「摩耶」「鳥海」

軽巡洋艦「矢萩」「酒匂」

重雷装巡洋艦「北上」「大井」「木曾」

駆逐艦「吹雪」「白雪」「初雪」「暁」「響」「雷」「電」「時雨」「春雨」「五月雨」「涼風」「初風」「初霜」「清霜」

 

水雷コマンド小隊(鎮守府防衛遊撃部隊)

第1分隊

旗艦「神通」

軽巡洋艦「川内」「那珂」「神通」

駆逐艦「夕立」「秋雲」「野分」「浜風」

 

第2分隊

旗艦「北上」

重雷装巡洋艦「大井」「北上 」

駆逐艦「陽炎」「不知火」「黒潮」「 島風」

 

 

深海棲艦

 

第3機動部隊

空母ヲ級 3隻

空母ヌ級 4隻

航空機400機

戦艦タ級 2隻

重巡洋艦リ級 4隻

軽巡洋艦ホ級 5隻

駆逐艦イ級 5隻

駆逐艦ロ級 3隻

 

鎮守府襲撃部隊

戦艦ル級 4隻

重巡洋艦リ級 5隻

軽巡洋艦ホ級 6隻

軽巡洋艦ヘ級 4隻

重雷装巡洋艦チ級 6隻

駆逐艦イ級 10隻

駆逐艦ロ級 11隻

上陸部隊 二個中隊

 

 

 「やはりおかしいぞ。」

flagshipのヲ級が呟いた。先程からずっと艦娘達の放った艦爆隊を見ていたが、一向に急降下してこない。

すると、とうとうこちらの戦闘機隊が件の艦爆隊を捕捉したようで、一斉に襲い掛かった。これでもうあの隊は終わりだな。

その時奇妙な事が起こった。艦爆隊は吊り下げていた爆弾を落とした。そこまでは普通だ。

 ところがその直後、艦爆は宙返りをかました。いくら比較的運動性能の良い艦爆だからと言ってもあの機動は常軌を逸している。そして面食らった戦闘機の背後をあっという間に取り、両翼から光の条を放った。まともに弾を喰らった戦闘機は火を吹いて海面へと落ちていった。

 

「おいおい隊長!今の見たかい!?」

「ああ、しっかり見た。あれはヴァルなんかじゃない!クロード(※1)だ!!」

「クロードですか?」

 

新参のヲ級が間抜けな声をあげた。

 

「クロードなんて先輩達の話でしか聞いた事が無いですよ。まさかこの目で見ることになるなんて…。」

「私も久し振りに見たな…。」

「呑気な事言ってる場合かよ!!あの腰抜け共め、戦闘機隊だけ寄越しやがった!!」

 

血気盛んな古参のヲ級が激昂した。飛んでいるのはよく見れば零戦と爆装した九六艦戦だ。

 

「おい隊長、これは一体…。」

「何の冗談だ?気味が悪いな…。」

 

…とにかく本部にこの異様な事態を事を伝えなければ。そう思い、flagshipヲ級が通信を始めようとした時、新参のヲ級が叫んだ。

 

「た、隊長!!緑色のゼロです!!」

「何!?」

 

 見ると眩いばかりに白いゼロの間を縫うように緑色のゼロが降下してきた。

 

「こっちに来ます!隊長!!」

 

flagshipのヲ級は食い入るように緑色のゼロを見ていた。まるで飛んで来るゼロに射竦められたように目を離せなかったのだ。

 

(馬鹿な!連中はもう既に五ニ型を飛ばしているのか!?何と言う事だ…。)

 

「隊長!!」

 

 ゼロは対空砲火による砲弾や銃弾の弾幕の中を華麗にすり抜けている。極限まで軽量化されたゼロの機体は、ふわりとなめらかな軌道を描くように機体を翻す。その様はおぞましいまでに美しい。

やがてゼロの様子がハッキリと見える距離になった。

 よく見ると胴体の下には増槽…いや違う、500ポンドクラス(※2)の爆弾を抱えている!

 

「ただのゼロじゃない!!ヤーボ(※3)だぞ!!」

 

 古参のヲ級がそう叫ぶと同時にゼロが銃弾を両翼から放った。だが放たれる銃弾の場所もおかしい。両翼から2つずつ…合わせて4条の曳光弾の条が、全て翼から出ていた。

 

(あの機銃の配置はまさか…六ニ型!?)

 

 ヲ級がそう察すると同時に機銃弾の雨が降り注いだ。金属音を立てながら無数の銃弾がしたたか叩きつけられる。思わず腕で顔を庇ったヲ級だったが、直後に彼女を襲った凄まじい衝撃によって海面に全身を叩きつけられた。零戦が投下した250kg爆弾が至近距離で炸裂したのだ。

 

(私としたことが、迂闊だった!)

