でも勘弁してください!陸自の所はアホみたいに筆が進んでしまうんです。
「おいあきつ丸、タコツボの部隊が移動してないぞ!どういう事だ!」大河内の怒号が飛んだ。
大河内は危険を承知で西側の海岸近くのタコツボと広い道路のような対空陣地の間近まで前進していた。この島には見通しが効く丘などの高台がない為、車輌部隊やタコツボの人員の消耗が把握しやすいように最前線に来ていたのだ。
あきつ丸による指示で車輌部隊は東に移動を始めたが、タコツボの中の部隊は出てくる気配が一向に無い。
車輌部隊が東側に展開すれば敵もそれを叩きに来るだろう。ならばタコツボで機銃を撃つ歩兵もある程度東に向かわせ、戦力を集めた方がいいと大河内は判断した。無論装甲にも何も守られていない歩兵の消耗は甚大なものになるだろう。
「中隊長殿、無線機のバッテリー切れであります!」
「切れたらさっさと入れ替えろ!」
「申し訳ありません、予備は本部に置いてきました…。」
「置いてきた?クソッついてない…。」
「申し訳ありません中隊長殿、直ぐ取って…」
「分かった、分かったあきつ丸…よし、借りに行くか…。」
「どこにでありますか?」
「あそこだ。」大河内が指差した先にあるのは道路(対空陣地)を隔てた向こうにあるタコツボだ。
「よし…行くぞ!」
大河内は左右を確認するとあきつ丸と一緒に道路に飛び出し反対側までを走りきった。大勢の隊員が肝を冷やした事は言うまでもない。数は多少は少なくはなったが、未だに敵機は上空を旋回して様子を見ていた。だから大河内とあきつ丸が飛び出すと、頭上スレスレを飛びながら機銃を撃ってきた。
しかし幸か不幸か辺りには丁度いい弾除けがあった。撃破された装甲車の残骸だ。
大河内が飛び込んだタコツボにいたのは弾正 剛 三等陸尉(少尉)だった。砂を全身に被っていて大河内は最初誰だか分からなかった。
「無線機を貸してくれ。」
大河内は無線機でタコツボにいる隊員達に手早く指示を送った。
この時大河内達はX字型の対空陣地の北西部、つまりXの字でいうと左上の部分にいた。そして装輪装甲車の部隊は>の字の形で西側一帯に隊列を組んでいた。タコツボも同じ形で対空陣地の脇に等間隔で作られていた。
大河内は装輪装甲車の部隊をクロスさせるように全速力で真っ直ぐ進ませ、タコツボの普通科や特科の歩兵達の半分程を木が生い茂って遮蔽物がある島の中央部、つまり対空陣地の交差点に集めて施設群の守備隊を援護し、東の上空の弾幕の密度を少しでも濃くしようと考えた。
敵の目標はやはり施設群のようで、西側の自分達の頭上の敵機の数は先程よりもいくばくか少なくなっていた。大河内は行くなら今しか無いと思った。
――合図したら飛び出して向こうの林に走るぞ。皆、準備をしろ。
各々が準備を初めた。弾係は持てるだけの弾薬を持つ為に弾帯ネックレスに両手に弾薬箱のお馴染みのスタイルになり、ある者は三脚を御輿のように持ったりした。
一番大変なのは銃の本体の運搬係で、M2重機関銃の場合は二人がかりで運んだ。一人は箱形の機関部を担ぎ、もう一人は銃身を担いだ。銃身は今まで撃ち続けていた為、高温に焼けついており、担ぐ係は肩に濡らしたタオルや耐熱手袋を乗っけて担いだ。
――各班、右確認、左確認、頭上確認、安全だと思ったら走れ!
