クロスアンジュ~”天使”(ここ重要)と龍の輪舞~ 作:同志プジョンヌイ
アンジュリーゼは、満面の星空の下宮殿のバルコニーに出て、1人永遠語りを歌っていた。永遠語りは母上から教わった歌であり、ただの歌ではなく自らの進むべき道を照らす歌なのである。これは一種の精神ケアであり、今日の昼に見たノーマの赤子とそれから引き離される母親の悲痛な姿が脳裏から離れない彼女は、自分の心を慰めようとしていたのだ。
そんな時、後ろから皇妃ソフィアが彼女と同じように口ずさみながら近づいてきた。彼女たちが共に歌い終わった後に、アンジュリーゼは一礼した。
「あなたは小さいころから変わりありませんね。何かあるたびにこの歌を」
「すべてを洗い流してくれる気がするのです。迷いや不満を全部・・・」
「永遠語り。進むべき道を示す皇家の守り歌ですから。そういえばモモカは?」
「さっきシルヴィアに呼ばれたそうです。ところで、今日の悩みの原因の一つは彼女のせいです。」
突然の切り口に母は驚いたようだ。それに対し、アンジュリーゼは今日会ったことのあらましを語った。
「はあ・・・(あっぶねぇ・・・)」
「だから私、汚れてしまいました。お母様、あのメイド、別の人に・・・」
「ダメです。」
月に数回アンジュリーゼは両親に対し筆頭侍女モモカの懲罰または解任を訴えるのだが、毎回拒否されるのが関の山なのである。なぜ、幼少のころから姉妹のように共に過ごしてきた相手に対してそのような酷いことをできるのかと言うと、実は十分な理由がある。
モモカスは侍女に求められる能力は非常に高い段階でまとまっており、忠誠心もある。しかし、仕事に不真面目、自身の地位を使って他者に威張る、職権乱用を行うというところがあるばかりか、アンジュリーゼの下着を盗む、洋服を着る(よく中世を舞台にした世界でお姫様の美しさにあこがれた召使が自分に試すのとは違い、純粋に性的動機)、風呂場にて不純同性交遊を行おうとする(第3話参照)人物だった。
「やっぱりそうおっしゃいますね・・・」
「ほ、本当はお互い大切に思いあっているはずですよ・・・」
「・・・・そうかもしれませんね。本題に入ってもよろしいでしょうか?」
「もちろん、よろしくてよ」
アンジュリーゼはモモカのことはひとまず置いておいて、本題に入ろうとした。
「私この世界が好きです。戦争、格差、貧困・・・全ての平穏が消え去った平穏で完璧な世界・・」
あの、先ほど思いっきり闇がありましたよね・・・と、心の中で突っ込みを入れながらモモカが用事(お仕置き)を終え、話を邪魔しないように、静かに戻ってきた。
「今日ノーマを見ました・・・なぜ生まれてくるのでしょうか?」
「何もわかっておりません。どのように発生してくるのか。どうして女性だけなのか・・・」
ソフィア妃は娘の真剣な悩みに対して真摯に向き合っている。世間知らずの娘がノーマという社会悪について憂いていることに感心し、その悩みの元は娘のやさしさから来たいることを母として内心うれしく思った。
一方でモモカは、パンツ丸出しでなに真面目なことを言ってるのと内心あきれていた。
「そうなにもわかっていない・・・ですから、私が解き明かそうと思います。」
「!?」「!?」
突然の言葉に二人は驚いた。当然である。ノーマという存在はマナの世界が維持されるためには必要な社会悪であり、いわゆるコラテラルダメージという、致し方のない犠牲としてしかとらえておらず、その謎を解き明かそうと考えは全くなかった。むしろめったに見ることのない(約一名を除き)ノーマのことなど考えもしなかった。
その驚きに気付かず、彼女は話をつづけた。
「ノーマが生まれることがそれを生む家族を悲劇に陥れます。そして、ノーマとして生まれてくる者たちも満足のいく人生を送る機会が取り上げられてしまいます。」
「・・・・・・」「・・・・・」
「そんなことは間違っています!!防がなくてはなりません!」