 

 彼女は一瞬死を覚悟した。炸裂の衝撃によるものか、彼女の聴覚は一瞬奪われ、金属音のような「キーン」という音が頭の中でこだましていた。

しかし誰かが自分に触れる感覚があった。水面の触感もまだ感じる。また自分はしぶとく生き残ったか…。そう思っていると、誰かが自分に話しかけている事が分かった。

 

「おい、隊長!無事か?」

 

目を開くと見馴れた顔があった。部隊ーの古兵だ。

 

「ええ、ありがとう。被害の状況は?」

「あまりよろしくは無いぜ。ほら。」

 

 古参のヲ級の目線の先を見ると、そこには負傷した新人が仲間から介抱を受けていた。空襲の最中なものだから介抱する者の近くには対空射撃をする者が付きっきりだった。

 しかもたちの悪いことに既に爆弾を投弾したゼロと爆弾を腹に抱えたゼロがいっしょくたになって暖降下を仕掛けてくる。もはや頭上に来ない限りどの機が爆装していてどの機が丸腰なのかが分からないのだ。

 

「あいつは隊長を庇って500ポンドをまともに食らっちまった。多分中破ってとこだ。もう戦力にはならないな。」

 

 そう古参のヲ級が言い捨てると、負傷した新人が部隊長に乞うように絶え絶えの呼吸で言った。

 

「も…申し訳ありません、隊長。でも、足は動きます。大丈夫です。足を引っ張ったりしませんから…。」

「謝らなくていい。私のミスだ。お前は自分の事に専念しろ。いいな?」

「は、はい…。」

 

新人は無念の表情で頷く。リ級に肩を借りながらようやく立った。

 

「隊長、早く本部に!」

「…駄目だ。無線機がイカれた。さっきのやつにやられたな。」

 

 無線機は先程の零戦の機銃掃射か、至近弾によって故障していた。もはや本部に連絡をする手段はなくなったのだ。

 

「おいおい…じゃあこれからどうする!?」

「……。」

 

 flagshipヲ級は辺りを見回した。辺りに飛んでいる敵機は全て戦闘機だ。こんな編隊が襲撃して来るという事はもちろん想定外だからとても対処しきれない。

 彼女は空に翻る無数の日の丸の翼を睨みながらしばし黙って立った。

 

 

 「いや~提督も変わった命令出すもんだねぇ。」

 

そう言ったのは第2機動群の蒼龍だ。

 

「まさか“攻撃隊の編成を全部戦闘機にしろ”何て言われるとはね…。」

 

旗艦の飛龍が応える。

 

「新型の戦闘機も惜し気もなく投入して、さらに倉庫から九六艦戦まで引っ張り出したしね。」

 

 この時の第2機動群の攻撃隊は誘導機の九七艦攻以外は全て戦闘機だった。

 

『向こうが陽動のつもりで動いてルならこっちが本気でかかるまでもあるまい。』

 

 そう言って本多は消耗が激しくなる攻撃機や艦爆の出撃を控え、最近開発した新型の零戦も含めた制空隊の一部を爆装させろ、と指示したのだ。

 その為、攻撃できるのは爆装した戦闘機位だが、いかんせん機体の本職は戦闘な訳だから、急降下爆撃に必須な爆撃用の照準機もダイブブレーキも着いていない。そもそも今までこんなに大々的に爆装した戦闘機隊を編成した事も無い為、まともにダメージを与えられるかは微妙な所だ。

 

「せっかく先制攻撃を仕掛けられたのに…。なんかこれじゃもったいないね。」

 

 直掩隊を指揮する瑞鳳が漏らした。相手の姿を見る事なく戦闘をする空母戦に於いて先制攻撃というものの重要性は大きい。相手の索敵機に発見されない限り相手の手の届かない所から完全に一方的に叩く事ができるのだ。

だからこそ先制攻撃のチャンスを得ながらまともな攻撃が出来ない第2機動群の面子は、歯がゆい事この上なかった。

 

「でも攻撃隊の報告によれば正規空母1隻と軽空母2隻をほぼ確実に撃破したみたい。巡洋艦にも2隻に命中、撃破したみたい。」

 

攻撃隊の報告を受けた飛龍が言った。

 

「“撃破”かぁ…。きっと艦攻隊がいれば確実に沈められたね。艦爆隊がいればもっと損傷艦も増やせたかもね…。」

 

 蒼龍は悔しそうに言った。通常の艦よりも脆い空母はある程度損傷させれば無力化することはできる。

しかし沈めない限り敵はすぐに修復して前線に送り込んで来るだろう。そう、“あの時”のヨークタウンのように。

 自分が戦死した戦というものはやはり好かないものだが、そこから得る戦訓も多かった。特に一航戦と二航戦のメンバーは今まで取り寄せたミッドウェー海戦の資料を元に幾度も反省会を重ねてきた。

 その中で出てきたのは珊瑚海海戦で損傷した空母ヨークタウンの参戦だ。ミッドウェー海戦の1ヶ月前、珊瑚海海戦で日本軍はヨークタウンに爆撃によって損傷を与える。日本軍はヨークタウンの復旧には1ヶ月は要するだろうと推測、MI作戦には間に合わないだろうと考えていた。