合図と共にタコツボから次々と隊員が飛び出した。待機する班と移動する班は隣り合っているから、待機する班のタコツボからは援護射撃が始まり、再び島の西側は爆音に包まれた。
大河内も正面の向かいにある南西部のタコツボから隊員達が移動を始めたのを見て、先程飛び出した部下に続いて走り出した。そして他の隊員達の例に漏れず、凄まじい銃火の洗礼を受けた。
大河内達は来た時と同じように車輌に隠れながら進んだが、敵は今度は爆弾まで落としてきた。攻撃の激しさはついさっきとは較べものにならないぐらい一気に苛烈になった。彼らがこうして車輌の陰で息を整える間にも敵機が群がってくる。
「走れ!走れ!!死ぬ前に走り切れ!!」大河内は大声で叫んだ。
この時は皆生きている心地がしなかった。再び彼らの前に地獄が現れたのだ。道には黒焦げの死体や体を真っ二つに切り裂かれて臓物を撒き散らした死体が転がっており、彼らはそれらを見て、飛び越えながらとにかく走った。弾丸が空を切って飛ぶ音がみんなに聞こえた。その位置が少しでもずれたら頭がまるで風船が弾けるように吹き飛んだ。
飛んでくる銃弾と爆弾は何もかもを破壊した。ある隊員は銃弾に脚を吹き飛ばされて道に倒れた。助けを求めているが、誰も助けようとはしなかった。それどころか機関銃を運ぶ二人組はその隊員を踏みつけて走っていった。
三脚や重機関銃は二人か三人程で一組になって運んでいた。だから先頭を走っている者が撃たれると後ろの者もバランスを崩して転倒し、機銃掃射の餌食になった。もはや舞い上がる砂塵ですぐ前を走る隊員の姿も見えなくなっていた。
爆弾が直撃すれば文字通り何も残らず四散してしまう。大型爆弾を積んでる爆撃機は建物や艦娘を破壊しに行ってる為、隊員には小型爆弾を積んだ戦闘機が主に襲い掛かってきた。何度も何度も上空を旋回しながら銃爆撃をしてきた。
「走れ!おい、大丈夫か。」大河内は隊員達の後ろの方を走っていた。何人もの負傷者が道に横たわっていたからできるだけ車輌の陰まで引きずってやった。
大河内もあきつ丸も最初は手ぶらだったが途中からは死んだり負傷した隊員達の運んでいた装備をできるだけ持って走っていた。だから二人共装備品に着いていた血で血だらけになっているように見えた。
「もう、タバコ控えた方がいいかな?」大河内が息を切らせながら呟いた。
「お身体に悪いですからね。場合によっては死に直結するであります。」あきつ丸が答えた。
「ああ、こういう時にな。」
こんなときに端からは想像も出来ないような会話だった。
そして二人はいつの間にか隊員達の先頭の方を走っていた。林の中で装備を降ろして後ろを見ると何人もの隊員達が車輌の残骸の陰で小さくなっていた。
「早くこっちに来い!」
「ここから動いたら死にます!」隊員の一人が応えた。
「そこにいても死ぬぞ!走って移動した方がまだマシだ。後続の奴らの為にも早くこっちに来い!!」
勇気を振り絞って隊員達が前進を始めた。遮蔽物になる車輌も銃撃を受けて次々と炎上している。
「よし、あきつ丸。」大河内が眼前の惨状を見ながら言った。
「はっ。」
「来い。」
すると大河内は再び道路に飛び出した。動かない隊員達の尻をひっぱたいて移動させる気だ。
「中隊長殿!待ってください!!」
「中隊長!」
「陸佐!」
皆の呼び止めを振り切り、再び大河内は道路に飛び出した。
「ほら!ほら早く移動しろ!!」大河内がへたりこんだ隊員を立たせて大声で叫んだ。
辺り一面砂煙で視界が真っ白に染まっていた為、方角が分からなくなって立ち往生している隊員もいた。轟音でこちらの声を聞き取れない時は走って直に方角を教えにいった。
「向こうの方角だ。あそこの燃えてる車輌の所まで行けば皆が見える。早く行け!!」
「中隊長、中隊長殿!!」
走って行く隊員と入れ違いであきつ丸が来た。
「中隊長殿、あなたが最後です。渡った者達にも交差点に行くように指示をしました。直ちにあなたも来てください!」
「…分かった。行こう。」大河内は一瞬回りを見回してから言った。所々からうめき声のようなものが聞こえたが、その声の主は恐らく助からないだろうと諦めた。
大河内とあきつ丸は息を整えると一気に走り出した。他の隊員達は殆ど渡りきったからか、頭上の敵機の音もいつの間に遠ざかっていた。
(あと何分だ?)大河内は時計を見た。まだ25、6分程しか迎撃を始めてから時間が経ってなかった。
(あとどれ位もつか…)大河内はおおよその被害状況などを勘定して、鎮守府が壊滅するまでの時間を見積もっていた。