それに対し、侍女モモカは、そんなこと目指すのに研究職につかれたら色々面倒臭くなるじゃないとあきれていると同時に、アンジュリーゼの話が続くたびに別の感情が湧いていることに気付いた。
「ノーマが生まれてくることがなくなれば、世界はもっと美しくなるはずです!!」
「・・・・・・・」「・・・・・・・」
(あの子心がきれいなのに・・・私たちは互いに相当汚れていますね・・・・今夜は寒いわ・・・)
風が強くなり、星空が雲に飲まれる中、アンジュリーゼの理想を語っていた脇で二人は久方ぶりに後ろめたさに駆られていた。
特に母の方は強く感じていた。彼女はその差別対象を用いた国是と密接に関わり、肯定している人物であり、娘のきれいな心の前で自身の汚さを恥ずかしく思った。加えて・・・・
彼女は自分の指輪を彼女に差し出した。
「・・・・アンジュリーゼ、これを・・・・」
「それは斑鳩家に伝わる・・・」
「アンジュリーゼ、あなたに光の御加護があらんことを・・・」
自身に母の大切な指輪を渡されたアンジュリーゼが戸惑っているのをしばし眺め、ソフィア妃はバルコニーから部屋のなかへ戻っていった。ほんの短いやり取りであったがそこには母の深い思いが込められていた。
無論、アンジュリーゼは気づくはずもなく、その時母が去っていた理由は夜風が寒くなったからだと思っていた。そして、明日の洗礼の儀を祝福して指輪を送ってくれたのだと・・・
◆
その理由を完全に理解するにはもう少し時間がかかることだろう。少なくとも今の段階ではわかるはずもなかろう。
自身がノーマであることを暴かれ、地位も特権もすべて奪われ、母を殺され、更に自身の誇りも名前すら無情にも奪われてしまった彼女は、屈辱と寒さで震えながら自身の最も愛していた存在を思い浮かべていた。
「お母様・・・あなたがお亡くなるとは・・・」
そして、ひとつだけ確信したことがあった。
「かような恐ろしい場所が世に存在しているなどとは・・・この世界は間違っております・・・」
◆
~一方、天国では~
ソフィアは下界の救いのない様子にため息をついていた。
尤も、彼女自身生前に行った悪事(シンギュラーを開くなど)を働いていたことを閻魔大王に裁かれ、危うく地獄送りになっていた。しかも、その時の彼女は反省する様子を全く見せることなく、
「マナがなければドラゴンを殺せばいいじゃない」
「(ノーマよ、)文句があったらいつでも明けの御柱へいらっしゃい」
などとのたまいながら、勝手に天国への道へ歩を進めようとしていた。
しかし、閻魔の「俺、優しそうな容姿の中にSを秘めている美熟女好きだからOK」という鶴の一声と、
遺族からの追善供養を斟酌した結果見事天国に行くことができたのであった。
だが、その遺族(息子たち)の追善供養に込められた思いは絶句に値するものだった。
「ママ、どうして生きてる時にもっと構ってくれなかったの・・・?もっと甘えたかったのに・・・(涙)」
「お母様、姉を騙し、そして、私の鞭とナイフで徹底的に、精神的にも肉体的にも痛めつけて、必ず仇をとりますわ!(ハァハァ)」
ジュリオ(マザコン)とシルヴィア(変態サディスト)の心の底に秘めた思い、いや、闇を知り、ソフィアはひどく絶望していた。
「それにしても、アンジュリーゼ、身体検査受ける時にかわいい声出してたな♡」
と、天上から娘の様子を見てこのような邪な思いを抱くとは、「やはりこの息子たちにしてこの親あり」とはよく言ったものである。
???「やっと、1話の展開が終わりましたわね。って、最悪よ。私の見せ場の洗礼の儀と身・体・検・査は原作と変わらないからと言われてカットされるし。理不尽とリムジンとは一文字違いで大違い!!それにしても、皇帝夫妻のご家族にはろくな性格の方がいなくてかわいそうですよね。って、私も相当な変態ですってー!!」
以上茶番でした。
御閲覧ありがとうございました。一話のアンジュリーゼ様かわいかったなぁ、主に身体検査時(ゲス顔)。後、「ノーマは人間ではないのです~(ry)」の件も凛々しくておきれいでした。