 しかし実際にはアメリカ軍はたった3日でヨークタウンを復旧させ、ミッドウェーに出撃させた。その後の結果は周知の通り。完全に見通しが甘かった。緒戦での勝利のおごりの末路だ。

 

『空母は完全に沈めない限り、何度でも自分たちに牙を剥く。』

 

それが蒼龍の体得した教訓だった。

 

 

――こちらスミレ22、第1次攻撃隊が攻撃終了。戦果は正規空母1隻撃破、軽空母2隻撃破、1隻に損傷与える。攻撃終了後に敵艦隊は撤退を開始。我が艦隊は敵機との接触無し。第2次攻撃による追撃を求めます。

――こちら指令部、第2次攻撃は却下する。敵艦隊の偵察は続けながら速やかに鎮守府まで撤収せよ。

――もう一度お願いします。

――直ちに撤収せよ。ただし可能な限り敵艦隊の偵察は続けてな。

――いいんですか!?戦況は我々が優勢ですが…。

――深追いは無用だ。依然として敵艦隊は相応の戦力を保持している。これ以上のこちらの出血は好ましくない。

――…了解。

 

 

「第2機動群、撤収!直掩隊はそのまま、後方を警戒しながらこれより鎮守府に帰投!!」

 

旗艦の飛龍が言う。当然のように動揺が広がった。

 

「えっ!?」

「撤収?」

「ねぇ飛龍、本当に提督はそう指示したの?」

 

 蒼龍も口を開いた。たとえにわか仕込みの爆戦隊でもこの調子なら上手くやれば空母を沈められると蒼龍は思っていた。敵戦闘機に捕捉された爆戦は速やかに爆弾を投棄して空戦に加わるように指示しておいたから、航空隊の消耗もそれ程では無い。だから撤収の命令は彼女にとっても本当に予想外だった。

 

「うん。深追いは無用、これ以上の出血を避けるために直ちに帰投せよ、ってね。」

「そんな…こっちに負傷者が出た訳でもないのに…。」

「でも慎重な提督と大河内三佐のことだから、きっと何か考えがあるんだと思う。きっと…。」

 

 

 「敵機動部隊は戦力を保持しながら撤退…。どうやら向こうはこちらへの攻撃を諦めたようだね。」

 

本多海将は安堵の表情を浮かべて大河内に言った。

 

「だといいのですが…。まだはっきりとは言えません。こんなにあっさり撤退したということは、撤退したように見せかけて水上部隊だけ選抜して夜間に強襲…なんて事もあり得ます。依然としてサンタ・ジョージアの部隊は我々の脅威である状況に変わりはありませんし…。とにかくアメリカ軍が来るまでは余談は許されません。」

「ううむ…。大淀君、第31任務部隊の到着はもっと早く出来んのかね?」

「どんなに急いでも明日の未明頃になるようですね。三佐のおっしゃったように今夜の山場は我々だけで何とかしなければなりませんね…。」

 

執務室が静まりかえった。各々が考えていることは同じで、最善の解決作をひたすら思案していた。

 

「…やはり沖合いで迎え撃つのは無しなのか?」

 

沈黙を破ったのは本多だった。

 

「海将、先ほど申し上げたように不確定要素が多すぎます。敵はどれ程の戦力で、いくつに隊を分けて、どのルートで、何を目的に来るのか…。いや、もしかしたら来ない可能性もあり得ます。」

「なら…。」

「しかし最悪の事態を想定してください。沖合いに展開した艦隊が敵に包囲されたら?敵味方を判別するのさえ困難な状況で援軍を差し向けたらどうなると思います?同士討ちになる可能性もあります。」

「しかしここで迎え撃つというのも大分無茶な案だぞ!?まさに背水の陣だ。」

「それは百も承知です。しかし敵を討ち漏らす心配はせずにすみます。ここまで来るという事は敵の目的はこの島の破壊。海上で討ち漏らした敵は上陸するでしょうから、その時は我々が迎え撃ちます。」

「ううむ…。」

 

 そうなれば陸上自衛隊はこの戦争で初めての本格的な地上戦を行う事になる。そうなればどれ程の出血を強いられる事か…。その考えが本多の頭をよぎって離れなかった。

 

「海将、たとえ刺し違えてでも…私の大隊が守りきって見せます。」

 

大河内が諭すように、また自分自身に言い聞かせるように言った。

 

(刺し違えてもらっちゃ困るんだよなぁ…。)

 

正直なところ、それが本多の本音だった。

 

 

※1…九六艦戦に連合軍がつけたコードネーム

 

※2…日本でいう250kg爆弾

 

※3…ドイツ軍が戦闘爆撃機につけたあだ名。ヤークトボンバーの略称。日本でいう爆戦。

 




久しぶりの更新です。
イベント攻略終えたので。もちろん丙提督ですが、何か?
本家の艦これの方でも深海棲艦の陸戦部隊の存在が明らかになった…のか?
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