辺りには肉片や車輌の残骸が散らばり、前方に見える施設群からは黒煙が濛々と立ち上がっているのが見えた。上空では敵機が悠々と旋回している。
(やはり大鳳の航空隊だけでも迎撃にあたらせた方が良かったのか?)そんな考えが何度も浮かんだが結局は考えるだけ無駄な事だと気付いた。上空で巴戦なんかやられたら地上からの攻撃は思うように出来ない。
「中隊長殿ぉ!!伏せてください!!」
余りに急な事で一瞬気が動転したが、大河内は無意識に姿勢を低くし、さらにあきつ丸が地面に押し倒した。その直後、爆弾が至近距離に直撃し、炸裂した。
物凄い爆音と衝撃だった。むき出しの顔が一瞬焼けるように熱くなったと思うと、経験した事の無い凄い爆風に襲われた。辺りには爆風と共に砂塵が舞い上がり、地面の破片が四方に飛び散った。
大河内は頭の中ではなんとなく状況を理解していた。恐らく爆弾が近くに落ちた。ところが衝撃に襲われて以来何も聞こえないし、見えない。大河内は自分は死んだと思った。
「…ぉ、…どのぉ!、…たいちょうどの!!」しかし徐々に聞き慣れた声が聞こえてきた。実はこの時大河内は爆音で一時的に難聴になって、目は砂か何かが入っていただけだった。
「無事でありますか?!」
「…大丈夫だ、お前は?」
「大丈夫であります。」
直ぐに走り出そうとしたが、大河内は落ち着くと直ぐに違和感を感じた。頭を触るとヘルメットが無くなっていた。爆風で吹き飛ばされたのだ。
「クソッ、テッパチがない!」
「自分もであります!」
大河内は後で振り替えればとても愚かな事をしたと思った。未だに視力が思うように回復していなかった大河内とあきつ丸は、ほんの短い時間だったがまるでコンタクトレンズを探すように手探りでヘルメットと帽子を探していたのだ。きっと敵からすれば無防備極まりない光景だっただろう。
「あった。」大河内は何か被れそうなものを掴んだ。
「行きましょう!」あきつ丸も見つけたようで急いで頭に載せると再び二人は走り出した。
しかしこの後、隊員達と艦娘達は奇妙な光景を見る事になった。大河内は黒い軍帽を被り、あきつ丸は迷彩の施されたテッパチを被っていた。つまり二人の装備はあべこべになり、しかも二人共指揮に夢中なのか分からないが、全く気付いてなかったのだ。
その頃鎮守府の南の海域では、現在付近で唯一航空戦力を持っている空母娘大鳳が心配そうに鎮守府のある北の海を見ていた。“アオイ34”祥鳳、瑞鳳を初めとする応援が来るのをずっと待っているのだ。
大鳳は応援の部隊と航空隊で迎撃を行う為、少数の護衛と共に鎮守府の南の海域に避難していた。本当は“スミレ22”蒼龍、飛龍達が到着してから迎撃を始めるように指示されてたが、彼女はアオイ34の祥鳳と瑞鳳が到着した時点で迎撃を始めるつもりだ。
彼女からは鎮守府は直接は見えなかったが、空高く上がる黒煙と爆音はしっかり確認できた。きっと鎮守府の艦娘達も自衛隊の隊員達もあの黒煙の元で必死の防戦をしている。そう思うともうその光景を見ている事が我慢ならなかった。
しかし敵の航空戦力は未知数だ。少なくとも百機は越えているとツツジ64から連絡は入ったらしいがきっとそれは第一波の攻撃隊で、鎮守府の場所が把握された事から第二波、第三波の攻撃隊が敵の本拠地から来てる可能性が高い。そう考えるとかなりの大軍を擁しているのではないかと推測できる。
一方自分達の航空戦力はと言うと、戦闘機は大鳳の艦戦用マガジン2つ分、合計36機しかない。ボウガンで発艦するタイプの発艦機を使ってるのは大鳳だけの為、他の空母娘の艦載機が納められている矢とはサイズ等の関係上互換性が無く、戦闘機は予備のマガジンも含めた2つ分しか装備できなかった。
祥鳳と瑞鳳の戦闘機も合わせて30機前後だろう。つまり総勢70機弱で迎撃する事になる。多少心もとない気もするが、出来ない事は無い筈だ。
しかしなかなか来ない。連絡がないということは順調にこちらに向かって来てる筈なのだが…。
大鳳が本部に問合せようとしたまさにその時、護衛の艦娘が西側から艦隊が来るのを発見した。大鳳はひとまず安堵した。
――こちらアオイ34、お待たせしました。大鳳に通信が入った。
――カエデ67大鳳、直ちに艦載機を発艦させて迎撃を開始しましょう。時間がありません。侵入路は…
西に傾いた太陽を背に近づいてくる艦娘の影の中に大鳳は信じられないものを見た。最初は自分が幻覚か何かを見ているのかと思った程だ。
――こちら瑞鶴、翔鶴姉、どうやら相当ヤバいみたいね。
――こちら翔鶴、緊急の要請を受け、援軍に参りました。
アニメ鎮守府も空襲を受けたみたいですね。
思わぬ形で予言と言う形になってしまいました(笑)。